« 2008年8月 | トップページ | 2008年10月 »

2008年9月

9月30日の日本の昔話 あぶらあげ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月30日の日本の昔話

あぶらあげ

あぶらあげ

 むかし江戸に、おいしいとひょうばんの、あぶらあげ屋がありました。
 ある日、このみせにスラリとした、身なりのいい、キツネ目のさむらいがあらわれ、主人にたのみました。
「百文(三千円ほど)ほどいただきたい」
 主人が、百文ぶんのあぶらあげをおさらにのせて、さしだすと、さむらいはみせさきにこしをかけて、ペロリとたいらげ、
「うん、これはひょうばんどおりだ」
 まんぞくそうに、かえっていきました。
 それからいく日かたつと、このさむらいがふたたびやってきて、また、百文ぶんのあぶらあげを、ペロリとたいらげ、
「わたしは、日本じゅうのあぶらあげをたべているが、ここのあぶらあげこそ天下一品。なかまにもしらせよう」
と、ほめあげて、かえっていきました。
「おい、きいたか。あのおかたは、いなりさんのつかいのキツネにちがいないぞ。だいじにすれば、わが家は、ますますさかえる」
 主人はおかみさんにいって、ホクホクしていました。
 いく日かたつと、またまた、れいのさむらいがやってきて、百文ぶんのあぶらあげを、ペロリとたいらげました。
 けれど、ためいきをついたりして、これまでとは、ようすがちがいます。
「なにか、しんぱいごとでもあるのですか?」
 主人がたずねると、
「じつは、きゅうに京へのぼらねばならなくなったのだが、旅費(りょひ)がたらんのだ」
「お客さまは、大のお得意さま。旅費でしたら、わたしどもにおまかせください。で、いかほど、ごいりようなのです?」
「十五両(百万円ほど)もあればよい」
(高いなあ。・・・だが、わが家がはんえいするのなら、安いものだ)
 主人はよろこんで、お金をわたしました。
「五日たてばもどる。それまで、これをあずけておく」
 さむらいは、キツネのたからものの、『宝珠の玉(ほうしゅのたま)』でも入っていそうなつつみをさしだし、たちさっていきました。
「きいたか。五日で京へいってもどるとは、人間わざではない。きっと、いなり神社の大もとの『伏見(ふしみ)いなり』へいかれたのだ」
「そうでしょうとも。これで、ごりやくはまちがいありませんね」
 主人もおかみさんも、すっかりその気になりました。
 ところが、さむらいは十日たっても、百日たっても、かえってきません。
「これはおかしい。どうもへんだ」
と、あずかっていたつつみをあけたところ、ただの石ころが、ゴロンとでてきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → クレーンの日
きょうの誕生花 → はげいとう
きょうの誕生日 → 1966年 東山紀之(俳優, 歌手)

きょうの新作昔話 → 信濃の浦島太郎
きょうの日本昔話 → あぶらあげ
きょうの世界昔話 → ふしぎな胡弓
きょうの日本民話 → 乙姫さまのくれたネコ
きょうのイソップ童話 → 波をかぞえる人
きょうの江戸小話 → ぱたぱたとふうふう

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月29日の日本の昔話 ネズミのすもう

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月29日の日本の昔話

ネズミのすもう

ネズミのすもう

♪音声配信

むかしむかし、あるところに、まずしいけれど、心のやさしいおじいさんとおばあさんがいました。
 ある日のこと、おじいさんがいつものように山へ行くと、
「ハッケヨイ! ノコッタ、ノコッタ」
と、いう声がきこえてきます。
「はて、なんの声だろう?」
 おじいさんがのぞいてみると、二匹のネズミがすもうをとっていました。
「あれは、うちのやせネズミと、金もちの家のふとっちょネズミだ」
 おじいさんの家にすんでいるやせネズミは、力がないため、なんどやっても、ふとっちょネズミにまけてしまいます。
 おじいさんは家にかえると、おばあさんにネズミのすもう話をしました。
「あれじゃあ、かわいそうだ。なんとかして、うちのやせネズミに、かたせてやりたいねえ」
 するとおばあさんが、
「それじゃあ、うちのやせネズミに、おもちを食べさせてやりましょうよ。きっと、力がつきますよ」
「そうじゃ、それがええ」
 おじいさんとおばあさんは、さっそくおもちをついて、やせネズミのすんでいる穴に、ころがしてやりました。
 さて次の日、やせネズミとふとっちょネズミは、またすもうをとりました。
 でも、今日はおじいさんの家のやせネズミが、なんどやっても、すもうにかつのです。
 ふしぎに思ったふとっちょネズミが、やせネズミにたずねました。
「やせネズミくん、どうしてきゅうに、つよくなったんだい?」
 やせネズミは、とくいそうにいいました。
「えへへへっ、じつはね。きのう、おじいさんとおばあさんがおもちをくれたんだ。だから力がつよくなったんだよ」
「いいなあ、ぼくの家はお金持ちだけど、ケチだから、おもちをついてくれないんだ」
「それなら家へおいでよ。おじいさんはきっと、こんやもおもちをついてくれるから、きみにもはんぶん、わけてあげるよ」
「ほんとうに! うれしいなあ」
 それをきいたおじいさんは、二匹分のおもちをネズミの穴に入れてやり、おばあさんは二匹のネズミに小さなまわしをぬってあげました。
 家にかえった二匹のネズミは、おもちとまわしを見つけて大よろこびです。
 よろこんだふとっちょネズミは、おみやげにもってきた小判を、おじいさんとおばあさんにあげたので、おじいさんとおばあさんはお金もちになりました。
 まずしくても、やさしい心をもって、人にしんせつにしてあげれば、いつか、きっと、しあわせがやってきます。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 招き猫の日
きょうの誕生花 → チトニア(メキシコひまわり)
きょうの誕生日 → 1980年 榎本加奈子(俳優)

きょうの新作昔話 → 孝行滝(こうこうだき)
きょうの日本昔話 → ネズミのすもう
きょうの世界昔話 → 百匹のヒツジ
きょうの日本民話 → キジムナーのしかえし
きょうのイソップ童話 → ネズミをこわがるライオンとキツネ
きょうの江戸小話 → 鉄砲とさいふ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月28日の日本の昔話 サル地蔵

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月28日の日本の昔話

サル地蔵

サル地蔵

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
「おばあさん、弁当さ、つくっておくれ」
と、おじいさんは、お弁当を持って山の畑へ出かけていきました。
 ここはだんだん畑で、よく、山ザルがきていたずらをするのです。
 おまけにその日は、お弁当のにおいがするので、さっそくサルたちがやってきました。
「あれ、木の枝にごちそうがあるベ」
と、みんなで、おじいさんのお弁当を食ベてしまいました。
 でも、おじいさんは知らん顔です。
 畑のまん中に、ジッとすわっていると、
「あんれまあ、こんなとこに、おじぞうさまがいるベ」
「こんなとこさ、置いてはもったいじぞう(→詳細)ないから、あっちの山のお堂さ、運んでいくべ」
 サルたちがよってたかって、おじいさんをかつぎあげると、
♪えっさらほいほい ぬらすなホイ。
♪サルのおへそが 流れても。
♪おじぞうさんを 流すな ホイ。
と、歌を歌って川を渡りました。
(クックククク。おかしいけれど、だまっていよう)
 おじいさんが、わらうのをガマンしていると、サルたちは山のお堂へおじいさんをかつぎこみ、
「なんまいだぶ、おじぞうさん」
と、たくさんのおさい銭をあげて、どこかへいってしまいました。
「アハハ、これはゆかい」
と、おじいさんは笑いながらお金を集めて、お堂を出ました。
「そうだ、おばあさんに、なにか買うベ」
 おじいさんは町へ寄って、おばあさんの着物を買って帰りました。
「おやまあ」
と、おばあさんは大喜び。
 ところが、それを見たとなりのおばあさんがうらやましがって、
「うちのおじいさんもいかせるべ」
と、お弁当をつくりました。
 となりのおじいさんが、山のだんだん畑へいって、木の枝にお弁当をぶらさげておくと、
「きょうも、ごちそうがあるベ」
 サルたちがやってきて、パクパクパク。
「うん、うまくいったベ」
 となりのおじいさんは、大急ぎでおじぞうさまのまねをしました。
 すると、
「おや、またおじぞうさまが、こんなとこにいるベ。もったいなや、もったいなや」
 サルたちが、おじいさんをかつぎあげて、
♪えっさらほいほい ぬらすなホイ。
♪サルのおへそが 流れても。
♪おじぞうさんを 流すな ホイ。
と、歌って川を渡りはじめたのです。
 これを聞くと、となりのおじいさんは、ガマンできずに吹き出してしまいました。
 すると、サルたちがビックリ。
「ウキキーッ、おじぞうさんのおばけだべ!」
 おじいさんを川の中へほうり出して、逃げ出しました。
「たっ、助けてくれえ!」
 さて、そのころおばあさんは、
「おじいさんが新しい着物さ買ってくるベ」
と、いま着ているふるい着物をかまどで焼いてしまったのです。
 そこへ、やっと川からはいあがったおじいさんが、ずぶぬれになって帰ってきました。
「ああ、ひどいめにあった。かわかすベ」
と、着物をぬぐと、
「新しい着物さ、どうした?」
と、おばあさんも裸なので、ビックリしたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → パソコン記念日
きょうの誕生花 → しおん
きょうの誕生日 → 1982年 吹石一恵(俳優)

きょうの新作昔話 → 娘の寿命
きょうの日本昔話 → サル地蔵
きょうの世界昔話 → コウモリのはねをつけた小オニ
きょうの日本民話 → アジ船と口さけばば
きょうのイソップ童話 → カナリアとコウモリ
きょうの江戸小話 → 名医

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月27日の日本の昔話 大仏の目玉

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月27日の日本の昔話

大仏の目玉

大仏の目玉

「あれ? どこだ? どこにいったんだ?」
 ここは、むかしむかしの、奈良の大仏がある東大寺です。
 ある日、大仏さまの目玉が抜け落ちて、どこヘいったかわかりません。
 お坊さんたちは、さっそく京都や大阪から大仏作りの親方たちをよんできて、
「大仏さまの目玉を入れかえるには、どれほどのお金がかかる?」
と、値を見つもらせました。
 すると、親方たちは、
「そうですな、千五百両(→1億円ほど)はかかります」
と、いうのです。
 親方たちの考えでは、まず下で大きな目玉をこしらえ、目玉が出来たら足場を組んで、大仏さまの目にはめようというものです。
 お坊さんたちは、
「それは高すぎる、千両にまけろ」
と、いいますが、親方たちは、
「それでは赤字です。こちらも商売ですから」
と、いいます。
「まけろ」
「まけられぬ」
「まけろ」
「まけられぬ」
 そこへ、江戸からきた見物の一人が顔を出しました。
「わしなら、二百両(→千四百万円ほど)で、直しましょう」
 それを聞いた親方たちは、
「馬鹿にもほどがある。なんでこれが、二百両で直せるものか」
と、笑いました。
 ところが、江戸の男はこう考えたのです。
(目玉が抜け落ちて見つからんとすりゃあ、大仏さまの体の中ヘ落ちたにちがいない。それを拾って、はめ直せばいいだけだ)
 お坊さんたちはお金がないので、江戸の男に頼む事にしました。
 江戸の男が目玉の穴から中に入って探すと、やっぱり目玉がありました。
 さっそくかついで上にあげ、大仏さまの目に、ピタッとはめました。
 お坊さんや親方たちは、それを見て言いました。
「あいつ、目玉をはめたはいいが、自分はどこから出てくるつもりだ。出口はないはずだが」
 するとなんと、江戸の男は大仏さまの鼻の穴から出てきたのです。
 みんなは感心して、
「ほほう、目から鼻へ抜けおったわい」
と、江戸の男をほめたたえました。
 それからです。
 かしこい人のことを『目から鼻へ抜ける』と、言うようになったのは。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 女性ドライバーの日
きょうの誕生花 → コスモス
きょうの誕生日 → 1970年 羽生善治(将棋棋士)

きょうの新作昔話 → 招き猫になったネコ
きょうの日本昔話 → 大仏の目玉
きょうの世界昔話 → 花のおじいさん
きょうの日本民話 → 生きている竜
きょうのイソップ童話 → ハトとカラス
きょうの江戸小話 → 最後のうそ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月26日の日本の昔話 キセルおさめ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月26日の日本の昔話

キセルおさめ

キセルおさめ

 むかし、江戸いちばんの大きなキセル(→詳細)屋へ、お城から使いの者がとんできました。
「キセルを三千本。あすの朝までに、かならずおさめるように」
と、いう注文です。
 さあ、たいへん。
 いくら大きなキセル屋でも、一日で三千本をおさめるのは、よういなことではありません。
 家じゅうの者はもちろん、しろうとまでやとって手つだわせ、夜も寝ずに、なんとか、らお(キセルの火皿と吸口とを接続する竹管のこと)三千本に、がん首、吸い口を取り付けて、ホッとしたとき、
 コケコッコー!
「それ、朝が来たぞ!」
 主人は、番頭(ばんとう→詳細)たちに荷物をせおわせ、いそいでお城へおさめに行きました。
が、とちゅうで、
「しまった!」
 ふと気がついて、まっ青になりました。
「キセル三千本はできたが、らおのふしをぬいてなかったわい!」
 らおは、竹でできています。
 竹のふしをぬかなくては、息がとおりませんから、タバコがすえるわけがありません。
「すえぬキセルをおさめたのではな。といって、やくそくどおりにおさめねば、こっちの首がとぶかもしれぬ。・・・ええい、ままよ。そのときは、そのときのこと」
 キセル屋はかくごをきめて、三千本のつまったキセルを、そのままお城にとどけました。
 お城につくと、役人が受けとりに出てきました。
 その顔を見て、主人はドキッとしました。
 役人たちの中でも、この役人は、こまかいことまでよくしらベる、商人いじめのうるさい役人です。
 キセル屋は、あぶら汗をながし、ヒヤヒヤしながら見ていました。
 役人は、まずキセルのかずをじぶんでしらベて、
「よし。三千本、まちがいなし」
 こんどは、らおに息もれがないかと、わざわざ一本一本とりあげて、がん首ヘおやゆびをおしあて、プッとふいてみては、
「よし」
 ふいてみては、
「よし」
と、三千本を、みんなじぶんでしらべました。
 そして、
「よくぞ、まにあわせた。キセル三千本、たしかに受けとりもうした」
と、いって、ひっこみました。
 キセル屋は、ひや汗をふき、走るように家にかえってきたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ワープロの日
きょうの誕生花 → きくいも
きょうの誕生日 → 1957年 天童よしみ(歌手)

きょうの新作昔話 → クッカルとカラス
きょうの日本昔話 → キセルおさめ
きょうの世界昔話 → ちいさなヘーベルマン
きょうの日本民話 → 一休さんの、サルの恩返し
きょうのイソップ童話 → ヘラクレスとアテネ
きょうの江戸小話 → 無筆のねがい書

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月25日の日本の昔話 人の嫁になったネコ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月25日の日本の昔話

人のよめになったネコ

人の嫁になったネコ

 むかしむかし、あるところに、一人のお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 毎日、田畑へ出て一生懸命に働きますが、ちっとも暮らしが楽になりません。
 そのため、もう四十才を過ぎているのに、嫁さえもらう事が出来ないのです。
 さて、そのお百姓の隣に住んでいるのは村一番の長者(ちょうじゃ)で、倉(くら→食物を貯蔵する倉庫)には米俵(こめだわら)が山のようにつんでありました。
 いくら贅沢をしても困らないのに、この長者はひどいケチで、家で飼(か)っていた一匹のメスネコにさえ、
「近ごろは、めしを食いすぎる」
と、言って、家から放り出してしまったのです。
 お百姓さんが寝ていると、夜中に家の外でネコの鳴き声がします。
 気になって戸を開けてみたら、長者の家のネコが寒そうにふるえているではありませんか。
「どうした? こんなところにいると、こごえ死んでしまうぞ」
 お百姓さんはネコをかかえて家に入れると、汚れた体をふいてやり、自分のふとんの中へ入れてやりました。
 次の日、長者の家へネコを届けに行くと、
「そいつは、もうわたしの家のネコでない」
と、言うので、お百姓さんは仕方なく、自分で飼う事にしたのです。
 お百姓さんは何でもネコと分けあって食べ、まるで自分の子どものように可愛がりました。
 嫁のいないお百姓さんは、ある晩、ネコをひざにのせながら独り言を言います。
「もしお前が、人間だったらなあ。おれが畑へ出ている間に、家で麦の粉をひいてくれたら、どんなに暮らしが楽になるか」
 するとネコは、うれしそうに、
「ニャアー」
と、鳴きました。
「おや? お前は、わしの言葉がわかるのか? ・・・いや、そんなはずはない」
 お百姓さんは、いつものようにネコをふところに抱いて寝ました。
 さて、次の日の夕方、お百姓さんが畑からもどってくると、明かりもないのに家の中からゴロゴロと石うすをひく音が聞こえてきます。
 不思議に思って中をのぞいてみたら、なんとネコが石うすで麦をひいているではありませんか。
「お前、本当にわしの言うことがわかるのか? いや、ありがとう」
 お百姓さんは喜んで、その粉で団子を作り、ネコと一緒に食べました。
 それからというもの、お百姓さんのいない時はいつもネコが石うすをひいてくれるので、お百姓さんはとても助かりました。
 ある晩、お百姓さんがいろりにあたっていると、そばにいたネコが突然、人間の言葉をしゃべったのです。
「おかげさまで、とても幸せな毎日が送れます。でも、このままでは石うすしかひく事が出来ません。この上は人間になって、あなたのために、もっとつくしたいと思います」
 お百姓さんは、やさしくネコの顔を見て言いました。
「ありがとう。でも、粉をひいてくれるだけで十分だ。お前がいるおかげで、ちっともさみしくない。どうか、わしのところにずっといておくれ」
 するとネコは、涙を流しながら言いました。
「わたしは、なんて幸せ者でしょう。長者さんはお金持ちでも、わたしをちっとも可愛がってはくれませんでした。それなのにあなたは。・・・お願いです。わたしをお伊勢参り(いせまいり)に行かせてください。必ず人間になってもどってきますから」
 それを聞いてお百姓さんは、このネコがますます可愛くなりました。
「よし、わかった。行っておいで」
 お百姓さんがネコのために、なけなしのお金を袋(ふくろ)に入れて首に結びつけてやると、ネコは喜んで家を出ていきました。
 それからしばらくして、ネコは無事に、お伊勢さんへ着く事が出来ました。
 ネコは神さまのいる社(やしろ)の前へ行き、手を合わせていいました。
「神さま、どうかわたしを人間にしてください。わたしを可愛がってくれる人のために、もっともっとつくしてあげたいのです」
 すると、どうでしょう。
 ネコはいつのまにか、美しい人間の娘になっていたのです。
 人間になったネコは大喜びで、お百姓さんの待つ家へもどっていきました。
 お百姓さんが持たせてくれた金のおかげで、安い宿屋(やどや)に泊まる事も出来ました。
 お百姓さんは美しい娘を見て、これがあのネコとはどうしても思えません。
「お前、本当に人間になれたのか?」
「はい、神さまのおかげで、すっかり人間に変わりました。もう二度と、ネコにもどることはありません」
 そこでお百姓さんは、人間になったネコと夫婦になりました。
 きれいでやさしいネコの嫁は、家の仕事から畑仕事まで、人間以上に働きます。
 おかげでお百姓さんは、となりの長者をしのぐ長者となり、いつまでも幸せに暮らしたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 10円カレーの日
きょうの誕生花 → たで
きょうの誕生日 → 1981年 MEGUMI(タレント)

きょうの新作昔話 → 蟹ヶ淵(かにがふち)
きょうの日本昔話 → 人のよめになったネコ
きょうの世界昔話 → 翼をもらった月
きょうの日本民話 → クジラ長者
きょうのイソップ童話 → 鈴をつけたイヌ
きょうの江戸小話 → 方角

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月24日の日本の昔話 ウリぬすびと

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月24日の日本の昔話

ウリぬすびと

ウリぬすびと

 むかしむかし、「かじゃどん」という、ウリづくりの名人がおりました。
 ことしもまた、たいへんよくできて、どれも大きく形もいいし、色つやも上じょうです。
 おまけに、そのおいしさときたら、ほっペたもおちそうなほどです。
「いやあ、これはありがたい」
と、大よろこびしていましたが、さあたいヘん。
 だれかが、まい夜まい夜、かじゃどんの畑にしのびこんで、だいじなウリをぬすんでいきます。
 それも、えらびにえらんで、よくうれた大きなやつばかりを。
「さても、さても、にくいやつじゃ。せっかくのウリを、こうつぎつぎと、とられてはかなわん」
と、見張り小屋をつくって見張っていましたが、あくる朝にしらベてみると、また、ぬすまれています。
 キツネやタヌキのしわざではありません。
「これは、たしかに人の足あとじゃ。なんとか、ひとくふうせにゃならん。えーと、えーと」
 かじゃどんは、あれやこれやと考えたあげく、
「おお、そうじゃ。あいてが人ならば、それがよかろう」
 ニコッと笑って、さっそく仕事にとりかかりました。
 まず、じぶんのせたけほどもある、大きなわら人形をこしらえて、それに服をきせ、あたまにかさをかぶせると、ウリ畑へかついでいって、たてました。
「うん、これでよし。かかしどの、畑の番をたのみますぞ」
と、かかしにたのんで、帰っていきました。
 これを見た村のしゅうは、
「スズメやカラスじゃあるまいし。人間がぬすむというに、かかしに番をさせてなんになろう」
「ウリぬすっとがやってきても、ポカンと見ておるのが、せきの山というもんじゃ」
「かじゃどんは、ちえ者と思うたが、むだなことをするもんじゃ。あはは」
「あはは」
と、あっちでもこっちでも大わらい。
 ところが、かじゃどんのほうは、
「ありがたや。村のしゅうがわろうてくれたおかげで、こんやはうまくいくぞ」
と、ホクホク顔です。
 そうこうするうちに、夜になりました。
 夜もだんだんふけてきて、空には星ひとつありません。
 どろぼうには、もってこいの夜です。
 思ったとおり、夜中になると、黒いかげがあらわれました。
 ソロリ、ソロリと、四つんばいで、かじゃどんの畑の中にしのびこむと、
「なるほど、これは村のしゅうのいうとおりじゃ。たしか、かかしのたっておるこのあたりが、とくベつウリがようなっておる。なんとも、よいにおいじゃ、うまいにおいじゃ。ウヒヒヒヒッ」
と、手さぐりで一つとって味見していると、いきなり、せなかをポカリ!
「なっ、なんじゃあ?」
 あたりをキョロキョロ見ていると、こんどはおしりをポカリ!
 たたかれた後ろを見てみると、なんとかかしが動いています。
 そして、そのかかしが、いきなりゲラゲラと笑い出しました。
「お、お、おばけっ!」
 どろぼうは、あわてて逃げだしましたが、ウリにつまずいて、スッテンコロリン。
「やい。おらが畑のウリぬすっとめ!」
 かかしは、あっというまにどろぼうをつかまえました。
 そしてかかしは大声で、
「おーい、村のしゅう。つかまえたぞー!」
 わめきたてると、あっちからもこっちからも、村のしゅうが走ってきました。
「おお、かじゃどん。ウリぬすっとをつかまえたか」
「なあに、かかしどんがつかまえたのじゃ」
 いわれて、村のしゅうはビックリ。
「なるほど、おまえは、かかしのかじゃどんじゃ」
「そうじゃ、暗うなってからは、わしが、かかしになっておったのじゃ。アハハハハッ」
「アハハハハッ」
 かじゃどんも村のしゅうも、大笑いしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 清掃の日
きょうの誕生花 → はぎ
きょうの誕生日 → 1946年 田淵幸一 (野球)

きょうの新作昔話 → 鬼七兵衛(おにしちべえ)の大力(たいりき)
きょうの日本昔話 → ウリぬすびと
きょうの世界昔話 → にじのお城
きょうの日本民話 → 七色の灯光
きょうのイソップ童話 → 2羽のオンドリとワシ
きょうの江戸小話 → おけちみゃくのしるし

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月23日の日本の昔話 ネコの茶碗

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月23日の日本の昔話

ネコの茶碗

ネコの茶碗

 むかし、峠(とうげ)で茶店をひらいているおばあさんが、一匹のネコをかっていました。
 もともと野良(のら)ネコだったのが、いつのまにか住みついたものなので、どう見ても由緒(ゆいしょ)あるネコとは思えません。
 ところが、ネコのごはんを入れる茶わんときたら、なんともめずらしい焼き物で、すこし目ききの人なら、のどから手が出るほどほしくなる品物でした。
 おばあさんは、そんな茶わんを平気で店先に置き、まるで気にもとめないようすです。
 ある時、茶店で休んでいた金持ちのだんなが、それを見ておどろきました。
(ネコに小判(こばん)とはよく言ったものだ。このばあさん、茶わんの値打(ねう)ちがまるでわかっていない)
 そこで、なんとかおばあさんをだまして、ネコの茶わんを手に入れたいと考えました。
 だんなはネコのそばへ行き、その頭をなでながら、
「なんてかわいいネコだ。じつにすばらしい」
「そうですか。一日中ブラブラしているか、食べるだけで、なんの役にも立たんネコですよ」
「いいや、なかなかに、りこうそうな顔をしたネコだ。それに毛のつやもいい。なんならわしにゆずってくれないか?」
「かわいがってくれるなら、ゆずってもいいですよ」
 おばあさんの言葉に、だんなはしめたと思いました。
 ネコといっしょに、あの茶わんもつけてもらえばいいのです。
「そんなら、いくらでゆずってくれる」
「そうですね。ネコのことですから高くも言えませんが、一両でゆずりましょう」
「はっ? 一両(約七万円)も!」
(こんなきたないネコに一両も出せとは、とんだばあさんだ)
と、思いましたが、あの茶わんは、とても一両や二両で買える品物(しなもの)ではありません。
「わかった。一両出そう」
 だんなは、ふところから財布(さいふ)を出して、一両小判をおばあさんに渡しました。
「ところで、ネコをもらったついでに、この茶わんももらっていいかな。新しい茶わんより、食べなれた茶わんのほうが、ネコもよろこぶと思うので」
 そのとたん、おばあさんがピシャリと言いました。
「いいえ、茶わんをつけるわけにはいきません。これは、わしの大事な宝物ですから!」
(ちぇっ、このばあさん、茶わんの値打ちをちゃんと知っていやがる)
 だんなはくやしくなって、思わず声をはりあげました。
「大事な宝物なら、なんでネコの茶わんなんかにするんだ!」
 ところが、おばあさんも負けてはいません。
「なにに使おうと、わしの勝手でしょうが! さあ、ネコを持って、とっとと帰っておくれ。この茶わんは、いくら金をつまれたってゆずれませんからね!」
 だんなはしかたなく、ネコを抱いて店を出て行きました。
 でも、もともとネコの好きでないだんなは、このきたないネコを見ていると、だんだん腹がたってきて、殺してやろうかとも思いましたが、でも、ネコを殺したところで、一両がもどってくるわけではありません。
「おまえなんか、どこへでも行け!」
 だんなは、とうげの途中でネコを投げ捨てました。
 ネコはクルリと回転して着地すると、そのまま飛ぶように茶店へともどっていきました。
「よし、よし。ようもどってきたな」
 おばあさんはネコを抱きあげると、何度も頭をなでてやり、
「おまえのおかげでまたもうかったよ。これで二十両目だね。ヒッヒッヒッヒッヒッヒッ」
 おばあさんは、この手で客を次つぎとだましては、どっさり金をためこんだそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → テニスの日
きょうの誕生花 → ひよどりばな
きょうの誕生日 → 1969年 鈴木杏樹(俳優)

きょうの新作昔話 → 男神山(おがみやま)と女神山(めがみやま)
きょうの日本昔話 → ネコの茶碗
きょうの世界昔話 → ものしり博士
きょうの日本民話 → 山おくのふしぎな家
きょうのイソップ童話 → 旅人とたきぎの束
きょうの江戸小話 → 大黒さまのちえ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月22日の日本の昔話 ノミの宿

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月22日の日本の昔話

ノミの宿

ノミの宿

 むかしむかしの、ある夏の日の事です。
 村の佐助(さすけ)じいさんは用があって、旅の途中で宿(やど)に泊まりました。
 ところが、この宿屋にはノミがたくさんいて、とてもねむることは出来ません。
(やれやれ、帰りもまた、ここで泊まらにゃならんが、こんな事ではどうにもならん。何とかせにゃ)
 次の朝、佐助じいさんは朝めしを食ベるとそうそうに旅仕度をして、店先にいた宿の女主人に言いました。
「ばあさんや。お前さんの家では、なんとももったいない事をしとるのう」
 するとおばあさんは、不思議そうにたずねました。
「それはまた、何の事で?」
「いや、ほかでもないが、わしの村ではな、薬屋がノミを買い集めておるわ。高値でのう。それなのにお前さんのところでは、こんなにノミがおるのに、なんでお売りなさらんのじゃ」
「お客さま。ノミが薬になりますかいな?」
「ああ、なるとも、なるとも」
「いったい、何に効きますのじゃ?」
「痛み、切りきず、ふき出もの、やけど、鼻づまり。何でも効くぞ」
「それではお客さま。ぜひ、家のノミも買うてくだされまいか?」
「ああ、いいともいいとも。わしは、あと三日たったら、またお前さんの所で泊めてもらうで、それまでに精を出して、たんと捕まえておきなされ。わしの村ヘ持っていって、売ってしんぜよう」
 そういって、佐助じいさんは宿を出ました。
 さて、それから三日後。
 佐助じいさんがこの宿にきて泊まると、ノミは一匹もいません。
 おばあさんがよほど精を出して取ったらしく、お陰で、ぐっすりとねむることが出来ました。
 あくる朝、佐助じいさんが宿を出ようとすると、
「旦那さま、旦那さま」
「何か、ご用かね?」
「あの・・・、ノミをたんまり捕まえておきましたで。ほれ、このとおり。どうぞ、これを売ってきてくだされ」
と、紙袋を差し出しました。
「どれどれ。おおっ、これはお見事。これだけの数を、よう、お取りなされた」
 佐助じいさんは感心したようにいうと、袋をていねいに宿のおばあさんに返して、
「この前、言うのを忘れておりましたが、ノミは二十匹ずつ、ちゃんと串にさしておいてくだされ。一串、二串と勘定せにゃ、とても数えられませんのでな。近いうちにまたきますで、串をこしらえて、ちゃんとさしておいてくだされ。頼みましたぞ。じゃあ、おおきに、お世話になりましたな」
 そういうて佐助じいさんは、とっとと宿を出て行きました。
 むろん、佐助じいさんがこの宿に来ることはありませんでしたが、ノミのいなくなったこの宿は、それからとても繁盛したそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際ビーチクリーンアップデー
きょうの誕生花 → せんにちこう
きょうの誕生日 → 1983年 今井絵理子(歌手)

きょうの新作昔話 → 水の中に見える妻
きょうの日本昔話 → ノミの宿
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じ込められた話2
きょうの日本民話 → ガンの悲しみ
きょうのイソップ童話 → 乳しぼりの女
きょうの江戸小話 → なぎなたっ屁

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月21日の日本の昔話 おんぶおばけ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月21日の日本の昔話

おんぶおばけ

おんぶおばけ

 むかしむかし、とてもおくびょうな男が山道を歩いていると、どこからともなく、こわーい声がします。
「・・・おんぶしてくれぇ、・・・おんぶしてくれぇ」
「ひっ、ひゃあー! おばけだあっー!」
 逃げても逃げても、お化けの声はどこまでも追いかけてきます。
「・・・おんぶしてくれぇ、・・・歩けなくて、・・・困ってるんだ。・・・たのむ」
「・・・・・・」
 その声に、男はかわいそうになりました。
「わかった、おんぶしたきゃ、おぶされ」
 すると、男の背中にお化けが、ズシン! と、のっかりました。
「おっ、おもてえ! まあ、しかたない。しっかりつかまったか? いくぞ!」
 男は目をつぶって、いちもくさんに帰りました。
 なんとか家につきましたが、背中には重たいものが乗っかかったままです。
 男はおそるおそる背中のものを下ろしてみると、それはなんと、小判がぎっしり詰まった大きなつぼでした。
 おくびょうだけど、心やさしい男は、大金持ちになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ファッションショーの日
きょうの誕生花 → くず
きょうの誕生日 → 1950年 松田優作(俳優)

きょうの新作昔話 → 犬が寒がらない理由
きょうの日本昔話 → おんぶおばけ
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じこめられた話
きょうの日本民話 → 鯛女房
きょうのイソップ童話 → メンデレス川の岸のキツネたち
きょうの江戸小話 → ごゆっくり

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月20日の日本の昔話 かなシイ木と、うれシイ木

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月20日の日本の昔話

かなシイ木と、うれシイ木

かなシイ木と、うれシイ木

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 ある年のお正月のこと。
 きっちょむさんは、村の人たちといっしょに、山ヘたきぎをとりにいきました。
 その山には、しいの木(ブナ科の常緑高木)が、たくさんはえていました。
 村の人たちは、せっせと木のえだをおとし、それをたばねて、たきぎをつくっています。
 ところがきっちょむさんは、しらん顔です。
 そばの大きな木のねっこにこしかけて、スパー、スパーと、のんびりタバコをふかしていました。
 そのうちに、村の人たちはたくさんたきぎをとったので、
「さあ、そろそろ帰ろうか?」
「そうだな。これくらいあればいいだろう」
と、とったたきぎをしっかりしばって、せなかにせおって帰ろうとしました。
 それをみていたきっちよむさんは、どっこいしょとこしをあげて、
「おいおい、おまえさんたちは、そんなものをかついで帰る気かい?」
と、声をかけました。
 村の人はおどろいて、
「えっ? そんなものって、どういうことだ?」
「だって、そのたきぎは、しいの木ばかりじゃないか」
「そうだよ。それがいけないのか?」
 村の人は、ふしぎそうにたずねました。
 するときっちょむさんは、どうしようもないように、
「いけないのなんのって、しいの木は『かなしい』といって、とってもえんぎがわるい木だもの。おまけに、いまはお正月じゃないか。こんなめでたいときに、なんだって、『かなしい』木をたくさん家へもって帰るんだろうね」
「へえ、それはしらなかった。なるほど、めでたいお正月に『かなしい』木なんぞもって帰ったら、女房や子どもがかわいそうだな」
 村の人たちは、顔をみあわせました。
 せっかくつくったたきぎが、『かなしい』ではしかたがありません。
 みんなはせなかのたきぎを、ポンポンとそこらへほうりだして、またべつの木を切りはじめました。
「へっへっへ。しめしめ」
 きっちょむさんは、みんながほうりだしたたきぎをあつめて、山ほどせなかにせおうと、
「それじゃ、みなさん。お先に帰らしてもらいますよ」
と、ひとりでさっさと帰ろうとしました。
 村の人はビックリして、
「おいおい、きっちょむさん。おまえ、そのたきぎは『かなしい』といって、たいへんえんぎがわるいって、いったじゃないか」
「そうだよ。そんなもんをかついで、ひとりでどこへいくんだ」
と、口ぐちにたずねました。
 すると、きっちょむさんはすました顔で、
「いやいや、この木はな、少しちがうんだよ。これは『うれしい』といってな、とってもえんぎがいいものなんだ。まして、いまはお正月じゃないか。こんなえんぎのいいことがあるもんか」
と、いって、さっさと帰ってしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 空の日
きょうの誕生花 → ひがんばな
きょうの誕生日 → 1977年 安室奈美恵(歌手)

きょうの新作昔話 → 竹から生まれた女の子
きょうの日本昔話 → かなシイ木と、うれシイ木
きょうの世界昔話 → チワンの錦
きょうの日本民話 → アワの長者
きょうのイソップ童話 → オオカミとイヌ
きょうの江戸小話 → 罪ほろぼし

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月19日の日本の昔話 仏さまに失礼

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月19日の日本の昔話

仏さまに失礼

仏さまに失礼

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん→詳細)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 とんち名人の一休さんには、さすがの和尚(おしょう→詳細)さんもかないません。
 けれど、
「いっぺんでもいいから、一休をへこませてやりたいもんじゃ」
と、つねづね思っていました。
そこである晩、
「これ、一休や。わしはうっかりしておって、本堂のローソクを消すのを忘れてしもうた。火を出しては仏さまに申し訳ない。すまんが消してきておくれ」
 休さんは大急ぎで本堂へ行きましたが、ローソクの台が高くて、手が届きません。
 さすがに困ってしまい、しょうがないので一休さんは、飛び上がって息で吹き消したのです。
 部屋へもどってきた一休さんを見て、和尚さんは聞きました。
「おお、ご苦労じゃったな。じゃが、あんな高い所の火を、どうやって消したのじゃ?」
「はい、飛び上がって吹き消しました」
 その言葉に、和尚さんはニヤリと笑うと、
「馬鹿者! 仏さまに息を吹きかけるとは、なんと失礼な! もう二度とするでないぞ! わかったな!」
 初めて一休さんをしかった和尚さんは、してやったりと得意顔です。
 さて次の日、本堂でお経をあげていると、なんだか後ろの様子が変です。
 ふと、和尚さんがふり返ってみると、なんと一休さんが、お尻を向けて座っています。
「ふん。いくらとんち上手でも、やはり子どもじゃ。きのうしかられたので、すねておるんじゃな」
 和尚さんはそう思い、
「これ一休、お経をあげるときは、仏さまの方を向かんか、行儀が悪いぞ」
と、得意そうに注意をしましたが、
「和尚さま、仏さまのほうを向いてお経をあげては、息がかかります。それでは仏さまに失礼になります」
「・・・いや、これはやられたわい」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 苗字の日
きょうの誕生花 → つりふねそう
きょうの誕生日 → 1943年 小野寺昭(俳優)

きょうの新作昔話 → たきつぼの女神
きょうの日本昔話 → 仏さまに失礼
きょうの世界昔話 → カエルのおきさき
きょうの日本民話 → ひるごはんのただ食い
きょうのイソップ童話 → ランプ
きょうの江戸小話 → ウマのクソが三つ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月18日の日本の昔話 黒覆面と寺男

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月18日の日本の昔話

黒覆面と寺男

黒覆面と寺男

 むかしむかし、江戸の牛込(うしごめ)に、清浄寺(せいじょうじ)というお寺がありました。
 あるばん、寺の境内(けいだい)も、シーンとしずまったころに、あやしい影が一つ、二つ、三つと、寺の門を入ってきました。
 影は三つとも、黒い布で覆面をしています。
 ミシリ、ミシリ、ミシリ。
 本堂の廊下をしばらくわたって、住職(じゅうしょく)の部屋のまえまでくると、覆面どもは、スラリと刀をぬきました。
 部屋の中では、和尚(おしょう→詳細)がグッスリと寝こんでいます。
 覆面の三人はふすまをあけて中に入ると、天井からつりさげている、かや(ふとんごと天井からかぶせる、虫よけのアミ)のつり手を切りおとしました。
「うわあーっ!」
 おどろくおしょうを、かやごとグルグルまきにして、
「やい、おしょう。金のありかをいえ!」
「いわぬと、ひと思いに」
「あの世行きだぞ」
 和尚は、ブルブルふるえながら、
「こんな寺に、金などあろうはずはないわい」
 盗賊たちと和尚とのかけあいは、ひと声ごとにはげしくなっていきました。
 その声を、台所の近くで寝ていた、寺の下男(げなん→下働き)が聞きつけました。
 下男は起きると、和尚の部屋へ近づいていきました。
 そして、部屋の中ヘ片手を入れると、手まねきで「おいで、おいで」をしました。
 すると、三人のうちの親分らしいのが、そばヘよってきます。
 下男は小さな声で、
「おまえさんたち。和尚をせめたって、しゃベるもんでねえ。金のかくし場所は・・・」
と、じぶんの鼻の頭を指さします。
 親分もひくい声で、
「おまえが、知っとるというのか?」
 下男は、コクンとうなずきました。
 そこで三人の覆面は、和尚の部屋を出ると、くらい廊下を下男のあとからついていきました。
「おい、どこまでつれていくんだ」
「金銀は、すぐそこの観音堂(かんのんどう)の中の、さいせん箱の下にうめてあります」
 下男は三人を観音堂に案内すると、大きなカギをはずして中に入りました。
「それ、このさいせん箱じゃ。ちと重いが、こいつをどかして・・・」
 下男は盗賦たちといっしょになって、さいせん箱に手をかけましたが、
「どうもいかん。まっ暗では仕事ができん。どれ、ちょうちん(→詳細)をとってこよう」
 下男は観音堂を出ると、とびらにカギをかけました。
 そしてそのまま走りだすと、本堂の廊下にある鐘を、
 カン! カン! カン! カン!
 カン! カン! カン! カン!
と、力いっぱいにならしました。
 観音堂にとじ込められた盗賊どもは、頭の良い下男のきてんにより、そのままかけつけたお役人につかまりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → かいわれ大根の日
きょうの誕生花 → ほうせんか
きょうの誕生日 → 1961年 中井貴一(俳優)

きょうの新作昔話 → 桶屋の夢
きょうの日本昔話 → 黒覆面と寺男
きょうの世界昔話 → 寿命
きょうの日本民話 → ウシの恩返し
きょうのイソップ童話 → 北風と太陽
きょうの江戸小話 → 拾い屋

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月17日の日本の昔話 三年寝太郎

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月17日の日本の昔話

三年寝たろう

三年寝太郎

 むかしむかし、なまけ者の息子がいました。
 毎日ご飯を食べて、あとはグウグウ寝てばかり。
「寝てばかりいないで、少しは働いておくれよ」
 お母さんが頼んでも、知らんぷりです。
 息子が少しも働かないので、この家はとても貧乏でした。
 寝てばかりいるこの息子を、みんなは「寝太郎」と、よびました。
 ところがある日、寝太郎はガバッと起きあがると、お母さんにいいました。
「白い着物と、えぼし(→むかしのボウシ)を買っておくれ」
 寝てばかりの寝太郎が突然しゃべり出したので、ビックリしたお母さんはあわてて町へ行き、白い着物とえぼしを買ってきました。
 寝太郎は白い着物を着て、えぼしをかぶると、となりの長者(ちょうじゃ)のところへ出かけていきました。
 そして長者の家の広い庭に生えている、高いスギの木にスルスルと登ると、長者に低い声で言いました。
「これこれ、長者どん」
 木の上の白い着物の寝太郎を見て、長者はてっきり神さまだと思いました。
「へへっー。これは神さま」
 ペコペコと頭を下げる長者に、寝太郎は言いました。
「そうじゃ、わしは神さまじゃ、これから言うことを良く聞きなさい。この家の娘をとなりの寝太郎の嫁にするのじゃ、言うとおりにしないと、天バツが下るぞ!」
 長者は頭を地面にこすりつけて、あわてて返事をしました。
「ははーっ。神さまの言うとおりにいたします」
 やがて長者の娘はお金をどっさり持って、寝太郎の家へ嫁に来ました。
 それから、寝太郎と嫁さんとお母さんの三人は、長者の持ってきたお金で、幸せにくらしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → モノレール開業記念日
きょうの誕生花 → ふうせんかずら
きょうの誕生日 → 1978年 なかやまきんに君(芸人)

きょうの新作昔話 → 聞きちがい
きょうの日本昔話 → 三年寝たろう
きょうの世界昔話 → よわむしのドロボウ
きょうの日本民話 → カッパのばあさん
きょうのイソップ童話 → ライオンとウサギ
きょうの江戸小話 → 法話

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月16日の日本の昔話 海の水はなぜしょっぱい?

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月16日の日本の昔話

海の水はなぜしょっぱい?

海の水はなぜしょっぱい?

 むかしむかし、ある村に、貧乏な男がいました。
 ある日の晩、その男のところへ、白いひげのおじいさんがやってきました。
「道に迷ったので、一晩泊めてくだされ」
「ああ、それはお困りでしょう。いいですとも。さあどうぞ」
 男は親切に、おじいさんを泊めてやりました。
 次の日、おじいさんは男に小さな石うすをくれました。
「泊めてもらったお礼じゃよ。これは不思議な石うすでな、右へ回せば欲しい物が出て、左へ回せば止まるんじゃ。止めるまで出続けるから、気をつけるんじゃぞ」
 おじいさんはそう言って、出て行きました。
 男はためしに、石うすを回してみました。
「米出ろ、米出ろ」
 すると石うすから、まっ白い米がザクザクと出てきました。
 あわてて左へ回すと、米はピタリと止まります。
「へー、こいつはすごいや!」
 男は米や魚をたくさん出して、まわりの家にも分けてあげました。
 さて男のとなりに、欲張りな兄さんが住んでいました。
 兄さんは弟が急にお金持ちになったのを不思議に思い、こっそりのぞきにきました。
「そうか、なるほど。全ては、あの石うすのおかげだな。しめしめ」
 兄さんは夜になると弟の家に忍び込んで、石うすを盗みました。
 そして舟にのって、海へ逃げました。
「よしよし、ここまで来れば大丈夫だろう」
 兄さんは一生懸命に舟をこいだので、おなかがペコペコになりました。
 そこで、持ってきたおにぎりを取り出すと、
「そうだ、塩をつけて食べると、きっとうまいだろう。よーし、塩出ろ、塩出ろ」
と、石うすを回すと、石うすからは塩がザラザラとあふれ出して、たちまち舟いっぱいになりました。
「わっ、わっ、もう止まれ! 止まれ! 止まってくれー!」
 欲張り兄さんは、石うすから物を出す方法は見ていたのですが、止め方は見ていなかったのです。
 ついに舟は塩の重さに耐えられなくなり、そのまま海に沈んでしまいました。
 ところであの石うすは、今でもグルグルと回って、塩を出しています。
 海の水がしょっぱいのは、こういうわけなのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → マッチの日
きょうの誕生花 → おりづるらん
きょうの誕生日 → 1957年 東国原 英夫(宮崎県知事)

きょうの新作昔話 → おキツネのお産
きょうの日本昔話 → 海の水はなぜしょっぱい?
きょうの世界昔話 → コマとマリ
きょうの日本民話 → 夜泣きのあかり
きょうのイソップ童話 → ヘルメスと彫刻家
きょうの江戸小話 → 江戸見物

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月15日の日本の昔話 天の羽衣

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月15日の日本の昔話

天の羽衣

天の羽衣

♪音声配信

 むかしむかし、山のすその村に、いかとみという、狩人(かりゅうど)が住んでいました。
 よく晴れた、春の朝の事です。
 いかとみは、いつものように獲物を探しに山を登っていきました。
「やあ、いい朝だなあ」
 いかとみが空を見上げると、すみきった青空に白いかすみのような物が、いくえにもたなびいているのが見えました。
 その白い物は、不思議な事にフワフワと空を飛んで、近くの湖に降りていきました。
「あっ、あれは白鳥か? 八羽もいるぞ」
 いかとみは、急いで湖に近寄りました。
 すると湖で泳いでいるのは白鳥ではなく、今まで見た事もないほど美しい八人の乙女たちだったのです。
 いかとみが、ふとあたりを見回すと、少しはなれた松の枝に、まっ白い布がかけてあります。
「なんてきれいな着物だろう。これはきっと、天女(てんにょ)の着る羽衣(はごろも)にちがいない。持って帰って家宝(かほう)にしよう」
 いかとみは、そのうちの一枚をふところにしまいました。
 やがて水浴びをしていた天女たちは水からあがると、羽衣を身につけて空に舞い上がっていきました。
 でも、1人の天女だけが、その場に取り残されてしまいました。
 いかとみが彼女の羽衣を取ってしまったため、天に帰れないのです。
 しくしくと泣きくずれる天女の姿に心を痛めたいかとみは、天女に羽衣をさし出しました。
「まあ、うれしい。ありがとうございます」
 にっこりと微笑む天女に、すっかり心をうばわれたいかとみは、羽衣を返すのを止めました。
「この羽衣は返せません。それよりも、わたしの妻になってください」
 天女は何度も返して欲しいと頼みましたが、いかとみは返そうとしません。
 そこで仕方なく、天女はいかとみの妻になりました。
 そして、三年が過ぎました。
 いかとみと天女は仲良く暮らしていましたが、天女はいつも、天にある自分たちの世界に帰りたいと思っていました。
 ある日、いかとみが狩りに出かけたときの事、家の掃除をしていた天女は、天井裏に黒い紙づつみがあるのに気づきました。
 その紙づつみを開けてみますと、あの羽衣が入っていました。
「・・・どうしよう?」
 天女は、悩みました。
 いかとみと暮らすうちに、いかとみの事が好きになっていたのです。
 でも、天の世界に帰りたい。
 このままいかとみの妻として地上で暮らすか、それとも天の世界に帰るか。
 さんざん悩みましたが、天女は帰る事にしました。
 その頃、いかとみは獲物をたくさんつかまえたので、その獲物を町で売って、天女のためにきれいなクシを買って帰る途中でした。
 ふと空を見上げると、いかとみの妻の天女が天に帰る姿が見えました。
「あっ、まっ、まさか! おーい、待ってくれー!」
 いかとみは力の限り天女を追いかけましたが、そのうち、天女の姿は見えなくなってしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スカウトの日
きょうの誕生花 → すすき
きょうの誕生日 → 1953年 竹下景子(俳優)

きょうの新作昔話 → 知らぬが仏
きょうの日本昔話 → 天の羽衣
きょうの世界昔話 → 鍛冶屋と悪魔
きょうの日本民話 → タヌキのお梅
きょうのイソップ童話 → マムシとヤスリ
きょうの江戸小話 → 十五夜の月は

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月14日の日本の昔話 金の鳥居

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月14日の日本の昔話

金の鳥居

金の鳥居

 むかしむかし、ある村に、まだ年のわかい夫婦がおりました。
 たいへん貧乏でしたが、それはそれは仲のいい夫婦でした。
 でもひとつだけ、こまったことがあります。
 それは、亭主の頭に毛が一本もないことです。
 女房は、それがふびんでなりません。
(亭主は立派な男の人なのに、毛が一本もなくては、まげひとつゆうてあげられん。ちゃんとまげさえゆえれば、いくらでも仕事があるというのに・・・)
 いろいろ薬をつけてみましたが、どうしても毛が生えてきません。
(ああ、このうえは、神さまにおすがりするほかはない)
と、ある日、亭主にそうだんすると、亭主も、
「それほど心配してくれるとは、ありがたい。さっそくふたりで、鎮守(ちんじゅ→その土地の守り神)さまにおまいりにいこう」
と、いうわけで、夫婦は村の鎮守さまにおまいりしました。
 亭主が、
「どうか、わたしの頭に毛が生えますように」
と、手をあわせれば、そのとなりで女房も、
「どうぞ、うちの人の頭に毛を生やしてくださいませ。生やしてくだされば、そのおれいに金の鳥居(とりい→詳細)をさしあげます」
と、一心におねがいしました。
 ねがいのかいがあってか、ふたりが家にかえってみると、あらふしぎ、
「まあ、おまえさん。毛が生えております。頭にちょこんと三本の黒い毛が生えております」
「おお、なんとありがたい」
 ふたりは、顔を見あわせて大喜びです。
 こうして、つぎの日も、またつぎの日も、ふたりがおまいりしていると、やがて亭主の頭に、黒ぐろとした美しい毛が生えそろいました。
 おかげで、りっぱなちょんまげをゆうことができました。
 さて、ここまではよかったのですが、ふたりは神さまとのやくそくごとを思いだして、ハッとしました。
「金の鳥居を、鎮守さまにおそなえせねばならん」
「でも、貧乏なわたしたちのこと。金の鳥居どころか、木の鳥居さえ、どうしてあげられましよう」
「ああ、どうすればいいのじゃ」
「神さまに、うそをついてはもったいない」
 ふたりは、ちえをしぼりにしぼって考えました。
 しばらくして、
「あっ、いいことがある。おまえさま」
と、女房が亭主にヒソヒソヒソ。
「そうだ。それがいい。それがいい」
「ね、そうしましょう。そうしましょう」
と、話がきまって、さっそく、木綿針(もめんばり)の太いのを四本もって、ふたりはそろって鎮守さまにやってきました。
 そして、パンパンと、柏手(かしわで)をうっておがむと、四本の針をくみあわせて、小さな鳥居をこしらえました。
 木綿針で作った小さな鳥居ですが、これも金の鳥居にはちがいありません。
 この鳥居をお社のまえにたてると、ふたりは手に手をとって、
♪おかげでまげが、ゆえました。
♪おうけくだされ、金鳥居。
♪エーホイ、トントン
♪エーホイ、トントン
と、鳥居のまえでおどりました。
 すると、どうでしょう。
 鎮守さまのとびらがスーと開いて、中から白いひげをはやした神さまが、白いきもの姿であらわれました。
 そして、夫婦の歌にあわせて歌いました。
♪仲がよければ、ちえもでる。
♪たしかに受けたぞ、金鳥居。
♪エーホイ、トントン
♪エーホイ、トントン
 神さまとわかい夫婦は、夜の明けるまで歌って踊りました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → コスモスの日
きょうの誕生花 → ふしぐろせんのう
きょうの誕生日 → 1981年 安達祐実(俳優)

きょうの新作昔話 → きかずの神さま
きょうの日本昔話 → 金の鳥居
きょうの世界昔話 → ヒョウの子とカモシカの子
きょうの日本民話 → カッパの証文
きょうのイソップ童話 → ライオンとオオカミとキツネ
きょうの江戸小話 → おじぞうさまのずきん

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月13日の日本の昔話 一袋の米

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月13日の日本の昔話

一袋の米

一袋の米

 あるとき、お城につかえる曽呂利(そろり)さんが、秀吉公(ひでよしこう→豊臣秀吉)にこんなお願いをしました。
「私の町は、まずしい人が多く、みんな毎日食べるものに困っています。そこで、殿さまのおなさけをもちまして、紙袋一ぱいほどの米を分けてやりたいと思います。どうぞ、お許しくださるよう、お願いいたします」
 こんなことを、まじめくさって、ていねいにたのむので、秀吉公は、へんだなとは思いましたが、
「なんじゃ、それっぽっちのことか。つまらんことを聞くな。お前のすきなようにせい」
「あのう、それが大きなふくろでして」
「たかが、紙の袋じゃ。すきなだけもたせてやれ」
「さすがはおなさけ深いお殿さまでございます。町のものも、さぞかし喜ぶことでしよう」
 曽呂利はペコぺコおじぎをして、秀吉公の書付(かきつけ→江戸時代、将軍や老中の命令を伝えた公文書)をおしいただいて、お城をさがりました。
 それから、十日ほどたったある日のことです。
「殿さま、大変でございます」
 家来が、秀吉公のところへかけつけてきました。
「いかがいたした」
「ちょっと、町のようすを、・・・ああ、あれです」
 秀吉公の米倉の中の一つに、それはすごく大きな紙の袋がすっぽりかぶさっています。
 そして大勢の町人が、米倉から、どんどんお米を運び出しているのです。
 おどろいた役人が、これを止めようとすると、あの曽呂利が殿さまの書付をみせて、役人を下がらせます。
「殿さま、あのとおりです」
「ううむ・・・」
「あのぶんですと、かなりたくさんの米が出ていってしまいます。何がなんだかわからず、せっしゃ、みるにみかねてお知らせにあがりました」
「ふむ、ふむ、なるほど。うひゃはははは、これはけっさく。おもしろいわい」
「殿さま、笑っている場合ではございません。早く、止めてくださいますよう」
「まあ、よいではないか」
「しかし、あんなにどっさりのお米を」
「よいよい。わしもあいつと約束したのだし、何かわけがあるにちがいない。すてておけ。・・・それにしても曽呂利のやつ、でっかい袋を作ったもんじゃ。うひゃははははは」
 つぎの朝、曽呂利がお城にやって来ました。
「殿さま、昨日はありがとうございました」
「よい、れいにはおよばん。それにしても、すごい袋をつくったものだ」
「はい。あれだけで十日ほどもかかりました。いただきました米は、荷車で百二十台分ございました。お約束通り、町のまずしい人達に、『これは、おなさけ深い殿さまからのお米だ』といって、分けてやりました。みんな、涙を流して喜こんでくれました。殿さま、曽呂利からも、あつくお礼申し上げます」
「でかした。さすがは曽呂利じゃ。・・・じゃが、今回だけでかんべんしてくれよ。うひゃははははは」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界の法の日
きょうの誕生花 → たますだれ(ゼフィランサス)
きょうの誕生日 → 1958年 玉置浩二(俳優)

きょうの新作昔話 → 日見(ひみ)のキツネ
きょうの日本昔話 → 一袋の米
きょうの世界昔話 → ミツバチの女王
きょうの日本民話 → うたう、おなか
きょうのイソップ童話 → ロバとセミ
きょうの江戸小話 → ろうそく

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月12日の日本の昔話 へっこき嫁さん

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月12日の日本の昔話

へっこきよめさん

へっこき嫁さん

 むかしむかし、村の息子がお嫁さんをもらいました。
 働き者でかわいいお嫁さんなので、息子もお母さんも大喜びです。
 ところがそのうち、お嫁さんの元気がだんだんなくなってきました。
 心配したお母さんがたずねてみると、お嫁さんははずかしそうに言いました。
「実は、へをがまんしていて、おなかが痛いのです」
「へ? あははははっ。なんだ、そんなことなら遠慮(えんりょ)しないで、さあ、おやりよ」
 するとお嫁さんは、着物をサッとまくって言いました。
「では、いきます」
 ブッホーーーーン!
「ヒャアアアー! 助けてー!」
 なんと、への勢いで、お母さんは吹っ飛ばされてしまいました。
 怒ったお母さんは、息子に言いました。
「こんな嫁は、かえしておしまい!」
 そこでしかたなく、息子はお嫁さんを家まで送ることにしました。
 途中の山道で、カキの実を取っている旅人がいました。
 でも、カキの実は高いところにあって、手がとどきません。
「それなら、わたしにまかせて」
 お嫁さんは着物をまくってお尻をカキの木に向けると。
「では、いきますよ」
 ブッホーーーーン!
 カキの木はユラユラゆれて、カキの実がたくさん落ちてきました。
 喜んだ旅人は、お礼にたくさんのお金をくれました。
 へでお金がもらえるなんて、息子はびっくりです。
「こんなに役に立つ嫁さんは、返すのはもったいない」
 息子はお嫁さんをつれて、また村に帰りました。
 そして、お嫁さんが遠慮なしに、へが出来るところを作ってやりました。
 それが、「へや」の始まりだそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 宇宙の日
きょうの誕生花 → あい
きょうの誕生日 → 1957年 戸田恵子(声優)

きょうの新作昔話 → 竜になった娘
きょうの日本昔話 → へっこきよめさん
きょうの世界昔話 → まんぞくもののシャツ
きょうの日本民話 → 海のそこでみた女
きょうのイソップ童話 → オオカミとライオン
きょうの江戸小話 → オオカミのしっぱい

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月11日の日本の昔話 白米城

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月11日の日本の昔話

白米城

白米城

 むかしむかし、山の上に小さなお城がありました。
 とつぜん、となりの国から攻められているさいちゅうです。
 お城の殿さまは、
(こちらもなんぎじゃが、となりの国の軍勢(ぐんぜい)も、ながい城攻めで、さぞつかれておろう。いまひといきがんばれば、攻め手もあきらめて、かこみをとくやもしれぬ)
と、思っていたところヘ、ひとりの家来がかけつけてきて言いました。
「お殿さま、たいヘんでございます。お城の水が、なくなってしまいました」
「なに、水がない!」
 知らせをきいて殿さまは、サッと顔色をかえました。
「米のたくわえは十分なのじゃが、水がなくては、どうにもならん。いよいよ、おしまいか」
 そばの大将のひとりがいいました。
「お殿さま。このうえは、みなみな討死(うちじに)と覚悟(かくご)をきめ、すぐさま、敵の中ヘうってでることにいたしましょう」
「・・・それしか、あるまい」
 殿さまのゆるしをうけた大将が、さいごの合戦を味方の兵に知らせようと、本丸(ほんまる→城の中心)から下ヘおりてきたとき、百姓(ひゃくしょう→詳細)あがりのウマひきの男が、ヒョコリとあらわれて、
「だんなさま。死ぬこた、いつだってできますだよ。それよりも、わしに考えがありますで」
と、なにかを大将の耳にささやきました。
 すると大将は、
「よし、ものはためしということもある。みなのもの、城にある米をのこらず集めよ」
 城じゅうから集めた米が、のこらずウマを洗う大きなたらいの中に入れられました。
 白い米の入った大きなたらいを、城の中から持ちだすと、そとにはウマが何匹も待っています。
 そこは、南をむいた日あたりのいいところで、敵の陣地(じんち)からは、いちばんよく見えるところです。
 そして、ウマの世話をする家来たちが、たらいの中から、手おけで白米をすくうと、ザーッ、ザーッと、ウマの背中にも横っ腹にも尻にもかけて、ウマを洗うふりをしました。
 このようすを遠くから見ていた敵は、おどろいたのなんの。
「水がなくなって、もうそろそろ降参(こうさん)してくると思っておった。それなのに、あのようにおしげもなく水をつかってウマを洗うとは。こちらのたくわえも、のこりわずか。・・・しかたない、ひきあげよう」
 敵は自分たちの国ヘ、ひきあげていったそうです。
 敵の陣地から見ると、ウマにふりかける米がお日さまにキラキラひかって、ちょうど水に見えたのです。
 このことがあってから、だれいうことなく、この小さな山城のことを、白米城とよぶことになったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 公衆電話の日
きょうの誕生花 → むくげ
きょうの誕生日 → 1947年 泉ピン子(俳優)

きょうの新作昔話 → 桜島大根汁
きょうの日本昔話 → 白米城
きょうの世界昔話 → 利口なシカのカンチール
きょうの日本民話 → キツネの仇討ち
きょうのイソップ童話 → ダチョウ
きょうの江戸小話 → 神田川の大水

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月10日の日本の昔話 彦一の生き傘

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月10日の日本の昔話

彦一の生き傘

彦一の生き傘

 むかしむかし、彦一(ひこいち→詳細)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 彦一の家には、生き傘(かさ)といわれる不思議(ふしぎ)な傘があるとのうわさが流れました。
 なんでも雨が降ると自然に開き、天気になるとすぼむというのです。
 うわさはどんどん広まって、とうとうお城の殿さまの耳にもとどきました。
「それほどめずらしい傘なら、ぜひ手に入れたい」
と、殿さまはさっそく、彦一の家に使いを出しましたが、彦一は、
「これは、うちの家宝です。いくら殿さまでも、ゆずるわけにはいきません」
と、ことわりました。
 だめだと言われると、殿さまはますますその傘が欲しくなりました。
 それで、金はいくらでも出すからと言うと。
「わかりました。いつもお世話になっている殿さまには逆らえません。そのかわり、お礼はたんといただきます」
と、いうわけで、彦一は殿さまから大金をもらいました。
 さて、殿さまは彦一から生き傘を手に入れたものの、このごろはお天気続きで、ぜんぜん雨が降りません。
 はやく雨が降って、傘が開くところを見たいと、殿さまはじめ、家来たちも毎日イライラしていました。
 そして、彦一から傘を手に入れてから十日後のことです。
 ついに念願(ねんがん)の雨が降ってきました。
 ところがどうしたことか、いくら雨が降っても、傘はいっこうに開きません。
「どうした。雨が降ったのに、なぜ開かぬ。だれか、彦一を呼んで参れ!」
 殿さまは、さっそく彦一を呼びつけると、
「このうそつきめ、雨が降ったのに、傘はいっこうに開かんじゃないか!」
と、カンカンに怒りました。
 ところが彦一は、傘を見ると悲しそうな顔をして、殿さまにたずねました。
「かわいそうに、こんなにやせてしまって。・・・殿さま。この傘に、何か食べ物は与えましたか?」
「なに? どういう意味だ?」
「おおっ、やっぱり。・・・殿さま、この傘はうえ死にしとります。傘とはいえ、生きとるものには、必ず食いもんがいります。注意しなかったおらも悪かったが、お城にはこれだけの人がいて、だれもその事に気づかなかったのですか?」
と、言って、おんおん泣き出しました。
「・・・・・・」
 これには、殿さまも返す言葉がありませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 屋外広告の日
きょうの誕生花 → しゅうかいどう
きょうの誕生日 → 1966年 斉藤由貴(俳優)

きょうの新作昔話 → 愛犬の神通力
きょうの日本昔話 → 彦一の生き傘
きょうの世界昔話 → ナシ売りと仙人
きょうの日本民話 → 若い男に化けた鬼
きょうのイソップ童話 → ぬすみをするこどもと母親
きょうの江戸小話 → へとおもえ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月9日の日本の昔話 絵すがたよめさん

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月9日の日本の昔話

絵すがたよめさん

絵すがたよめさん

 むかしむかし、働き者の若者がお嫁さんをもらいました。
 とってもとっても、きれいなお嫁さんです。
 若者はうれしくてうれしくて、毎日お嫁さんの顔をながめてばかりで、全然仕事をしません。
 こまったお嫁さんは、自分の顔をかいた絵をわたして言いました。
「この絵を見ながら仕事をして下さい」
 それからは、若者は田んぼのそばの木にその絵をはり付けて、毎日せっせと働きました。
 ところがある日、ヒューと風が吹いてきて、大切なお嫁さんの絵が飛んでいってしまいました。
 その絵はヒラヒラ飛んで、お城の殿さまの庭に落ちました。
 その絵を見た殿さまはビックリ。
「・・・なんと、なんとうつくしい。この女の人をさがしてつれてこい」
 まもなく、若者の家に殿さまの家来がやってきて、お嫁さんを無理矢理(むりやり)お城へ連れて行きました。
 そのとき、お嫁さんは急いで若者に言いました。
「アメ屋になって、お城に来て下さい」
 お城に行ってからのお嫁さんは、毎日泣いてばかりです。
 殿さまは、こまってしまいました。
 そこへ、若者がアメ屋になって歌を歌いながらやってきました。
♪トントコ、トントコ、アメ屋でござる。
 これを聞いたお嫁さんは
「オホホホホホッ」
と、うれしそうに笑いました。
「そうか、アメ屋の歌が好きなのか、それならわしも歌ってやろう」
 殿さまはアメ屋をそばに呼んで、着物を取り替えさせました。
 アメ屋のかっこうをした殿さまは、身振り手振りで歌います。
♪トントコ、トントコ、アメ屋でござる。
 その時、家来がやってきました。
「こら、アメ屋は城に入ってはいかん。でていけ!」
 殿さまはお城の外に追い出されてしまい、二度と戻ってこられませんでした。
 それから、殿さまになった若者とお嫁さんは、お城でしあわせにくらしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 救急の日
きょうの誕生花 → リコリス
きょうの誕生日 → 1980年 酒井若菜(俳優)

きょうの新作昔話 → 金の粒を出す馬
きょうの日本昔話 → 絵すがたよめさん
きょうの世界昔話 → お百姓とエンマさま
きょうの日本民話 → とっくりに入った男
きょうのイソップ童話 → ヒツジ飼いとヒツジたち
きょうの江戸小話 → 歩いていく

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月8日の日本の昔話 さとりのばけもの

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月8日の日本の昔話

さとりのばけもの

さとりのばけもの

 むかしむかし、あるところに、一人の木こりがおりました。
 木こりは山に小屋を立てて、まいにちオノをふるっては、木を切っています。
 あるとき、木こりが、
「きょうのうちに、どうしてもあと一本、たおさねばなんねえ」
 むちゅうでしごとをしていると、とちゅうで日がくれてきてしまいました。
「もうちょっとで、おしまいになるっていうに。・・・まあ、しかたがない」
 木こりがかれえだをひろいあつめて、たき火をしておりますと。
 ガサガサ、ガサガサ。
 クマざさをかきわけて、ひとつ目(→詳細)一本足のおやじさんが、どこからともなくあらわれて、火のそばにやってきました。
 そして、だまって手をあぶりはじめたのです。
(なんだか、おかしなばけもんがでてきたな。やまんじいかもしれん)
 木こりがそうおもっていると、ひとつ目のばけものがニタリとわらい、
「いま、おめえがなにをおもったか、あててみようか。『なんだか、おかしなばけもんがでてきたな。やまんじいかもしれん』そう、おもったろう」
と、いいあてました。
(おれのおもうことを、みんなさとっている。さとりのばけものかもしれん)
 木こりがおもうと、ばけものがまた、
「いま、『おれのおもうことを、みんなさとっている。さとりのばけものかもしれん』そうおもったろう」
と、これまたいいあてました。
(こんなばけもんに、かまってはおられん)
 木こりがにげだそうとすると、
「おめえはいま、『こんなばけもんに、かまってはおられん』と、おもったろう」
 またまた、いいあてました。
 木こりが、
(こんなばけもん、はやくかえればいいが)
と、おもっていると、ばけもんは、
「いま、『こんなばけもん、はやくかえればいいが』とおもったろう」
 さらにいいあてました。
(これは、よわったことになったわい)
 木こりが、こまりきっていたときです。
 たき火の火のこが、パチーンとはじけとんで、ばけものの目にとびこみました。
 ばけものはとびあがると、
「あちちちちっ! 人間て、おもわんことをするもんだ。あぶなくて、こんなところにはおられん」
 あわてて、山へにげかえっていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際識字デー
きょうの誕生花 → いわひば
きょうの誕生日 → 1963年 松本人志(芸人)

きょうの新作昔話 → タコの足とクモの足
きょうの日本昔話 → さとりのばけもの
きょうの世界昔話 → かわいそうなフクロウ
きょうの日本民話 → ウマ吸い膏薬
きょうのイソップ童話 → 子ヤギと笛を吹くオオカミ
きょうの江戸小話 → ととのめ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月7日の日本の昔話 福の神になった貧乏神

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月7日の日本の昔話

福の神になったびんぼう神

福の神になった貧乏神

♪音声配信

 むかしむかし、働き者なのに、とても貧乏な夫婦がいました。
 ある年のくれ、二人が大掃除をしていると、やせたネズミのようなものが神棚(かみだな)から出てきました。
「わしは貧乏神(びんぼうがみ)だ、お前たちがあんまりまじめに働くから、わしはこの家を出て行くよ。たっしゃでな」
 そういって、貧乏神はヨタヨタと歩き出しました。
 すると夫婦は、
「貧乏神と言っても、神さまには代わりありません。どうか、この家にいて下さい」
「うん? わしは、貧乏神だぞ」
「はい、貧乏神さま。大切にしますので、どうか、お願いいたします」
と、言って、無理矢理(むりやり)に貧乏神を神棚に押し戻しました。
 それから夫婦は、毎日神棚に食べ物を供えて、コツコツとまじめに働き続けました。
 やがて気がつくと、いつの間にか夫婦は、お金持ちになっていました。
 そこで、倉(くら)のある大きな家をたてました。
 今日は、引っ越しの日です。
 夫婦は神棚に向かって言いました。
「さあ、貧乏神さま。一緒に新しい家に参りましょう」
 すると神棚からは、きれいな着物を着た神さまが出てきたのです。
「お前たちのおかげで、これこのとおり。礼を言うぞ。これからもよろしくな」
 夫婦に大切にされた貧乏神は、いつのまにか福の神になっていたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → クリーナーの日
きょうの誕生花 → なつめ
きょうの誕生日 → 1956年 長渕剛(歌手)

きょうの新作昔話 → 娘ギツネの恩返し
きょうの日本昔話 → 福の神になったびんぼう神
きょうの世界昔話 → バカなオオカミ
きょうの日本民話 → 虫歯になったけちんぼう
きょうのイソップ童話 → 牛飼いとライオン
きょうの江戸小話 → うすの付き方

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月6日の日本の昔話 カニの餅つき

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月6日の日本の昔話

カニの餅つき

カニの餅つき

 むかしむかし、とても天気のよい日のことです。
「カニさん、カニさん。いいお天気だから、いっしょに田んぼに行かないか?」
と、サルが呼びにきました。
「田んぼに、なにしに行くの?」
「もち米の落ち穂(ほ)を拾いにさ。たくさん集めて、もちをついて、ふたりでドッサリと食ベようよ。つきたてのもちはおいしいぞ」
「わあ、いいなあ。いこう、いこう」
「じゃあ、カニさんは、このカゴをしょいな。ぼくは、このカゴだ」
 サルとカニは、カゴを背負って田んぼへ急ぎました。
 カゴの大きさは同じでしたが、カニのカゴには穴があいていました。
 サルが、こっそりやぶいておいたのです。
 田んぼにつきました。
 カニは、あっちこっち走り回って落ち穂を拾い、カゴにポイポイ投げこみました。
 けれども、底の穴からポロポロこぼれ落ちてしまいます。
 それをサルはすばやく拾って、自分のカゴにみんな入れてしまいました。
 サルのカゴがいっぱいになったころ、
「おーい、カニさん。きみは、たくさん拾ったかい?」
と、聞きました。
 カニは、ハサミをカゴにつっこんでみましたが、少ししかありません。
「あれ? まだたまっていないよ」
と、悲しそうに答えました。
「だめだなあ、きみは。ぼくなんか、こんなにいっぱいに拾ったんだぞ!」
と、サルはおこった声でいいました。
「・・・ごめん」
「しょうがない。おそくなるからもう帰ろう。きみは、なまけたバツにどこかへ行って、臼(うす)ときねをかりておいで」
と、いいつけました。
 カニは、トボトボとサルの後ろについて帰りました。
 あちこちまわって、重い臼ときねを、ようやくかりてきました。
 それから、ペッタンペッタン、もちつきが始まりました。
 やがて、やわらかくておいしそうなもちができあがりました。
 するとサルは、もちを全部かかえて、カキの木にスルスルスルッとのぼってしまいました。
 そして、ひとりでパクパク食ベはじめたのです。
「サルさん、ずるいじゃないか」
「ほしけりゃ、ここまで登っておいで」
 サルは、できたてのもちをちぎっては、カニに見せびらかしてうまそうに食ベます。
「一つでいいから、くれないか」
「ほしけりゃ、ここまでのぼっておいで」
「のぼれないから、投げておくれ」
「のぼっておいで。ここまでおいで」
 カニは、くやしくてたまりません。
 けれども、木のぼりができません。
 そのうち、カニはふと思いついたことがありましたので、わざと聞こえるような声でつぶやきました。
「ぼくんちのおじいさんたちは、もちは、枯れ枝にかけて食ベるとずっとおいしくなるっていってたけどなあ」
 すると、人まねが好きなサルは、かかえていたもちのかたまりを、そばの枯れ枝にヒョイとかけました。
 その重みで、枝はポッキリおれて、もちといっしょにドシーンと、落ちてしまいました。
 かけよったカニは、ハサミでもちを持ちあげると、自分の穴へ入ってしまいます。
 あわてて木から飛びおりたサルが、穴の入り口にかけつけました。
「ねえ、一つでいいからくれないか?」
「ほしけりゃ、ここまで入っておいで」
「入れないから、投げておくれ」
「入っておいで。ここまでおいで」
と、カニがからかいました。
 サルは、とうとうおこりだして、
「穴の中に、おならをしてやるぞ」
と、おしりをそちらに向けました。
 するとカニは、ハサミでサルのおしりの毛をむしりました。
「痛いっ。いててててっ!」
 サルは、飛びあがって逃げていきました。
 それから、サルのおしりは毛がなくなって赤くなりました。
 そして、カニのハサミには、毛がモジャモジャとくっついてしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 鹿児島黒牛・黒豚の日
きょうの誕生花 → みそはぎ
きょうの誕生日 → 1977年 氷川きよし(歌手)

きょうの新作昔話 → 猫神(ねこがみ)
きょうの日本昔話 → カニの餅つき
きょうの世界昔話 → 人魚姫
きょうの日本民話 → 鬼子母神さま
きょうのイソップ童話 → クマとキツネ
きょうの江戸小話 → 日本も広い

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月5日の日本の昔話 うわばみたいじ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月5日の日本の昔話

うわばみたいじ

うわばみたいじ

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 ある日のこと、きっちょむさんは、畑でとれた小麦(こむぎ)を、村はずれの水車(すいしゃ)ごやにもっていって、粉にしてもらいました。
「これで、うまいうどんでもつくって、たべよう」
 ゴキゲンに家に帰っていると、ササヤブから、いきなりうわばみ(→だいじゃ)があらわれました。
 大きな口をあけて、きっちょむさんをのみこむつもりです。
「うへぇっ!」
 きっちょむさんがにげだすと、うわばみがおいかけてきました。
 さいわい、マツの木があったので、きっちょむさんはよじのぼりましたが、うわばみはなおもしっこくおいかけてきて、大きな口をアングリとあけました。
「こりゃあ、もうだめだ。わたしのいのちも、とうとうこれまで。なむあみだぶつ」
 そのときです。
 ガタガタとふるえていたきっちょむさんのわきのしたから、だいじにかかえていた粉のつつみがおちて、うわばみの口にスッポリ入りました。
 ビックリしたうわばみのキバで、粉のつつみがやぶれたからたまりません。
 ゴホッ、ゴホホホゴホ。
 ハックショーン、ゴホゴホ、ハックショーン。
 うわばみは、せきとくしゃみをしているうちに、粉をのどにつまらせて、バッタリと死んでしまいました。
「粉のつつみひとつで、うわばみをたいじするとは、さすがはきっちょむさんじゃ」
 きっちょむさんは、村のみんなから大いにほめられたということです。
 逃げていただけなのにねえ。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国民栄誉賞の日
きょうの誕生花 → おみなえし
きょうの誕生日 → 1965年 仲村トオル(俳優)

きょうの新作昔話 → 二羽のカモ
きょうの日本昔話 → うわばみたいじ
きょうの世界昔話 → かくれんぼに勝った若者
きょうの日本民話 → テングの面と娘さん
きょうのイソップ童話 → 笛を吹く漁師
きょうの江戸小話 → バカむすこ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月4日の日本の昔話 木仏長者(きぼとけちょうじゃ)

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月4日の日本の昔話

木仏長者

木仏長者(きぼとけちょうじゃ)

♪朗読再生

 むかしむかし、貧乏な男が、長者といわれる大金持ちの家で働いていました。
 長者の家には、立派な金の仏さまがあります。
 男はたいへん信心(しんじん→神仏を信仰する気持ち)深くて、
「なんて立派な仏さまだろう。自分もあんな仏さまを持っておがみたいものだな」
と、思っていました。
 ある日の事、男は山へ仕事に行って、仏さまそっくりの木の切れはしを見つけると、ひろって持って帰りました。
 そして、自分の部屋におまつりしたのです。
 男は毎日、自分のおぜんをお供えして、木の仏さまをおがみました。
 でも、ほかのみんなはそれをバカにして、男をいじめるのです。
 男はとてもよく働くので、このままいじめられてよそにいかれては大変と、長者はこんな事を考えました。
「お前さんのおがんでいる木の仏さまと、わしの持っている金の仏さまとを、一度、すもうをとらせてみようではないか。木の仏さまが負けたなら、お前は一生、わしのところで働くんだ。その代わり、もしわしの金の仏さまが負けたなら、わしの持っている財産は、みんなお前にやろう」
 男はびっくりです。
 さっそく木の仏さまの前へ座ると、手を合わせていいました。
「大変な事になりました。あなたさまと金の仏さまとが、おすもうをおとりになるのです。どうしましょう?」
 すると木の仏さまは、男にいいました。
「心配するな。強い相手だが、わしは勝負をしてみるよ」
 いよいよ、すもうをとる日です。
 大きな部屋で、金の仏さまと木の仏さまは向かいあって立ちました。
 長者は二つの仏さまに、勝負に負けるとどうなるかを説明すると、
「さあ、始め! はっけよい、このった!」
と、うちわをあげて、開始の合図をしました。
 すると二つの仏さまは、グラグラと動き出して近寄って組み合いました。
 押したり押されたり、なかなか勝負がつきません。
 長者も使用人の男も、ハラハラしながら応援(おうえん)しました。
「金の仏さま負けるな!」
「木の仏さま負けるな!」
 最初の方は金の仏さまが優勢でしたが、そのうちに金の仏さまの体中が、汗でびっしょりになってきたのです。
 汗だけでなく、足もフラフラです。
 これは大変と、長者は大きな声で叫びました。
「金の仏さまが、そんな木ぎれの仏さまに負けてどうするのです! がんばってください! がんばってください!」
 けれど金の仏さまは、とうとう倒れて負けてしまいました。
 疲れ果てて、起きあがる力もありません。
 その間に木の仏さまは、今まで金の仏さまがまつられていた仏壇の上へあがって座りました。
「ありがたい、ありがたい」
 みんなは、その木の仏さまをおがみました。
 負けた長者は、約束通りに家を出ていきました。
 長者の家は、もう使用人の男が主人です。
 金の仏さまを抱いた長者は、野原をトボトボと歩いていきました。
 そして、金の仏さまにいいました。
「お前さんは、どうしてあんな木切れの仏さまなんかに負けたのだね」
 すると、金の仏さまは答えました。
「相手は木の仏だが、毎日毎日、おぜんを供えてもらって信心されていた。それなのに、わたしは一年に、ほんの二度か三度、お祭りのときにおぜんを供えてくれただけ、それにお前さんは、信心もしてくれない。力が出ないのは、当たり前ではないか」
 金の仏さまは、悲しそうに泣きました。
「・・・・・・」
 長者は、返す言葉がありませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → くしの日
きょうの誕生花 → モントブレチア
きょうの誕生日 → 1964年 荻野目慶子(俳優)

きょうの新作昔話 → 島の合戦
きょうの日本昔話 → 木仏長者
きょうの世界昔話 → とまらないくしゃみ
きょうの日本民話 → まま母と地蔵さま
きょうのイソップ童話 → ラバ
きょうの江戸小話 → 生まれかわる

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月3日の日本の昔話 かしこい子ども

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月3日の日本の昔話

かしこい子ども

かしこい子ども

 むかしむかし、ある村に、ひとりのおじいさんがいました。
 はたらきざかりのむすこは、戦にとられて死んでしまい、のこった嫁も、孫の太吉(たきち)をのこして死んでしまいました。
 ところが、この孫の太吉は、村のみんなから、
「日本じゅうさがしても、あんなかしこい子はおらん」
と、いわれるほど、りこうな子です。
 そのことが、ついに殿さまの耳に入って、
「よし。その小僧をよびつけて、一度ためしてみよう」
と、いうことになりました。
 殿さまは太吉を城によんで、一つのようかんを二つに切って食ベさせました。
 そして、
「どちらのようかんが、おいしかったかな?」
と、たずねたのです。
 すると太吉は、ポンと両手をうって、
「お殿さま。どちらの手がなりましたかな?」
と、いいました。
 見事な切り返しです。
 これには、殿さまもまいりました。
 さて、ある日のこと。
 おじいさんがひとり畑に出て、クワで土をおこしていると、パッカ、パッカ、パッカ、パッカと、ウマのひずめの音がして、りっぱな侍(さむらい)がやってきました。
 ウマの上から侍は、
「これ、じじい。おまえは畑をおこしておるようじゃが、けさから、いくクワおこしたかな。いうてみい」
 そんなことをいきなりきかれたって、わかるはずがありません。
 おじいさんが、ポカンとしていると、
「また、あすまいる。それまでに、とくと、考えておけっ!」
 侍はそういいのこして、ウマをかえして、いってしまいました。
 ちょうどそこヘ、孫の太吉がやってきてたずねます。
「おじい、どうしたい? えろう、うかぬ顔をしとるな」
「うん。じつは、いましがた、りっぱなお侍がござって、これこれ、こうこう、こうしたわけで。わしゃ、こまってしもうたわい」
「なーんだ。そんなことで、おじい、こまることはないぞ。どうせ証拠(しょうこ)はないんだから、てきとうに、そうだな、『五万八百クワおこした』と、そういいな。そしてその侍に、『あなたのおウマの足は、ここにおいでになるまで、いく足あがりましたか?』と、そう聞いてやるんじゃ」
「なるほど」
と、いうわけで、そのあくる日。
 おじいさんが畑で待っていると、パッカ、パッカ、パッカ、パッカと、きのうの侍がやってきました。
 そしてウマの上から、
「これ、じじい。きのうのクワの数は、思いだしたか?」
と、聞いたので、おじいさんはすかさず、
「ヘえ、五万八百クワおこしました。ところでお侍さま、あなたのおウマの足は、ここヘおいでになるまでに、いく足あがりましたかな?」
と、聞きました。
 侍はしばらく考えていましたが、なにを思いだしたのか、ニヤリと笑うと、
「それは、おまえの考えでわしに聞いておるのではあるまい」
「はい、孫の太吉めが、教えてくれましたので」
 お人よしのおじいさんは、正直に答えました。
 すると侍は、ふところから小さな紙包みをとりだして、
「評判通り、ほんとに太吉はかしこい子じゃ。ほうびに、これを一ぷくとらせよう。殿さまからのいただきものじゃ」
 そういうて、おじいさんにわたすと、
「その薬をおまえの孫に飲ませてみよ。もっともっと、かしこい子になるぞ」
と、いいのこして、侍はウマをいそがせて帰っていきました。
 おじいさんは、よろこんで家にもどってくると、太吉に薬をわたして、
「太吉や、おまえがこの薬を飲むと、もっともっと、かしこい子になるそうな」
と、いいました。
 太吉は、ジッと考えていましたが、
「おじい。めったなものは、飲んじゃいけねえよ」
と、言って、薬の包みを庭ヘすててしまいました。
 さて、あくる日。
 おじいさんが、畑でクワをうっていると、また、パッカ、パッカ、パッカ、パッカと、あの侍がやってきました。
「これ、じじい。きのうの薬を孫に飲ませたか?」
と、聞くので、
「はい、いただきましてございます。あの薬を飲みますと、孫はいままでよりも、かしこうなりました。おかげさまで、こんなうれしいことはござりません」
と、いって、ていねいにおじぎをしました。
 すると侍は、ふしぎそうに首をかしげて、きのうとおなじ薬をとり出すと、自分でコクンと飲みました。
 すると、まもなく。
 ドデン!
 侍はウマからおちて、死んでしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ホームラン記念日
きょうの誕生花 → ひょうたん
きょうの誕生日 → 1936年 楳図かずお(漫画家)

きょうの新作昔話 → しじみの恩返し
きょうの日本昔話 → かしこい子ども
きょうの世界昔話 → 七羽のカラス
きょうの日本民話 → 石子づめになった子
きょうのイソップ童話 → イノシシと馬と猟師
きょうの江戸小話 → あまざけ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月2日の日本の昔話 歯をボロボロにされた鬼

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月2日の日本の昔話

歯をボロボロにされた鬼

歯をボロボロにされた鬼

♪朗読再生

 むかしむかし、ある山奥に、一匹の鬼が住んでいました。
 鬼は毎日のようにふもとの村にやってきて、畑を荒らし回り、家にある食べ物を手あたりしだいに食べるのです。
「そのうちに、わしらも殺されてしまうかもしれない」
「なんとかしないと、村は全滅だ」
 村の人たちはすっかり困ってしまい、畑仕事も手につきません。
 そこで寺の和尚(おしょう)さんに相談して、鬼が来ると寺へ連れて行き、酒を飲ませて、ごちそうを食べさせることにしたのです。
 おかげで畑は荒らされなくなりましたが、今度はごちそう作りが大変です。
 村人たちが交代でごちそうを作り、酒を用意しなくていけないのです。
 鬼は毎日寺へやってきて、大酒を飲み、腹いっぱいごちそうを食べたあと、本堂で大の字に寝て、ものすごいいびきをかきます。
 それを見ていると、なさけないやらくやしいやら、いっそひと思いに殺してやろうとしましたが、
「まて、まて。いくら鬼とて、命あるものを殺すわけにはいかない。わしにまかせておけ」
と、和尚さんがいうので、村人たちは何とかがまんしていました。
 ある日のこと、和尚さんが、
「今日は鬼に出すごちそうに、白い石を四角に切ったものと、竹の根を輪切りにしたものを用意するように」
と、いいました。
 鬼は、いつものように地ひびきをたてながら、寺にやってきました。
「さあ、どうぞどうぞ」
 和尚さんは鬼を本堂に案内すると、大きなおぜんの前に座らせて、
「今日は酒のさかなに、とうふと竹の子を用意しました」
と、いって、白い四角の石と竹の根を輪切りにしたものを出しました。
 それから自分のおぜんの上には、本物のとうふと竹の子の煮物をおいたのです。
「ほう、これはうまそうだ」
 鬼はいつものように酒を飲み、とうふといわれた白い石をほおばりました。
 ガシン!
 ところが、その石の固いこと。
 必死になってかみくだいたら、鬼の歯がボロボロになってしまいました。
「なんて、固いとうふじゃ。・・・うん?」
 ふと和尚さんの方を見てみると、さもおいしそうに、とうふを食べています。
 和尚さんは続いて、竹の子の煮物を口に入れると、これまたおいしそうに食べました。
 鬼も同じように竹の根の輪切りを口に入れましたが、固くて固くて、やっぱり歯がたちません。
 それでも人間に負けてなるものかと、思いきってかみくだいたので、残っている歯もボロボロになってしまいました。
 さすがの鬼もビックリして、和尚さんにいいました。
「こんな固い物を、よく平気で食べられるもんだ」
 すると和尚さんは、にっこり笑っていいました。
「なあに、人間の歯は鉄より固く、何だってかみくだくことができる。なんなら、おまえさんの腕にかみついてみようか?」
「と、とんでもない!」
 鬼は、あわてて手をふりました。
「そればかりじゃない。地面だってひっくり返す事が出来るぞ。あれを見てみろ」
 和尚さんが、麦畑(むぎばたけ)の方を指さしました。
 見ると、昨日まで黄色く実っていた麦は一本もなく、畑はすっかり耕されて、黒ぐろとした土になっていました。
(なるほど、人間というのは恐ろしい力を持っているものだ。そうとは知らずに畑を荒らしたり、ごちそうを食べていたりしていたが、もしかすると、わしを安心させて捕まえるためかもしれないぞ)
 そう思うと鬼は急に怖くなり、そのまま山奥に逃げ込むと、二度と姿を見せることはなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 宝くじの日
きょうの誕生花 → チューベローズ
きょうの誕生日 → 1966年 早見優(歌手, 俳優)

きょうの新作昔話 → 琵琶石(びわいし)
きょうの日本昔話 → 歯をボロボロにされた鬼
きょうの世界昔話 → リジーナとネコの家
きょうの日本民話 → ハチの恩がえし
きょうのイソップ童話 → イヌにかまれた男
きょうの江戸小話 → やぶ医者

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

9月1日の日本の昔話 舌切りすずめ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話

9月1日の日本の昔話

したきりスズメ

舌切りすずめ

♪朗読再生

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
 心のやさしいおじいさんは、一羽のスズメを飼っていました。
 ある日スズメが、おばあさんがつくったノリを、ツンツンと突いて食ベてしまったのです。
「このいたずらスズメ!」
 怒ったおばあさんはスズメをつかまえると、なんとハサミでスズメの舌を切ってしまいました。
 チュッ、チュッ、チュッ!
 スズメは泣きながら、やぶの中へ逃げていきました。
 間もなくして、おじいさんが仕事から帰ってきましたが、スズメの姿が見えません。
「おばあさん、わしのスズメはどこにいったかの?」
「ふん! あのいたずらスズメ。わたしのノリを食べてしまったから、舌をハサミで切ってやったわ」
「なんと、かわいそうに・・・」
 心のやさしいおじいさんは、舌を切られたスズメの事が心配でなりません。
「大丈夫だろうか? ごはんはちゃんと、食べているだろうか? ・・・よし、探しにいこう」
 おじいさんはスズメの逃げたやぶに、スズメを探しに行きました。
「おーい、おーい。スズメやスズメ。舌切りスズメは、どこにいる?」
 するとやぶのかげから、チュンチュンと、スズメの鳴く声がします。
「おじいさん、ここですよ。スズメの家はここですよ」
 やぶの中から、スズメたちが大勢現れました。
 見ると、舌を切られたスズメもいます。
「おおっ、すまなかったな。どれ、舌は大丈夫か? ・・・ああっ、よかった。これなら大丈夫だ」
 スズメの舌を見て、おじいさんはホッとしました。
「ありがとう、おじいさん。さあさあ、わたしたちの家で休んでいってくださいな」
 スズメたちは、みんなでおじいさんをスズメの家へ連れていきました。
 そしてみんなでスズメ踊りをしたり、おいしいごちそうをたくさん出してくれました。
 おじいさんは、大喜びです。
「それでは暗くならないうちに、おいとまをしよう。スズメさんたち、ありがとう」
 おじいさんがお礼をいって帰ろうとすると、スズメたちは大きなつづら(→衣服などを入れるカゴ)と小さなつづらを持ってきました。

舌切り雀

「おじいさん、おみやげにどちらでも好きな方を持っていってくださいな」
 スズメたちがいいました。
「ありがとう。でも、わたしはこのとおり、おじいさんだから、あまり大きなつづらは持つ事が出来ない。小さい方をいただくとしよう」
 おじいさんは小さなつづらをおみやげにもらうと、背中に背負って帰っていきました。
 そして家に帰ってスズメのおみやげを開けてみると、なんと中には大判小判に、宝石やサンゴなどの美しい宝物が、たくさん入っていたのです。
 スズメたちはやさしいおじいさんに、みんなでお礼のおくり物をしたのです。
「まあ、まあ、まあ、なんていい物をもらったんでしょう。わたしもほしいわ」
 スズメのおみやげを見て、おばあさんはうらやましくてなりません。
「どれ、わたしもいって、もらってこようかね」
 おばあさんは、スズメの家へ出かけていきました。
 そして、スズメの家に無理矢理入ると、
「ごちそうも踊りもいらないよ。すぐに帰るから、はやくみやげを持ってくるんだよ」
「はい、では、大きいつづらと小さいつづら・・・」
「大きいつづらに決まっているだろ!」
 おばあさんは大きいつづらを受け取ると、急いで家へ帰っていきました。
「しかし、なんとも重たいつづらだね。でも、それだけお宝がたくさん入っている証拠だよ」
 家までもう少しでしたが、おばあさんはつづらの中にどんな物が入っているのか見たくてなりません。
「どれ、何が入っているか、見てみようかね」
 おばあさんは道ばたでつづらを下ろすと、中を開けてみました。
「きっと、大判小判がザックザクだよ。・・・うん? ・・・ヒェー!」
 なんとつづらの中には、ムカデにハチにヘビ、そして恐ろしい顔のお化けたちが、たくさん入っていたのです。
「たっ、助けておくれー!」
 おばあさんは一目散に、家へ逃げ帰りました。
 そして、おじいさんにこの事を話すと、
「おばあさん、かわいいスズメの舌を切ったり、欲張って大きなつづらをもらったりしたから、バチがあたったのだよ。これからは、生き物を可愛がっておやり。それから決して、欲張らないようにね」
 おじいさんは、おばあさんにそういいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 防災の日
きょうの誕生花 → はまなし
きょうの誕生日 → 1931年 団鬼六(小説家)

きょうの新作昔話 → ワシにさらわれた赤ちゃん
きょうの日本昔話 → したきりスズメ
きょうの世界昔話 → ぼうけんしたリス
きょうの日本民話 → ゆうれい屋敷
きょうのイソップ童話 → ツバメと鳥たち
きょうの江戸小話 → えんまの病気

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

« 2008年8月 | トップページ | 2008年10月 »