« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

2008年10月

10月31日の日本の昔話 まつりに参加したキツネ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月31日の日本の昔話

まつりに参加したキツネ
イラスト Smile STATION

祭りに参加したキツネ

♪朗読配信

 むかしむかし、ある村に、人をばかしていたずらをするキツネがいました。
 村の人たちのなかには、森の中をひとばんじゅうひきまわされたという人や、ドロのだんごをたべさせられたという人や、おふろだといわれて、こやしのおけにいれられた人など、いろんないたずらにあう人がふえてきました。
 そこで、村の人たちは、
「なんとかしてキツネをこらしめ、いたずらをやめさせなければいけない」
と、いいだしました。
 ことに、キツネのなかでも、おこんギツネという、かしらのキツネをつかまえなくてはいけないのですが、そのキツネはかしこくて、なかなかつかまりません。
 すると、あるわかものが、
「こんどのぼんおどりで、ばけくらべをすれば、ばけるのが好きなおこんギツネも、きっとでてくるよ」
と、いいました。
 おこんギツネをおびきだすために、ことしのぼんおどりでは、とくべつにくふうをこらして、いろいろなすがたにばけておどって、いちばんうまくばけたものにはほうびをやろう、というのでした。
「ほう、それはおもしろい」
と、みんなはさんせいしました。
 そこで、おどりにでる人たちは、こっそりいろんな用意をしました。
 そして、いよいよぼんおどりの夜、村の人たちは、森のおみやのまえのひろばに集まりました。
 たいこがなりひびき、うた声がながれていきます。
♪よいやさ、よいやさ。
 みんなは、わになってグルグルとおどっていきます。
 カゴをせおった花売りむすめ。
 ヤリをかついだやっこさん。
 うつくしいお姫さま。
 ひょっとこのおめんの男。
 ひげを生やしたおさむらい。
 お坊さん、赤おに、金太郎など。
 いろいろなすがたにへんそうしたおどり手たちがいます。
 そのむこうには、ごほうびにもらう、お酒のタルや、やきとりのごちそうなどが、たくさんならべてあります。
 おどりまわるうちに、お姫さまとひょっとこがぶつかったり、おさむらいがころんだひょうしにりっぱな口ひげをおとしたりして、見物している人たちは、ドッとわらいころげています。
 するといつのまにか、おどりのわの中に、りっぱなわかいおさむらいのすがたをしたおどり手がまじっていました。
「ほう、みごとなわかざむらいじゃな」
と、みんながほめます。
 それに、おどる手ぶりや、からだのうごかしかたが、なかなかみごとです。
 やがて、夜もふけたころ、たいこの音もやみ、おどり手たちのわもとけて、ぼんおどりがおわりました。
 みんなは、まわりのむしろの上にすわって、ホッとあせをふいています。
「さあ、だれがいちばんうまくばけて、うまくおどったかな」
 けんぶつしていた人たちが、いちばんよいと思った人を、きめることになりました。
 やっこさん、お姫さま、ひょっとこも、にんきがありましたが、一番になったのは、あのわかざむらいのおどりでした。
「ほんとに、みごとじゃったのう」
 ごほうびのお酒を入れたタルが、わかざむらいのまえにならべられました。
 もちろん、たべきれないほどのごちそうも、出されました。
「そら、おいわいじゃ。のめ、のめ、いくらでものめ」
 たくさんの酒をすすめられたわかざむらいは、たちまちよっぱらってしまいました。
 そしてゴロンとよこになりました。
 すると、からだのうしろのほうから、ながいしっぽがポックリと出てきました。
「あれあれ、あのしっぽは、キツネだぞ」
「やっぱり、キツネのおこんじゃ」
 そこでみんなは、しめたとばかりに、キツネのおこんをつかまえて、なわでしばってしまいました。
「さあ、おこん。もうにげられないぞ、かくごしろ!」
「いたずらもののしっぽを、きってやる!」
 おこんギツネは、すっかりキツネのすがたにもどって、
「しっぽばかりはごかんべんを。しっぽはキツネの宝物です。どうかゆるしてください。コーン、コーン」
と、頭をさげました。
「では、もういたずらはしないか?」
「はいはい、もう、二どといたしません」
 おこんギツネは、いっしょうけんめいにあやまりました。
 そこでみんなは、しっぽをきるのをやめて、なわをといてやりました。
 よろこんだおこんギツネは、なんどもおれいをいって、頭としっぽをフリフリ、森のおくへにげていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ハロウィン
きょうの誕生花 → まゆみ
きょうの誕生日 → 1967年 江戸家まねき猫(声帯模写)

きょうの新作昔話 → はだかのお寺まいり
きょうの日本昔話 → まつりに参加したキツネ
きょうの世界昔話 → しあわせの王子
きょうの日本民話 → 幽霊の足あと
きょうのイソップ童話 → ライオンとワシ
きょうの江戸小話 → いたみどめ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月30日の日本の昔話 どうもと、こうも

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月30日の日本の昔話

どうもと、こうも

どうもと、こうも

 江戸に、「どうも」という、ゆうめいな医者と、「こうも」という、これも、ゆうめいな医者がすんでいました。
 二人とも、日本一の医者といわれていました。
「わしは、日本一の医者じゃ」
と、どうもが言います。
「わしが、日本一の医者よ」
と、こうもも言います。
 そこで二人は、どっちが本当の日本一か、うでくらべをすることにしました。
 まず、どうもが言いました。
「切ったうでを、すぐにつなぐことができるか?」
「そげんなことは、たやすいことよ」
「そんなら、ついでみれ」
と、どうもが自分のうでを、刀で切りおとしました。
 こうもは、たちまち、どうものうでをつなぎました。
 うでは元どおりで、ついだあともわからないくらい、上手につないでありました。
「今度は、お前がつぐ番だ」
と、言って、こうもが自分のうでを、刀で切りおとしました。
 どうもがこうものうでを、元どおりにつなぎました。
 これも、ついだあとがわからないくらい、上手につないでありました。
 どっちもみごとなうでまえで、これでは、どちらが日本一かわかりません。
 すると、
「うでくらいついだとて、なんのじまんになろうかい。首のつぎくらべはどうじゃ?」
「よかろう。たやすいことよ」
 今度は、こうもがどうもの首を切って、どうもをころしてしまいました。
 回りで見ていた人びとはビックリ。
 でも、こうもは、
「おどろくことはないが」
と、言うと、たちまちどうもの首をつないで、どうもを生きかえらせてしまいました。
「みごと、みごと!」
 みんな、手をたたいてかんしんしました。
「今度は、わしの番じゃ」
と、どうもがこうもの首を切りました。
 そして、どうもはたちまちこうもの首を、元どおりにつないで生きかえらせました。
 どちらもたいしたうでまえで、これではなかなか勝負がつきません。
「かわりばんこに首をとっても、何もおもしろうない。今度は両方いっぺんに、首を切ってみてはどうじゃ? そして、はやく首をつないだ方が勝ちじゃ」
と、どうもが言うと、
「そりゃ、おもしろい」
 こうもも、さんせいしました。
「では、一、二、三! で、はじめるぞ」
「おおっ」
「それ、一、二、三!」
 二人はいっしょに、あい手の首を切りました。
 ところが、両方いっしょに首を切ってしまったので、首をつないで生きかえらせてくれる人がいません。
 どうもこうもすることができないで、二人は死んでしまいました。
 それから、「どうもこうもできない」という言葉が、できたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 香りの記念日
きょうの誕生花 → ペチュニア
きょうの誕生日 → 1979年 仲間由紀恵(俳優)

きょうの新作昔話 → 笑い地蔵
きょうの日本昔話 → どうもと、こうも
きょうの世界昔話 → サヤエンドウじいさん
きょうの日本民話 → ほらふき村は子どもまで
きょうのイソップ童話 → おばあさんと目医者
きょうの江戸小話 → 貧乏医者

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月29日の日本の昔話 右手を出した観音像

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月29日の日本の昔話

右手を出した観音像

右手を出した観音像

 むかしむかし、ある山の中に恐ろしい山姥(やまんば→詳細)が住んでいました。
 この山姥は、いつも赤ん坊の泣きまねをして歩きます。
(おや、赤ん坊が泣いているぞ)
 そう思って泣き声の方に近づいていくと、いきなり姿を現し、その人を食べてしまうのです。
 だから、だれもこわがって、この山へ行く者はいませんでした。
 ところが、山のふもとの村に、卯平太(うへいた)という力持ちの男がいて、
「山姥ぐらい、おらが退治してやる」
と、一人で山へ登っていきました。
 すると、どこからともなく赤ん坊の泣く声がします。
 いそいで泣き声のする方へ行ってみると、おばあさんが立っていました。
「どうして、こんなところにいる?」
「はあ、村へ帰る途中、道に迷ってしまって」
 おばあさんは、さもこまったように首をふりました。
(ははん、こいつは山姥だな)
 卯平太は、なにくわぬ顔でいいました。
「そんなら、おらが村までおぶってやる」
「そいつはありがたい」
 山姥はニヤッと笑うと、卯平太の背中におぶさりました。
 卯平太は、ふところから帯を出して山姥を背中にくくりつけると、その両手をぎゅっとにぎりしめました。
「さあ、いくぞ!」
 卯平太は、山姥を背おったまま、ドンドン山をくだっていきます。
 両手をしっかりとにぎられているので、山姥はなにもできません。
 山の下まで来たとき、山姥がさけびました。
「おろしてくれ。手をはなしてくれ!」
 それでも卯平太は、
「いやいや、村はまだ遠い」
と、いって、どんどん走り、自分の家までつれていきました。
 そして家にとびこむなり、戸や窓をしっかりとしめ、いろりの火を大きくしました。
 それから、帯をほどいて山姥を下へおろすやいなや、いろりの中へつきとばしました。
「あち、あち、あちちちち!」
 山姥は、あわてていろりをとびだして、家の中を逃げまわりました。
「山姥め、もう逃がしはしないぞ!」
 卯平太がとびかかろうとしたとたん、山姥の姿が消えました。
 ところが、ふと仏壇(ぶつだん)を見ると、いつのまにか観音像(かんのんぞう)が二つにふえています。
(山姥め、観音像に化けおったな)
 でも、どっちが山姥の化けた観音像かわかりません。
 しばらく考えていた卯平太は、わざと大声で、
「そうだ。観音さまにアズキご飯をそなえるのを忘れていた。うちの観音さまはふしぎな観音さまで、アズキご飯をそなえると、ニッコリ笑って右手を出すからな」
と、いいながら、台所からアズキご飯を皿に入れてきて、仏壇にそなえます。
 すると、どうでしょう。
 観音像のひとつが、ニッコリ笑って右手を出したのです。
「ばかめ!」
 卯平太は、その右手をつかむなり、力いっぱい投げつけました。
 観音像はみるみる山姥の姿になって、腰をさすりながら立ちあがろうとします。
「いままで、よくも人を食ったな!」
 卯平太は鉄の棒でふりあげると、山姥をやっつけました。
 それからは、村の人たちは安心して山へ行くようになったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ホームビデオ記念日
きょうの誕生花 → いちょう
きょうの誕生日 → 1968年 つんく♂(音楽プロデューサー)

きょうの新作昔話 → 蛸薬師(たこやくし)
きょうの日本昔話 → 右手を出した観音像
きょうの世界昔話 → わるがしこいクモ
きょうの日本民話 → ネコ女房
きょうのイソップ童話 → 鳥刺しとマムシ
きょうの江戸小話 → はやく走る

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月28日の日本の昔話 たのきゅう

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月28日の日本の昔話

たのきゅう

たのきゅう

 むかしむかし、あるところに、たのきゅうという旅の役者がいました。
 お母さんが病気だという手紙がきたので、大急ぎで戻る途中です。
 ところが、ある山のふもとまでくると、日が暮れてしまいました。
 すると茶店のおばあさんが、たのきゅうにいいました。
「およしなさい。この山には大きなヘビがいるから、夜は危ないよ」
 でもたのきゅうは、病気のお母さんが心配なので、山へ登っていきました。
 そして峠(とうげ)でひと休みしていると、白髪のおじいさんが出てきていいました。
「お前さんは、だれだ?」
「わしは、たのきゅうという者じゃ」
 だけど、おじいさんは『たのきゅう』を『たぬき』と聞き間違えました。
「たぬきか。たぬきなら、化けるのがうまいだろ。さあ、化けてみろ。わしは大ヘビだ。わしも化けているんだ」
 大ヘビと聞いて、たのきゅうはびっくり。
「さあ、はやく化けてみろ。それとも、化けるのが下手なのか?」
 怖さのあまり、ブルブルとふるえていたたのきゅうですが、大ヘビに下手と言われて、役者魂に火がつきました。
「下手? このわしが下手だと? よし、待っていろ。いま、人間の女に化けてやる」
 たのきゅうは荷物の中から取り出した女のかつらと着物を着て、色っぽく踊って見せました。
「ほほう、思ったより上手じゃ」
と、おじいさんは、感心しました。
 そして、
「ときに、お前のきらいな物は、なんじゃ?」
と、聞きました。
「わしのきらいなのは、お金だ。あんたのきらいな物は、何だね?」
「わしか? わしのきらいな物は、タバコのヤニとカキのシブだ。これを体につけられたら、しびれてしまうからな。さて、お前はたぬきだから助けてやるが、この事は決して人間にいってはならんぞ。じゃ、今夜はこれで別れよう」
 そういったかと思うと、おじいさんの姿は見えなくなってしまいました。
「やれやれ、助かった」
 たのきゅうは、ホッとして山を下り、ふもとに着いたのは、ちょうど夜明けでした。
 たのきゅうは、村人たちに大ヘビから聞いた話をしました。
「と、いうわけだから、タバコのヤニとカキのシブを集めて、大ヘビのほら穴に投げ込むといい。そうすれば大ヘビを退治できて、安心して暮らせるというもんじゃ」
 それを聞いて、村人たちは大喜びです。
 さっそくタバコのヤニとカキのシブを出来るだけたくさん集めて、大ヘビのほら穴に投げこみました。
「うひゃーあ、こりゃあ、たまらねえ!」
 大ヘビは死にものぐるいで隣の山に逃げ出して、なんとか命だけは助かりました。
「きっと、あのたぬきのやつが、わしのきらいな物を人間どもにしゃベったにちがいない。おのれ、たぬきめ! どうするか覚えてろ!」
 大ヘビは、カンカンになって怒りました。
 そしてたのきゅうが一番きらい物は、お金だという事を思い出しました。
 そこで大ヘビはたくさんのお金を用意すると、たのきゅうの家を探して歩きました。
 そしてやっと、たのきゅうの家を探し当てたのですが、家の戸がぴったりと閉まっていて、中には入れません。
「さて、どうやって入ろうか? ・・・うん?」
 そのとき大ヘビは、屋根にあるけむり出し口を見つけました。
「それっ、たぬきめ、思い知れっ!」
 大ヘビは、けむり出し口からお金を投げこんでいきました。
 おかげでたのきゅうは大金を手に入れて、そのお金で良い薬を買うことが出来たので、お母さんの病気はすっかり治ったと言うことです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 速記記念日
きょうの誕生花 → しそ
きょうの誕生日 → 1982年 倉木麻衣(歌手)

きょうの新作昔話 → 久米の仙人(くめのせんにん)
きょうの日本昔話 → たのきゅう
きょうの世界昔話 → 金髪姫
きょうの日本民話 → ダイコンおろしストーン
きょうのイソップ童話 → とじこめられたライオンとお百姓
きょうの江戸小話 → 還暦の祝い

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月27日の日本の昔話 テングの羽うちわ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月27日の日本の昔話

テングの羽うちわ

テングの羽うちわ

 むかしむかし、あるところに、ふく八という男がいました。
 とても、とんちのいい男でした。
 ある日、ふく八はテング(→詳細)の住んでいるという、テング山へ登っていきました。
 そして、大きなサイコロをころがしては、
「うわっ、見える見える、江戸が見えるぞ。京が見えるぞ」
と、おもしろそうに大声をたてました。
 あまりにもおもしろそうなので、テングが、そっと出てきていいました。
「おい、ふく八、おれにもそれを貸せ!」
「いやだよ。こんなおもしろい物が貸せるかい」
「・・・おまえは、テング山ヘきて、テングさまがこわくないのか?」
「テングなんか、こわくないよ。それよりか、このサイコロがおもしろいわ。ころがしさえすれば、どこでも見える。うわっ、今度は大阪が見えるぞ」
 ふり向きもしないで、ふく八はサイコロに一生けんめいです。
「おい、ふく八、そんならおまえのこわい物はなんだ?」
「おれのこわいのは、ぼたもちだ」
「へえ、あんなおいしい物を?」
「ああ、名まえを聞いただけでも、ゾゾッとする。だがテングさん、あんたは、なにがこわい?」
「おれは、トゲのあるからたち(中国原産のミカン科の落葉低木)だよ」
「しめたっ!」
「ええ、なにがしめたじゃ?」
「いや、そんなことはどうでもよい」
 ふく八は、それをごまかすように、あわててサイコロをころがすと、
「うわっ、見える見える。どんなに遠い所でも、手に取るように見えるわ」
と、おどりあがっていいました。
 テングは、そのサイコロがほしくてたまりません。
「おい、このテングのうちわをやるから見せろ。これであおぐと、鼻が高くなったり低くなったり、自由自在(じゆうじざい)だ」
「うそつけ、そんなことができるものか」
「よし、見てろよ」
 テングは、ふく八の鼻をあおぎながら、
「ふく八の鼻、高くなれ、高くなれ」
と、いいました。
 すると、ふく八の鼻はグングンのびて、向こうの山へつきそうになりました。
 ふく八は困って、
「早く、元どおりにしてくれ」
と、さけびました。
「そんなら、このうちわとサイコロと、とりかえるか?」
「しかたがない、取りかえるよ。早くあおいでちぢめてくれ」
 こうして、ふく八はテングのうちわを手に入れると、飛ぶようにして帰っていきました。
 テングは、うれしそうに笑いながら、
「そんならひとつ、ほうぼうを見物してみようかな」
と、いって、サイコロをころがしましたが、なんにも見えません。
 いくらやっても、だめです。
 テングは、ふく八にだまされたことに気がついて、
「よくもだましたな! よし、あすはこの仕返しをしてやるぞ!」
と、カンカンにおこりだしました。
 あくる日、テングはぼたもちをいっぱいさげて、ふく八の家ヘ出かけました。
 家の回りには、テングの苦手なからたちが立ててあるので、テングは外からふく八めがけて、
「そら、こわがるがよい」
と、いって、ぼたもちを投げつけて帰っていきました。
 ふく八は、ペロリと舌を出し、
「これは、ごちそうさま」
と、いって、たらふくぼたもちを食べました。
 それからのち、ふく八はテングのうちわを使って、低くて困っている人の鼻を高くしてやり、高くて困っている人の鼻を低くしてやって、たいへんみんなから喜ばれたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → テディベアの日
きょうの誕生花 → ななかまど
きょうの誕生日 → 1966年 高嶋政伸(俳優)

きょうの新作昔話 → 天より高い桜の花も
きょうの日本昔話 → テングの羽うちわ
きょうの世界昔話 → ふしぎなブドウ
きょうの日本民話 → 洪水から村をすくった若者
きょうのイソップ童話 → ねむっているイヌとオオカミ
きょうの江戸小話 → 鬼のたまご

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月26日の日本の昔話 キツネのしかえし

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月26日の日本の昔話

キツネのしかえし

キツネのしかえし

 むかしむかし、ある村に、げんたという、わかいおひゃくしょうがいました。
 ある日、畑しごとがおそくなり、山道をひとりでかえっていくと、とつぜん目のまえに、月のひかりをあびたうつくしいむすめさんがあらわれて、
「こんばんは、げんたさん」
と、スズをころがすようなやさしい声で話しかけ、ニコニコとほほえんでいます。
(こんなところにむすめさんがいるはずはない。きっとキツネが、わたしをだまそうとしているのだ)
 げんたはそう思って、むすめさんの手をグイッとつかみました。
 そしてよく見ますと、やっぱり手には、バサバサと毛がはえていました。
 キツネとわかってしまえば、もうこわくはありません。
「やい、キツネ! こんなことで、おれをばかせると思うのか。もう二どといたずらができないようにしてやろう」
と、げんたはいいました。
 するとむすめは、
「コーン、コーン。どうか、ゆるしてくださいませ」
と、ないてあやまりました。
 そこでげんたは、コツンと、げんこつでむすめのあたまをたたいてからはなしてやりますと、白いキツネのすがたになって、林の中へにげていきました。
 それからいく日かたったあるばん。
 げんたが友だちの家へいってのかえり道です。
 川にそって夜道をテクテクあるいて、いつもわたっているはしのところまでやってきました。
「うん? ・・・あれ?」
 げんたは、目をパチクリさせました。
 いつもは一つだけのはしが、こんやは二つもあります。
 ビックリしてよく見なおしますと、こんどは三つのはしになりました。
 そっくりおなじはしが、三つもならんでいるのです。
「はて、どのはしをわたればいいのかな?」
 げんたは三つのうちのまん中のはしへ、そっと足をかけました。
 そして、ソロリ、ソロリと、あるきますと、
「あっ!」
 そのはしはたちまちきえて、げんたはドボーンと川の中へおちてしまいました。
 そのとき、
「コーン、コーン」
と、おかしそうにキツネのわらい声がしました。
 このあいだげんたに見やぶられたむすめのキツネと、そのなかまたちのしかえしだったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → サーカスの日
きょうの誕生花 → ピラカンサ
きょうの誕生日 → 1971年 千秋(タレント)

きょうの新作昔話 → 黒姫物語
きょうの日本昔話 → キツネのしかえし
きょうの世界昔話 → クマの子ハンス
きょうの日本民話 → おばばが消えた
きょうのイソップ童話 → 神さまとカメ
きょうの江戸小話 → 長者の最後

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月25日の日本の昔話 ネコがネズミをおうわけ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月25日の日本の昔話

ネコがネズミをおうわけ

ネコがネズミをおうわけ

 むかしむかしの大むかし。
 神さまが、人間や動物や草木をつくったばかりのころです。
 ある日、神さまが人間の世界を歩いていると、悪魔(あくま)が出てきて、
「おまえは、いろんなものをつくったが、まったく役に立たないものがある。『イバラ』や『アザミ』なんかは、人間を刺(さ)すばかりで、なんの役にも立ちやしない。人間どもはこまって、それをさけているじゃないか」
と、からかいました。
 すると神さまが言いました。
「とんでもない。『イバラ』や『アザミ』は、虫たちにとって大切な住みかだ。ちゃんと役に立っている。おまえのような悪魔のからだを刺すためにもな」
「ふん! なにを言うか。こんなもの、痛くもかゆくもないわ」
 悪魔は笑いながら、イバラやアザミを足でふみつけました。
「なにをする!」
 怒った神さまは、すぐにネズミをつくって、悪魔の口の中へほうりこみました。
「ギャーーッ!」
 ネズミが悪魔の舌をかみ切ったのです。
(くそっ! おぼえていろ!)
 口をきけなくなった悪魔は、おなかに入ったネズミをかわいがり、どんどん子どもを生ませて、口からはきだしました。
 悪魔のおなかから出たネズミは、神さまのつくったものをなんでもかじりました。
(ふん、どんなもんだ)
 悪魔は、いよいよ面白がって、ネズミをふやしつづけました。
 ネズミがふえて、一番こまったのは人間です。
 せっかく神さまに人間の世界をつくってもらっても、このままではネズミにほろぼされてしまいます。
 そればかりか、恐ろしいネズミたちは、人間を見ても逃げるどころか、とびかかってくるしまつ。
 ひさしぶりに人間の世界へやってきた神さまは、どこもかしこもネズミだらけで、まるでネズミのための世界になっているのでおどろきました。
 人間たちが、神さまにいいました。
「神さま、なんとかネズミを退治してください。このままでは、わしらも死んでしまいます」
「よし、わかった」
 神さまは、すぐにネコをつくって、
「ネズミどもを、食い殺せ」
 ネコは次つぎとネズミをおそい、かたっぱしからネズミをかみ殺します。
 人間は喜んでネコをかわいがり、どんどん子どもを生ませました。
 おかげでネコがふえるにつれて、ネズミの数がへっていき、やがてネズミは、ネコの姿を見ただけで逃げるようになったのです。
 ネコが人間にかわいがられ、ネズミを見ると追いかけてかみ殺すのは、その時からだそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 民間航空記念日
きょうの誕生花 → ういきょう
きょうの誕生日 → 1959年 ラッキィ池田(振附師)

きょうの新作昔話 → 十三塚(じゅうさんづか)
きょうの日本昔話 → ネコがネズミをおうわけ
きょうの世界昔話 → 悪魔をだましたイワン
きょうの日本民話 → からいもと盗人
きょうのイソップ童話 → 3頭のウシとライオン
きょうの江戸小話 → おない年

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月24日の日本の昔話 タヌキとキツネ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月24日の日本の昔話

タヌキとキツネ

タヌキとキツネ

 むかしむかし、タヌキとキツネがいました。
 タヌキもキツネも、化けるのが大好きです。
「日本で、いちばん化けるのがじょうずなのは、このタヌキさんだ」
 ある日、タヌキがいいました。
 するとキツネも、
「日本で、いちばん化けるのがじょうずなのは、このキツネさんだ」
と、いいました。
「じゃ、ひとつ、化け比べをしようじゃないか。どっちが日本一か、決めようぜ」
 タヌキが、いいました。
「よしきた。じゃ、さっそく始めるよ」
 キツネはそういうと、ドンドン、ドンドン走っていってしまいました。
「このへんで、よかろう。・・・コンコンコンの、コココン、コン!」
 タヌキの姿が見えない所までくると、キツネはおまじないをとなえて、道ばたのおじぞう(→詳細)さんに化けてしまいました。
「キツネくん、なにに化けたのかな?」
 タヌキは、あとからやってきました。
「どっこいしょ。このへんで、お弁当にしようか」
 くいしんぼうのタヌキは、道ばたにすわってお弁当を取り出しました。
 おいしそうな、おにぎりです。
「いただきまーす」
 パクンと、食ベようとしたとき、タヌキはおじぞうさんを見つけました。
「これはこれは、おじぞうさん。おこぎり一つ、おそなえしましょう」
 タヌキがおにぎりをそなえて、おじぎを一つすると、今さっきそなえしたおにぎりが、もうありません。
「おや? 変だなあ」
 もう一つあげて、おじぎをして、おじぞうさんの手を見ると、半分食べかけのおにぎりがのっかっています。
「石のおじぞうさんが、おにぎりを食ベるはずがない。・・・ははん、さてはキツネだな」
 タヌキがおじぞうさんの手をたたくと、おじぞうさんはキツネにもどりました。
 さて、今度はタヌキが化ける番です。
「ぼくは、お殿さまに化けてみせるよ。あしたのお昼ごろ、りっぱなお殿さまになって、お供を連れてこの道を通るから、よく見ておくれ」
「よし、あしたのお昼ごろだね」
 タヌキとキツネは、そういって別れました。
 つぎの日です。
 せっかちなキツネは、朝から道ばたにすわって、タヌキの化けたお殿さまを待っていました。
 でも、タヌキはなかなかきません。
 キツネは、いつのまにかウトウト眠ってしまいました。
 どのくらいたったでしょう、キツネが目をさますと、道の向こうから、
「下にー、下にー。お殿さまのお通りいー!」
 と、声が聞こえてきました。
「あっ、きたぞきたぞ」
 キツネが飛び起きてみると、りっぱな行列が、しずしずと進んできます。
「よお、タヌキくん、うまく化けたなあ。ほんとにお殿さまそっくりだ」
 キツネはお殿さまの前へ出ていって、大声でいいながら、一生けんめい手をたたいてほめました。
 ところがそれは、ほんとうのお殿さまの行列だったのです。
「なんと、ふらちなキツネめ!」
 お殿さまの家来が飛び出してくると、キツネをつかまえて、さんざんにたたきました。
「やーい、キツネくん、おにぎりをぬすんだばつだよ」
 タヌキはたたかれているキツネを見て、大喜びしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際連合デー
きょうの誕生花 → コトネアスター(べにしたん)
きょうの誕生日 → 1973年 ゴリけん(芸人)

きょうの新作昔話 → 山下淵(やましたぶち)の大なまず
きょうの日本昔話 → タヌキとキツネ
きょうの世界昔話 → 魔術の本
きょうの日本民話 → 弘法井戸
きょうのイソップ童話 → オオカミとヤギ
きょうの江戸小話 → ネズミの嫁入り

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月23日の日本の昔話 化け上手

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月23日の日本の昔話

化け上手

化け上手

 むかしむかし、あるところに、人を化(ば)かすタヌキが山にいて、とうげをこえる人がこまっていました。
 あるとき、どきょうのある商人がウマに荷物をたくさんつんで、この山にさしかかりました。
「しめしめ、よいものがきた」
 タヌキは喜んで、若い娘に化けました。
 えっちらほっちらと、山を登ってきた商人は、娘を見てあやしみました。
「おかしいな、こんな山に娘が一人で。ははーん。こいつがいたすらタヌキじゃな。よし、ひとつこらしめてやれ」
 そう思い、商人はそしらぬ顔で近づいて行きました。
 そして、
「こらこらタヌキ、そんな下手くそな化け方じゃ、すぐにバレてしまうわい。わしはとなりの森のキツネじゃが、ほれ、よう化けとるじゃろうが」
 タヌキはビックリして、商人を見ました。
(なるほど、ウマから荷物まで本物そっくりじゃ。こりゃ、わしの負けじゃ)
タヌキは商人に手をついて頭を下げると、
「キツネどん、わしにひとつ、その化け方を教えてもらえんじゃろうか」
と、たのんだのです。
「ええとも、ええとも。簡単じゃ。この化け袋さ入って呪文(じゅもん)をとなえたら、すぐに上手になれるだ」
 そう言いながら、からっぽの袋の口を開けました。
「それだけでええのか?」
と、言いながらタヌキがその中へ入ると、商人はすぐに口をしっかりむすんで、
「ちいとばかし、ガマンするのじゃぞ、すぐに呪文さとなえて出してやるからな」
 そして家へ帰ると、そのタヌキでタヌキ汁をこしらえて、家族みんなでフーフー言いながら、食べてしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 電信電話記念日
きょうの誕生花 → あけび
きょうの誕生日 → 1973年 はしのえみ(タレント)

きょうの新作昔話 → 青の洞門(どうもん)
きょうの日本昔話 → 化け上手
きょうの世界昔話 → ロバの王子
きょうの日本民話 → しょうじにうつる大ギツネ
きょうのイソップ童話 → 同じ重さの荷物をはこぶロバとラバ
きょうの江戸小話 → ウシ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月22日の日本の昔話 ものいうかめ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月22日の日本の昔話

ものいうかめ

ものいうかめ

 むかしむかし、あるところに兄と弟がおりました。
 兄は金持ちでしたが、弟は貧乏で、おかあさんのめんどうをみていました。
 ある日、弟が山へしばかりにいくと、カメが出てきました。
 カメは、まるで人間みたいに、こんなことをいいました。
「おまえは親孝行な男だから、金もうけをさせてやろう。おれを町へつれていけ。おれが歌を歌って金をかせいでやるから」
 そこで弟は、カメを連れて町へ行きました。
 そして、人通りの多い町かどに立って言いました。
「さあさあ、めずしいカメだよ。なんと、歌を歌うカメだよ」
 人々が、みるみるうちに集まってきました。
 すると、カメはきれいな声で歌を歌い出したのです。
「ほう、こりゃあ、ふしぎなカメだ」
「これはみごと、おもしろい」
 人々は感心して、お金をたくさん投げてくれました。
 そんなことを何度も繰り返しているうちに、弟は金持ちになって、大きな家までたてました。
 これを見た兄は、さっそく弟のカメをかりて、町へ出かけました。
 そして、にぎやかな町かどで、
「さあさあ、よっといで、見といで、聞いといで。めずらしいカメだよ。歌を歌うカメだよ」
と、人々を呼び集めました。
 ところが、カメはいっこうに歌を歌おうとはしません。
 見物人たちは、おこりだしました。
「このうそつきめ!」
「ふてえやつだ」
 兄は見物人から、ひどいめにあいました。
「ちくしょう、おまえのせいだ!」
 怒った兄は、カメを殺してしまいました。
「かわいそうに」
 弟は泣き泣き、死んだカメを連れて帰って、家のうらに埋めました。
 そしてその上に、一本の木を植えました。
 つぎの日、外へ出た弟は、思わず声をあげました。
「ややっ、こりゃあ、ぶったまげた。おっかあ、はようきてみれ」
 おかあさんが飛んで出て見ると、きのう植えた木がグングンのびて、天まで届いているではありませんか。
 そして、もっとおどろいたことには、その木をカメが何匹もならんで、ゾロゾロとおりてくるのです。
 おまけに、そのカメたちは、みんな口にお金をくわえているのです。
 弟は、ますますお金持ちになりました。
「おまえが、やさしい心を持っているおかげだよ」
と、おかあさんも大喜びしました。
 その話を聞いた兄は、カメのお墓の木の枝をおって、うちへ持って帰って植えました。
 木はグングンのびて、天まで届きました。
「こりゃあ、ありがたい。今にカメが金をくわえておりてくるぞ」
 兄はニヤニヤしながら、見上げていました。
 まもなく、カメが木をつたっておりてきました。
 だけど、どのカメもお金なんかくわえていません。
「この、ろくでなしのカメどもめ、はやく金を持ってこい!」
 兄はカンカンになって怒りました。
 そして、
「もういい。わしが自分で取りに行く!」
 兄は木をドンドンと登っていきましたが、途中で手がすべってしまい、そのまま地面に落ちて大けがをしたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → パラシュートの日
きょうの誕生花 → みせばや
きょうの誕生日 → 1973年 イチロー(野球)

きょうの新作昔話 → 気のいい山姥
きょうの日本昔話 → ものいうかめ
きょうの世界昔話 → トム・ティット・トット
きょうの日本民話 → 愛犬が知らせた山くずれ
きょうのイソップ童話 → 恋するライオンとお百姓
きょうの江戸小話 → 春の空気

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月21日の日本の昔話 ムカデの医者むかえ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月21日の日本の昔話

ムカデの医者むかえ

ムカデの医者むかえ

 むかしむかし、とても仲良しの虫たちが、一軒の家にいっしょに住んでいました。
 ある日のこと、カブトムシが急に苦しみ出しました。
「どうした、カブトムシどん」
「おなかがいたい、いたいよう」
「何か悪い物でも食べたかね」
 虫たちは心配そうに、カブトムシの周りに集まりました。
「とにかく、医者を呼んで来ないと」
「だれが一番、足が速いんじゃ」
 すると、年取ったカナブンがいいました。
「そりゃあ、ムカデ君だろう。なんといっても、足が百本もあるんだから」
「よし分かった。ぼくにまかせろ!」
 ムカデは、すぐにげんかんに向かいました。
 それからしばらくしましたが、ムカデ君はなかなか帰ってきません。
「おそいなあ、どうしたんだろう」
「だれか、ようすを見て来いよ」
 そこで、バッタ君とカミキリムシ君がようすを見に行くことになりました。
 2匹がげんかんにいくと、ちょうどムカデ君が、わらじ(→詳細)をぬいでいるところでした。
「やっと帰ってきたんだね、ムカデ君」
 するとムカデ君は、首を横に振りながらいいました。
「ちがうよ、ぼくの足は百本あるから、わらじをはくのに時間がかかるんだ。まだ、半分しかはいていないんだ」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → あかりの日
きょうの誕生花 → むらさきしきぶ
きょうの誕生日 → 1959年 渡辺謙(俳優)

きょうの新作昔話 → 白い竜
きょうの日本昔話 → ムカデの医者むかえ
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 かりの名人
きょうの日本民話 → 三人のほら吹き
きょうのイソップ童話 → キツネと木こり
きょうの江戸小話 → 頭痛のもと

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月20日の日本の昔話 カモ汁

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月20日の日本の昔話

カモ汁

カモ汁

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 あるとき、庄屋(しょうや→詳細)さんがきっちよむさんのところへ、
「カモ(→詳細)をたくさんとったので、今夜カモ汁をごちそうするから、くるように」
と、使いをよこしました。
(あのけちん坊の庄屋さんが、カモ汁をごちそうするなんて、めずらしいこともあるものだ。よほど、たくさんのカモをとったにちがいない。それともまた、骨董(こっとう→価値のある古い美術品)のじまんかな?)
 きっちょむさんは、思いきり食べてやろうと思って、昼ご飯も夕ご飯も食べないで、庄屋さんのところへ出かけました。
「おう、よくきてくれたな」
 庄屋さんは、きっちょむさんを部屋にあげると、カモをとったときの自慢話(じまんばなし)をうんと長くしてから、カモ汁をだしました。
 ところが、おわんのふたをとってみたら、中に入っているのはダイコンばかり。やっとのことで、小さいカモの肉が一切れ見つかりました。
「どうだね、カモ汁の味は。よかったら、どんどんおかわりしてくれ」
 きっちょむさんがおかわりをしても、やっぱりダイコンばっかりです。
(ふん、なにがカモ汁だ。これじゃダイコン汁と同じじゃないか)
 きっちょむさんは腹を立てましたが、ガマンして、
「とてもおいしいカモ汁でした。おかげさまで、お腹がいっぱいになりました」
と、お礼を言って帰りました。
 それを見て、庄屋さんは腹をかかえて笑いました。
「さすがのきっちょむさんも、とんだカモ汁をくわされたもんだ」
 ところが、二、三日たって、きっちょむさんが、あわてて庄屋さんの家へかけこんできました。
「庄屋さん、早くきてください。おらの畑に、いま、カモがどっさりとまっています」
「よし、すぐいく!」
 庄屋さんは、鉄砲を肩にかけ、きっちょむさんのあとから走っていきました。
 でも、畑にはカモなんか一羽もいません。
「カモなんか、どこにもいないじゃないか。わしをだますと承知(しょうち)しないぞ」
 庄屋さんはすっかり腹を立て、きっちょむさんに鉄砲を向けました。
 でも、きっちょむさんはビクともしません。
「ほれ、あんなにたくさんいるのが、見えませんか?」
 言われて、きっちよむさんの指さすほうを見ると、一本の木に、ダイコンが何本もぶらさげてあります。
「ばかもん! あれはダイコンじゃないか!」
「とんでもない。このあいだ、庄屋さんの家でごちそうになったカモですよ」
「むっ、むむ・・・」
 さすがの庄屋さんも、これには言い返す言葉がありませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → リサイクルの日
きょうの誕生花 → りんどう
きょうの誕生日 → 1964年 山口智子(俳優)

きょうの新作昔話 → サルの顔はなぜ赤い
きょうの日本昔話 → カモ汁
きょうの世界昔話 → 亡霊の恩返し
きょうの日本民話 → 死人を運ぶネコ
きょうのイソップ童話 → ヒツジ小屋にオオカミを連れこむヒツジ飼いと、イヌ
きょうの江戸小話 → たんじょうび

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月19日の日本の昔話 長ーい文字

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月19日の日本の昔話

長ーい文字

長ーい文字

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん→詳細)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 ある日のこと、和尚(おしょう→詳細)さんがとなり村の寺へ用足しに行ったのですが、なにやら浮かぬ顔で帰ってきました。
 和尚さんは、庭を掃除していた一休さんの顔を見るなり、
「おお、一休。今日、わしはえらいことをとなり村の和尚と約束してしもうての。おまえに知恵(ちえ)をかしてほしいのじゃ」
「はい、私でお役に立つことでしたら」
「そうか、いつもすまんのう。実は、となり村の和尚とせけん話をしておっての、そこでおまえの話がでたんじゃ。わしが『一休は知恵者じゃで、なんでも知っておるし、なんでもできる』と、言うたら、和尚め、『それやったら、一休に日本一長い文字を書いてもらおう』と、言いおった。わしも意地はってひき受けたんじゃが。・・・一休、おまえにできるかのう?」
「はあ。・・・仕方ありませんね。明日までになんとか考えてみます」
 次の日、一休さんはニコニコしながら、和尚さんのところへ行きました。
「和尚さん、日本一長い字を書きますから、隣り村のお寺へお使いを出して、あちらから、うちの寺まで紙をしきつめるように言うてください。それと、たらいに墨(すみ)をいっぱい。あと、竹ぼうきの筆を一本用意してください」
「おお、できるか! よし、わかった!」
 さて、用意ができたところで、一休さんは隣り村のお寺まで出かけて行きました。
 となり村の和尚さんは、
「まったく、こんなにたくさんの紙を用意させおって、書けるもんなら書いてみろ。ただし、もし書けなんだら、紙代を弁償(べんしょう)してもらうぞ」
「ご心配なく。それでは、私の筆についてきてください」
と、言うなり、竹ぼうきで作った太い筆に墨をたっぷりふくませ、つううううーっ、と、紙の上にまっすぐな線を走らせました。
 どこまでもどこまでも線はつづき、ようやく一休さんたちのお寺にとうちゃくしました。
「なんじゃあ、これは。ただの線ではないか。こんなものは文字とはいえん。さあ、約束通り、紙代を返してもらおう」
と、いうとなり村の和尚さんに、一休さんはニッコリ笑うと、今まで引いてきた線の最後をピンと右にはねて、
「はい、ひらがなの『し』でございます」
 これには、となり村の和尚さんも、返す言葉がありませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バーゲンの日
きょうの誕生花 → にがうり(つるれいし)
きょうの誕生日 → 1955年 ラサール石井(タレント)

きょうの新作昔話 → 魂のある人形
きょうの日本昔話 → 長ーい文字
きょうの世界昔話 → わらった王女
きょうの日本民話 → ネズミをたいじするには
きょうのイソップ童話 → イタチとヤスリ
きょうの江戸小話 → 万の字

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月18日の日本の昔話 竹の子童子

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月18日の日本の昔話

竹の子童子

竹の子童子

 むかしむかし、三ちゃんという、おけ屋の小僧さんがいました。
 ある日のこと、三ちゃんは、竹やぶへ竹を切りにいきました。
 竹は、おけのたがになります。
 たけを丸い輪にしてすぎの木をとめると、じょうぶなおけができるのです。
「どの竹を切ろうかな」
 三ちゃんが、ひとりごとをいうと、後ろのほうで大きな竹がザワザワとゆれました。
「三ちゃん、三ちゃん」
と、小さな声も聞こえました。
「おや、だれだろう?」
 三ちゃんは、グルリと、あたりを見回しました。
 しかし、だれもいません。
 ただ、竹がザワザワゆれるばかりです。
「なんだ、だれもいないじゃないか」
 三ちゃんは、歩きだしました。
 するとまた、
「三ちゃあん、三ちゃあん」
 さっきより、大きな声です。
「おい、さっきから呼んでるのはだれだ? どこにかくれているんだあ?」
 三ちゃんがいいました。
 すると、すぐそばの竹がいいました。
「ここだよ、ここだよ。この竹の中だよ」
「変だなあ、竹が口をきいてらあ」
 三ちゃんは、竹に耳をつけてみました。
「三ちゃん、お願いだ。この竹を切っとくれ」
 ふしぎに思った三ちゃんは、その竹を切り倒してみました。
「わぁーい、助かった。ありがとう!」
と、いって、竹の中から飛び出してきたのは、小さい小さい男の子です。
 背の高さは、三ちゃんの小指くらいしかありません。
「おまえはいったい、なんだ?!」
 三ちゃんは、目をまん丸にして小さい男の子を見ました。
「ぼくは、天の子どもだよ」
 小さい男の子は、ピョンと、三ちゃんの手のひらに飛びのって答えました。
「ゆうべ、流れ星に乗っかって空を飛んでいたら、いじわるな竹がぼくをつかまえて、とじこめてしまったんだ。でも、三ちゃんのおかげで助かった。やっと天に帰れる。ぼくがいなくなって、天のおかあさんはきっと心配しているよ」
「そうか、それはよかった。でも、どうしてぼくの名まえを知ってるの?」
 三ちゃんが聞くと、男の子はニッコリ笑いました。
「天の子はね、世界じゅうのことをみんな知っているんだよ」
「ふーん、じゃ、きみの名まえは?」
「竹の子童子(たけのこどうじ)だよ」
「竹の子童子か。いくつ?」
「ぼくの年かい? まだ、たったの千二百三十四才だよ」
「うへぇ!」
 三ちゃんがビックリすると、竹の子童子は、またニコニコしました。
「三ちゃん、助けてもらったお礼に、願いをかなえてあげるよ」
「ほんとうかい?」
「ほんとうさ。天の子は、うそをつかないんだ」
 三ちゃんは、しばらく考えてから答えました。
「ほんとうなら、ぼくをお侍にしておくれ。強いお侍になって武者修行(むしゃしゅぎょう)にいきたい」
「よし、じゃ、目をつぶって」
 三ちゃんが目をつぶると、竹の子童子が、大きな声でいいました。
「竹の子、竹の子、お侍にしておくれ。・・・ほうら、三ちゃんお侍になったよ」
 竹の子童子にいわれて、三ちゃんは目をあけてみました。
 すると、三ちゃんはりっぱなお侍になって、にぎやかな都にきていました。
「竹の子童子、ありがとう」
 三ちゃんがお礼をいおうと手のひらを見ると、いつのまにか、小さい男の子はいなくなっていました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → フラフープの日
きょうの誕生花 → わた
きょうの誕生日 → 1955年 郷ひろみ(歌手)

きょうの新作昔話 → へびきり峠
きょうの日本昔話 → 竹の子童子
きょうの世界昔話 → 金になったお姫さま
きょうの日本民話 → 巨大な魚のタマゴ
きょうのイソップ童話 → ネズミとイタチ
きょうの江戸小話 → よくみとどける

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月17日の日本の昔話 鳥のみじいさん

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月17日の日本の昔話

鳥のみじいさん

鳥のみじいさん

 むかしむかし、やさしいお百姓(ひゃくしょう→詳細)のおじいさんがいました。
 おじいさんは、たいそうおもちが好きでしたから、毎日毎日おばあさんのつくってくれたおもちを持って、畑へ出かけていきました。
 きょうもお昼になったので、おじいさんは木の下にすわって、うれしそうにおもちの包みを開きました。
「おいしそう。それでは、いただきますよ」
 おじいさんが、ちょうど半分ほど食ベたとき、チュンチュンチュンと、小さな鳥がおりてきて、
♪チチンピヨドリ あのもち食ベたや チチランポ。
♪ごしょのさかずき チチランポ。
と、歌いだしました。
「ほうほう、おまえは、おもちがほしいのか。さあさあ、お食ベ、お食ベ」
 おじいさんが、おもちを二つやると、鳥はペロリと食ベてから、
♪チチンピヨドリ も一つ食ベたや チチランポ。
♪ごしよのさかずき チチランポ。
「よしよし、おなかがすいているのだね」
 食べても食ベてもほしがるので、おじいさんは大好きなおもちを、とうとう全部、鳥にやってしまいました。
 それでも鳥は、
♪チチンピヨドリ おもち食ベたや チチランポ。
♪ごしょのさかずき チチランポ。
「おやおや、これは困った。もうないんだよ。でも、そんなにおもちが食べたけりゃ、わたしのおなかの中に入ってお食べ」
「それじゃ、おじいさん、口をあけてくださいな」
「よしよし、これでいいかな」
 おじいさんが口をあけると、鳥はチュンチュンチュンと、おなかの中に入っていきました。
 しばらくすると、おじいさんのおなかの中で、
♪チチンピヨドリ うまかった。
♪ごしょのさかずき チチランポ。
と、鳥が歌いだしたのです。
「おやおや、わたしのおなかの中で歌っておるわい。帰って、ばあさまにも聞かせてやろう」
 おじいさんが家に帰って、おばあさんに鳥の歌を聞かせると、おばあさんも大喜びです。
 そのうち、村の人がつぎからつぎヘと聞きにきて、おじいさんの家は大にぎわい。
 やがて、このことが殿さまの耳にも入りました。
 おじいさんはお城に呼ばれて、殿さまに鳥の歌を聞かせることになりました。
「おなかの中で鳥が歌うとは、そのほうか」
「はい、お殿さま」
「これは珍しい。わしにも、ひとつ聞かせてくれ」
「はい、かしこまりました」
 すると、おじいさんのおなかの中で、
♪チチンピヨドリ おいしいおもち。
♪ごしょのさかずき チチランポ。
 鳥が、かわいい声で歌い出しました。
 殿さまは大喜びです。
 おじいさんは、たくさんのほうびをもらいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → カラオケ文化の日
きょうの誕生花 → みずひき
きょうの誕生日 → 1961年 賀来千香子(俳優)

きょうの新作昔話 → 鳥追いの森
きょうの日本昔話 → 鳥のみじいさん
きょうの世界昔話 → 塩のように好き
きょうの日本民話 → 山へ入らない日
きょうのイソップ童話 → 王さまを欲しがるカエル
きょうの江戸小話 → あいさつ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月16日の日本の昔話 腰折れスズメ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月16日の日本の昔話

腰折れスズメ

腰折れスズメ

 むかしむかし、あるところに、心やさしいおばあさんと欲深いおばあさんが、隣あわせに住んでいました。
 ある朝、心やさしいおばあさんが、ほうきで庭をはいていますと、庭のすみの草むらで、チイチイと悲しそうに鳴くスズメがいました。
「おおっ、可哀想に」
 心やさしいおばあさんが、スズメを手のひらにそっとのせますと、なんとスズメの腰の骨が折れているではありませんか。
 おばあさんはそのスズメを家へ連れてかえり、一生懸命に看病しました。
 するとだんだん、スズメの傷は治っていきました。
 ある日の事、スズメが何か言いたそうにしています。
「どうしたんだい? ああ、元気になったので、お家に帰りたいんだね」
 おばあさんがスズメを庭先に出してやると、スズメは元気よく飛んでいってしまいました。
「よかったわ、あんなに元気になって。でも、あのスズメがいなくなると、なんだかさみしいね」
 それから何日かたった、ある朝、いつものようにおばあさんが庭をほうきではいていますと、なにやら、なつかしい鳴き声が聞こえてきます。
「あれあれ、あんたはあの時のスズメかい? うれしいね、会いに来てくれたのかい」
 スズメはうれしそうに鳴くと、おばあさんの前に小さなタネを落として、そのまま飛んでいってしまいました。
 そのタネは、ひょうたんのタネです。
 おばあさんはスズメにもらったひょうたんのタネを、庭にまきました。
 やがて秋になり、スズメのくれたひょうたんは立派に成長して、たくさんのひょうたんが実りました。
 そして、すっかり大きくなったひょうたんを取ってみると、なんだかすごく重たいのです。
「おや? どうしてこんなに重たいのかね? 何かが入っているような」
 おばあさんがそのひょうたんを割ってみますと、不思議な事に、中にはお米がたくさんつまっているのです。
「あれまあ、不思議な事もあるものだね」
 おばあさんは、そのお米でご飯をたいてみました。
 そのご飯のおいしいこと。
 おばあさんはそのひょうたんのお米を近所の人にくばり、あまったお米を売って、お金持ちになりました。
 さあ、それをねたましく思ったのは、隣の欲深いおばあさんです。
 欲深いおばあさんは、庭で遊んでいるスズメに石をぶつけてつかまえると、かわいそうに、そのスズメの腰の骨をむりやり折ってしまいました。
 そして、その腰の折れたスズメをかごに入れると、そのスズメに毎日えさをやりました。
「さあ、はやく良くなって、わたしにひょうたんのタネを持ってくるんだよ」
 そして、一ヶ月ほどがたちました。
「もう、そろそろいいだろう」
 欲深いおばあさんは、スズメを庭に連れ出すとこういいました。
「いますぐ飛んでいって、米のなるひょうたんのタネを持ってくるんだよ。さもないと、お前をひねりつぶしてしまうからね」
 スズメのキズはまだ治っていませんが、こわくなったスズメは痛いのをガマンして、そのまま飛んでいきました。
 それから何日かたったある日の夕方、毎日庭先でスズメが帰ってくるのを待っている欲深いおばあさんの前に、あのスズメが現れました。
「やれやれ、やっときたね」
 欲深いおばあさんは、スズメの落としていったひょうたんのタネを拾うと、それを庭にまきました。
 そのひょうたんのタネはどんどん大きくなって、秋には立派なひょうたんがたくさん実りました。
「よしよし、これでわたしも金持ちになれるよ」
 おばあさんが包丁を持ってきて、一番大きなひょうたんの実を割ってみました。
 すると中から出てきたのはお米ではなく、毒ヘビやムカデやハチだったのです。
「ひぇーーー!」
 他のひょうたんからも毒ヘビやムカデやハチなどがたくさん出てきて、欲深いおばあさんに襲いかかったという事です。

※ よく似たお話しが、外国にもあります。 ロシアの昔話 → 大きなスイカ

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界食糧デー
きょうの誕生花 → にしきぎ
きょうの誕生日 → 1951年 阿川泰子(ジャズ歌手)

きょうの新作昔話 → 鬼岳(おにだけ)
きょうの日本昔話 → 腰折れスズメ
きょうの世界昔話 → とびっこ
きょうの日本民話 → あさことゆうこ
きょうのイソップ童話 → ゼウスとヘビ
きょうの江戸小話 → おいはぎの用心

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月15日の日本の昔話 ふるやのもり

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月15日の日本の昔話

ふるやのもり

ふるやのもり

 むかしむかし、雨のふるくらい晩、おじいさんが子どもたちに、話を聞かせていました。
「じいさま、いちばんこわいもの、なんだ?」
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうがいちばんこわい」
 ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを盗もうと、屋根裏にひそんでいました。
 どろぼうが、これを聞いてニヤリ。
(ほほう。このおれが、いちばんこわいと)
「じいさま、けものでいちばんこわいもの、なんだ?」
「けものならば、・・・オオカミ(→詳細)だの」
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」
「そりゃ、ふるやのもりだ」
 ウマを食べようと、ウマ小屋にひそんでいったオオカミは、それを聞いておどろきました。
 ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる、雨もりのことです。
 だけど、オオカミはそんなこととは知りません。
「おらよりこわい、ふるやのもりとは、いったいどんな化け物だ?」
と、ガタガタふるえだしました。
 屋根裏のどろぼうも、話を聞いてヒザがガクガクふるえています。
「ふるやのもりというのは、どんな物だ?」
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(ふるやのもり)が、首にポタリとおちました。
「ヒェーーッ! で、でたあー!」
 どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン!
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりが、きたあっ!」
 オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、ウマ小屋から飛び出しました。
 振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうと、メチャクチャに走り続けます。
 夜明けごろ、うまいぐあいに、つき出ている木の枝を見つけたどろぼうは、ヤァー! と飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。
「たっ、助かった」
 オオカミのほうは、背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」
と、トラのところへ出かけました。
 話を聞いて、トラも恐ろしくなりましたが、いつもいばっているオオカミの前で、そんなことはいえません。
「ふるやのもりという化け物、必ず、わしが退治してやる。安心せい」
 トラとオオカミは、いっしょに、ふるやのもりをさがしに出かけました。
 すると、高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
 オオカミがそれを見て、ガクガクとふるえだしました。
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」
 トラは、こわいのをガマンして、
「ウォーッ! ウォーッ!」
と、ほえながら木をゆさぶりました。
 すると、どろぼうが二匹の上にドシン! と落ちてきました。
「キャーン!」
「ニャーン!」
 トラとオオカミは、なさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。
 どろぼうは、地面に腰を打ちつけて大けがをし、オオカミは、遠い山奥に逃げ、そしてトラは、海を渡って遠い国まで逃げて、二度と帰ってはきませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → きのこの日
きょうの誕生花 → しゅうめいぎく
きょうの誕生日 → 1950年 清水國明(タレント)

きょうの新作昔話 → つかずの鐘
きょうの日本昔話 → ふるやのもり
きょうの世界昔話 → 魔法使いの弟子
きょうの日本民話 → 炭焼きじいと古ダヌキ
きょうのイソップ童話 → オオカミとおばあさん
きょうの江戸小話 → ゆいごん

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月14日の日本の昔話 ヒバリとお日様

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月14日の日本の昔話

ヒバリとお日様

ヒバリとお日様

 むかしむかしのことです。
 お金持ちのヒバリがいました。
 ヒバリは、お金を貸す商売をしていました。
 ある春の日。
 お日さまがやってきて、ヒバリにお金を貸してくれとたのみました。
 ヒバリは、すぐにお金を貸してあげました。
 やがて、夏がきました。
 お日さまは、カンカンてっているだけで、お金を返しにきてくれません。
 ヒバリは、お日さまのところへいって、お金を返してもらいたいと思いました。
 けれども、あんまりお日さまがギラギラと光ってまぶしいく、それにとても熱かったので、近づくこともできません。
 そのうち、すずしい秋になりました。
 お日さまの光も弱くなりました。
 それでヒバリは、どんどん空高く上っていきました。
「お日さま、お金を返してください」
 ヒバリがさけびました。
 すると、お日さまは、
「今に返すから、もうちょっと待て」
と、いうだけで、雲(くも)にかくれてしまうのです。
 しばらくして、またお日さまのところへいくと、お日さまは大雨をふらせて、どこかへいってしまいました。
 かわいそうに、ヒバリはずぶぬれです。
 そんなことをしているうちに、冬がきてしまいました。
 毎日冷たい風がふいたり、冷たい雪がふったりするので、ヒバリは、お日さまのところへいくことができません。
 それどころか、草むらの巣の中で、「寒い寒い」と、ふるえていました。
 そして、お正月になりました。
 ヒバリは、おもちをついたり、ごちそうをつくったりしました。
 だから、お金をすっかり使ってしまったのです。
 もう、お金はありません。
 だからどうしても、お日さまからお金を返してもらわないと困ります。
 ヒバリは、春がくるのを待ちました。
 そしてとうとう、春がきました。
 ヒバリは喜びいさんで、空高く上っていきました。
 それなのに、お日さまは知らん顔をして、お金を返そうとしないのです。
 でも、ヒバリはガマン強く空に上っては、
「貸した金返せ。貸した金返せ」
と、さけび続けました。
 それで今でも春になると、ヒバリは高い空の上で、一生けんめいにさけび続けているのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 鉄道の日
きょうの誕生花 → テランセラ
きょうの誕生日 → 1970年 永作博美(俳優)

きょうの新作昔話 → 玄蕃丞狐(げんばのじょうぎつね)
きょうの日本昔話 → ヒバリとお日様
きょうの世界昔話 → 世界一美しい物
きょうの日本民話 → 永平寺のマメ太鼓
きょうのイソップ童話 → ヘビとイタチとネズミ
きょうの江戸小話 → ちょうちん

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月13日の日本の昔話 はなしずきの殿さま

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月13日の日本の昔話

はなしずきの殿さま

はなしずきの殿さま

 むかしむかし、あるところに、たいへんはなしのすきな殿さまがいました。
 はなしをきいているときは、ニコニコしていますが、はなしをきいていないときは、あくびばかりしています。
 けらいたちは、かわるがわる殿さまのところへいって、はなしをしました。
 それで、しまいにははなしがなくなってしまいました。
「ああこまった。いやになるまで、はなしをしてくれるものはいないのか」
と、殿さまは、ためいきをつきました。
 ある日、ひとりのわかものが、お城へやってまいりました。
「殿さまに、おはなしをしにまいりました。おはなしをして、お姫さまをお嫁さんにいただぎます」
と、いいました。
「殿さまは、いくらはなしをおききになっても、あきないよ。だいじょうぶか?」
 しんぱいするけらいに、わかものはへいきな顔で、
「はい。だいじようぶ」
 けらいが、殿さまのところへつれていきました。
 わかものは、さっそくはなしをはじめました。
「むかしむかし、あったとさ。あるところに、大きな大きなかしの木があったとさ」
「うんうん。大きなかしの木があったのだね。なるほど、それで」
「はいはい」
 わかものは、エヘンと、一つせきをしました。
 そしてはなしをつづけました。
「その大きなかしの木にな。ドングリが、いっぱいいっぱい、なったとさ。そらのほしより、ずっとたくさんなったとさ」
「ほう、そうか。かしの木に、ドングリがなったのか。なるほどなるほど。それで」
「はいはい」
「かしの木はなあ、池のはたにあったとさ。池には石があったとさ。大きな石でな、カメのせなかのように、水にポッカリういていたとさ」
「ほう、そうかい。かしの木は、池のはたにあったのだね。池には石があったのか。カメのせなかのように、水の上にでていたのだね。なるほどなるほど。それからどうした」
「はいはい」
「ドングリが、ポロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ポロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると・・・」
「まてまて」
 殿さまは、わかもののはなしをとめました。
「それからドングリが一つ、ボロンと石におちたのだろう」
「はいはい。そのとおりでございます」
「コロコロころんで、池へジャボン。そうだろうな」
「はいはい。そのとおりでございます」
「そこまではわかった。そのさきをはなせ」
「はいはい」
 わかものは、おじぎをしました。
「しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ポロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ポロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると・・・」
「ちょっとまて」
 殿さまは、むずかしい顔をしました。
「わかった。そんなにおちたのなら、ドングリは、もうみんなおちてしまったろうな」
「いいえ、まだまだでございます」
 わかものは、りょう手をいっぱいにひろげました。
「こんなに大きいかしの木でございます。ドングリのかずはそらのほしよりも、たくさんあるのでございます。なかなかみんなおちません。おはなしは、もっとつづきます。どうぞおききをねがいます。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで、池へジャボン。
 しばらくすると・・・」
 わかもののはなしは、どこまでもおなじでした。
「まてまて。もうよい」
 殿さまはそういって、一つあくびをしました。
「ボロンにコロコロにジャボンの、そのはなしは、いつまでつづくのかな」
「はいはい」
 わかものは、また水をのみました。
「まだまだでございます。こんな大きなかしの木です。ドングリは、そらのほしより、たくさんあるのでございます。そのドングリが、一つものこらずおちるまで、このおはなしはつづくのでございます。
 しばらくすると、また一つ。
 ドングリが、ボロンと石におちたとさ。
 コロコロころんで・・・」
「やめてくれ。もうたくさんだ」
 殿さまは、とうとうあきてしまいました。
 わかものは、はなしをやめて、ニコニコとわらいました。
 やくそくどおり、お姫さまをお嫁にもらったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → サツマイモの日
きょうの誕生花 → ネリネ
きょうの誕生日 → 1973年 松嶋菜々子(俳優)

きょうの新作昔話 → 千匹オオカミ
きょうの日本昔話 → はなしずきの殿さま
きょうの世界昔話 → ヘンゼルとグレーテル
きょうの日本民話 → 助けられた赤ウシ
きょうのイソップ童話 → カニとキツネ
きょうの江戸小話 → 東西南(北ない)

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月12日の日本の昔話 タニシ長者

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月12日の日本の昔話

タニシ長者

タニシ長者(ちょうじゃ→詳細)

 むかしむかし、貧乏なお百姓(ひゃくしょう→詳細)さん夫婦がいました。
 子どもが生まれないので、さびしくてたまりません。
「神さま、どうぞ子どもをさずけてください。どんな小さい、タニシ(→詳細)の子でもいいんです」
 ふたりで毎日お願いしました。
 するとまもなく、あかんぼうが生まれました。
 かたつむりみたいな、タニシです。
「ほんとうに小さい、タニシの子だ」
「でも、神さまがくださったんですよ」
 お百姓のおとうさんとおかあさんは喜んで、大事に育てました。
 タニシの子は、何年たっても大きくなりません。
 そのうちに、おとうさんとおかあさんは年寄りになりました。
 ある日、おとうさんはつくったお米を俵(たわら)につめて、ウマにのせました。
「ああ、重いな、よいこらしょ」
 そのとき、頭の上で声がしました。
「おとうさん、その俵、村のお金持ちの所へ運ぶんでしょう」
 おとうさんは、ビックリしてあたりを見回しましたが、屋根の下のたなにのせてやったタニシが、日なたぼっこをしているだけです。
「だれもいない。なにかの聞きまちがいだな」
 そう思って、おとうさんはまた、俵をつんでいました。
「おとうさん、ぼくが俵を運んでいくよ」
 頭の上で、さっきと同じ声がしました。
 見回しても、タニシの子しかいません。
「? ・・・もしかして、おまえか?」
「はい、おとうさん」
 なんと、タニシがしゃべったのです。
 ビックリしたおとうさんは、おかあさんを呼びにいきました。
「ねえ、おとうさん、おかあさん。ぼく、うまは引いていけないから、俵の上にのせてよ。ぼくが届けてあげるから」
 また、タニシがいいました。
「なんてふしぎなんでしょう。きっと、神さまがくださった子どもだからですよ」
「それなら、お使いもできるかもしれないな」
 そういって、おとうさんは三俵積んだ米俵の上に、タニシをのせました。
「じゃ、おとうさん、おかあさん、いってきます」
「よく気をつけておいでよ」
 タニシの子がかけ声をかけると、ウマは歩きだしました。
 パカパカパカパカ。
 細い田んぼ道でも、ズンズンと、ウマを歩かせます。
 曲がる道も、タニシの子はちゃんと知っています。
 じょうずに回らせて、ドンドン進んでいきました。
 やがて、お金持ちの大きな家につきました。
「おや? ウマが、ひとりでお米を運んできたよ」
 庭にいた人たちが、目を丸くしました。
「お米を届けにきました。あの、おろして」
 俵の間から、タニシがいったので、みんなは飛びあがっておどろきました。
「タニシが、お米を運んできたよ!」
 その声を聞いて、お金持ちも出てきました。
 見ると、タニシの子はみんなにさしずして、俵を物置きへ運ばせています。
 それが終わると、お金持ちに大人のようにきちんとあいさつをしました。
「小さなタニシだが、なんてかしこい若者だろう」
 感心したお金持ちは、娘のおむこさんにきてもらいました。
 お嫁さんになったお金持ちの娘は、とてもやさしい人でした。
 貧乏なタニシのおとうさんとおかあさんにも、とてもしんせつにしてあげました。
 ある日、タニシのおとうさんたちの家へ、ふたりで出かけました。
 途中に、神社があります。
「わたし、ちょっとお参りをしていくわ」
 お参りして道までくると、おむこさんのタニシがいません。
「あなた、どこへ行ってしまったの?」
 泣きながらさがしていると、りっぱな男の人がきました。
「泣かなくてもいいよ。あんたが神さまにお参りしてくれたので、人間になれました」
「人間に。うれしいわ!」
 ふたりは喜んで、しあわせに暮らしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → たまごデー
きょうの誕生花 → とうがらし
きょうの誕生日 → 1960年 真田広之(俳優)

きょうの新作昔話 → 大工と三毛猫
きょうの日本昔話 → タニシ長者
きょうの世界昔話 → ディエロのるすばん
きょうの日本民話 → キジも鳴かずば、うたれまいに
きょうのイソップ童話 → 大きい魚と小さい魚
きょうの江戸小話 → したからのぞいていた

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月11日の日本の昔話 キンモクセイの妖怪

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月11日の日本の昔話

キンモクセイの妖怪

キンモクセイの妖怪

 むかしむかし、ある町に、ひとりのさむらいが住んでいました。
 ある日、さむらいの屋敷に知りあいの老人がたずねてきました。
 その夜は月も大きく、二人は障子(しょうじ)をあけて、月をながめながら酒をくみかわしました。
 ときどき、キンモクセイの花の甘い香りが、風にのって流れてきます。
「なんていい香りだ」
 そういって、老人が庭の方をながめたときです。
 大きなキンモクセイの木のそばに、白い着物を着た若い女が立っていたのです。
 青白い顔に長い髪をふり乱して、ジッとこちらを見ています。
(おかしいな。少し酔っぱらったかな)
 老人が、目をこすって立ちあがろうとしたとき。
 その女が、いきなり風のように飛んできて、老人の前にぬうっと顔を出しました。
「うひゃ!」
 老人は思わず身をのけぞりましたが、さむらいは、いっこうにおどろきもせず、
「客人の前で失礼な! さっさと消えないと、たたき切るぞ!」
と、いいました。
 そのとたん、女はスーッとはなれ、キンモクセイの木のかげに消えました。
「やれやれ」
 老人はホッと胸をなでおろすと、さむらいにたずねました。
「あれはなに者です?」
「さあ、なに者でしょう? 夜になると、いつもああやって出てきます」
「失礼だが、こわくありませんか?」
「べつになんともありません。気にしないで、どんどんやってください」
 さむらいは、老人のさかずきに新しい酒をつぎました。
 ところが、しばらくするとまた女が出てきて、今度は縁側の前を行ったり来たりするようになりました。
 歩くでもなく、すべるでもなく、フラフラと動きまわるのです。
 老人は、もう酒を飲むどころではなく、ブルブルとふるえながら女を見ていました。
 女はきゅうに立ちどまると、老人の前に顔をつき出し、ニヤリと笑いました。
 背筋がゾーッとして、老人は思わず息を飲み込みます。
「消えろというのに、まだわからんのか!」
 さむらいは、いきなり刀を抜くと、女に切りつけましたが、女はフワリと身をかわすと、ゆっくりと逃げていきます。
「待て!」
 さむらいははだしのまま庭へとびおり、女を追いかけました。
 女は、「早くおいで」といわんばかりに、ときどきうしろをふり返り、キンモクセイの木のかげに消えました。
 さむらいは、しばらく女の消えたあたりをさがしていましたが、ガッカリした顔でもどってきました。
「とうとう見失いました。まったく、しようのないやつで」
「いくらなんでも、殺すのはかわいそうですよ」
「とんでもない。あれは化けものですよ。戸があいていれば部屋の中にも来るし、布団の上にもあがってきます」
「なんと! さっきも聞いたか、おまえさんはこわくないのですか?」
「そりゃ、はじめはこわかったですよ。でも、べつに悪さをするわけでもないし、もう、なれっこになりました。刀で切りつけても手ごたえはないし、追えば風のように逃げだすし」
 それを聞いて、老人はここにいるのがこわくなり、酒のお礼をいってすぐに屋敷を出ました。
 月はあいかわらず、頭の上でかがやいています。
 ふと顔をあげると、塀(へい)の上までキンモクセイの木がのびていて、その花のにおいが流れてきます。
 その時、ポキッという、枝を折(お)るような音がしました。
 老人が、塀の破れめからこわごわ中をのぞいてみると、さっきの女が木にのぼって、さかんに枝を折っています。
 老人と目があったとたん、女はまたもニヤリと笑いました。
 老人はもう、あとも見ずにかけだしました。
 ふしぎなことに、女はその日から毎晩、キンモクセイの枝を折るようになりました。
 さむらいが気にもとめないでいたら、とうとう全部の枝を折ってしまい、木を枯れさせてしまいました。
 同時に、女はもう二度と姿を現すことがありませんでした。
 それからまもなく、さむらいが死んだという知らせがありました。
 老人がかけつけたとき、キンモクセイの木も花もないのに、あの甘ずっぱいにおいが屋敷じゅうにたちこめていたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ウインクの日
きょうの誕生花 → ひめりんご
きょうの誕生日 → 1973年 金城武(俳優)

きょうの新作昔話 → 月から降った餅
きょうの日本昔話 → キンモクセイの妖怪
きょうの世界昔話 → カンチールのぼうけん
きょうの日本民話 → 竜から落ちた神さま
きょうのイソップ童話 → タカとトンビとハト
きょうの江戸小話 → のんべえ親子

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月10日の日本の昔話 切れない紙

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月10日の日本の昔話

切れない紙

切れない紙

 むかしむかし、彦一(ひこいち→詳細)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 ある日、彦一と庄屋(しょうや→詳細)さんが、茶店の前にさしかかると、
「ワハハハハッ。ええか、よく聞け。向こうは十五人、こっちはわし一人。むこうも強かったが、わしはもっと強かった。右に左にバッタバッタときりすて、あっというまに、みんなやっつけてしまったわ。ワハハハハハハッ。おい、ばばあ、酒だ、酒持ってこい」
 みると、ぶしょうひげをはやした、身なりの悪い浪人です。
 酒をあおりながら、とくいになってしゃべりまくっています。
 すると、茶店にいた旅人が教えてくれました。
「ああやって、みんなをおどかしては、ただの酒をのみあるいている、たちの悪い浪人(ろうにん→詳細)ですぜ」
「強そうなので、だれも知らぬ顔しているが、だれかとっちめてくれるといいんだが」
 たしかに、みんなこわがって、浪人と目をあわそうともしません。
「やい、ばばあ、酒はどうした! なにい、お金だと。ぶ、ぶれいものめ! このおれさまから、金をとろうとぬかすのか。おもしれえ、とれるものならとってみろ!」
 オドオドしている茶店のおばあさんをつきとばすと、浪人はかってに酒を飲みはじめました。
 たまりかねた庄屋さんが、何かいおうとしたとき、それより早く彦一が浪人の前へ出ました。
「もしもし、おさむらいさん」
「なんじゃ、おまえは。小僧のくせにひっこんでろ!」
「あんたは、ほんとうにさむらいですか?」
「な、なに? ぶ、ぶ、ぶしにむかって! ぶ、ぶ、ぶ、ぶれいなやつ!」
「そう、『ぶ、ぶ、』いわないでください。つばがとんでくるじゃありませんか」
「こ、こ、こやつ、ますますもって、ぶ、ぶ、ぶ、ぶれいな!」
「ほら、また飛んできた。ところで、ほんとに強いんですか、そんなに」
と、いうと彦一は、ふところから一まいの白い紙をとり出し、浪人の目のまえにひろげると、
「そんなに強いなら、これが切れますか?」
 これを聞いた浪人は、ひたいに青すじを立てておこりました。
「ば、ば、ばかにするな! た、た、たかが紙きれ、一刀のもとだ。そうじゃ、ついでにお前もまっぷたつにしてやるぞ。かくごはよいか!」
 浪人は酒の入った茶わんをほうりなげると、ギラリと刀をぬきました。
「わあーっ、ぬいた!」
 見ていた旅人たちが、さあっと、あとずさりしました。
「彦一、ここはわしにまかせて、逃げた方がいいぞ」
と、庄屋さんがいいましたが、しかし彦一はおちついて、
「ちょっとまって下さい。この紙が切れたなら、あなたがここで飲み食いしたお金を、わたしたちがはらいます。でも、もし切れなかったら、自分で払ってくださいよ」
「おう、そうか、そりゃおもしれえ」
「やくそくしてくれますね」
「くどい、武士に二言はないわ!」
 ちょうどそこへ通りかかった立派な武士が、二人に声をかけました。
「せっしゃが、立合人になってしんぜる。もし約束をたがえたら、せっしゃが相手になってつかわそう。さあ、両人とも、よういをいたせ」
「さあ小僧! 紙をどこへでもおけ!」
 浪人はニタニタ笑いながら、みがまえると、刀を高くふりかぶりました。
 彦一は近くの大きな石の上に、その紙をひろげ、
「さあ、まっぷたつに、どうぞ」
「う、・・・」
 刀をふりかぶったまま、浪人はつりあげた目を白黒させました。
「さあさあ、早くじまんのうで前を見せてください」
「ううむ・・・」
 でこぼこの石の上にひろげた紙を、刀で切りつけたらどうなるでしょう。
 いくら剣術の名人でも、その紙を切ることは至難の業(しなんのわざ→とても難しいこと)です。
 立合人の侍が、自分の刀に手をかけて言いました。
「どうした、そこの浪人。約束どおり、さあ、紙を切ってみよ。なにをグズグズしておるか」
と、しかりつけます。
「む、むむむ」
「切れぬか。しからば、飲み食いした金を払い、ここを立ちされ。でないと、立会人のせっしゃが相手いたすが、覚悟はよいか!」
「お、おまちくだされ。はらう、払いますから、どうぞ、ご、ごかんべんを」
 浪人は、さっきのからいばりはどこへやら、大あわてで金を払って逃げてしまいました。
 浪人のうで前が、石の上の紙を切るほどのうで前ではないとみやぶった、彦ーのちえと勇気に、侍をはじめ大勢の見物人は、あらためて感心しました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 銭湯の日
きょうの誕生花 → まつたけ
きょうの誕生日 → 1975年 森久美子(タレント)

きょうの新作昔話 → 牛に引かれて、善光寺参り
きょうの日本昔話 → 切れない紙
きょうの世界昔話 → クマとおばあさんとシャオホン
きょうの日本民話 → バケモノをたいじしたネコ
きょうのイソップ童話 → 鳥刺しとヒバリ
きょうの江戸小話 → よっぱらいのおとしもの

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月9日の日本の昔話 六つの「子」の字

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月9日の日本の昔話

六つの「子」の字

六つの「子」の字

 むかしむかし、嵯峨天皇(さがてんのう(在位809~823))が国をおさめていたとき、都の御所(ごしょ→てんのうのすまい)のちかくに、だれがかいたものか、こんな札がたてられました。
《無悪善》
 人だかりがしているので、みまわりの役人たちが、わりこんできました。
「どけ、なにごとだ! むっ、・・・?」
「お役人さま、いったい、なんとかかれておるのですか? よんで、おきかせください」
 人びとにたずねられて、役人はすっかりよわってしまいました。
「『無、悪、善』・・・こ、これはだな、むずかしゅうて、わしらにゃ、チンプンカンプンじや。みかど(てんのう)に、じきじきにお目にかけよう」
 役人たちは、たて札をひきぬくと、みかどにとどけたのですが、みかどにもよめません。
 そこで、おかかえの学者たちが、御所によびあつめられました。
「これは、なんとよみ、どんないみじゃ」
 みかどがたずねましたが、学者たちは、
「はて?」
「さて?」
「はてさて?」
と、かんがえこむだけで、こたえられません。
「なんとも、ふがいない。それでも学者か」
 みかどがなげくと、学者のひとりが、
「学者で、書の名人でもある小野篁(おののたかむら)ならば、よみとけるかもしれません」
と、いったので、さっそくつかいがだされました。
 御所にまねかれた、たかむらは、みかどにねんをおしました。
「よみとくことはかんたんですが、ありのままによんでも、よろしいのですか?」
「よいから、はようにもうせ」
「では。・・・これは、『悪』から『無』にもどり、『善』を、おわりによむのです。『悪』は、さがとよみ、『無』は、なくば、『善』は、よい。つまり、《さがなくばよい》。さがてんのうが、いなければ、世のなかが、もっとよいのに。と、いう、なぞかけことばにございます」
「な、なにっ! わしがいなければよいじゃと!」
 みかどは、あおすじを立てて、たかむらをにらみつけました。
「おかかえの学者たちが、だれ一人読めないのに、おまえはやすやすとよみといた。と、いうことは、おまえが書いたにちがいない! おまえは島流しじゃ!」
 島流しとは、ざい人を、はなれ島に流して、そこから一生、でられなくするけいばつです。
 すると、たかむらがつぶやきました。
「学問をつんだばかりに、いわれのないつみをかぶろうとは、世もすえだ」
 これをきいたみかどは、
「なに! おまえの学問がどれほどのものか、ためしてやろう。しばらく、まっておれ!」
 みかどは、おかかえの学者たちに、文字のなぞなぞをつくらせました。
「これで、いかがでしょう?」
 出された文字は、《子子子子子子》でした。
「・・・? これは、なんとよむ?」
「はい、子(ね)子(この)子(この)子(こ)子(ね)子(こ)。『ネコの、子の、子ネコ』で、ございます」
「なるほど、よく考えた。いかにたかむらでも、これは読めまい」
 みかどはさっそく、このもんだいをたかむらにつきつけました。
「これがよめれば、島ながしはゆるそう」
「わかりました。これは、『ネコの、子の、子ネコ』です」
 たかむらは、いともかんたんに答えました。
「むっ、むむむ、正解じゃ」
 くやしがるみかどに、たかむらは言いました。
「みかど、この《子子子子子子》には、じつは、別の読み方があるのです」
「ほう、なんとよむのじゃ?」
「子(し)子(しの)子(この)子(こ)子(じ)子(し)。つまり、『獅子(しし)の、子の、子獅子(こじし)』で、ございます」
「うむ、あっぱれ。おまえこそ、ほんとうの学者じゃ」
 みかどは、つみをとりけして、たかむらに、たくさんのほうびをとらせたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 塾の日
きょうの誕生花 → ほととぎす
きょうの誕生日 → 1945年 水前寺清子(歌手)

きょうの新作昔話 → ゆかいなおなら
きょうの日本昔話 → 六つの「子」の字
きょうの世界昔話 → クジャクの舞
きょうの日本民話 → 殿さまとタイの塩焼き
きょうのイソップ童話 → 難船した男
きょうの江戸小話 → ものわすれのめいじんたち

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月8日の日本の昔話 たすけとお化け

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月8日の日本の昔話

たすけとお化け

たすけとお化け

 むかしむかし、あるところに、古ぼけたお寺がありました。
 このお寺には、秋風がふくとともに、ばけものがあらわれるというので、村人たちはたいそうこわがって、昼間から家にとじこもったままです。
 これではいかんと、みんなは集まって相談しました。
「ほんとうにこまったのう。だれぞ、寺にいってばけものをたいじしてくれるものはおらんかのう」
 ちょうどそのころ、富山(とやま)から薬売りがやってきました。
 太助(たすけ)という、かしこそうな若者です。
「・・・? おかしいなあ、だれもおらん。この村は、いったいどうしたんじゃあ?」
 太助は一軒の家の戸を開けてみました。
「こんちは。薬はいらんかね」
「薬どころではねえだ」
 太助は、村人たちがばけもののために畑仕事にも出られず、こまっていることを聞きました。
 そこで太助は、胸をドン! とたたいて、こういいました。
「わたしは、毎年みなさんに薬を買ってもらっております。そのお礼をさせてくだせえ。ここはわたしにまかせて。わたしがばけものをたいじしますで」
 夜になるのを待って、太助はお寺へ出かけていきました。
 秋の夜はしずかにふけて、物音ひとつしません。
 太助が大きなあくびをして、コックリコックリと、いねむりをはじめたときです。
 白いフワッとしたものが、太助の目の前にあらわれました。
「この寺にひとりであらわれるとは、見上げたどきょうじゃ。おまえはわしがこわくはないのか?」
「ああ、こわくなんかないわい」
 ばけものは、すこしもこわがらない太助に、
「ははは、おもしろい小僧じゃ。この世にこわいもんはなにもないのか?」
「ああ、なにもないわい!」
と、いいながらも、太助の顔には、ひや汗がタラタラと流れています。
「ほれ、見い。やっぱりこわいんじゃろう。それでいいのじゃ。おばけであるわしだって、こわいものがたった一つあるのじゃからな」
「なに? おばけのおまえがか?」
「ああ、あるぞ。おまえがいちばんこわいものをいったら、おしえてやろう」
 太助は少し考えると、
「わしがこわいのは、お金じゃあ。で、おまえのこわいものはなんじゃ?」
「わしか。わしはナス汁(じる)じゃあ」
「ナス汁がこわいなんて、おかしなおばけじゃなあ」
 つぎのばん、太助はお寺のいろりに大きななべをかけて、集めたナスを山ほどにこみながら、おばけのあらわれるのを待ちました。
 ゆうべと同じころ、おばけは大きなふくろをかついでやってきました。
「小僧、おまえのこわいお金をやるぞ」
「こ、小判だ! こわい、こわいよ~!」
 太助がにげだすと、おばけは小判をなげつけます。
 たちまち部屋じゅうが小判でいっぱいになりました。
と、こんどは太助がおばけにナス汁をふりかけました。
「それ、おまえのこわいナス汁じゃ。そうれ、ナス汁じゃ。こわいぞう!」
「ひい~っ!」
 おばけは悲鳴をあげながら、庭の中をにげまわり、やがて大きな木にしがみつきました。
 太助はここぞとばかり、おばけにナス汁をなべごとあびせかけます。
 すると、おばけは大きなキノコにかわってしまい、小判は小さなキノコにかわりました。
 こうして、おばけをたいじした太助は、村人たちからたいへんかんしゃされ、薬もずいぶんと買ってもらい、またつぎの村へとむかいました。
 あの大きな木についたままのキノコは、寺のたからものになりました。
 それからだそうです。
 キノコ汁にナスを入れると、中毒にならないといわれるようになったのは。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 木の日
きょうの誕生花 → のぼたん
きょうの誕生日 → 1978年 中山エミリ(タレント)

きょうの新作昔話 → ウサギの誕生
きょうの日本昔話 → たすけとお化け
きょうの世界昔話 → 死神のお使いたち
きょうの日本民話 → 山女
きょうのイソップ童話 → バッタをとるこどもとサソリ
きょうの江戸小話 → さけなめおや子

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月7日の日本の昔話 ふしぎなたいこ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月7日の日本の昔話

ふしぎなたいこ

ふしぎなたいこ

 むかしむかし、げんごろうさんという人が、ふしぎなたいこを持っていました。
 ひらベったい形のたいこです。
 表側をトントンたたいて、
「鼻、高くなあれ。鼻、高くなあれ」
と、いうと、鼻が高くなります。
 反対に、裏側をトントンたたいて、
「鼻、低くなあれ。鼻、低くなあれ」
と、いうと、鼻が低くなります。
 げんごろうさんは、人にたのまれると、トントンと、たいこをたたいて、鼻を高くしたり低くしたりしてあげました。
 ところがある日のこと、げんごろうさんは、ちょっといたずらをやってみたくなりました。
「トントントントンと、どこまでもたいこをたたいたら、おれの鼻はどこまでのびるのかな。どれ、ためしてみようか」
 そこで、ひとりでたいこを持って、原っぱへいってトントントントン、たたきました。
「鼻、高くなあれ。鼻、高くなあれ」
 すると、鼻はニョキニョキとのびて、腕の長さぐらいになりました。
 トントントントン、トントントントン。
 たたくたびに鼻はのびて、木よりも高くなりました。
 トントントントン、トントントントン。
 山より高くなりました。
 トントントントン、トントントントン。
 そしてとうとう、鼻の先が白い雲に届きました。
 雲の上は天国です。
 ちょうど天国の大工さんたちが、天の川の橋をかけているところでした。
 そこへ、げんごろうさんの鼻が、下からのびてきたのです。
 でも大工さんは、それが鼻だなんて知りません。
 うっかり材木とまちがえて、橋のらんかんにしばりつけてしまいました。
 さて、下の原っぱでは、げんごろうさんがビックリしています。
「あれっ! 鼻がつかえてしまったぞ。少しひっこめよう」
 今度は、たいこの裏側をトントントントン、トントントントンと、たたきました。
「鼻、低くなあれ。鼻、低くなあれ」
 ところが、鼻のてっペんはギュッとしばってあるので、鼻が短くなるたびに、げんごろうさんは、からだごと空へあがっていきました。
「ひゃあ、どうしてからだがあがっていくんだ!」
 げんごろうさんは大あわてです。
 トントントントン、トントントントン、たたいてたたいて、雲の上までのぼってしまいました。
 天国ではちょうど、昼休みです。
 大工さんたちは、昼ごはんを食べにいっていて、仕事場にはだれもいませんでした。
「なんだ、おれの鼻を材木とまちがえたのか。そそっかしいなあ」
 げんごろうさんは、なわをほどきました。
 鼻は元どおりで、やれやれです。
 でも、どうやって帰ったらいいのでしょう。
「困ったなあ」
 考えていると、足もとの雲が、風にふかれて動きました。
 雲のすきまから、ずーっと下に、青い青い湖が見えました。
「うわー! いいながめだな。・・・ああっ!」
 げんごろうさんは、足をふみはずしてしまい、まっさかさまに湖のまん中へ、
 ボッチャーーン!!
と、落ちました。
 何とか助かりましたが、このままではいつかおぼれてしまいます。
 げんごろうさんは、岸を探して一生けんめいに泳ぎました。
 ずーっと泳いでいたら、いつのまにか手と足がなくなって、さかなのようにひれとしっぽがはえました。
 そしてからだには、うろこがはえました。
 そしてついには、げんごろうさんは、げんごろうブナという、小さなさかなになってしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ミステリー記念日
きょうの誕生花 → キウイ
きょうの誕生日 → 1941年 坂田利夫(漫才師)

きょうの新作昔話 → 朝寝坊山の引っ越し
きょうの日本昔話 → ふしぎなたいこ
きょうの世界昔話 → 十二月の贈り物
きょうの日本民話 → お菊ののろい
きょうのイソップ童話 → 水遊びをするこども
きょうの江戸小話 → うまいものとまずいもの

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月6日の日本の昔話 京のカエル大阪のカエル

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月6日の日本の昔話

京のカエル大阪のカエル

京のカエル大阪のカエル

 むかしむかし、京都に一匹のカエルがおりました。
 もう、長いこと京都に住んでいたので、どこかちがう所へいってみたいと思っていました。
 あるとき、大阪はとてもいい所だという話を聞きました。
「よし、ひとつ、大阪見物にでも、いってこよう」
 思いたったら、もうじっとしていられません、さっそく出かけることにしました。
「よせよせ、大阪まではとても遠くて、たいへんだぞ。ケロ」
と、仲間のカエルがいいました。
「なあに、へっちゃらさ。大阪見物の話を聞かせてやるから、待っていな。ケロ」
と、いって、そのカエルは、ピョンピョンと、出かけていきました。
 ま夏のことなので、お日さまはカンカンてるし、道は遠いし、カエルはくたびれてしまいました。
 それでも、大阪をひと目見たいものと、ピョンピョンと歩いていきました。
 さて、大阪にも一匹のカエルがおりました。
 そのカエルも、もう長いこと大阪に住んでいましたので、どこかちがう所へいってみたいと思いました。
 あるとき、京都はとてもいい所だという話を聞きました。
「よし、京都見物にでもいってこようか。ケロ」
 さっそく、出かけることにしました。
「よせよせ、京都まではとても遠くて、たいへんだぞ。ケロ」
と、仲間のカエルがいいました。
「なあに、へっちゃらさ。京都見物の話を聞かせてやるから、待っていな。ケロ」
と、いって、そのカエルも、ピョンピョンと、出かけていきました。
 お日さまはカンカンてるし、道は遠いし、カエルはくたびれてしまいました。
 それでも、京都をひと目見たいものと、カエルは、ピョンピョンと歩いていきました。
 京都と大阪の間には、天王山(てんのうざん)という山があります。
「この山をこせば大阪だ。ケロ」
 京都のカエルは元気を出して、よっこら、やっこら、山を登っていきました。
「この山を越せば京都だ。ケロ」
 大阪のカエルも元気を出して、よっこら、やっこら、山を登っていきました。
 お日さまは暑いし、山道は急だし、京都のカエルも大阪のカエルもクタクタです。
 二匹とも、やっと天王山のてっペんにたどり着き、そこでバッタリ出会いました。
「あなたは、どこへいくんですか? ケロ」
「京都見物ですよ。ケロ」
「およしなさい。京都なんてつまりませんよ。わたしは大阪見物にいくんですよ。ケロ」
「あなたこそ、およしなさい。大阪なんてつまりませんよ。ケロ」
 そこで、京都のカエルは立ちあがって、大阪のほうを見ました。
「ほんとうだ。よく見ると、大阪も京都とたいして変わらないや。ケロ」
 大阪のカエルも、立ちあがって京都のほうを見ました。
「ほんとうだ。よく見ると、京都も大阪とたいして変わらないや。ケロ」
 それなら、いってもつまらないと、二匹のカエルは、もときた道を帰っていきました。
 でも、二匹のカエルが見たのは、ほんとうは、自分たちの町だったのです。
 えっ? なぜって、カエルの目玉は頭の上についているでしょう。
 だから、立ちあがると、後ろしか見えないからです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際協力の日
きょうの誕生花 → きんもくせい
きょうの誕生日 → 1961年 松田美由紀(俳優)

きょうの新作昔話 → 夕立ちをふらせたおじいさん
きょうの日本昔話 → 京のカエル大阪のカエル
きょうの世界昔話 → ナイチンゲール
きょうの日本民話 → ほらふき甚兵衛
きょうのイソップ童話 → セミとキツネ
きょうの江戸小話 → 十二味のとうがらし

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月5日の日本の昔話 舟の渡し賃

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月5日の日本の昔話

舟の渡し賃

舟の渡し賃

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 あるとき、きっちょむさんが庄屋(しょうや→詳細)さんによばれました。
「すまない、きっちょむさん。渡し舟のせんどうが病気でたおれてしまったんだ。今日だけでいいから、代わりに渡し舟のせんどうになってはくれまいか」
「はい、いいですよ」
と、いうわけで、きっちょむさんは、今日一日、村の渡し舟のせんどうです。
「ひまじゃな。だれか、客(きゃく)がこないかなあ」
 川べりでタバコをいっぷくしていると、旅の侍(さむらい)がやってきました。
「これ、せんどう。渡し賃はいくらだ?」
「はい。かたみち、八文(二百四十円ほど)のきまりになってます」
 すると、旅の侍が、
「八文とはたかい。六文にいたせ!」
 いばって命令(めいれい)しました。
 きっちょむさんは、
(このケチざむらいめ)
と、思いましたが、けんかをしても、負けてしまいます。
「さあ、舟を出しますよ」
 きっちょむさんは、侍をのせてこぎだしました。
 ところが、あと少しで向こう岸につくというところで、きっちょむさんは舟をとめました。
「ここまでが六文です。あと二文だせば、岸までつけますが、どういたしましょう?」
「なんだと。ここでおりて、あとは泳いでゆけというのか!」
「いいえ、あと二文だせば、向こう岸までお送りします」
「ええい、こうなれば意地比べだ。向こう岸までやれないのなら、もとの岸にもどせ!」
「へい、わかりました」
 きっちょむさんは、すなおに舟をもどすと、さむらいの前に手を出しました。
「六文のところを、行って帰ってきましたので、合計十二文ちょうだいいたします」
「・・・くそーっ! わしの負けだ!」
 さむらいは十二文を払うと、どこかへ行ってしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → レモンの日
きょうの誕生花 → くこ
きょうの誕生日 → 1960年 黒木瞳(俳優)

きょうの新作昔話 → 牛になるまんじゅう
きょうの日本昔話 → 舟の渡し賃
きょうの世界昔話 → オンドリとひきうす
きょうの日本民話 → 人にだまされたタヌキ
きょうのイソップ童話 → 木こりと松の木
きょうの江戸小話 → すり足

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月4日の日本の昔話 山の背比べ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月4日の日本の昔話

山の背比べ

山の背比べ

 むかしむかし、たくさんの山が、いつもけんかばかりしていました。
「ぼくのほうが、おまえよりも、ちょっと高いようだな」
「どうして?」
「どうしてって、ぼくは、おまえの頭の上の雲の上まで見えるんだもの」
「ぼくだって見えるさ。もっと、うんと見えるさ。おまえの向こうの山のてっペんだって、ちゃんと見える。そのまた向こうの、そのまたずーっと向こうのてっペんだって、みんなちゃんと見える。だから、もしかするとぼくは、日本じゅうでいちばん高い山かもしれないね」
「日本じゅうで、いちばんだって?!」
 さあ、それを聞いたたくさんの山は、おこりだしました。
「よーし、それじゃあ、どれがほんとにいちばん高いか、比べっこしよう」
 さて、いよいよ背比ベをする日がきたのですが、そこで困ったことに気がつきました。
 いったいどうやって、あっちの山とこっちの山と、どっちが高いかを比べたらいいのでしょうか。
 みんな大きな高い山です。
 近くにならべるわけにはいきません。
「どうしようか?」
 たくさんの山が困っていると、人間たちがいいました。
「長い長いといをつくって、それを背比ベする山と山のてっペんにのせるんですよ。そうして雨がふってくるのを待つんです。水はいつだって、低いほうに流れていきますからね。雨がふって、といにたまった水が流れてきたほうの山は、負けというわけです」
「なるほど、それはいい考えだ」
 山たちが賛成しました。
 そこで、山のふもとの人たちは、背比べをする山から山へ長いといをかけました。
 ザアーザアーザアー。
 しばらくすると雨がふってきて、たまった水が流れはじめました。
 あっちからこっちに、そっちからあそこに。
「やったー! ぼくだ、ぼくがいちばん高い山なんだ。・・・あれ?」
 そういっていると、その山に向かって、向こうのほうから水が流れてきました。
「ほうら、おまえじゃあない。いちばん高いのは、ぼくなのさ。どうだ。どこからも、ぼくのほうへ流れてくる水はない。バンザーイ!」
 とうとう日本ーの山が決まったと、みんなは思いました。
が、そのときです。
 ズシーン!
 ものすごい音といっしょに、遠くから飛んできた山がありました。
「なっ、なんだ、あの大きな山は!」
 おどろく山たちに、その飛んできた山がいいました。
「ぼくは富士山さ。山の大きさ比べをしていると聞いて、やってきたんだ。どうだい、ぼくより大きい山はいるかい?」
「・・・・・・」
 背比べしていた山たちは、はずかしくて何も言えませんでした。
 しかし、富士山はどこから飛んできたのでしょうか?
 それは、日本一大きな湖の琵琶湖(びわこ)の辺りで、富士山がジャンプしたときの足跡が、いまの琵琶湖だそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → イワシの日
きょうの誕生花 → えのころぐさ
きょうの誕生日 → 1936年 北島三郎(歌手)

きょうの新作昔話 → 白蛇の精
きょうの日本昔話 → 山の背比べ
きょうの世界昔話 → コアラのしっぽがみじかいわけ
きょうの日本民話 → ハチとアリ
きょうのイソップ童話 → 神さまをくらべっこするふたりの男
きょうの江戸小話 → 金では買えない

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月3日の日本の昔話 正体のばれたキツネ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月3日の日本の昔話

正体のばれたキツネ

正体のばれたキツネ

 むかしむかし、ある山のとうげに、小さな茶店がありました。
 主人のおじいさんが店番をしていますと、ひとりのさむらいが入ってきました。
「ごめん」
「はい、いらっしゃいませ」
「じいさんや、ここのダンゴは、うまいというひょうばんだ。わしにもひとさらもってまいれ」
「はいはい。どうぞ、めしあがってくださいませ」
と、おじいさんはお茶とダンゴをはこんできました。
 そして、おきゃくを見ますと、まあたらしいはおりをきて、きちんとはかまをはいています。
 二本のかたなを腰にさした、りっぱなおさむらいでした。
 ところが、その顔を見たとき、
「あれ、まあ!」
と、おじいさんはビックリ。
 おさむらいの耳は、ピーンと、三角にとがっています。
 そして、顔のあちこちに白い毛がのこっていました。
(ははーん、このおさむらいはキツネだな)
と、おじいさんは思いました。
 だけど、キツネはうまくばけたつもりなのでしょう。
 むねをそらせて、いばったかっこうをしています。
 おかしくなったおじいさんは、小さなおけに水をいれて、おさむらいのまえへもっていきました。
「おさむらいさま、お顔がすこしよごれておいでのようです。どうぞ、この水をおつかいください」
「ふうむ、これはどうも」
と、うなずいたおさむらいは、おけの中をのぞいたとたんに、ビックリ。
 そこにうっっている顔は、はんぶんおさむらいの顔で、はんぶんキツネの顔でした。
「コンコン、これはばけそこなった」
と、キツネはあわてました。
「おさむらいさま、ごゆっくりめしあがってくださいませ」
と、おじいさんがいっても、もうふりむきもしません。
 ダンゴもたべずに、ピョーンととびあがったかと思うと、そのまま山のほうへにげていってしまいました。
 あくる日、おじいさんは、たきぎをひろいに山の中へ入っていきました。
 すると、どこからか、
「おじいさん、おじいさん」
と、よぶ声がします。
 おじいさんは見まわしましたが、まわりにはだれもいません。
「はい、はい、なんのご用ですか?」
と、おじいさんがいいますと、
「おじいさん、きのうはおかしかっただろう。大失敗だったよ。ウフフフ、アハハハ」
と、わらう声がきこえます。
「ああ、きのうのキツネさんか。そういえばあのときはおかしかったな、アハハハ」
と、おじいさんも大わらいしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 登山の日
きょうの誕生花 → おとこえし
きょうの誕生日 → 1950年 宮川大助(漫才師)

きょうの新作昔話 → 梅津(うめづ)の長者
きょうの日本昔話 → 正体のばれたキツネ
きょうの世界昔話 → ブレーメンの音楽隊
きょうの日本民話 → ハチとクモとアリ
きょうのイソップ童話 → どろぼうとニワトリ
きょうの江戸小話 → しゃれこうべをつった男

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

10月2日の日本の昔話 棺の中のかま

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月2日の日本の昔話

棺の中のかま

棺の中のかま

 むかしむかし、ある村に、平太郎(へいたろう)という、年とったおばあさんとふたりぐらしの男がいました。
 とても、きもっ玉のふとい男で、いつもいつも自分のことを、「なんでも平気(へいき)の平太郎」と、じまんしています。
 さて、ある晩のこと。
 村の若いものがおおぜい集まって、きもだめしをしていました。
 いろいろおそろしいことをためしたあげくに、ひとりがいいだしました。
「どうじゃ。焼き場(火葬場のこと)のお堂までいって、棺(ひつぎ→かんおけ)の中の、死人の胸にだいとる、カマ(→草刈の道具)を持ってくるもんはおらんか?」
 むかしは死んだ人をすぐには焼かず、焼き場のお堂に棺に入れたまま、ひと晩おいておくならわしがありました。
 そのとき、死んだ人の体に魔物が取り付かないように、魔よけのまじないとして、死人の胸にカマを持たせるのでした。
「どうした、どうした。ふだんは大口たたいとるくせに、だれもいけんのか?」
「・・・・・・」
 だれも、そんな怖いことはしようとしません。
 そのとき、平太郎がニヤリとわらって立ちあがると、
「そのはなし、平太郎さまがひきうけたわい」
と、言いました。
 暗い夜道をどんどん歩いて、焼き場までくると、プーンと死人のにおいがします。
 平太郎はお堂に入って、棺のふたを手さぐりであけると、死人の腹のあたりからカマを取り出して、そとへとびだしました。
 ところがそのとき、あたりから人の声がします。
 どうやら、平太郎をよんでいるようす。
(ははあん、こりゃあ、ばけもののしわざだな)
 とっさに、平太郎はカマをこしにさすと、そばの松の木に、スルスルスルッとよじのぼりました。
 そして、木のえだにこしかけて、ジッとようすをうかがっていました。
 すると、山の下のほうから、たくさんのちょうちん(→詳細)をともした行列がやってきます。
(はて、こんな真夜中(まよなか)に葬式(そうしき)がくるなんて)
 棺をかついだ行列は、
「平太郎やーい。おまえのばあさまが、死んだぞー」
 そういって、木の下をとおっていきます。
(ヘへっ、やつら、うまいことばけたもんだ)
 行列は焼き場の前でとまると、棺から死人をだしました。
(ありゃ。死人まで、うちのばあさまとそっくりじゃ。ばけもんも、なかなかやりおるわい)
 平太郎はこわいどころか、すっかりかんしんして見ています。
 行列のれんちゅうは、まきをつみあげると、ドンドンもやしました。
 みんなで火の上に死人をのせると、また、ちょうちんをふりふり、もどっていきました。
(やれやれ、これですんだわい)
と、平太郎が松の木からおりようとすると、死体を焼いている火が、きゅうにゴオーーッと、もえあがりました。
 そして、たきぎの上にねかされていたおばあさんの死体が、ムクムクッと、おきあがったのです。
「うん? あれはなんじゃ?」
 よく見るとおばあさんではなくて、口が耳までさけた、おそろしい鬼ババにかわっていました。
 鬼ババは火柱(ひばしら)の中につっ立って、平太郎をにらみつけると、クワッ! と大口をあけてわめきます。
「やい、この親不幸ものめ。おまえのおババが焼かれとるちゅうに、しらん顔しとるとは。おのれ、食うてやる!」
 鬼ババは火の中からとんででると、松の木の根もとまで走ってきて、ギシギシと木をゆさぶりはじめました。
(こりゃ、おとされてはかなわん)
 平太郎が木にしがみつくと、鬼ババはするどいつめで、ガリガリと木をのぼってきました。
 ビックリして、平太郎は上へ上へとにげます。
 にげてにげて、とうとう、てっぺんまできてしまいました。
「あっ!」
 ついに、鬼ババに片足をつかまれました。
「えいっ、この鬼ババめ!」
 平太郎はこしのカマをひきぬくと、鬼ババめがけて思いっきりふりおろしました。
 ギャーッ!
 すごい声をあげて、鬼ババはまっさかさまにおちていきます。
 ドシーン!
と、大きな地ひびきがして、それっきり、動かなくなってしまいました。
 あくる朝。
 きもだめしのれんちゅうがやってきて、木の上でふるえている平太郎を見つけました。
 みんなは平太郎の話を聞くと、そのへんをしらべてみました。
 すると、なんとお堂の中に、首をカマで切られた大ダヌキが、死んでいたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 望遠鏡の日
きょうの誕生花 → コリウス
きょうの誕生日 → 1978年 浜崎あゆみ(歌手)

きょうの新作昔話 → 成相観音(なりあいかんのん)
きょうの日本昔話 → 棺の中のかま
きょうの世界昔話 → 妖精の油ツボ
きょうの日本民話 → 幽霊の手紙
きょうのイソップ童話 → 旅人とヘルメス
きょうの江戸小話 → カツオぶしの絵

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

ここにタイトルを記入してください

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話

10月1日の日本の昔話

かぐやひめ

かぐやひめ
かぐや姫のぬりえ

 むかしむかし、竹を取ってくらしている、おじいさんがいました。
 ある日、おじいさんが竹やぶに行くと、根元が光っている、ふしぎな竹を見つけました。
「ほほう、これはめずらしい。どれ、切ってみようか。えい! ・・・うん? これは!」
 おじいさんがその竹を切ってみると、なんと中に、小さな女の子がいたのです。
 子どものいないおじいさんとおばあさんは、とてもよろこびました。
 そして、その子を「かぐやひめ」と名付けて、大切に育てたのです。
 かぐやひめは大きくなるにしたがって、たいそう美しくなりました。
 そして年頃になると、
「どうか、かぐやひめをお嫁さんにください」
という、若者がたくさんやってきました。
 中でも特に熱心な若者が五人いました。
 みんな、立派な若者です。
 でも、かぐやひめはお嫁に行くつもりはありません。
 そこでかぐやひめは、困ってしまい、
「では、私が言う品物を持ってきて下さった方のところへ、お嫁に行きましょう」
と言って、世にも珍しいと言われる品物を一人一人に頼みました。
 五人の若者はそれぞれに大冒険をしましたが、かぐや姫の望んだ品物を手に入れたものは、一人もいませんでした。
 なんとか五人の若者を追い返したかぐやひめですが、かぐやひめのうわさは、とうとうみかどの耳にも入りました。
「ぜひ、かぐやひめを后(きさき)に欲しい」
 みかどはそう願いました。
 おじいさんとおばあさんは、
「すばらしいむこさんじゃ。これ以上のむこさんはない」
と、大喜びです。
 かぐやひめは、なんとかことわろうと思いましたが、みかどに逆らえば、殺されてしまうかもしれません。
 それ以来、かぐやひめは毎晩毎晩、悲しそうに月を見上げては泣いていました。
 おじいさんとおばあさんが心配してわけをたずねると、かぐや姫は泣きながら言いました。

かぐやひめ

「じつは、わたくしは月の世界のものです。今まで育てていただきましたが、こんどの満月の夜には、月へ帰らなくてはなりません」
 それを知ったみかどは、満月の夜、何千人もの兵士を送って、かぐや姫の家の周りを守らせました。
 何とかして、かぐやひめを引きとめようとしたのです。
 けれど、真夜中になって月が高くのぼると、兵士たちはとつぜん、ねむってしまいました。
 かぐや姫はその間に、月の使いの車にのって、月に帰ってしまいました。
 おじいさんもおばあさんもみかども、たいそう悲しんだと言うことです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → コーヒーの日
きょうの誕生花 → もみじあおい
きょうの誕生日 → 1943年 うつみ宮土理(タレント)

きょうの新作昔話 → 松の木の伊勢まいり
きょうの日本昔話 → かぐやひめ
きょうの世界昔話 → クルミの中のマリア
きょうの日本民話 → 火太郎と長太郎
きょうのイソップ童話 → カラスとキツネ
きょうの江戸小話 → 柿どろぼう

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »