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2008年11月

11月30日の日本の昔話 もうはんぶん

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 12月の日本昔話

11月30日の日本の昔話

もうはんぶん

もうはんぶん

 むかし、江戸(→東京都)の町に、やたいの酒うりがいました。
 ひや酒(→つめたいお酒)や、かん酒(→あたためたお酒)をうるのです。
「いまにも雨がふりだしそうで、いやな夜だなあ。まとまったお金があれば、ちゃんとした店でしょうばいができるのに」
 酒うりの男がぼやいていると、
「ちょっと、のませてくれんかね」
 しらがのめだつ、おじいさんがやってきました。
 みなりがだらしなく、きものがうすよごれています。
「ちゃわんにはんぶんほど、のませてもらいたい」
「へい」
 酒うりが、いわれたとおりに酒をだすと、おじいさんは、ググッと、ひといきにのんで、
「もうはんぶん、もらおう」
 からのちゃわんをつきだしました。
 そしてそれを、何度もくりかえしたのに、ぜんぜんよっぱらいません。
 ときどきかんがえこんでは、ためいきをついたりしています。
「はんぶんずつでなく、とっくりごとのんではいかがです」
 酒うりがすすめても、
「そういうきぶんにはなれんのだよ。もうはんぶん」
と、からのちゃわんをつきだすのです。
(まったく、ケチなおきゃくだ)
 そのうちに、おじいさんは、
「いくらだい?」
 小ぜにでかんじょうをすませて、フラッと、かえっていきました。
 酒うりがふとみると、やたいのはしに、しまもようのどうまき(→さいふ)が目にとまりました。
(いまのじいさんが、小ぜにをだすときにとりだして、わすれていったんだな)
 酒うりがどうまきを手にすると、ズッシリしています。
 ひもをはずしてのぞくと、たくさんの小判(こばん)が入っていました。
(おおっ! これだけあれば、店の一けんくらい、わけなくかりられるぞ)
 酒うりがニンマリしていると、さっきのおじいさんが顔色をかえて、かけもどってきました。
「ここに! ここに、しまのどうまきをわすれていったのだが!」
「どうまき? はて? そんなもの、かげもかたちもありませんでしたよ。よっぱらって、思いちがいをしているんでしょう」
「いや、たしかにここにおいたまま、うっかりしたのだ。たのむ、かえしてくれ。むすめをうってこしらえたお金なんだ。あれがないと、身なげをせねばならん」
「なに! かえしてくれだと! ひとぎきのわるいことをいわないでもらいたいね。とんでもないいいがかりだ。さ、かえった、かえった。しょうばいのじゃまだよ」
 酒うりは、とうとう、おじいさんをおいかえしてしまいました。
 そのばん、おじいさんはちかくの川に身なげをして、死んでしまいました。
 一方、酒うりのほうは、ねんがんの店をかまえて、だんなにおさまりました。
 しょうばいははんじょうするし、お嫁さんをもらえば、すぐに赤んぼうにもめぐまれるし、いうことありません。
「ありがてえ、ありがてえ。ばんばんざいだ」
 ところが、赤んぼうは、うまれたときから歯がはえていて、顔中がしわだらけです。
 ちっとも、かわいくありません。
 おかみさんでさえ、きみわるくて、せわをしたがらないほどでした。
 うばをやとっても、
「おひまをいただきます」
 三日と、いてくれません。
 あるばん、だんなはそのわけをしらべようと、真夜中(まよなか)までおきていました。
 すると、スヤスヤねむっていた赤んぼうが、むっくりおきだして、あたりをみまわしてから、行灯(あんどん)のあぶらをおいしそうになめはじめたのです。
 あまりのことに、だんなはこしがぬけてしまいました。
 すると、赤んぼうはヒヒッとわらって、
「もうはんぶん」
 ちゃわんをつきだすかっこうをしました。
 その顔は、あのときのおじいさんと、うりふたつです。
 赤んぼうは、おじいさんのうまれかわりだったのです。
 だんなは、その夜から熱をだして、とうとう死んでしまいました。

おしまい

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11月29日の日本の昔話 おスマばあさん

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11月29日の日本の昔話

おスマばあさん

おスマばあさん

 むかしむかし、ある山おくの村に、おスマさんという、ばあさんがいました。
 はやくに死んだじいさんのお墓をたてようと、二十年間、ほしい物もガマンして、やっとためたお金を、旅の男にだまされて、きれいに持っていかれてしまいました。
 それ以来、村の者はおスマばあさんのことをバカにしていました。
 ある日のこと。
 おスマばあさんのところヘ、役人が二人づれでやってきました。
「この村では、酒をつくっておるじゃろう」
「どこの家とどこの家じゃ。ばあさん、知らんかね」
と、聞いてきました。
 この村は貧乏なので、税金の高いお酒を買うことができず、役人にはないしょで、自分たちでどぶろく(にごり酒)をつくっていました。
 役人に聞かれたばあさんは、ゆっくり腰をのばして、
「へえ、旦那(だんな)。ささでこぜえますかい?」
 役人たちは、うなずきました。
 酒のことは、「さけ」の「さ」を重ねた言葉の「ささ」ともいいます。
「それでしたら、この村じゃあ、山の炭焼小屋で、どっさり、つくっておりますだ」
 それを聞いた役人たちは、
(ウッヒヒヒ。きょうは、たっぷり飲めるわい。ろうやに放り込むとおどかせば、金も手に入る。・・・これだから、役人はやめられん)
と、顔を見あわせて、ニヤリとわらいました。
「わるいが、ばあさん」
「そこヘ、案内してくれんか」
「ちょっと待ってくだっせ。むすこがもどってくるまでに、おらあ、飯をたいといてやらにゃならんで、ちょっくらとなりまでいって、米かりてくるでな」
 出かけていったばあさんは、帰ってくると、
「さあ、案内しますで」
 おスマばあさんは役人をつれて、山道をスタコラサッサとのぼっていきました。
 ばあさんのあとから、役人たちはフウフウいいながらついてきます。
「このばばあ、年はとっても」
「ばかに足は早いわい」
と、ブツブツいいながらも、いっしょうけんめいついてきます。
 やっとのことで、山おくの、ふるい炭焼小屋が見えてきました。
 ばあさんは、小屋のほうを指さして、
「旦那。ささは、あそこでつくっておりますだ」
 いわれると、役人たちはかけだしました。
 小屋の戸をあけると、まるで、ころがるように中ヘとびこみます。
 ところが、そこはクモの巣だらけで、どこをさがしても、酒のさの字もありません。
 役人たちは、腹たてて、
「ばば、ばばあ!」
「酒は、どこだっ!」
 すると外から、おスマばあさんが手まねきして、
「ヘえ、こっちでさあ。旦那、はようきてくだせえ。すぐそこにささは、どっさりございますよ」
 役人たちが小屋を出て見ると、おスマばあさんが、でっかい笹(ささ)やぶをゆびさして、
「いい笹じゃろ」
と、いいました。
 そのころ村では、おマスばあさんの知らせを聞いた村人が、どぶろくの入った酒つぼをかくしたあとでした。
 このことがあってから、村の者はだれも、おスマばあさんをバカにしなくなったということです。

おしまい

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11月28日の日本の昔話 三枚のお札

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11月28日の日本の昔話

三枚のお札

三枚のお札

♪朗読再生

 むかしむかし、ある山寺の小坊主が、クリ拾いに行きたくなりました。
和尚(おしょう)さん、山へクリ拾いに行ってもいいですか?」
 小坊主が聞くと、和尚さんは答えました。
「クリ拾いか。しかし、山には鬼ババが出るぞ」
「でも・・・」
 小坊主が、どうしても行きたいとだだをこねるので、和尚さんは三枚のお札を渡して、
「困った事があったら、このお札に願いをかけなさい。きっと、お前を助けてくれるじゃろう」
と、小坊主を送り出しました。
 小坊主は山に入ると、あるわあるわ、大きなクリがたくさん落ちています。
 小坊主が夢中でクリ拾いをしていると、突然目の前に、鬼ババが現れました。
「うまそうな坊主じゃ。家に帰って食ってやろう」
 小坊主は身がすくんでしまい、叫ぶ事も、逃げ出す事も出来ません。
 そしてそのまま、鬼ババの家へ連れていかれました。
 恐ろしさのあまり、小坊主が小さくなっていると、鬼ババはキバをむいて大きな口を開けました。
(たっ、大変だ。食われてしまうぞ)
 小坊主はそう思うと、とっさに、
「ウンチがしたい!」
と、いいました。
「なに、ウンチだと。・・・うむ、あれはくさくてまずいからな。仕方ない、はやく行って出してこい」
 鬼ババは小坊主の腰になわをつけて、便所に行かせてくれました。
 中に入ると小坊主はさっそくなわをほどき、それを柱に結びつけると、お札をはりつけて、
「お札さん。おれの代わりに、返事をしておくれ」
と、いいつけると、窓から逃げ出しました。
「坊主、ウンチはまだか?」
 すると、お札が答えました。
「もう少し、もう少し」
 しばらくして、鬼ババがまた聞きました。
「坊主、ウンチはまだか?」
「もう少し、もう少し」
 またしばらくして、鬼ババが聞きましたが、
「もう少し、もう少し」
と、同じ事をいうので、
「もうガマンできん! 早く出ろ!」
と、言って、便所のとびらを開けてみると、中は空っぽです。
「ぬぬっ! よくもいっぱい食わせたな。待てえ!」
 鬼ババは叫びながら、夜道を走る小坊主を追いかけていきました。
 それを知った小坊主は、二枚目の札を取り出すと、
「川になれ!」
と、言って、後ろに投げました。
 すると後ろに川が現れて、鬼ババは流されそうになりました。
 けれど鬼ババは大口を開けると、川の水をガブガブと飲み干して、また追いかけてきます。
 小坊主は、三枚目の札を出すと、
「山火事になれ!」
と、言って、後ろに投げました。
 すると後ろで山火事がおきて、鬼ババを通せんぼうしましたが、鬼ババは、さっき飲んだ川の水を吐き出すと、またたくまに山火事を消してしまいました。
 鬼ババは、また追いかけてきます。
 小坊主は命からがらお寺にたどりつくと、和尚さんに助けを求めました。
「和尚さん! 助けてください! 鬼ババです!」
「だから、やめておけといったのじゃ。まあ、まかせておけ」
 和尚さんは小坊主を後ろにかくすと、追いかけてきた鬼ババにいいました。
「鬼ババよ。わしの頼みを一つきいてくれたら坊主をお前にやるが、どうだ?」
と、持ちかけました。
「いいだろう。何がのぞみだ」
「聞くところによると、お前は山のように大きくなることも、豆粒のように小さくなることも出来るそうだな」
「ああ、そうだ」
「よし、では豆粒のように、小さくなってくれや」
「お安いご用」
 鬼ババは答えて体を小さくすると、豆粒のように小さくなりました。
 和尚さんはそのときすかさず、鬼ババをもちの中に丸め込むと、一口で飲み込んでしまいました。
「おっほほほっ。ざっと、こんなもんじゃい。・・・うん、腹が痛いな。ちと便所に」
 和尚さんが便所でウンチをすると、ウンチの中からたくさんのハエが飛び出してきました。
 ハエは鬼ババが生まれ変わって、日本中にふえていったものだそうです。

おしまい

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11月27日の日本の昔話 すもうとりとびんぼうがみ

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11月27日の日本の昔話

すもうとりとびんぼうがみ

すもうとりとびんぼうがみ

 むかしむかし、つるぎ山という、すもうとりがいました。
 はじめはガリガリの小さなからだでしたが、いっしょうけんめいけいこをしたので、ズンズン大きくなりました。
「はやく大関(おおぜき→むかしは、大関が一番つよい位でした)になりたいなあ。大関になって、お母さんによろこんでもらうんだ」
 つるぎ山は大関になるのをたのしみに、いよいよけいこにはげみました。
 ところが、どうしたのでしょうか。
 ある日から、つるぎ山は、きゅうによわくなりました。
 じぶんよりからだの小さい者にも、コロコロと、まかされてしまいます。
「これはおかしい。ゆだんしたからだろう。もうゆだんしないぞ。さあこい!」
 でも、やっばりだめでした。
 いくらがんばっても、コロコロとまけます。
 つるぎ山は、すっかり落ちこんで、
「もうだめだ。こんなことでは大関にはなれない。・・・もう、すもうとりはやめよう」
 そして、お世話になった親方(おやかた)にいいました。。
「もう、げんかいです。いなかへかえります。お母さんのそばではたらきますから、ひまをください」
「いやいや、ガマンするのだ。だれでもまけることはある。だが、まけてもけいこをすれば、つよくなる。しんぼうして、がんばってくれ」
 おやかたは、こういってはげましました。
 けれども、つるぎ山はコッソリ、おやかたの家をにげだしました。
 そして、お母さんのいる、いなかへかえりました。
「お母さん、ごめんなさい。すもうとりになりましたが、どうしても大関になれそうもありません。これからはいなかではたらきます。そばへおいてください」
 手をついてあやまるつるぎ山に、お母さんは、きびしくいいました。
「いけません! そんないくじなしは、お母さんの子ではありません。もう一度、おやかたさんのところへいって、しっかりけいこをしてごらんなさい。大関になるまでは、二度とかえってはいけません!」
「でも」
「はやく、おやかたさんのところにかえりなさい!」
「・・・はい」
 しかたがありません。
 つるぎ山は、おやかたのところへもどることにしました。
 かえるとちゅうに、けわしい山があります。
 つるぎ山は、山をのぼっていきました。
「おーい、おーい」
 だれかが、うしろからよびました。
 それは、へんな男でした。
 頭の毛がボウボウとのびていて、からだはやせて、ほねとかわばかりです。
「わたしに、なにかようかね?」
 つるぎ山は、おかしな男をにらみつけました。
「さようです。ヘヘヘへ。わたしをおいてきぼりにしないでくださいよ。けさはうっかりして、おくれましたが、いつもいっしょのわたしです。さあ、いきましょう」
「・・・? いつもいっしょだって? そんなことしらないな。いったい、おまえはだれだ!」
「わたしですか。ヘヘヘへ。わたしは、びんぼうがみです。いつも、あなたについているのです」
 つるぎ山は、ビックリしました。
 そして、びんぼうがみの顔をジッとにらみました。
「わかったぞ! おまえがついているから、わたしはすもうにまけるのだな。そうだろう」
「ヘヘヘへ。そのとおりです。わたしがとりつけば、だれでもいくじがなくなって、しょうぶにまけます。心もよわくなるのです」
「そんなやつが、なぜわたしについたのだ。わけをいえ!」
「ヘヘヘへ。わたしは、あなたがすきなのです」
 びんぼうがみは、ヘラヘラわらいながら、つるぎ山のあとをついてきます。
 つるぎ山は、かんがえながらあるきました。
(なぜ、びんぼうがみがそばへよってくるのだろう。・・・そうだ。きっとわたしがいくじなしだからだ。よし、げんきをだそう。びんぼうがみなんかにまけるものか!)
 つるぎ山は、びんぼうがみにふりかえり、
「こらっ、びんぼうがみ! ひとつ、すもうをとろうじゃないか」
「ヘヘへへ。すもうをとるのですか? まあ、とってもいいのですが、でも、わたしのほうがかちますよ」
「そんなことはない。かつのはわたしだ!」
「いいえ、いくじなしのあなたでは、わたしにはかてません」
「かてるものならかってみるがいい。さあ」
 つるぎ山は、はだかになりました。
 ドシン、ドシンと、しこをふんでから、びんぼうがみにくみつきました。
 そして、両手にこんしんの力を込めて、
「えいっ!」
 びんぼうがみを、谷ぞこへなげとばしたのです。
 するとつるぎ山は、きゅうにからだがかるくなりました。
 手に足に、力の出るのがわかりました。
「もうだいじょうぶ。びんぼうがみをたいじしたから、つよくなれる」
 げんきいっぱいで、おやかたのうちへもどりました。
 つるぎ山は、それから日に日につよくなり、そして三年目には、ついに大関になることができたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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11月26日の日本の昔話 空飛ぶ米俵

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11月26日の日本の昔話

空飛ぶ米俵

空飛ぶ米俵

 むかしむかし、とても欲ばりな長者(ちょうじゃ)がいました。
 長者の家の蔵(くら)の中には、村人たちをだまして取り上げた米俵(こめだわら)が、いっぱいつみあげています。
 おかげで村の人たちは、お米がなくなって大変こまっておりましたが、長者がこわくて、だれも文句が言えません。
 ある日、長者の前に、どこからか鉄の鉢(はち)がまいおりてきて、ピタッと止まりました。
「ははあん、こいつが、うわさの鉢だな。あっちこっちへ飛んでいっては、お米を入れてくれと、ねだりよるそうだが・・・」
 長者どんは、
「あつかましい鉢め、飛んでいけ!」
と、鉢をけとばしました。
 すると、鉢は蔵の方ヘ、コロコロころがっていき、蔵の下へもぐりこんだかと思うと、蔵をグラグラと持ちあげて、グングン空へあがっていきます。
「こらあ、待てえ、待ってくれえ!」
 長者は、必死で追いかけました。
 やがて蔵は、高い山の上に、ピタッとおりたちました。
「わあ、あんな所へおりやがったわ」
 長者は、えっちら、おっちら、山をよじ登っていきます。
 やっと山のてっペんにたどりつくと、そこにひとりの和尚(おしょう)さんが、ニコニコしながら待っていました。
「わしは、この山で修業(しゅぎょう)をしておるのじゃが、仏さまをお祭りするお堂がのうてな。ちょうどよかった。この蔵をおいていきなされ」
「やいやい、この米俵は、わしの物じゃ。返せ、返しやがれ!」
「いやいや、わしは蔵だけあればよろしいのじゃ。中の米俵は持ってお帰り」
「こんな山から、どうして米俵を運ベるものか! はやく、持ち主であるわしの家にはこぶんだ!」
「うむ、持ち主の家にはこべばいいのだな?」
「そうだ、はやくしろ!」
「承知した」
 和尚さんは、そばにいた鉢に向かって声をかけました。
「さあ、米俵を持ち主のところに運んでおやり」
 鉢は、一俵の米俵をひょいと持ちあげました。
「あれあれ、あれえ?」
 なんと、その米俵を先頭に、つぎからつぎへと米俵が飛びはじめたのです。
 米俵の列は、元きた空をグングン飛んでいきます。
「わあ、待ってくれえ!」
 やっと長者の屋敷まで、もう少しの所まで戻ってきた米俵のむれが、突然、バラバラにちらばって、村の家々に落ちていきました。
「わあ、お米だ! お米だ!」
 村の人たちは大喜びです。
 米俵は本来の持ち主である、村人たちの手に戻ったのでした。
 それからというもの、長者どんはお米をひとりじめすることもなくなり、あの山の上のお寺には、お参りする人たちがたえなかったそうです。

おしまい

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11月25日の日本の昔話 ネコ岳のばけネコ

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11月25日の日本の昔話

ネコ岳のばけネコ

ネコ岳のばけネコ

 むかしむかし、たびの商人(しょうにん)の五助(ごすけ)が、九州のあそ山のおくへでかけたときのことです。
 あその草原はひろくて、千里(四千キロメートル)もあるといわれています。
 五助は、いつのまにか道をまちがえたらしく、いわのゴツゴツしたところにでてしまいました。
「さあ、こまったぞ」
 五助がこまっていると、かすかに、ネコのなきごえがきこえました。
「はて、こんな山のなかにネコがいるとはふしぎだ。そういえば、たしかこのあたりに、ネコ岳(だけ)という山があって、ばけネコのかしらがいるときいたことがある。・・・つかまったら、たいへんだ」
 五助は、いそいで山をおりかけました。
 すると、山のなかにあかりがひとつ、ボンヤリとともっています。
「これはありがたい。とめてもらうとしよう」
 五助が、あかりのほうに歩いていくと、りっぱなやしきがありました。
「すみません。たびのものですが」
 こえをかけると、うつくしい女があらわれて、
「どうぞ、おあがりなさい」
と、おくのざしきにとおしてくれました。
 しばらくすると、
「おふろがわきました。おふろに入っているあいだに、ごはんのしたくをしておきましょう」
と、さっきの女がいいました。
 五助がふろにいこうとすると、ろうかですれちがったべつの女が、ひどくおどろいた顔で、
「五助どん? ・・・はっ! ここは人間のくるところではありません。はやくにげないと、ネコのすがたにされてしまいます」
と、耳うちをしました。
「あんたは、だれだね?」
「むかし、五助どんの家のちかくにいた、みけネコです。年をとったので、ネコ岳のばけネコのかしらにつかえています。それより、はやくおにげなさい」
 五助はそれをきいて、いのちからがらにげだしました。
 すると、
「まてぇー!」
 お湯の入ったおけを手にした女たちが、おいかけてきました。
 女たちは、いわの上からひしゃくでくんだおけのお湯を、五助にかけようとしました。
 バシャー!
 足に少しお湯がかかりましたが、五助はころげるように山をくだって、ようやく町へにげかえりました。
 あとでお湯のかかった足をしらべると、ネコの毛がはえていました。
「あぶないところだった。もしふろに入っていたら、いまごろはネコに」
 五助は、それからというもの、ネコ岳にはちかづきませんでした。

おしまい

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きょうの記念日 → ハイビジョンの日
きょうの誕生花 → パンパスグラス
きょうの誕生日 → 1962年 寺門ジモン (芸人)

きょうの新作昔話 → 日田(ひた)どん
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きょうの日本民話 → 右源太とばけネコ
きょうのイソップ童話 → ワシとキツネ
きょうの江戸小話 → よく見るがいい

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11月24日の日本の昔話 打たぬのに、鳴るたいこ

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11月24日の日本の昔話

打たぬのに、鳴るたいこ

打たぬのに、鳴るたいこ

 むかしむかし、あるお寺に、あたらしく小僧さんがきました。
 和尚(おしょう)さんは、小僧さんがどれくらいやくにたつかためしてみようと思いました。
 それで、わざとむずかしいことをいいつけました。
「打たぬたいこに、鳴るたいこ。手ふり足ふり、しかめがおをするものをもってきなさい」
「へえ、そんなものがあるのですか?」
 小僧さんは、こまってしまいました。
「もってくることができないというなら、おまえのまけじゃ。まいりました、まいりましたと、十ぺんいって、毎日の三度のごはんを二度にがまんしなさい」
と、和尚さんがいいました。
「そんなこと、わたしはごめんです」
「では、さっきいったことをやれるか」
「ええ、やりますとも。きっと、もってきてみせますよ」
と、小僧さんはしかたなくこたえました。
 小僧さんは一人になると、うでをくんで、ジッとかんがえました。
 それからニッコリわらって、小さなふくろをもって、お寺のうらの森へでかけていきました。
 森からかえってきますと、こんどはお金をもって町へいき、たいこを一つ買ってきました。
 そして、しばらくたってから、たいこをもって和尚さんの部屋へいき、
「おいいつけのものを、もってきました」
と、いいました。
 和尚さんは、そのたいこをもってみて、ビックリ。
 たたかないのに、ブルンブルンと、ひとりでに鳴っています。
 あんまりふしぎなたいこなので、
「ほう、これはなんだ?」
 和尚さんは、たいこのふちから中をのぞこうとしました。
 すると、ブーンと、とびだしてきたハチが、チクリッと、和尚さんのはなのあたまをさしました。
「いたい、いたいっ!」
 和尚さんは、手や足をふりあげてハチをおいはらい、たいこをなげだしました。
「そらね、和尚さまがおっしゃったように、『打たぬのに、鳴るたいこ。手ふり足ふり、しかめがおをするもの』でしょう」
と、小僧さんはいいました。
 和尚さんは、小僧さんをこまらせるつもりだったのですが、じぶんのほうがハチにさされてしかめがおをしてしまったのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → オペラの日
きょうの誕生花 → がまずみ
きょうの誕生日 → 1974年 山本太郎 (俳優)

きょうの新作昔話 → 千亀女(せんかめじょ)
きょうの日本昔話 → 打たぬのに、鳴るたいこ
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きょうの日本民話 → 蛇の天上のぼり
きょうのイソップ童話 → 気がくるったライオンとシカ
きょうの江戸小話 → よいお手本

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11月23日の日本の昔話 上と下

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11月23日の日本の昔話

上と下

上と下

 あるとき、お百姓(ひゃくしょう)が畑をたがやしていると、鬼がヌーッと顔を出しました。
「ウヒャーー!」
 お百姓がビックリしていると、
「おい、百姓、おめえ何をしとるだ」
「あ、ああ。うめえ野菜をたんと作ってるだよ。どうだ、ほしけりゃ畑さたがやすのを手伝わんかい」
「ああ、ええとも。うめえ野菜が食えるんならやるだよ」
「けど鬼さんよ、分けるときにけんかになると、おら、おっかねえだべ。今から決めておくことにするべえ。畑の上さできたもんは鬼さんのもの、下にできたもんはおらのものにすべえ」
「よし、おらが上のもんさ、もらうだべな」
 話は決まると、鬼とお百姓は毎日せっせと水をやったり、草をとったり。
 やがてできたのは、とても大きな大根です。
 お百姓はみずみずしい大根を持って帰って大喜び。
 でも、鬼はしなびた葉っぱばかりです。
「おいおい百姓、ずるいぞ。もういっぺんタネをまくだ。で、今度はおらが畑の下、おめえが上のもんさ取るだ」
「ああ、ええとも。今度は鬼さんに下にできたもんば、やるべえ」
 そういいながらまた、二人はせっせと働きました。
 やがて夏になって畑にできたのは、まっ赤なイチゴです。
 お百姓は甘い実をカゴいっぱいに入れて帰り、鬼がくきを引っこ抜くと、細い根っこしかついていませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 勤労感謝の日
きょうの誕生花 → みかん
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きょうの日本昔話 → 上と下
きょうの世界昔話 → 悪魔のすすだらけきょうだい
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11月22日の日本の昔話 キツネとクマ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話

11月22日の日本の昔話

キツネとクマ

キツネとクマ

 むかしむかし、キツネがクマにいいました。
「ねえ、クマさん、いっしょに野菜をつくらないかい? おいしいのがうんと食ベられるよ」
「いいなあ。自分で食ベる物をつくれば、毎日山をさがさなくてもいいものね」
 クマは大喜びです。
「じゃ、クマさんは力が強いから、土をほり返してね。ぼくはタネを見つけてくるよ」
「うん、わかったよ」
 キツネは、山をおりて村へいきました。
 クマは木の根っこをほったり、石をどけたりして、土をたがやしました。
 がんばったので、いい畑ができました。
 そこへ、キツネが持ってきたタネをまきました。
「クマさん、野菜ができたら半分ずつに分けようね。ぼくは土から下のほうをもらうよ」
「だったら、ぼくは、土から上にできたほうをもらえるんだね」
「いいとも、クマさん」
 タネが芽を出しました。
 緑の葉っぱは、ぐんぐん大きくなりました。
「やあ、もう食ベられるな、クマさん。きみは強いつめだろう。さあ、ほってよ」
「よしきた」
 また、クマはひとりで働きました。
 ところが、できた野菜は大きなかぶでした。
 おいしそうな根っこは、みんなキツネが持って行きました。
 クマは、葉っぱをもらいました。
「葉っぱなんか、ちっともおいしくないや」
 クマはガッカリです。
 それからしばらくして、食べ物をさがしているクマのところへ、またキツネがきました。
「ねえクマさん、野菜をつくろうよ。今度は、きみに土から下のほうをあげるから」
「うん、そんならいいよ」
 気のいいクマは、また土をたがやしました。
 タネが芽を出して、ツルがのびました。
 ツルには大きなカボチャが、ゴロゴロなりました。
「ぼくは、土の上のほうをもらうんだったね」
 キツネはニヤニヤしながら、カボチャをかかえて帰りました。
「よくも、まただましたな」
 クマは、プンプンにおこりました。
 するとある日、キツネがハアハアいいながら走ってきました。
「クマさん、いいことを知らせにきたよ。きみの大好きなハチの巣を見つけたんだよ」
「ぼくにくれるんだね。どこなの?」
 うれしくなったクマは、すぐにキツネについていきました。
「ほら、あの木の根もとだよ。見えただろう?」
「ひゃっ、すごい巣だ。ミツがたくさんあるぞ」
 クマが巣をつかみました。
 するとおこったハチは、わっと飛んできてクマをさしました。
「痛い、痛いよ。助けてー!」
 でも、キツネは知らん顔です。
 ハチがクマを追いかけているうちに、キツネはミツを取って逃げました。
 クマは痛いこぶをなでながら、泣き泣き帰りました。
 また、しばらくたったころ。
 キツネがすましてクマの家へきました。
 ちょうど、クマは肉を食べていました。
「おいしそうな肉だね。ぼくもほしいなあ」
「キツネさん、村の野原へいってごらんよ。ウマがいるから」
「だって、ウマなんかつかまえられないよ」
「わけないさ。ウマが昼寝をしているときに、後ろ足へ思いきりかみついてやるんだよ。歩けなくなったところをつかまえるのさ。かんたんだろ?」
「よし、ぼくもやってやろう」
 キツネは、走っていきました。
 野原にくると、います、います。
 キツネは、そっと、ウマの後ろに近づきました。
 口を開けてかみつこうとすると、
「ヒヒヒーン!」
 おどろいたウマが、キツネをけとばしました。
 ヒューン、ドッスーン!
 いじわるばかりしていたキツネは、大きな石にあたってひどいけがをしたのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1975年 aiko (歌手)

きょうの新作昔話 → 別所温泉
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11月21日の日本の昔話 石のいも

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11月21日の日本の昔話

石のいも

石のいも

 むかしむかし、ある村に、空海(くうかい)という名のお坊さんがやってきました。
 お坊さんは、朝から何も食べずに、山をこえ谷を渡り、やっとこの村にたどりついたのです。
「ああ、腹がへった。目が回りそうじゃ」
 すると向こうから、一人の女の人が歩いてきました。
 女の人は、畑から帰ってきたところでした。
 手にザルをかかえ、その中にはおいしそうなイモが、いっぱい入っていました。
 それを見て、お坊さんは思わず声をかけました。
「お願いじゃ、そのザルの中のイモを1つでいい、わしにくだされ」
 女の人は、ジロリとお坊さんを見ました。
 この女の人は、みすぼらしいお坊さんにイモをあげるのがいやだったので、
「このおイモは、食べられませんよ」
「えっ、どうして?」
「これは、おイモそっくりの石なんです」
「そうか、それは仕方がない」
 お坊さんは頭を下げると、また、トボトボと道を歩いていきました。
「うふふ。うまくいったわ。だれが、大事なおイモをあげるもんですか」
 次の年の秋になりました。
「今年も、おいしいおイモがたくさん取れますように」
 あの女の人は大きなザルをかかえて、自分の畑に行きました。
 さっそく、畑の土をほり返してみますと、去年よりも大きなイモがドッサリと出てきます。
「今年は豊作だわ。それに、ズッシリと重くて、よく実がつまっている。・・・しかし、本当に重たいわね。まるで石みたい。・・・あれ、これは!」
 イモだと思っていたのは、イモそっくりの石でした。
「あら、これも、これも、これも、ぜんぶ石だわ!」
 女の人の畑のイモは、全てイモにそっくりな石だったのです。
 そのとき、女の人は去年の今ごろ、お坊さんにうそをついたことを思い出しました。
「ああ、あのとき、わたしがうそをついたから、神さまが天罰(てんばつ)をあたえたんだわ」
 女の人は反省して、それからはまずしい人にほどこしをする、心やさしい人になりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1967年 古賀稔彦 (柔道)

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11月20日の日本の昔話 逃げた黒牛

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11月20日の日本の昔話

逃げた黒牛

逃げた黒牛

 むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 きっちょむさんのおじさんは、りっぱな黒牛を一頭持っていました。
 ある日、その黒牛を連れて、きっちょむさんのところへやってきました。
「きっちょむ、実は急用で町へいくことになった。二、三日でもどってくるが、その留守(るす)のあいだ、こいつをあずかっていてくれないか」
「いいですよ。どうぞ、気をつけていってらっしゃい」
 きっちょむさんは、こころよく黒牛をあずかりました。
 さて、きっちょむさんがその黒牛を連れだし、原っぱで草を食べさせていると、一人のばくろうが通りかかりました。
 ばくろうとは、牛や馬を売ったり買ったりする人のことです。
「ほう、なかなかいい黒牛だな。どうだい、わしに十両(70万円ほど)で売らんか」
「十両?! ほんとうに、十両だすのか?」
「ああ、だすとも、こいつは十両だしてもおしくないほどの黒牛だ」
 十両ときいて、きっちょむさんは、急にそのお金がほしくなり、
「よし、売った!」
 きっちょむさんは、勝手におじさんの黒牛を売ってしまいました。
「それじゃあな、たしかに金は渡したよ」
 ばくろうが黒牛をひいていこうとすると、きっちょむさんがあわてて呼びとめました。
「ちょっと待ってくれ! すまんが、その黒牛の毛を二、三本くれないか」
「うん? まあ、いいが」
 きっちょむさんは、黒牛の毛を三本ほど抜いて、紙につつみました。
 それから、二、三日たって、おじさんがもどってきました。
「きっちょむ、すまなかったなあ、黒牛をひきとりにきた」
 その声を聞くと、きっちょむさんは、大いそぎで裏口からとびだしました。
 それから石垣(いしがき→石の壁)の穴に、牛の毛を三本つっこみ、そして片手をさしこむと、
「大変だ、大変だー! 牛が逃げる! だれかー! はやく、はやくー!」
「なに、牛が逃げるだと!」
 おじさんはビックリして、かけつけてきました。
 ところが、きっちょむさんが石垣に手をつっこんでいるだけで、黒牛の姿はどこにも見あたりません。
 きっちょむさんは、おじさんの顔を見て、またわめきたてました。
「おじさん、早く早く! 黒牛が石垣の中へ逃げこんだ。いま、しっぽをつかまえてる。しっぽがはずれるー!」
 おじさんがあわててかけよると、きっちょむさんは石垣から手を抜き、
「ああ、だめだ。とうとう逃げられた。おじさん、かんべんしてください。これは、あの黒牛の形見(かたみ)です」
と、言いながら、黒牛の毛を三本渡しました。
 おじさんが、いそいで石垣の裏にまわってみましたが、どこにも黒牛の姿はありません。
 おじさんはガッカリして、その場にヘナヘナとすわりこんでしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → つわぶき
きょうの誕生日 → 1970年 原久美子(俳優)

きょうの新作昔話 → 真夜中のキツネの嫁入り
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11月19日の日本の昔話 くわん、くわん

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11月19日の日本の昔話

くわん、くわん

くわん、くわん

♪音声配信

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 ある時、和尚(おしょう)さんが大好きなぼたもちをもらってきましたが、寺の小僧たちにわけるだけの数はありません。
 そこで和尚さんは、小僧たちにはやらずに一人で全部食べてしまおうと、そのぼたもちを戸だなの奥にかくしたのですが、それを見ていたのが一休さんです。
「ずるい和尚さんだ。よし、みんなで食べてしまおう」
と、かくしていたぼたもちを取り出すと、寺の小僧たちといっしょに、全部食べてしまったのです。
「しかし、こんなことをして大丈夫か? 一休」
 しんぱいする小僧たちに、一休さんはニッコリ笑うと、
「大丈夫ですよ。本堂の阿弥陀(あみだ)さまに、ちょっと手伝ってもらえば」
と、言って、皿についたアンコを手ですくうと、一休さんは本堂に入っていきました。
 さて次の朝、ぼたもちがなくなったことに気がついた和尚さんは、カンカンに腹を立てて、一休さんたち小僧を呼びつけました。
「こら! 戸だなのおくのぼたもちをぬすんだのはだれだ?!」
 すると一休さんは、とぼけた口調で、
「はて、わたしたちは知りません。だけど、本堂の阿弥陀さまの口もとに、アンコがついていましたよ。犯人は、阿弥陀さまかもしれませんね」
「なにをばかなことを」
と、言いつつ、和尚さんが本堂に行ってみると、たしかに阿弥陀さまの口もとは、アンコだらけです。
 もちろん、一休さんの仕業(しわざ)です。
(ははん。これは一休の仕業だな。またとんちでごまかすつもりだろうが、そうはいかんぞ)
 一休さんの仕業と気づいた和尚さんは、
「阿弥陀さま。ぼたもちをぬすんだのは阿弥陀さまですか? 答えてくだされ」
と、言って、阿弥陀さまの頭を、コツンとたたきました。
 すると、阿弥陀さまが、
 くわーん
と、鳴りました。
 何度たたいても、
 くわーん、くわーん
と、鳴ります。
 和尚さんは一休さんたちに向き直ると、こわい顔で言いました。
「ほれみろ。阿弥陀さまは『食わん』とおっしゃっておるぞ。やはり、犯人はおまえたちだな!」
 和尚さんは、『ついに一休から一本とったぞ』と、内心よろこんでいましたが、そんなことでやられる一休さんではありません。
 一休さんは、ますますとぼけた口調で、
「あれ、たたいたくらいでは、白状(はくじょう)しませんね。こうなれば、阿弥陀さまをかまゆでにしてみましょう」
と、言って、煮えたったかまの中に、阿弥陀さまをつけたのです。
 すると阿弥陀さまは、くったくったくった、とあわをふきました。
「ほらね。あみださまが『食った、食った』と、白状したでしょ」
 これには和尚さんも返す言葉がなく、
「たしかに、おまえのいうとおりだ」
と、答えるしかありませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 緑のおばさんの日
きょうの誕生花 → われもこう
きょうの誕生日 → 1949年 松崎しげる(シンガー)

きょうの新作昔話 → おいつぼの滝
きょうの日本昔話 → くわん、くわん
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きょうの日本民話 → 友だちにあげたリンゴ
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11月18日の日本の昔話 夢買い長者

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話

11月18日の日本の昔話

夢買い長者

夢買い長者

 むかしむかし、あるところに、年をとったお百姓(ひゃくしょう)さんと若いお百姓さんがいました。
「今日は、山へたきぎを切りにいこうか」
「うん、そうしよう」
 二人は仲良しなので、今日も一緒に山ヘ出かけました。
 さて、お昼になると、お百姓さんたちは草の上に腰をおろしてお弁当を食ベました。
「ああ、ねむくなった。おれはちょっと昼寝をするよ」
 年とったお百姓さんはゴロンと横になり、すぐにいびきをかきはじめました。
 そこへ、一匹のアブが飛んできました。
 ブーン、ブーン。
 アブは、寝ているお百姓さんの鼻の穴にもぐりこみました。
「たっ、たいへんだ!」
 若いお百姓さんは、ビックリ。
 心配しながら見ていると、アブは鼻の穴から出てきて、遠くへ飛んでいってしまいました。
「ああ、さされなくてよかったよ。だけど、おかしなアブだなあ」
 その時、年とったお百姓さんが目をさましました。
「なんだ。今のは夢だったのか」
 そういって、年とったお百姓さんは若いお百姓さんに言いました。
「おれ、今、不思議な夢を見たんだよ。アブが飛んできてな、『ここをほれ』というからほったら、つぼが出てきて、中にいっぱいお金が入ってたんだ」
「へえっ、じゃ、さっき鼻の中に入っていったあのアブかな? いったい、お金の出たのはどこなんだね?」
 若いお百姓さんがたずねると、
「佐渡(さど)という島のお寺にいったんだ。その庭に白いきれいな花が咲いてたよ。その木の下なんだ」
「なあ、ぼくにその夢を売ってくれないか?」
「夢を売る? お前、夢なんか買ってどうするんだい?」
「そのお寺へいって、ほってみるんだよ。・・・で、いくらで売ってくれる?」
「あきれたなあ。夢を本気にするなんて」
 年とったお百姓さんは、笑って相手にしません。
 それで若いお百姓さんは持っていたお金を渡すと、すぐに舟に乗って出かけていきました。
 海を渡って島につくと、古いお寺はすぐに見つかりました。
 庭へ入っていくと、そこへ年とったお坊さんが帰ってきたので、
「もしもし、和尚(おしょう)さんですか。どうぞわたしをやとってください」
「ほう、これは元気そうな。ちょうど一人さがしていたところだ。さあ、お入り」
 和尚さんはよろこんで、若いお百姓さんをやといました。
 その日から、若いお百姓さんは井戸(いど)に水をくんだり、ご飯をつくったりと、よく働きました。
 そして、毎日庭へ出ては、白い花が咲かないかと待っていたのです。
 すると、庭の木につぼみがふくらみました。
「これだな。今にきっと白い花が咲くぞ」
 楽しみにしていましたが、咲いたのは赤い花でした。
 若いお百姓さんは、ガッカリです。
 一年たって、別の木に白い花がたくさん咲きました。
「これだ! この木の下だな」
 ほってみると、聞いた夢のとおり、きたないつぼが出てきました。
 若いお百姓さんがふるえながら、つぼをかたむけると、
 ジャラジャラジャラ。
 お金がどっさり出てきたのです。
「ああ、ほんとだった。ほんとだった」
 夢を買ったお百姓さんは、大金持ちになって村へ帰りました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 土木の日
きょうの誕生花 → こなら
きょうの誕生日 → 1970年 渡辺満里奈 (俳優)

きょうの新作昔話 → キツネと油あげ
きょうの日本昔話 → 夢買い長者
きょうの世界昔話 → ウサギとハリネズミ
きょうの日本民話 → ダルマの神さま
きょうのイソップ童話 → アルキュオン
きょうの江戸小話 → 黒があぶない

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11月17日の日本の昔話 こわれたせともの

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話

11月17日の日本の昔話

こわれたせともの

こわれたせともの

 むかしむかし、あるとうげに、人をだますキツネがいました。
 あるとき、このとうげをとおりかかった、せともの売りのおじいさんは、せとものも、べんとうも、のこらずとられて、トボトボ家にかえりました。
「とんでもないキツネだ。とっちめてやる」
 おじいさんから話しをきいた息子は、つぎの日、せとものをかついでとうげにむかいました。
 するとキツネが、おちばをおでこにつけて、むすめにばけるところが目にはいりました。
 息子が、そのままあるいていくと、
「せとものやさん、ひとやすみしませんか」
 むすめが声をかけてきました。
「ちょうど、やすみたかったところだ。いっしょに、べんとうでも食べようじゃないか」
 息子はにもつをおろすと、べんとうをひろげ、むすめにもすすめました。
 むすめはゆだんして、べんとうに手をのばしました。
と、そのとき、息子はいきなり、その手をねじりあげて、
「じいさまのかたきうちだ!」
と、なわでキリキリとしばりあげ、荷物をつりさげるてんびんぼうで、うちすえました。
 キツネは正体をあらわして、
「グシャン、グシャン、グシャン、グシャン」
と、なきさけびます。
「まだまだ、かんべんできるもんか!」
 むすこがさらにうちかかると、きゅうに、人のこえがしました。
「せとものやさん、いったいぜんたい、さっきからせとものをうちこわして、どうするつもりです?」 
「へっ? せとものをこわしている? 違いますよ。わるいキツネをこらしめているんですよ。ほら、・・・へっ?」
 息子がわれにかえってよくみると、キツネとおもったのは自分のせともので、キツネのなきごえは、せとものがわれる音だったのです。
「だっ、だまされた・・・」
 息子はガックリとかたをおとして、トボトボと家にかえっていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 将棋の日
きょうの誕生花 → つた
きょうの誕生日 → 1969年 置鮎龍太郎 (声優)

きょうの新作昔話 → ものぐさ太郎
きょうの日本昔話 → こわれたせともの
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11月16日の日本の昔話 海坊主にあった船のり

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11月16日の日本の昔話

海坊主にあった船のり

海坊主にあった船のり

♪音声配信

 むかしむかし、徳蔵(とくぞう)という船のりがいました。
 船のりの名人として知られ、徳蔵のあやつる船は、どんな嵐ものりきり、これまで一度として遭難(そうなん)したことはありません。
 だから船主たちは、だいじな荷物を運ぶとき、かならず徳蔵の船を選ぶほどです。
 しかし、そんな徳蔵にも肝(きも)をひやすような出来事がありました。
 ある日、徳蔵は荷物をおろしたあと、のんびりと船をこいでいました。
 空は晴れ、おだやかな波の上で海鳥たちがたわむれています。
「なんて静かな海だ」
 すっかりいい気分になった徳蔵は、歌を口ずさんでいました。
 はるかむこうに、島影が見えたときです。
 ふいに、なまあたたかい風が吹いてきて、波が高くなりました。
 沖の方をふり返ると、さっきまで晴れていた空に黒い雲がわきだし、みるみる広がっていきます。
「おかしいなあ?」
 徳蔵は首をかしげました。
 これまで長年の経験で、こんな日は、絶対に嵐などやってきません。
 それでも、あたりは暗くなり、船の上まで黒雲がたれてきました。
 波はいよいよ高くなり、船が大きくゆれます。
 やがて雨が降りはじめると、はげしい嵐になりました。
(こういうときは波にさからわず、じっとしていることだ)
 徳蔵は船をこぐのをやめると、ろ(→船をこぐための棒)を船に引きあげたまま、船のバランスをとるために、船底にうずくまっていました。
 船はまるで、木の葉のようにゆれます。
と、そのとき、目の前の海から黒いものが浮きあがり、あっというまに高さ一丈(約三メートル)ほどの大入道になりました。
「ば、化けもの!」
 さすがの徳蔵もビックリです。
 けれど、腕ききの船のりだけのことはあり、あわてずにその化けものをにらみつけました。
 化けものの両眼が、ランランと光っています。
 そして、うなるような声でいいました。I
「どうじゃ、わしの姿は恐ろしかろう!」
 すると徳蔵も、負けじといい返します。
「なにが恐ろしいもんか。世の中には、おまえより恐ろしいものはいくらでもいる。とっとと消えうせないと、このろでたたき殺すぞ!」
 徳蔵のすごいけんまくに、ぎゃくに化けものがあわてました。
「チビのくせに、おそろしい男だ」
 化けものはそのままスーッと海へ沈むと、それっきり姿を見せなくなりました。
と、同時に嵐がやみ、ふたたび空に日がもどります。
 家にもどって、このことを近所のもの知り老人に話したら、それは海坊主という妖怪(ようかい)で、からだがうるしのように黒く、嵐をおこして船を沈めるというのです。
(なるほど、それにしても、よく船を沈められずにすんだものよ)
 この話しはすぐに広まり、海坊主をおいはらった船のりとして、徳蔵への仕事の依頼(いらい)は、ますますふえたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 幼稚園記念日
きょうの誕生花 → ふゆさんご
きょうの誕生日 → 1951年 オール巨人(漫才師)

きょうの新作昔話 → うどどん
きょうの日本昔話 → 海坊主にあった船のり
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きょうの江戸小話 → 大事なお手本

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11月15日の日本の昔話 仁王とどっこい

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11月15日の日本の昔話

仁王とどっこい

仁王とどっこい

 むかしむかし、仁王(におう)というすばらしい力持ちがいました。
 もう、国じゅうでは仁王にかなう者はいません。
「ずっと遠い唐の国(からのくに→中国)に、どっこいという力持ちがいると聞いたが、どーれ、出かけていって、一番、すもうでもとってくるか」
 仁王は、はるばる舟に乗っていきました。
 そしてようやく、どっこいの家が見つかりました。
 家には、おばあさんが一人、留守番をしていました。
「どっこいはいるかな。日本一の仁王さまが、力比ベにきたといってくれ」
 仁王は、大声でいいました。
 すると、おばあさんは、
「今、じきに帰ってくるでな、少し待っててくれろ」
と、笑って仁王に答えました。
 おばあさんは、せっせとお昼ごはんのしたくをしています。
 仁王がだまって見ていると、かまどにはまきが、まるで火事のようにゴウゴウと燃えています。
 そして、その上にかかったカマの大きいこと。
 俵(たわら)の米を、どかっと何俵も入れたようすです。
「そんなにいっぱいごはんをたいて、いったい何人で、いいや何十人で食べるんだね」
 仁王は、ためしに聞いてみました。
「これかあ、何十人なんてことあるかね。おらと、おらんとこの子どもと、あと、じいさまの三人できれいにたいらげるだで」
 おばあさんは、平気な顔をして答えました。
「・・・おらんとこの、子ども?」
と、いうのは、どっこいに決まっています。
 仁王はすっかりびっくりして、これではとってもかなわないと思いました。
「ちょっくら、お便所を貸してくれや」
 仁王は、からだがブルブルふるえてくるのをガマンして、便所に飛びこむなり、そこの窓から逃げ出しました。
 遠くから、どっこいがもどってくる地ひびきが聞こえてきます。
 仁王は、大急ぎで舟をこぎ出し海に出ました。
 さて、家に帰ってきたどっこいは、仁王がきたことをすぐにかぎつけました。
 戸口の所に、大きな足跡があるからです。
「ははん、こんなでっかい足をしているのは、日本の国の仁王しかいねえぞ。力比べにきただな。よしよし、仁王はどこにいるだ?」
 どっこいが喜んで聞くと、おばあさんが、
「あんれまあ、なんと長いお便所だベ」
と、いうので、そっといってのぞいてみると、中はからっぽです。
「さては逃げたな。ここまできて、おらと一番も勝負をしないで帰るなんて、うわさほどでもない弱虫のひきょう者よ。よーし、ひっとらえて、やっつけてやるぞ」
 どっこいは、大きなイカリをかついで追いかけていきました。
 長い長いくさりのついた、ずっしり重いイカリです。
「おーい、待てえ!」
 浜辺に着いたどっこいは、もうずっと海のほうへこぎ出していった仁王の舟に向かって、
「えいやっ!」
と、イカリを投げました。
 イカリは、ピューンと空を飛び、先のとんがりが仁王の舟につきささってしまいました。
 長いくさりでつながれた仁王の舟は、どっこいの手に引っぱりこまれそうです。
 そのとき、ハッと、日本の国を出るときに、八幡(やはた)さまからもらったヤスリを持っていたことを思い出しました。
 どんな鉄でも切れるヤスリです。
 仁王が、くさりをヤスリでこすると、くさりはプッツリと切れました。
 とたんに、力いっぱい引っぱっていたどっこいは、ズデーンと海の中にしりもちをつきました。
 どっこいは、切れたくさりを見ておどろきました。
「なんという怪力だ。おらでもこのくさりは切れないのに。・・・勝負しなくてよかった」
 それからです。
 重い物を持つときに、唐の国では「におう」とかけ声をかけ、日本では「どっこいしょ」というようになったのは。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 七五三
きょうの誕生花 → からたちばな
きょうの誕生日 → 1934年 内田康夫(推理小説家)

きょうの新作昔話 → 伐株山(きりかぶやま)
きょうの日本昔話 → 仁王とどっこい
きょうの世界昔話 → マウイの仕事
きょうの日本民話 → 首のないウマ
きょうのイソップ童話 → ワシとコガネ厶シ
きょうの江戸小話 → お念仏とお題目

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11月14日の日本の昔話 ウマかたのゆだん

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話

11月14日の日本の昔話

ウマかたのゆだん

ウマかたのゆだん

 むかしむかし、あるところに、人をだますキツネのすむとうげがありました。
 とうげをいったりきたりする、ウシかたやウマかた(→ウシやウマを引いて、荷物を運ぶ人)は、ときどきこのキツネにだまされて、にもつをまるごととられています。
 ところが、一人だけ、
「おれは魚をしいれるとき、とうげのキツネのために、安い魚をかってきて、それを食べさせてやっている。だから、にもつをとられるなんてへまはやらん。頭はつかいようだ」
と、じまんしているウマかたがいました。
 ある日、この男がとうげにさしかかると、木のかげからよびとめるものがいます。
 だれかとおもったら、かみしもをきたキツネです。
「じつは、今晩、せがれがよめをとります。そこで、いつも魚をくださるあなたを、お客としておまねきしたいのですが、いかがでしょう?」
 キツネはかしこまって、あいさつしました。
「そんなことを言って、そのすきに、にもつの魚をとろうというのではあるまいな?」
「なにをおっしゃいます。もし、おにもつがしんぱいでしたら、わが家のにわにはこばせましょう。おにもつは、見えるところにおきます。こうすれば、安心でしょう」
 キツネはけらいを集めて、ウマのにもつを山の中にはこばせました。
「さあ、こちらです」
 キツネはウマかたを屋敷にあんないして、もてなしました。
 たくさんのキツネが、いれかわりたちかわり、日ごろのおれいをいっては、酒をつぎにきます。
 にもつは目のとどくところにつんであるし、酒もごちそうもうまいし、こんなけっこうなことはありません。
 そのうちに、きれいなあねさんギツネが、
「だんなさま、おふろはいががですか。おせなかを、流させていただきたいのですが」
と、いうではありませんか。
「それはありがたい。では、さっそく」
 ウマかたがおふろに入ると、ちょうどいいゆかげんです。
 すっかりいいきもちになっていると、ウマかたの耳のそばで、わめき声がきこえてきました。
「だれだ! わしの田んぼをかきまわしているやつは!」
「なっ、なに。田んぼ?」
 ウマかたがハッと気がつくと、そこは田んぼの中でした。
「しまった! だまされたか」
 にもつはなくなっており、ウマだけが、のんびりと草をたべていました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1973年 大沢さやか(俳優)

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11月13日の日本の昔話 たいこもちと三つ目の大入道

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話

11月13日の日本の昔話

たいこもちと三つ目の大入道

たいこもちと三つ目の大入道

 むかしむかし、江戸でたいこもち(たいこをたたいたり、芸をしたりして、えんかいを盛り上げる事を仕事にしている人)をしている富八(とみはち)が、
「毎日毎晩、お客のごきげんとりで、クタクタだ。おれだってたまには、いきぬきに箱根(はこね)の温泉にでもいってくるかな」
と、東海道(とうかいどう)をのぼっていきました。
 さて、そのかえり道のこと。
 すっかりと、いきぬきをした富八が、気分もかるく身もかるく、箱根の坂道をあるいていくと、
「おい、まて!」
 うっそうとしたスギの木だちから、よびとめるものがありました。
「だっ、だれだ?」
と、ふりむけば、三つ目の大入道がヌーッとあらわれ、三つ目をグワーッと見ひらいて、おどしにかかりました。
 なみの男なら、きもをつぶして逃げ出すところですが、富八は、客あしらいのうまさで身をたてているたいこもちです。
 ちょっとやそっとでは、おどろきません。
 とりあえず、化け物にだまされないおまじないにと、まゆ毛につばをぬってから、
「よよっ、だれかと思えば、三つ目さんじゃありませんか。どうも、お顔が見えねえと思ったら、こんな山のなかにひっこんでいたんですかい。まったく、やぼというか、ものずきというか、いやはや、あきれたお方だ」
 三つ目の大入道は、富八のいきおいにのまれて、
「そういうおまえは、だれだったかなあ?」
「いやですな、たいこもちの富八をおわすれだなんて。お人が悪い。ひところは、ずいぶんとひいきにしてくださったじゃありませんか。ねえ、そうでしょう」
 こういわれると、知らないとはいえません。
「そうそう、富八だったな」
 ていさいをつくろって、むりに話をあわせました。
 こうなればもう、富八のペースです。
(へっへへ。こいつを江戸へつれだして、見世物小屋へうりとばせば、ひともうけできるわい)
と、たくらんだ富八は、ことばたくみに、三つ目の大入道を江戸へさそいました。
「ねえ、ねえ、三つ目さんや。こんな山のなかで、人をおどかしてみたところで、一文にもなりゃしないですよ。そんなつまらないくらしはやめにして、どうです、花のお江戸へきてごらんなさいな。あんたくらい、めずらしいお顔をしていれば、ほうぼうからおよびがかかって、あっちからも小判、こっちからも小判、そっちからも小判と、小判小判のお山ができますよ。それに、ゆうれいのきれいどころだって、ほうってはおかないよ。いや、にくいね、色男。金に女に、かー、こりゃあ、たまらないねえ」
「ほっ、ほんとですかい?」
「この富八、うそとぼうずの頭は、ゆったことがねえのがじまんなんです。ささっ、けっして、けっして、わるいようにはいたしませんて。人生はだれでも一度きり、だんな、ここが人生の勝負時ですぜ」
 富八のちょうしのよさに、三つ目の大入道はついつい、道をいっしょにしましたが、どうかんがえても、話がうますぎます。
 小田原(おだわら→神奈川)のあかりがみえるあたりまでくると、富八の話をあやしみだして、たちどまりました。
「おや、三つ目のだんな。いったい、どうしたんですか?」
 富八がふりかえると、三つ目の大入道は、人にだまされないおまじないに、まゆ毛につばをぬっておりました。

おしまい

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11月12日の日本の昔話 とっつく、くっつく

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11月12日の日本の昔話

とっつく、くっつく

とっつく、くっつく

♪音声配信

むかしむかし、ある村に与作(よさく)という男がいました。
 たいへんなこわがりで、長いへちまがぶらさがっているのを見てドッキリ、草がざわついてもドッキリ。
 ネズミが現れると、腰をぬかして、
「おかか、助けてくれろっ!」
と、いったしだいです。
「やんれ、こんなではこの先どうなるもんだか」
と、おかみさんもなげいておりました。
 ある日、与作は村の寄り合いに出かけましたが、帰りは日もくれて、おまけに雨もふっています。
「気味が悪いな。化けもんが出よったら、どうしよう?」
 ヒヤヒヤのビクビクで、ようやく家にたどりつきました。
「やんれ、これでまんず安心」
 だけれど、この安心がゆだんのもとで、戸口に足を入れたとたん、気味の悪い冷たい手が、与作の首をつかまえました。
「ヒェェー! おかか! 助けてくれろっ。おら、化けもんにつかまっちまったあ」
 おかみさんがよく見ると、屋根の雨粒が、与作の首をぬらしていました。
「屋根の雨ん粒やないか。化けもんちゅうもんは、みんなこういうもんだよ、おまえさん」
「へええ、化けもんちゅうのは、みな、雨ん粒のことか」
 さてつぎの日、友だちの作ベえどんに出会いました。
「与作どん聞いたか? 川っぷちに毎晩化けもんが出るちゅうこった」
「ははん、雨ん粒だな」
「なんやらわからんような、恐ろしいやつが、追いかけてきよるんだと」
 あの晩から、ばけものは雨粒だと思いこんでいる与作は、全然恐くありません。
「だらしねえやつらだ。よし、おらがいって、こらしめてやる」
 与作がその晩、川っぷちに出かけていくと、草の中から気味の悪い声が聞こえてきました。
「・・・とっつくぞお、・・・くっつくぞお」
(全然こわくねえ。化けもんは、みな雨ん粒だから平気なもんだ)
 与作は、その気味の悪い声にむかって、
「ああ、とっつけや、くっつけや」
「・・・とっつくぞお、・・・くっつくぞお」
「ええとも、とっつけや、くっつけや」
 すると草がザワザワとゆれて、まっ黒けの奇妙(きみょう)なやつが出てきて、
「そんなら与作どん、おまえにくっつくから、おんぶしろ」
「しかたねえな。そら、背中につかまれや」
 与作が化けものをおんぶして歩きだすと、チャリン、チャリンと音がします。
「おまえのからだはばかにかたいな。それにズッシリと重い。のう、雨ん粒おばけ」
「そうとも、おらはこれから与作どんの家で暮らすことにしたぞ」
 与作が化けものを連れて帰ってくると、おかみさんは大喜び。
「まあ、おまえさん、こりゃ、まあ!」
 与作がおんぶしてきたものは大きなかめで、その中にはなんと、ピカピカの小判がギッチリと詰まっていました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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11月11日の日本の昔話 ふしぎな宝ゲタ

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11月11日の日本の昔話

ふしぎな宝ゲタ

ふしぎな宝ゲタ

 むかしむかし、あるところに、さすけという男が、おかあさんと二人でくらしていました。
 ある日、おかあさんが重い病気になりましたが、医者にかかりたくてもお金がありません。
(このままでは、おかあさんが死んでしまう。お金持ちのごんぞうおじさんに、お金をかりよう)
と、さすけは出かけていきました。
 ごんぞうおじさんは、
「金をかせというのか? それなら、おらの家のひろい畑を、一日でたがやすんだ!」
と、どなりました。
 さすけは早くお金をもらって、おかあさんを助けようとがんばり、一日で畑をたがやしました。
 でも、ごんぞうおじさんは、
「まだ金はかせん。大おけに水をいっぱい入れろ!」
と、またどなりました。
 つぎの日、さすけは水をはこびました。
 ところが、おけには小さな穴があけてあって、いくらはこんでもいっぱいになりません。
「なまけ者! 金はかせん、帰れっ!」
 さすけは追い返されました。
 トボトボ歩いていくと、とあるお宮の前にきました。
(おなかがへったなあ。もう歩けない。どうしたらいいんだろう)
 さすけは、ウトウトと、いねむりをしてしまいました。
 カラーン カラーン カラーン カラーン 
 ゆめの中でしょうか。
 ゲタの音が近づいてきます。
 あらわれたのは、やさしい顔のおじいさんでした。
「母親思いのさすけよ。おまえに一本のはのゲタをさずけよう。このゲタをはいてころぶと、そのたびに小判が出る。だが、ころぶたびに背が低うなる。やたらと、ころぶではないぞ」
「は、は、はい。ありがとうございます」
 おじいさんのすがたは、パッと消えてしまいました。
「ありゃ? 夢か? でも、ほんとうにゲタがあるぞ」
 さすけは、おっかなびっくり、ゲタをはいてみましたが、なにしろ一本はのゲタです。
 立つか立たないうちに、スッテン!
「あっ、いてててえ」
と、いったとたん、チャリーン。
「ああ、小判だ!」
 さすけは、大よろこびです。
 その小判を持って、すぐに医者のところへいきました。
 医者にみてもらったおかあさんは、みるみる元気になりました。
 それで、あのゲタは大事にしまって、さすけは、おかあさんといっしょに、毎日よくはたらきました。
 そこへ、ごんぞうおじさんが、さすけのようすを見にやってきました。
 そっとのぞくと、ごちそうを食ベています。
「やいやい。このごちそうはどうした! ごちそうを買う金があるくせに、おらのところに金をかりに来たのか!」
「まあまあ、気をしずめてください。これには深いわけが」
 さすけは、あのゲタの話をしました。
「なに、小判の出るゲタだと。こいつはいい。これは、びんぼう人のおまえたちより、金持ちのおらがもつべきだ。もらっていくぞ」
 ごんぞうおじさんは、ゲタを持って帰っていきました。
 家に帰ったごんぞうおじさんは、さっそく大きなふろしきを広げました。
 そしてゲタをはいて、ふろしきの上にのると、
「へっヘっへ、まずは、ひところび」
と、言って、スッテンと、ころびました。
 すると、小判がチャリリリーン。
「おおっ! 本物の小判じゃ!」
 さあ、それからというもの、
♪ころんでころんで、小判がほしい。
♪チャリンコ、チャリンコ、小判がほしい。
 ごんぞうおじさんは、夢中になってころびました。
「おおっ! 小判がだんだんでっかくなるぞ! おらよりでっかくなっていくぞ! おら、日本一の大金持ちじゃあー!」
 ごんぞうおじさんは、ころぶたびに自分が小さくなっていくことに、ぜんぜん気づいていません。
 そのころさすけは、ゲタをはいてころぶと、背が低くなることを言いわすれたのを思い出して、あわてて、ごんぞうおじさんに会いにいきました。
  家に行ってみますと、しめきった家の中で、チャリーン、チャリーンと、音がします。
「おじさーん、おじさーん!」
と、呼んでみましたが、へんじがありません。
 さすけは、とびらを力まかせにあけました。
 すると、中から小判が、ジャラジャラと出てきます。
「うああっ! ごんぞうおじさん。どこだあー!」
 ごんぞうおじさんは、山のようにつまれた小判のすみで、バッタのように小さくなっていました。
 それでも、ころんでは起き、ころんでは起きして、小判を出しています。
 そのうちに、とうとう小さな虫になって、どこかへ飛んでいってしまいました。
 その後、さすけはごんぞうおじさんの家をひきとって、長者(ちょうじゃ)さまになり、おかあさんとしあわせに暮らしました。

 よくばりすぎると、ろくなことがありませんね。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → からすうり
きょうの誕生日 → 1952年 吉幾三(歌手)

きょうの新作昔話 → 泉小太郎(いずみこたろう)
きょうの日本昔話 → ふしぎな宝ゲタ
きょうの世界昔話 → カンチールと巨人
きょうの日本民話 → 水無川
きょうのイソップ童話 → キツネとハリネズミ
きょうの江戸小話 → 手足のけんか

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11月10日の日本の昔話 ほうびの米俵

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11月10日の日本の昔話

ほうびの米俵

ほうびの米俵

 むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 殿さまが死んで、若さまが殿さまになってから、いく年かたったある日。
 彦一の家に、お城から、つかいのさむらいがきて、
「殿さまが、おまえにほうびをつかわすそうじゃ。城にまいるがよい」
と、いいました。
「はて、何をくださるおつもりじゃろ。若さま、・・・いや殿さまは気前(きまえ)がいいからな。ほうびがたくさんあると持ちきれないから、ねんのためにウシをひいていこう」
 彦一が牛をひいて、お城にあがると、
「これ、彦一。ちこうよれ。そちのとんちのかずかず、あいかわらず城でもひょうばん。おかげで、父上なきあとのこの城も、ほがらかじゃ。よって、ほうびをとらす」
 殿さまじきじきのお言葉です。
「はーっ、ありがたきしあわせにぞんじます」
「では、彦一へのほうびをもて」
 お殿さまが手をたたくと、けらいがひとふりの刀と、米俵(こめだわら)を一俵(いっぴょう)もってきました。
「ははーっ」
 彦一は、あたまを床にすりつけて、殿さまにおれいをいいました。
 でも、どうせいただくなら、米俵をもう一俵ほしいとおもった彦一は、牛のせなかのかたほうに刀をくくりつけ、もうかたほうに、米俵をのせることにしました。
 刀はかるいけれど、米俵はズッシリとおもいので、牛の体はななめになりました。
 おもさがかたよりすぎているため、うまくあるきだせません。
 すると彦一が、牛にむかっておこりました。
「おまえというやつは、牛のぶんざいで、お殿さまからいただいた、かたほうのごほうびをおもんじ、かたほうをかろんずるつもりか! はよう、たたんか!」
 牛はヨロヨロたちあがりましたが、うまく歩けずに、また、すわりこんでしまいました。
「うーん、やっぱり、このままではむりなようだ。さて、どうするか?」
 彦一がわざとこまっていると、さっきからこのようすをながめていたお殿さまが、けらいにいいつけました。
「牛が、かたにでなんぎしておる。彦一に、米俵をもう一俵、つかわしてやれ」
 牛は米俵を左右にふりわけ、こんどは調子よく歩き出しました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → トイレの日
きょうの誕生花 → もみじ
きょうの誕生日 → 1960年 川島なお美(俳優)

きょうの新作昔話 → 白鳥の関
きょうの日本昔話 → ほうびの米俵
きょうの世界昔話 → タイコじいさん
きょうの日本民話 → もちの白鳥
きょうのイソップ童話 → サルの子どもたち
きょうの江戸小話 → ねこのこわいろ

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11月9日の日本の昔話 はな垂れこぞう

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11月9日の日本の昔話

はな垂れこぞう

はな垂れこぞう

 むかしむかし、ひとりのおじいさんがいました。
 おじいさんは毎日、山へたきぎ取りに出かけました。
 たきぎを売って、暮らしをたてていたからです。
 ある日のこと、おじいさんが、
「たきぎ。たきぎ。たきぎは、いらんかのう」
と、町のすみずみまで大声をあげて歩きましたが、たきぎは少しも売れませんでした。
 おじいさんは疲れはてて、橋の上にすわりこみます。
 もう、家までたきぎを持って帰る力も出ません。
「売れない物なら、川の神さまにさしあげよう」
 おじいさんは、たきぎを一たばずつつかんで、川へ落としました。
「神さま。つまらぬ物ですが、取ってくだされ」
 ポイポイポイッと、背負ってきたたきぎを、すっかり川へ投げこみました。
 そして、トボトボと帰ろうとすると、川の中から美しい女の人が現れました。
 女の人は、かわいい小さな子どもをだいています。
「わたしは、川の神さまの使いです。川の神さまは、たきぎをいただいて、たいへんお喜びです。お礼に、この子をさしあげましょう」
「お礼だなんて」
 おじいさんは、あわてて手を振りましたが、
「この子は、鼻たれ小僧と言って、頼めばなんでもきいてくれるのです」
「ほんとうですか?」
「そのかわり、毎日ごちそうにエビをさしあげてください。いいですか、毎日ですよ」
 女の人は、そういって消えました。
 おじいさんは、鼻たれ小僧をかかえて家へもどりました。
 家へ帰ると、神だなの横に置いて、たいせつに育てました。
 女の人がいったことは、うそではありませんでした。
「お米が、ほしい」
と、いえば、鼻たれ小僧は、鼻をかむときのように、チンチーンと音をたてたかと思うと、あっというまにお米を出してくれるのです。
 お金がほしい。
 新しい家がほしい。
 大きな蔵(くら)がほしい。
 おじいさんが頼めば、そのたびに、チンチーン、チンチーン、音をたてて願いを聞いてくれるのです。
 一ヶ月もたつと、おじいさんは村一番の大金持ちになっていました。
 だから、山へたきぎを取りにいかなくてもいいのです。
 ただ毎日、町へいって鼻たれ小僧に食ベさせるエビを買うことだけが、仕事になりました。
 でもおじいさんは、そのうちに、それもめんどうになってきました。
 そこで鼻たれ小僧に、
「もう頼むことがなくなったから、川の神さまの所へ帰っておくれ」
と、いってしまったのです。
 すると、どうでしょう。
 ズーズーと、鼻をすするような音がしたかと思うと、りっぱな家も蔵も、なにもかも消えてしまいました。
 あとには、むかしのままのみすぼらしい家が残りました。
「鼻たれ小僧、待っておくれ」
 おじいさんは、あわてて追いかけましたが、もう、どこにも姿は見えませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 119番の日
きょうの誕生花 → じゅずだま
きょうの誕生日 → 1984年 えなりかずき(俳優)

きょうの新作昔話 → 大力の坊さん
きょうの日本昔話 → はな垂れこぞう
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きょうの江戸小話 → 将棋がたき

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11月8日の日本の昔話 しょうじょう寺のタヌキばやし

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11月8日の日本の昔話

証誠寺の狸囃子
イラスト Smile STATION

しょうじょう寺のタヌキばやし

♪朗読配信

 むかしむかし、山にかこまれた、しょうじょう寺という小さなお寺がありました。
 山にはタヌキがいっぱいいて、夜になると寺へやってきては、はらつづみを打ったり、あばれまわったりと、いたずらのしほうだい。
 おかげで、この寺には和尚(おしょう)さんがいつかず、寺はあれほうだいです。
 身分の高い和尚さんが、この寺の事を聞いて、
「よろしい、わしが行ってしんぜよう」
と、しょうじょう寺へやってきました。
「うむ、これは聞きしにまさるひどさじゃ」
 あまりにもひどい寺のあれように、和尚さんはあきれ顔です。
♪なんまいだあ~
♪なんまいだあ~
 本堂から、ひさしぶりにお経が聞こえてきました。
 うら山のタヌキたちは顔を見あわせてニヤリと笑うと、さっそく、新しい和尚さんを追い出す相談をはじめました。
「おい、ポン太とポン子、いつものやつ、やってみろ!」
「へ~い!」
 ドロンパッ!
 ポン太とポン子は、なにやら姿をかえてしまいました。
「おう、みごとじゃ。はよういって、おどかしてこい」
「へ~い!」
 そして、
♪なんまいだあ~
♪なんまいだあ~
と、お経をあげる和尚さんのうしろに、そうっと近づいたポン太は、ぬっと顔を出しました。
「ギャアーーーー!」
 目の前に現れたのは、一つ目小僧です。
 そこへ、美しい娘も現れて、
「和尚さん、お茶をどうぞ」
と、いいながら、首をニョロニョロとのばしてきたではありませんか。
「た、た、たすけてくれ~っ」
 和尚さんは、寺の石段をころがるようにかけおりて、逃げ出してしまいました。
 寺の庭に集まったタヌキたちは、大わらいしながら、とくいになってはらつづみを打ちました。
 さて、次に現れたのは、力の強そうな、ごうけつ和尚でした。
 和尚さんが寺につくと、さっそくタヌキたちはおどかしにかかりました。
 ところが、一つ目小僧に化けたポン太は、頭をコツンとなぐられ、娘に化けたポン子が首をニョロニョロのばすと、首をねじまげられるしまつです。
「うえーん、いたいよう!」
 二匹は、なきなき帰っていきました。
 タヌキの親分は考えました。
「う~ん、あの和尚、なにに化けてもこわがらん。・・・そうだ、一晩中はらつづみを打ちつづけるんだ。そうすれば和尚のやつ、ねむれなくなって、まいっちまうぞ」
 その夜、タヌキたちはいっせいにはらつづみを打ちはじめました。
♪ポンポコポンのポン!
 ぐっすりねむっていた和尚は、さすがにその音で目をさましました。
 むっくり起きあがって戸を開けると、
「こらっ! 庭であそんじゃいかん」
 タヌキたちはすばやく逃げ出して、木のかげにかくれてしまいました。
「こらっ、待て! こらっ、逃げるな! タヌキたちのやつ、ばかにしやがって」
 和尚は庭中、タヌキを追いかけまわしましたが、タヌキたちのすばやさには、とてもかないません。
 そのうち石につまずいてころんで、目をまわしてしまいました。
 こうして和尚は、またまた、タヌキたちにやられてしまったのです。
 さて、その次に現れたのは、なんともきたない和尚さんでした。
 この和尚さんは、きたないこの寺をすっかり気に入ってしまいました。
「おう、しずかでいい寺じゃ」
 タヌキたちはさっそく、この新しい和尚さんを追い出す相談です。
 いつものように、まず一つ目小僧のポン太が出ていきましたが。
「おう、これはかわいい一つ目小僧じゃ。そら、ダンゴでも食わんか?」
 ポン太は和尚さんにダンゴをもらって、とことこ帰ってきました。
 今度は、ポン子ねえさんです。
 ところが、和尚さんは大よろこび。
「さあ、首の長いおねえさんも、一ぱいいこう」
と、ポン子にお酒を飲ませるしまつ。
 タヌキの親分はおこりました。
「ようし、こうなったらあの手だ」
と、いうわけで、その夜、和尚さんがねついたころ。
♪ポンポコポンのポン!
 物音で目をさました和尚さんが戸を開けると、タヌキたちがせいぞろいして、はらつづみを打っています。
「こりゃおもしろい。わしもなかまに入れてくれ」
 ずいぶんとかわった和尚さんで、庭におりてくると、タヌキたちといっしょにはらつづみを打ちはじめました。
♪ポンポコポンのポン!
♪ポンポコポンのポン!
 どうも、タヌキたちの音とはちがうようです。
「なんだなんだ、その音は。わっはっはっは」
 タヌキたちに笑われて、和尚さんは、いっしょうけんめいたたきました。
「よせよせ、はらがこわれてしまうぞ」
 タヌキの親分がとめるのも聞かず、和尚さんはたたきつづけます。
 そのうち、おなかをたたきつづけた和尚さんは、とうとうフラフラになって、たおれてしまいました。
「それ、いわんこっちゃない。このままじゃ、かぜをひいてしまうぞ。和尚さんを寺の中へ運んでやれ」
 和尚さんを追い出そうとしたタヌキたちでしたが、和尚さんを親切にかいほうしました。
 次の日の朝。
「はて、わしはいつここへもどったんじゃろう。まあ、それはどうでもいいわ。もう少しはらつづみがうまくならんといかんな」
と、いうわけで、和尚さんは朝早くから、はらつづみの練習をはじめました。
「強くたたけばいいってもんじゃないな。コツじゃ、コツ。そいつをおぼえねば」
 和尚さんは、昼めしもそこそこに、またはらつづみのけいこです。
 やがて、おてんとさまが西にかたむくころ、和尚さんのおなかは、かなりいい音が出るようになっていました。
 さて、今夜は満月です。
 和尚さんもタヌキたちも、早くから寺の庭にせいぞろいして、みんなで楽しくはらつづみです。
♪ポンポコポン、ポンポコポン。
♪ポンポコポン、ポンポコポン。
♪ポンポコポンの、スッポンポン。
 和尚さんのおなかの音がずいぶんよくなったので、タヌキたちも負けてはいられません。
「和尚さんに負けるな、負けるな」
と、ひっしでおなかをたたいているうちに、タヌキの親分のおなかは、どんどんふくれていきました。
 それでもたたきつづけます。
 そしてついに。
 バーン!
 とうとうおなかがはれつして、タヌキの親分は、ひっくりかえってしまいました。
「こりゃ、たいへんじゃあ! 薬、薬」
 和尚さんは大いそぎで薬を持ってきて、タヌキのおなかにぬってやりました。
「どうだ、ぐあいは?」
 心配そうにたずねる和尚さんに、タヌキの親分はニッコリしていいました。
「和尚さんのおかげで、もうなおった。さて、続きをやるぞ。それっ、あいててて!」
 タヌキの親分はうでをふりあげましたが、まだむりのようです。
「次の満月までしんぼうしなさい。みんな、今夜は親分のおなかが早く治るよういのって、元気よくやろう」
 こうして、タヌキたちとゆかいな和尚さんは、朝まで元気よくはらつづみを打ちつづけました。
 そして、しょうじょう寺というこのお寺では、いまも満月の夜には、タヌキたちが庭に集まって、はらつづみをうつという話です。

おしまい

証城寺(しょじょうじ)の狸(たぬき)ばやし

 作詞 野口雨情
 作曲 中山晋平


♪ しょ しょ しょうじょうじ 
♪ しょうじょうじの 庭は
♪ つ つ 月夜だ
♪ みんなでて こいこいこい
♪ おいらの 友だちゃ
♪ ポンポコポンの ポン


♪ 負けるな 負けるな
♪ 和尚さんに 負けるな
♪ こい こいこい こいこいこい
♪ みんなでて こいこいこい


♪ しょ しょ しょうじょうじ
♪ しょうじょうじの はぎは
♪ つ つ 月夜に 花ざかり
♪ おいらも うかれて
♪ ポンポコポンの ポン

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → レントゲンの日
きょうの誕生花 → うめもどき
きょうの誕生日 → 1975年 坂口憲二(俳優)

きょうの新作昔話 → ぼたんの花と若者
きょうの日本昔話 → しょうじょ寺のタヌキばやし
きょうの世界昔話 → お墓にはいったかわいそうな少年
きょうの日本民話 → お稲荷さんにかりたノコギリ
きょうのイソップ童話 → 人間がはじめて見たラクダ
きょうの江戸小話 → おしゃべり

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11月7日の日本の昔話 お坊さんの贈り物

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話

11月7日の日本の昔話

お坊さんの贈り物

お坊さんの贈り物

 むかしむかし、空海(くうかい)という名の、旅をしながら村から村へと歩く、お坊さんがいました。
 ある冬の日、宿(やど)が見つからないうちに夜が来ました。
「どこかに、とめてくれる家はないかな?」
 でも、きたないお坊さんの姿を見て、とめてくれる家はありませんでした。
 とうとう、雪がふってきました。
 村はずれまで来ると、一軒のまずしい家がありました。
「雪にふられて困っておる。今夜、ひと晩とめてくだされ」
 すると中から、おばあさんが出てきて。
「あれまあ、お気の毒に。こんなところでよかったら、さあ、どうぞ」
 おばあさんは、お坊さんをいろりのふちに座らせると、おわんにお湯を入れてあげました。
「食べる物もなくてのう。せめて、お湯でも飲んでくだされ。からだがあったまりますから」
 お坊さんは、両手でおわんをかかえるようにしてお湯を飲みました。
 冷えきった体が、どんどんあたたかくなってきます。
「ありがとう。まるで、生き返ったようだ」
 お坊さんが礼を言うと、
「あしたの朝は、きっとなにか作りますから」
 おばあさんが、申しわけなさそうに頭をさげました。
 するとお坊さんは、ふところから米を三粒ほど出して、
「すまんが、これでおかゆを煮てくれ」
と、いいました。
「へええ、これでおかゆを・・・」
 おばあさんはビックリしましたが、言われたように、なべに三粒の米を落とし、それにたっぷりとお湯を入れ、いろりの上にのせました。
 すると、どうでしょう。
 なべの中には、たちまちおいしいおかゆがあふれて、グツグツと煮えはじめたのです。
「さあ、おばあさんもいっしょに食ベなされ」
 そのおかゆのおいしいこと。
 こんなにおいしいおかゆを食べたのは、生まれてはじめてです
「はあ、ありがたや、ありがたや」
 おばあさんは、涙を流して喜びました。
 そしてふしぎなことに、おかゆはいくら食ベても、ちっともなくならないのです。
「ありがとうございました。きたないふとんですが、ここでやすんでください」
 おばあさんは、たった一組しかないふとんにお坊さんをねかせて、自分はわらにもぐってねました。
 つぎの朝。
 お坊さんは、おばあさんがねているうちに起き出し、また、ふところから米を三粒ほど出して、からっぽの米びつの中ヘ落としました。
「しんせつなおばあさん、いつまでも元気でいておくれ」
 そういって家を出ようとしたら、おばあさんがあわてて起きてきて、
「お坊さん、待ってください。いも汁でもつくりますから」
「ありがとう。でも、わたしはもう出かけなくてはいけない。あとで、米びつをあけるがよい」
 お坊さんはそう言うと、おばあさんの家を出ていきました。
「また、きてください」
 おばあさんは雪の中のお坊さんに向かって、そっと手を合わせました。
「そういえば、米びつをあけろと、言っていたが」
 おばあさんが米びつをあけてみますと、なんと、中には米がびっしりつまっているではありませんか。
 そればかりか、ふしぎなことに、毎日食べても米はなくなりません。
 この米のおかげで、おばあさんはいつまでも元気に暮らしたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 立冬
きょうの誕生花 → むべ
きょうの誕生日 → 1956年 笑福亭笑瓶(タレント)

きょうの新作昔話 → 熊ん蜂(くまんばち)の山賊退治
きょうの日本昔話 → お坊さんの贈り物
きょうの世界昔話 → ご先祖さまはみんなタマゴ
きょうの日本民話 → 大蛇と結婚した娘
きょうのイソップ童話 → サルと漁師
きょうの江戸小話 → くせ

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11月6日の日本の昔話 風小僧と子どもたち

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11月6日の日本の昔話

風小僧と子どもたち

風小僧と子どもたち

 むかしむかし、雪が降りはじめたころのお話しです。
 村外れのお堂の前で、子どもたちが遊んでいると、見たことのない男の人がフラリとやってきて、いいました。
「クリや、カキや、ナシが、いっぱいなっておる所へ遊びに行かんか?」
 子どもたちは、おなかがすいていたので、
「どこや、どこや。早く連れてってくれろ」
と、大喜びでいいました。
 すると、男はおしりからしっぽのような長い物を、ズズズズッと出しました。
「さあ、それにまたがって、落ちないようにしっかりつかまるんだ。いいか。みんなのったか?」
「うん。のった、のった」
 子どもたちがロをそろえていうと、ゴォーッとなまあたたかい風が吹いて、あっというまに空へのぼっていきました。
 そして本当に、クリや、カキや、ナシが、いっぱいなっている所へ連れていってくれたのです。
「ほれ、ほれ。おいしい果物がいっぱいなっておるだろう」
 男はまたゴォーッとなまあたたかい風を起こして、木からたくさんの果物を落としてくれました。
 子どもたちは、大喜びです。
 そのうちに、タ方になりました。
 男は急にそわそわして、
「うっかりしておるまに、暗くなってしもうたわ。わしは、大急ぎで行かねばならん所があるんじゃ。おまえたちは、みんなでうちへ帰りなよ」
 そういうと、たちまちなまあたたかい風を起こして、どこかへ行ってしまったのです。
 さて、こまったのは、子どもたちです。
「おらたちの村は、どこやろ?」
「おらたちは、どっちからきたんやろ?」
「あの山、こえてきたのとちがうか?」
 みんなで帰る道をさがしているうちに、日はとっぷりとくれてしまいました。
「うちへ帰りたいよう」
「さむいよう。こわいよう」
 女の子は泣きながら、男の子のあとについていきます。
「泣くな。泣くとキツネが出てきて、だまされるぞ」
 子どもたちが手をつないで歩いていくと、向こうの暗やみの中に、ボンヤリと家の明りが見えました。
 子どもたちは喜んで、明かりの方に走っていきました。
 家の戸を開けると、ふとったおばあさんが出てきて、
「おまえたち、どこからきたんや?」
「おらたち、知らないおじさんによ、なにやら長い物にのせられて、風にのってきたんや。そして、カキやナシを、たくさん食わしてもらったんやけど、おじさんは、おらたちを置いて、また風といっしょにどこかへ行ってしもたんや。おらたち、うちへ帰れなくなってしもたんや」
「そうかい、そうかい。その子はな、きっとおらの息子の南風(みなみかぜ)だ。あの子はいたずらが大好きなんだ。悪いことをしたな。おらのもうひとりの息子の北風(きたかぜ)にたのんで、おまえたちを家まで送らせよう」
 おばあさんはそういうと、
「ほれ、起きろや。いつまでも寝ておらんで、起きるんだ」
と、となりのへやで寝ていた息子の北風を起こしました。
 北風小僧は、ねむい目をこすりながら起きてくると、
「ほれ、早く後ろにのれや」
と、やっぱり同じように、おしりから長いしっぽのような物をズズズズッとのばしました。
 子どもたちがそれにまたがって背中につかまると、ゴォーッと冷たい風が吹いて、みんなは、またたくまに夜空にのぼりました。
 村では夜になっても子どもたちが帰ってこないので、みんなおおさわぎでさがしていました。
 そのとき、冷たい北風がゴォーッと吹いてきて、子どもたちが村の人の前に現れたのです。
 村の人たちは、ビックリするやら大喜びするやら。
 それを見ていた北風小僧は、
「また、いつでも遊びにこいや」
と、言って、ゴォーッという風と共に帰って行きました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → お見合いの日
きょうの誕生花 → さねかずら
きょうの誕生日 → 1967年 松岡修造(タレント)

きょうの新作昔話 → かみなりの子
きょうの日本昔話 → 風小僧と子どもたち
きょうの世界昔話 → 白鳥の王子
きょうの日本民話 → 暗闇の黒ウシ
きょうのイソップ童話 → イバラを食べるロバとキツネ
きょうの江戸小話 → むごんくらべ

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11月5日の日本の昔話 おとりのキジ

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11月5日の日本の昔話

おとりのキジ

おとりのキジ

 むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 きっちょむさんの村には、カラスがたくさんいました。
 畑はあらされるし、朝から晩までカァー、カァーとうるさいし、まったくこまったものです。
「よし、わたしがつかまえてやろう」
 きっちょむさんがワナをつくってしかけると、うまいことに、二十羽あまりのカラスがとれました。
「さて、このカラスをどうしようか?」
 カラスはほかの鳥とちがって、食べてもおいしくありません。
 かといって、このまますててしまうのも、もったいないし。
「そうだ。町へもっていって、売ってこよう」
 きっちょむさんはカゴにカラスを入れると、なにを考えたのか、カゴのふたの上にキジを一羽のせてでかけました。
「ええー、カラスはいらんかな。カラスの大やすうりだよ。一羽がたったの十文(三百円ほど)。カラスはいらんかな」
 きっちょむさんの売り声に、町の人たちはおどろきました。
「おい、みろ。カラス、カラスといっているが、カゴにつけているのは、キジではないか」
「なるほど、キジにまちがいない。あの男、よほどいなかもんとみえる。きっと、カラスとキジのくべつがつかんのだ。キジが一羽、たったの十文ならやすい買い物だ。おーい、一羽くれ」
「わしにも、そのキジ・・・、いや、カラスをくれ」
「わしにもだ」
 町の人たちがよってくると、きっちょむさんは十文ずつもらっておいて、カゴに入ったカラスをわたしていきました。
「なんだ、これはカラスではないか?」
 町の人たちは、文句を言いましたが、
「だから、わしはちゃんとはじめから、『カラスはいらんかな』と、いったではないか。いくらいなかもんでも、カラスとキジのちがいくらい、三つの子どもでもしっておりますわい」
 きっちょむさんは大金をかせいで、ホクホク顔でかえっていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 雑誌広告の日
きょうの誕生花 → コルチカム
きょうの誕生日 → 1951年 天地真理) (タレント)

きょうの新作昔話 → てんぐの鼻が高いわけ
きょうの日本昔話 → おとりのキジ
きょうの世界昔話 → ふしぎなたいこ
きょうの日本民話 → 熊野参り
きょうのイソップ童話 → クジャクとツル
きょうの江戸小話 → しっぺがえし

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11月4日の日本の昔話 サケのおじいさん

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11月4日の日本の昔話

サケのおじいさん

サケのおじいさん

 むかしむかし、ある北国の川に、それはそれは大きなサケが住んでいました。
 人びとは、そのサケを大助(たすけ)と呼んでいます。
 毎年、秋がすぎて、チラチラ雪が降りだすころになると、海からたくさんのサケがのぼってきます。
 大助は、そのサケたちを案内して、ずーっと川上の卵をうむ場所へ連れていくのでした。
「おお、今年もサケがきた」
「大助だけは、アミにかけるでないぞ」
 漁師たちはそういって、道案内の大助が通りすぎてから、サケをとりはじめました。
 ところがその川べりに、たいそうお金持ちの長者(ちょうじゃ)がすんでいました。
 長者は、おおぜいの人をやとっていて、
「どうじゃ、見渡すかぎりの山の幸(さち)、川の幸は、みな、わしの物さ」
と、いばっています。
 ある日、この長者が、やといの人たちを集めると、
「サケの大助とやらを、とって食ベたら、さぞかしうまかろう。みなの衆、アミをつくれ。よいか、川幅いっぱいの大アミをつくるのじゃ」
と、いいつけました。
 みんなはビックリしました。
 けれど、長者のいいつけですから、きかないわけにはいきません。
 何日も何日もかかって、長い長い大アミをつくりました。
 いよいよアミができあがった、晩のことです。
 長者が眠っていると、まくらもとに白いひげの仙人(せんにん)のようなおじいさんが現れました。
「これ、長者よ。あすの朝、大助がサケを連れて川をのぼる。いくらでもたくさんとるがよい。ただし、大助だけはアミにかけないでくれ。たのんだぞ」
 そういい残して、おじいさんの姿は、どこへともなく消えました。
 つぎの日の朝、長者は夜が明けないうちから、やといの人たちを呼び起こし、川にアミをはらせました。
 やがて海の方から、さざ波をたてて、かぞえきれないほどたくさんのサケがのぼってきました。
 いちばん先頭には、特別大きい大助の姿が見えます。
 みんな、まっすぐアミの中へ飛びこんできました。
 それを見た長者は、大声をあげて、
「それ、かかったぞ。大助を逃がすな、アミを引けーい!」
と、さけびました。
「えいや、こらさ。えいや、こらさ」
と、おおぜいのやといの人たちが、力のかぎりにアミを引きました。
 朝日をあびて、サケのうろこがキラキラとかがやきます。
 それは、今までにない大漁でした。
 でも、すっかりアミをあげてみるとどうでしょう。
 大助の姿は、どこにもありません。
 そのかわり、タベのおじいさんが、また長者の前に立っていました。
「長者よ、川の幸(さち)は、いつまでもあるものではない。大助をとってしまったら、たくさんのサケたちの道案内がなくなって、これっきり川をのぼってこれなくなるのじゃ。どうか、はなしてやってくれ」
 おじいさんは、ひどく悲しそうにたのみました。
「いやじゃ、放してなんかやるものか! サケはみんな、わしのものじゃ!」
 長者は首を振って、おじいさんをどなりつけました。
 するとおじいさんの姿は、スーッと消えてしまい、気がつくと、長者の足もとに特別大きなサケが一匹、横たわっていました。
 そのサケこそが、太助です。
「やったぞ! ついに太助を手入れたぞ」
 長者は手をたたいて喜びましたが、このことがあってから、長者の家はかたむいてしまい、長者は貧乏になってしまいました。
 そしてつぎの年から、もう一匹のサケも川をのぼってこなくなったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ユネスコ憲章記念日
きょうの誕生花 → サフラン
きょうの誕生日 → 1947年 西田敏行(俳優)(タレント)

きょうの新作昔話 → 忍術使いのどうぼう
きょうの日本昔話 → サケのおじいさん
きょうの世界昔話 → 虹の鳥
きょうの日本民話 → カッパのくれた宝物
きょうのイソップ童話 → サルとイルカ
きょうの江戸小話 → 与太郎

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11月3日の日本の昔話 しっぽのつり

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11月3日の日本の昔話

しっぽのつり

しっぽのつり

 むかしむかしの、寒い日のことです。
 森には木の実がなくなってしまい、サルはおなかがペコペコでした。
 ところが川に住むカワウソは、毎日おいしそうな魚を腹一杯食べています。
 サルがカワウソに聞きました。
「カワウソくん。どうしたら、そんなに魚が捕れるんだい?」
 すると、カワウソは言いました。
「かんたんさ。川の氷に穴をあけて、しっぽを入れるだろう。それからジッと待つんだ。そしたら、魚がしっぽをえさと間違えて食らいつく、それを釣り上げるんだ」
「へぇー」
 それは良いことを聞いたと、サルはさっそく川へ出かけていきました。
 カチカチにこおった氷に穴をあけて、サルはしっぽをたらします。
「うひゃあー、冷たーい!」
 しっぽがとっても冷たかったけれど、サルはジッとがまんしました。
「待つんだ、待つんだ。もうすぐ魚が食べられるぞー」
 しかし、なかなか魚は来ません。
 そのうち、サルはウトウトと、いねむりをしてしまいました。
 そして気がつくと、しっぽがこおりついてしまい、動かすことが出来ません。
 それを、大きな魚が釣れたとかんちがいしたサルは、大よろこびでしっぽを引っ張りました。
「うーん、おもたい。これは、よほど大きな魚に違いないぞ」
 サルは顔を真っ赤にして、力まかせにしっぽを引っ張りました。
 そして・・・。
 ブチン!!
 あまりにもしっぽを力一杯引っ張ったため、サルのしっぽは途中でちぎれてしまいました。
 サルの顔が赤くてしっぽが短いのは、こういうわけだそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → みかんの日
きょうの誕生花 → きく
きょうの誕生日 → 1975年 原口あきまさ (タレント)

きょうの新作昔話 → キジムナーの仕返し
きょうの日本昔話 → しっぽのつり
きょうの世界昔話 → 歌うガイコツ
きょうの日本民話 → 皿々雪(さらさらゆき)
きょうのイソップ童話 → ハイエナとキツネ
きょうの江戸小話 → 右大臣左大臣

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11月2日の日本の昔話 えんまになった、権十おじいさん

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11月2日の日本の昔話

えんまになった、権十おじいさん

えんまになった、権十おじいさん

 むかしむかし、芝居(しばい)のさかんな村がありました。
 役者も道具方も、みんな村の人で、仕事のあいまに若い者も、おじいさんもおばあさんも子どもも、みんな芝居を練習しています。
 なにしろ山の中の村ですから、芝居を見たりやったりするのが、ただひとつのたのしみだったのです。
 ある年のこと。
 この村で、いちばん芝居のじょうずな権十(ごんじゅう)おじいさんが、ポックリと死んでしまいました。
 おじいさんは、ひとりぼっちであの世へいく暗い道をトボトボと歩いていると、むこうから金ぴかの服をきたえんま大王が、のっしのっしとやってきました。
「こら、亡者(もうじゃ→死んだ人)」
「へえ」
「へえではない。『はい』ともうせ。なんじゃ、おまえのすわりようは」
「へえ。その、こしが、ぬけましたので」
「たしかおまえは、しゃば(→人間の住む世界)で、芝居をやっておったな」
「へえ、あの、その、芝居ともうしても、にわか芝居(→しろうとの芝居)で」
「そうか。かわまんから、そのにわか芝居とやらを、ここでやってみせろ」
「えんまさまは、芝居がお好きでございますか?」
「見たことがないが、しゃばのものは芝居を見て、たのしんでおると聞く。どのようなものか、やってみい」
「へえ、あの、やってみいとおっしゃいましても、わしは、このとおりの亡者で、衣しょうもなにもございません」
「衣しょうがなくては、芝居ができぬか?」
「へえ。できませぬ。あなたさまの衣しょうをかしてくだされ。地獄(じごく)の芝居をやってごらんにいれまする」
 権十(ごんじゅう)おじいさんがそういうもので、えんま大王は衣しょうをぬいでかしてやりました。
 そこで、えんま大王がおじいさんの衣しょうをきて亡者になり、おじいさんがえんま大王になりました。
「それ、芝居をはじめろ」
「へえ。さっそく、はじめましょう」
 おじいさんはすっかり元気になって、すっくと立ちあがりました。
「まずは、えんまのおどりでござい」
 おじいさんがえんま大王の服をきておどっていると、そこへ赤鬼と青鬼がやってきました。
「もし、えんま大王さま」
 どもは、おじいさんの前に両手をついて、ペコペコ頭をさげました。
「もし、えんま大王さま。はよう、おもどりくだされ」
「ただいま、亡者どもが団体でまいりまして、地獄は大いそがしでござります」
 そのとき、亡者すがたのえんま大王が、あわてていいました。
「そやつはにせものだ。たわけめ、このおれがえんま大王だぞ」
 すると、赤鬼青鬼は、
「こらっ。亡者のくせになにをぬかす。おまえも、はよう地獄へまいれ」
「いや、おれがえんまだ。おれが、本物の大王だ」
「無礼者!」
 鬼どもが持っていた金棒で、本物のえんま大王をバシッバシッと打ちのめすと、
「これ亡者、ついてまいれ」
 それから大王の服をきた権十おじいさんは、そのまま、えんま大王になってしまったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 阪神タイガースデー
きょうの誕生花 → せいたかあわだちそう
きょうの誕生日 → 1982年 深田恭子(俳優)(タレント)

きょうの新作昔話 → 白いおうぎと黒いおうぎ
きょうの日本昔話 → えんまになった、権十おじいさん
きょうの世界昔話 → 幽霊の宝物
きょうの日本民話 → たましいが入った竜
きょうのイソップ童話 → モグラの親子
きょうの江戸小話 → けちの親子

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11月1日の日本の昔話 サルカニ合戦

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話

11月1日の日本の昔話

サルカニ合戦

サルカニ合戦

♪音声配信

 むかしむかし、カキの種(たね)をひろったサルが、おいしそうなおにぎりを持ったカニに、ばったりと出会いました。
 サルはカニのおにぎりが欲しくなり、カニにずるいことを言いました。
「このカキの種をまけば、毎年おいしいカキの実がなるよ。どうだい、おにぎりと交換してあげようか?」
「うん、ありがとう」
 カニは大喜びで家に帰り、さっそくカキの種をまきました。
 そして、せっせと水をやりながら、
♪早く芽を出せ、カキの種
♪早く芽を出せ、カキの種
♪出さねばはさみで、ほじくるぞ
 すると、どうでしょう。
 さっきまいたカキの種から芽が出てきて、ぐんぐん大きくなりました。
♪早く実がなれ、カキの木よ
♪早く実がなれ、カキの木よ
♪ならねばはさみで、ちょん切るぞ
 こんどはカキの木に、たくさんのカキが実りました。
「よし、これでカキが食べられるぞ」
と、カニはカキの実を取りに行こうとしましたが、カニは木登りが出来ません。
「どうしよう?」
 困っていると、さっきのサルがやってきていいました。
「ありゃ、もうカキが実ったのか。よしよし、おいらが代わりにとってやろう」
 サルはスルスルと木に登ると、自分だけ赤いカキの実を食べ始めました。
「ずるいよサルさん、わたしにもカキを下さい」
「うるさい、これでもくらえ!」
 サルはカニに、まだ青くて固いカキの実をぶつけました。

さるかに合戦

「いたい、いたい、サルさんずるい」
 大けがをしたカニは、泣きながら家に帰りました。
 そして、お見舞いに来た友達の臼(うす→もちをつくる道具)とハチとクリにその事を話しました。
 話しを聞いたみんなは、カンカンに怒りました。
「ようし、みんなであのサルをこらしめてやろう」
 みんなはさっそくサルの家に行き、こっそりかくれてサルの帰りを待ちました。
「おお、さむい、さむい」
 ふるえながら帰ってきたサルが、いろりにあたろうとしたとたん、いろりにかくれていたクリがパチーンとはじけて、サルのお尻にぶつかりました。
「あちちちっ、水だ、水」
 お尻を冷やそうと水がめのところへ来ると、水がめにかくれていたハチにチクチクと刺されました。
「いたいっ、いたいよう、たすけてぇー!」
 たまらず外へ逃げ出すと、屋根の上から大きな臼が落ちてきました。
 ドスーン!
「わぁー、ごめんなさーい、もう意地悪はしないから、ゆるしてくださーい!」
 それから改心(かいしん)したサルは、みんなと仲良くなりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 紅茶の日
きょうの誕生花 → そば
きょうの誕生日 → 1983年 小倉優子(タレント)

きょうの新作昔話 → すずめとりのおじいさん
きょうの日本昔話 → サルカニ合戦
きょうの世界昔話 → 岩山の大将
きょうの日本民話 → テングにさらわれた子ども
きょうのイソップ童話 → 病気のカラス
きょうの江戸小話 → カモの夢

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