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2009年1月

1月31日の日本の昔話 泣きべそしゃれこうべ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月31日の日本の昔話

泣きべそしゃれこうべ

泣きべそしゃれこうべ

 むかしむかし、ひとりの百姓(ひゃくしょう)がとなり村から家へかえるとちゅう、日がくれたので、近道の墓場の中をとおりました。
 すると、なにやらゴロンとしたものをふんづけました。
「やい、よくも、おれのつらをふみおったな!」
 おどろいた百姓が、月あかりにすかして見ると、なんと、しゃれこうべ(→ガイコツの頭)をふんづけてしまったのでした。
 しゃれこうべが、またどなりました。
「この百姓め、たたってやるぞ!」
 ところが百姓も気の強い男で、はんたいにどなりつけました。
「やい、やい。いつおれが、きさまのようなやつに、こんなところでとおせんぼをしろとたのんだ。ひっこめ!」
 しゃれこうべも、まけてはいません。
「ひっこめといったって、おれひとりではどうにもならん。イヌのやつが、おれをこんなところへはこんできたんだ。なにもすきこのんで、ここにいるわけじゃあない」
「そんならどうして、おまえをここにはこんできた、イヌのやつにたたらないんだ」
 するとしゃれこうべは、ため息をついて。
「あいつらはしょっちゅう、墓場をうろついて、おれたちをひどいめにあわすんだ。ところがイヌでは、たたるにもたたれん。あのれんちゅうときたら運勢(うんせい)がつよすぎて、おれにははがたたないんだ」
「なんだと。それじゃあ、この百姓さまは、イヌよりも運勢がよわいというのか。やい、しゃれこうべ。きさま亡者(もうじゃ→じょうぶつできない死人)のくせして、イヌはつよいからたたらんで、百姓はよわいからたたろうってのか。とんでもねえりょうけんだ!」
「そ、そういわれても・・・」
 しゃれこうべは、泣き声になってきました。
「どうか、このあわれな亡者をせめないでください。あんたは、なんて運勢のつよいお方だ。とてもとても、たたるなど思いもよりません。どうかあわれと思って、穴の中へうめてください。おんにきますから」
「おんにきる? アハハハハハッ。おれはおまえのような泣きべそに、おんをきせようとは思わんわい」
 百姓はふりむきもせず、さっさと、家のほうへかえっていきました。
 いじわるせずに、うめてあげればいいのにね。

おしまい

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1月30日の日本の昔話 大いびき善六

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1月30日の日本の昔話

大いびき善六

大いびき善六

 むかしむかし、善六(ぜんろく)という木びき(→木を切り倒す仕事)がいました。
 大男のくせになまけ者でしたから、一日かかっても仲間の半分ほどしか仕事がはかどりません。
「善六かよ、あいつはとてもものになるめえ」
 みんなは善六を、「木びき」でなく「小びき」だと、ばかにしておりました。
 善六も、おもしろくありません。
 そこで近くの神社にお参りをして、日本一の大びきになれる様に、願をかけることにしました。
「なにとぞ神さま、神社の前に寝そベっている、大きな石のウシをひけるほどの力をさずけたまえ」
 やがて満願(まんがん→願かけが終わる日)の日がきました。
 善六はためしに、寝そべりウシをひいてみることにしました。
 ギイコー、ギイコー・・・
 善六のノコギリは、たちまち石づくりの大きなウシを、まっ二つに切り割ってしまいました。
「やった! もう今までの、小びきの善六ではないぞ。これからは、大びきの善六さんと呼んでもらおうか」
 ところが山へ入って仕事にとりかかったものの、さっぱりノコギリが動きません。
 ようすを見ていた親方が笑いました。
「善六よう。願かけがまちがってたんじゃねえか。木びきは木をひくのが仕事だ。おまえは石をひくことしか頭になかったろうが」
 善六は、ハッと目がさめました。
「そうだ、おらは力持ちをよいことに、いばっていたかもしんねい。もいっペん神さまにお願いしてみよう」
 善六の目からは、ポタポタと涙がこぼれていました。
「神さま、おらはちっこい丸太をひくことからやりなおしてみます。どうかお守りくださいまし」
 善六が一晩じゅうかかって、やっと一本の丸太をひき終えたとき、善六の腕には、まるで石のような力こぶができていました。
 その日から、善六は人が変わったように、仕事にはげみました。
 はげむにつれて、その仕事のたしかさが評判になっていきます。
 あるとき、江戸の工事現場ヘ出かけたことがありました。
 主人は大きなノコギリを背負って現れた善六を見ると、ちょっとからかってやろうと思いました。
「おい若い衆。ひいてみな。ただしスミのとおりだぞ」
と、大きな丸太に、スミで波のような模様(もよう)をえがいたのです。
「はい」
 善六は短く返事をすると、たちまち、波のような模様をひき終えました。
 大ノコギリ一つで、これほどのむずかしい模様をひき切るのは、たいした腕前です。
「まいったまいった。こりゃあ、たいしたもんだ」
 こうして善六の名は、江戸でも有名になりました。
 木びきの仲間たちは、
「善六かよ。ありゃあ、ただの木びきじゃねえ。大びきというもんだ。あのくらいのひき手は、広い江戸にも、ほかにあるみゃあよ」
と、うわさしたそうです。

おしまい

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1月29日の日本の昔話 聴き耳ずきん

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1月29日の日本の昔話

聴き耳ずきん

聴き耳ずきん

 むかしむかし、まわりをグルッと山でかこまれた山おくに、一人のおじいさんがすんでいました。
 おじいさんは、毎日朝になると、しばを入れるしょいこを背負い、山へ入っていきました。
 そして、一日中しばをかっているのです。
 きょうも、しばをいっぱい背負い、山から出てきました。
「さて、ボツボツ帰るとするか。うん? あれはなんじゃ?」
 おじいさんが帰ろうとすると、子ギツネが一匹、いっしょうけんめい木の実をとろうとしていました。
「はて、キツネでねえだか」
 この子ギツネ、足がわるいらしく、いくらがんばっても、うまく木の実がとれません。
「よしよし、わしがとってやろう。よっこらしょ。さあ、これをお食べ。それじゃあ、わしはいくからな」
 子ギツネは、おじいさんのしんせつがよほどうれしかったのか、いつまでもいつまでも、おじいさんの後ろすがたを見送っていました。
 そんなある日、おじいさんは町へ買い物に出かけましたが、帰りがすっかりおそくなってしまいました。
「いそがなくては」
 すっかり暗くなった日ぐれ道を、おじいさんがいそぎ足でやってきますと、おかの上で子ギツネが待っていました。
「あれまあ、こないだのキツネでねえだか」
 なにやら、しきりにおじいさんをまねいているようすです。
 おじいさんは、キツネの後をついていきました。
 子ギツネは、わるい足をひきずりながら、いっしょうけんめいに、おじいさんをどこかへ案内しようとしています。
 ついたところは、竹やぶの中のキツネのすみかでした。
「ほう、ここがおまえの家か」
 キツネの家には、お母さんギツネがおりましたが、病気でねたきりのようです。
 お母さんギツネが、なんどもなんどもおじいさんにおじぎをしています。
 息子を助けてもらったお礼を、いっているようにみえました。
 そのうち、おくからなにやらとりだしてきました。
 それは、一まいの古ぼけたずきんでした。
「なにやら、きたないずきんじゃが、これをわしにくれるというのかね。では、ありがたくいただいておこう」
 おじいさんは、お礼をいってずきんをうけとると、もときた道を一人で帰っていきました。
 子ギツネは、いつまでもおじいさんを見送りました。
 さて、あくる日のこと。
 おじいさんが庭でまきをわっていますと、ヒラリと、足もとになにかがおちました。
「これはゆんべ、キツネからもらったずきんじゃな。・・・ちょっくらかぶってみるか」
 おじいさんはずきんをかぶって、またまきわりをはじめました。
 すると、
「うちのていしゅときたら、一日中、巣の中でねてばかり。いまごろは、すっかり太りすぎて、とぶのがしんどいなぞというとりますの」
「ほう、やせのちゅん五郎じゃった、おたくのていしゅがのう」
 なにやら聞いたこともない話し声が、おじいさんの耳に聞こえてきました。
「はて、たしかに話し声がしたが、だれじゃろう?」
 家の中をのぞいてみましたが、だれもいません。
「うら林のちゅん吉が、はらがいたくてすっかり弱っとるそうじゃ」
「それは、木の実の食べすぎじゃあ」
 おじいさんは、また声に気がつきました。
「おかしいのう。だれか人がいるようじゃが、やっぱりだれもおらん」
 おじいさんは、家をグルリとひとまわりして、ヒョイと上を見上げました。
「うん? もしかしたら、このずきんのせいでは」
 おじいさんは、ずきんをぬいだりかぶったりしてみました。
「やはりこれか」
 キツネがくれたこのずきんは、これをかぶると、動物や草や木の話し声が聞こえるという、ふしぎなずきんだったのです。
 おじいさんは、キツネがこんなにたいせつなものを自分にくれたことを、心からうれしく思いました。
 さて、つぎの日から、おじいさんは山へいくのがこれまでよりも、もっともっと楽しくなりました。
 ずきんをかぶって山へ入ると、小鳥や動物たちの話し声が、いっぱい聞こえてきます。
 えだに止まって話している小鳥。
 木の上で話しているリス。
 みんな楽しそうに、話しています。
 おじいさんは、山でしばをかりながら、小鳥や動物のおしゃべりを聞くのが楽しくてしかたありません。
「わたしゃ、のどをいためて、すっかり歌に自信がなくなっちまった」
「そんなことございませんよ。とってもよいお声ですわ」
「そうかな、では、いっちょう歌おうかな」
 なんと、虫の話し声まできこえるのです。
 おじいさんはこうして、夜どおし虫たちの歌声に耳をかたむけていました。
 一人ぐらしのおじいさんも、これですこしもさびしくありません。
 そんなある日のこと。
 おじいさんが、山からしばを背負っておりてきますと、木の上でカラスが二羽、なにやらしゃべっています。
 おじいさんはきき耳ずきんをとりだしてかぶり、耳をすましますと、
長者(ちょうじゃ)どんの娘がのう」
「そうよ、もう長いあいだの病気でのう。この娘の病気は、長者どんの庭にうわっとる、くすの木のたたりじゃそうな」
「くすの木のたたり? なんでそんな」
「さあ、それはくすの木の話を聞いてみんとのう」
 カラスのうわさ話を聞いたおじいさんは、さっそく長者の家をたずねました。
 長者は、ほんとうにこまっていました。
 一人娘が、重い病気でねたきりだったからです。
 おじいさんはその夜、くらの中にとめてもらうことにしました。
 ずきんをかぶって、待っていますと。
「いたいよ。いたいよ」
 くらの外で、くすの木のなき声らしきものが聞こえます。
 くすの木に、なぎの木と、松の木が声をかけました。
「どうしました、くすの木どん?」
「おお、こんばんは。まあ、わたしのこのかっこうを見てくだされ。新しいくらが、ちょうどこしの上にたってのう。もう、苦しゅうて苦しゅうて」
「それは、お困りじゃのう」
「それでのう、わしは、こんなくらをたてた長者どんをうらんで、長者どんの娘を病気にして、こまらせているんじゃ」
 くらの中のおじいさんは、くすの木たちのこの話を聞いて、すっかり安心しました。
(くらをどかしさえすれば、娘ごのやまいは、かならずよくなる)
 つぎの日。
 おじいさんは、長者にこのことを話しました。
 長者は、すぐにくらの場所をかえることにしました。
 それから何日かたって、くらの重みがとれたくすの木は、元気をとりもどして、青い葉をいっぱいにしげらせたのです。
 長者の娘も、すっかり元気になりました。
 長者は大よろこびで、おじいさんにいっぱいのお宝をあげました。
「これは、キツネがくれたずきんのおかげじゃ。キツネの好物でも買ってやるべえ」
 おじいさんは、キツネの大好きな油あげを買って、山道を帰っていきました。

おしまい

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1月28日の日本の昔話 若返りの水

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1月28日の日本の昔話

若返りの水

若返りの水

 むかしむかし、山のふもとの小さな村に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 おじいさんの仕事は、炭焼きです。
 山の木を切って、炭を焼いて俵(たわら)につめて、近くの町ヘ売りにいくのです。
 でもおじいさんは、このごろ年をとって、仕事がつらくなりました。
「ああ、腰は曲がるし、目はしょぼしょぼするし、いやになってしもうたなあ」
 その日も、おじいさんは炭俵をかついで、ヨタヨタと山をおりはじめました。
 とても暑い日だったので、のどがカラカラにかわきます。
 ふと見ると、道ばたにつき出た岩から、きれいな水がチョロチョロとふき出していました。
「こいつは、ありがたい」
 おじいさんは、その冷たい水を飲みました。
 とてもおいしい水です。
「ああ、うまかった。なんだか腰がシャンと、のびたようだぞ」
 おじいさんは、水のおかげで元気が出たのだと思い、深く考えもせずに山をおりて、家へ帰ってきました。
「ばあさんや、帰ったよ」
「おや、早かったですね。おじいさん・・・!」
 おばあさんはビックリ。
 目をパチパチさせて、おじいさんを見あげました。
 いいえ、おじいさんではなく、そこにいたのは、おばあさんがお嫁にきたころの、あのころの若いおじいさんでした。
「・・・わたしは、夢でも見ているんじゃあ、ないでしょうかね」
 おじいさんも、おばあさんにいわれてはじめて、自分が若返っていることに気づきました。
「若返りの水というのがあると聞いていたが、それではあれが、その水だったんだな」
 おじいさんは、岩からふき出していた、きれいな冷たい水のことをおばあさんに話して聞かせました。
「まあ、そんなけっこうな水があるんなら、わたしも行っていただいてきましょう」
 おばあさんはそういって、次の日さっそく、山へ出かけていきました。
 おじいさんは、おばあさんがさぞかし若くきれいになって、帰ってくるだろうと楽しみにして待っていました。
 ところが昼になっても、夜になっても、おばあさんは帰ってきません。
 おじいさんは心配になって、村の人と山へ探しに行きました。
 でも、おばあさんはいません。
「いったい、どこへ行ってしまったんだろうなあ?」
「キツネに化かされて、山奥へ連れていかれてしまったのとちがうか?」
 みんなが話しあっていると、
「オギャー、オギャー」
と、そばの草むらの中から、赤ん坊の泣き声が聞こえてきました。
 おじいさんが近づいてみると、おばあさんの着物を着た赤ちゃんが、顔をまっ赤にして泣きじゃくっていました。
「バカだなあ。ばあさんのやつ、飲みすぎて、赤ん坊になってしもうた」
 しかたがないので、おじいさんは赤ん坊を抱いて家へ帰りました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ダンスパーティーの日
きょうの誕生花 → レプトスペルマム
きょうの誕生日 → 1981年 乙葉(タレント)

きょうの新作昔話 → 浦島子(うらしまこ)
きょうの日本昔話 → 若返りの水
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きょうの日本民話 → 白竜湖の琴の音
きょうのイソップ童話 → ライオンとキツネとシカ
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1月27日の日本の昔話 宝化け物

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1月27日の日本の昔話

たからばけもの

宝化け物

 むかしむかし、あるところにさむらいがいました。
「ほうぼうの国をめぐって、剣の腕前をみがこう」
と、旅に出たものの、さいふはたちまちすっからかんで、宿にとまる金もありません。
「どこぞ、空家はないか?」
と、さがしていると、町なかに、たいそう立派な空家が見つかりました。
 近所の人に、
「とまってもかまわんか?」
と、たずねますと、
「化け物が出るっちゅううわさですが、それでもいいなら、おとまりなさい」
と、いう返事です。
「ほほう、化け物が出るとは、おもしろい。腕試しに、せっしゃが退治してくれるわ」
 さむらいは、よろこんでとまることにしました。
 さて、その日の真夜中。
 さむらいがウトウトしていると、床下から、黄色い着物をきた人が音もなくあらわれ、あれはてたにわにむかって、
「さいわい、さいわい、さいわい」
と、よびました。
 すると、にわのほうから、
「へーい」
 茶色の着物の人が出てきて、なにやら、ひとことふたことかわしたかと思うと、二人とも、フッときえてしまいました。
(なんだつまらん。これだけのことか)
 さむらいがガッカリしていると、こんどは白っぽい着物の人があらわれ、やっぱり、にわのほうにむかって、
「さいわい、さいわい、さいわい」
と、よびました。
 すると、にわのほうから、
「へーい」
 さっきの茶色の着物の人が出てきて、ふたことみことかわしたかとおもうと、二人とも、フッときえてしまいました。
 そしてこんどは、赤い着物をきた人があらわれ、やっぱり、にわのほうにむかって、
「さいわい、さいわい、さいわい」
と、よびました。
 すると、にわのほうから、
「へーい」
 またまた、さっきの茶色の着物の人が出てきて、みことよことかわしたかとおもうと、二人とも、フッときえてしまいました。
 そして、そのまましずまりかえって、物音ひとつしません。
 そこでさむらいは、
「こんどは、せっしゃがやってみよう」
と、あれはてたにわにむかって、よんでみました。
「さいわい、さいわい、さいわい」
 すると、こわれた石どうろうのかげから、
「へーい」
 茶色の着物の人が出てきたので、さむらいは、そのえりくびをギュッとつかみあげ、
「さっきから、えたいのしれないやつらが、かわるがわる、おまえをよびだして、ヒソヒソとしゃべっておったが、いったいなにものだ?」
「へい、よくぞきいてくだされた。この空家はむかし、たいへんはんじょうしたお店のだんなの家でした。床下には、お宝がドッサリ、つぼに入れられたまま、うずめられてましてな、そりゃあもう、くるしくてなりません。黄色い着物の人は、金の精。白い着物の人は、白銀の精。赤い着物の人は、あかがね(→銅)の精でございます。精たちは、夜な夜なあらわれ、『だれかきてくれんものか?』と、わしにきくのです」
「なるほど。そういうおまえはだれだ?」
「つぼの精にございますだ」
「よし、あとはせっしゃがひきうけた。お宝の精にいうておけ。もうじき、地べたから出して、らくにしてやるからとな」
 あくる朝、近所の人たちがさむらいの身を心配して空家をのぞくと、さむらいは床をはがして、せっせと何やらほりだしていました。
「いいところにきた。おまえらも手伝ってくれ」
 みんなで床下をほってみたら、でてくるでてくる。
 大きなつぼに、金、銀、銅のお金がいっぱいです。
 さむらいは旅をやめて、この家のあるじになって、のんびりくらしたということです。

おしまい

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きょうの誕生日 → 1756年 モーツァルト (作曲家)

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1月26日の日本の昔話 アズキとぎ

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1月26日の日本の昔話

アズキとぎ

アズキとぎ

 むかし、あるところに、とてもきみのわるいお寺がありました。
 あるばんのこと、村人たちが集まって、物知りのおじいさんから、お寺の化け物の話を聞いていました。
「よいか、あの寺には、いろんな化け物がおるが、そのなかでも、まず、一つ目にこわいのがひとだま。二つ目にこわいのが身投げの古いど。三つ目が、うらめしやのやなぎで、四つ目が、動く墓石、五つ目に出てくるのが、一本足のかさ小僧で、・・・」
 おじいさんの話がもりあがるほどに、村人たちはふるえあがりました。
 けれども、兵六(へいろく)という男だけは、へいきな顔です。
「これだけは、おまえでもこわいはずじゃ。アズキとぎのおばけじゃよ」
 おじいさんはまた、話しはじめました。
「アズキとぎはな、本堂にすみつくおばけの大将でな。この村のものも、だれひとり正体を見たものはおらん。『ショーキ、ショキショキ。アズキ、とぎましょか? 人とって食いましょか? ショーキ、ショキショキ』声だけじゃそうな、これが一番こわ~いおばけじゃ」
 ところが、兵六ときたら、
「おら、なんともねえ」
 なんていうものですから、それなら、きもだめしをしようということになりました。
 そこで村人たちは、暗いお寺の山門から、いっそう暗くてぶきみな墓場へ、兵六をひっぱっていきました。
 墓場にくるとさっそく、ちょうちんのおばけが、きゅうにケタケタとわらいだしました。
「ひゃあ、出た!」
 村人の何人かはにげだしました。
 でも兵六は、
「おら、なんともねえ」
 古いどのところでは、ガイコツがとびだし、やなぎの木の下では、「うらめしや~」と、ゆうれいが顔を出し、かさ小僧が「べえっ!」とおどしても、兵六はへいきです。
 村人たちはとっくににげだして、もうだれもいません。
 そして一人になった兵六は、本堂のまん中まできて、すわりこみました。
 本堂の主は、あの名高いアズキとぎです。
「おばんでやんす。アズキとぎのだんな、ちょっくら顔を見せてくだせえ」
 兵六がこういうと、とつぜんいなびかりがして、なにやらいんきな声が聞こえてきました。
「アズキとぎましょか? 人とって食いましょか? ショキショキ、ショキ。ショキショキ、ショキショキ」
 兵六は、アズキとぎの声にあわせて、同じようにいいました。
「しょきしょきしょき。だんな、ほかにいうことはないんですかい?」
 いくらアズキとぎが兵六をこわがらせようとしても、ちっともこたえません。
 アズキとぎは、とうとうこまりはててしまって、
「ええい、これでもくらえ!」
 ドドドドドッ!
 天井から落ちてきたのは、それはそれは大きなぼたもちでした。
 そのあまいこと、おいしいこと。
 それからというもの、兵六は、夜な夜なお寺に出かけて、アズキとぎのぼたもちをごちそうになるようになりました。
 このうわさをきいた村人たちは、ぼたもちを食べたくて、兵六といっしょにお寺にきました。
「おばんでやんす。今夜は村の衆もつれてきやしたで、ひとつ、でっかいぼたもちをおねげえしますだ」
 ところがどうしたことか、そのばんにかぎって、一つまみのあんこも落ちてきません。
「だんな、ぼたもちを出してくれねば、おら、うそつきになってしまうだ!」
 はらをたてた兵六が、どなったとたん、いなびかりがして、天井からなにやらドサンと落ちてきました。
「なんだこりゃ? ナスのつけものでねえか。ぼたもちはどうしただ?」
 すると天井から、あわれな声がひびきました。
「毎度毎度、ぼたもちはないわい。たまにはナスのつけものでお茶でも飲んでろ。これがほんとの、もてナスじゃ!」
と、へたなダジャレをいって、もう二度と出てこなかったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → カロライナジャスミン
きょうの誕生日 → 1955年 所ジョージ(タレント)

きょうの新作昔話 → 親子地蔵
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きょうの世界昔話 → 花とお日さま
きょうの日本民話 → 送りオオカミ
きょうのイソップ童話 → デマデスの演説
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1月25日の日本の昔話 乙姫様のくれたネコ

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1月25日の日本の昔話

乙姫様のくれたネコ

乙姫様のくれたネコ

 むかしむかし、三人の娘をもったお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 三人とも、とっくにとついでいたのですが、どういうわけか、一番上の娘だけはひどい貧乏暮らしで、その日の食べ物もあるかないかのありさまです。
 お百姓さんは、毎年くれになると、三人の娘のむこをよぶことにしていました。
 妹二人のむこは、金があるので、みやげに酒やら炭俵(すみだわら)をドッサリと持ってきます。
 お百姓さんもおかみさんも喜んで、
「よう来た、よう来た」
と、言いながら、ごちそうを出してもてなしました。
 ところが、姉むこは金がないので、いつも山からとってきたしばの束をかついでいき、
「たきつけにでも、してください」
と、言いました。
(ふん、こんなものしか持ってこれないのか)
 お百姓さんもおかみさんも、心の中でばかにして、ただの一度もごちそうを出したことがありません。
 今年も年のくれになり、三人のむこたちが、お百姓さんの家へよばれることになりました。
 あいかわらず、しばの束しか持っていけない姉むこは、家を出たものの、どうしてもお百姓さんのところへ行く気がしません。
(持っていっても喜ばれないのなら、乙姫(おとひめ)さまにあげたほうがましだ)
 姉むこは、海辺に行くと、
「竜宮(りゅうぐう→詳細)の乙姫さま、おらのお歳暮(おせいぼ→年の終わりにおくる、おくり物)にもらってください」
と、言って、海の中にしばの束を投げこみました。
 そのまま家にもどろうとしたら、ふいに海の中から美しい女が出てきて、
「ただいまは結構(けっこう)なもの、ありがとうございました。乙姫さまがお礼をしたいそうですから、わたしといっしょに来てください」
と、言います。
 姉むこはビックリするやら、あわてるやら。
「と、とんでもない。おらあ、お礼なんかいらねえ。それに泳ぐこともできんし」
「大丈夫ですよ。わたしがおんぶしていきますから、目をつむっていてください。さあ、せなかに。えんりょしないで」
 女が親切にすすめるので、姉むこはしかたなく女におぶさり、目をつむりました。
 そのとたん気がとおくなり、なにがなんだかわからなくなりました。
「さあ、お疲れさま。つきましたよ」
 言われて、ハッと目を開けると、なんとりっぱな座敷(ざしき)にすわっているではありませんか。
 目の前には山のようなごちそうがあり、美しい音楽まで聞こえてきます。
「ささっ、どんどん召しあがれ」
 女のついでくれるお酒を飲んだ姉むこは、思わずうなりました。
 こんなうまい酒は、今まで飲んだことがありません。
 それに、ごちそうもまたとろけるようなうまさで、まるで夢を見ている気分です。
 姉むこが、ウットリしていると、女が小声で言いました。
「乙姫さまがなにかあげようと言われたら、『なにもいりませんが、ネコを一匹ください』と、言いなさい」
(ネコなんかもらっても、貧乏だから、食べさせられるかな?)
 姉むこが考えていたら、乙姫さまが、天女(てんにょ)のような衣を着た女たちをひきつれて座敷にやってきました。
「おくりものをありがとう。お礼をさしあげます。なんでもほしいものを言いなさい。もしのぞみの物がなけれぱ、玉手箱(たまてばこ)などは、・・・」
 乙姫さまの美しさにのぼせてしまった姉むこは、考えるひまもなく、
「ネコを一匹ください!」
と、言いました。
「なんと、ネコをくれですって? ネコは竜宮に一匹しかいない宝物。・・・でも、あなたの望みとあらばしかたありません。いいですか。竜宮のネコは一日にアズキ一合を食べさせると、一升(いっしょう→一合の十倍で約一・八リットル)の小判を生みます。どうぞ、いつまでもかわいがってくださいね」
 乙姫さまはそう言って、かわいいネコを一匹くれました。
 姉むこはネコを抱いて、さっきの女の背中につかまりました。
 目をつむると、フッと気が遠くなり、目が覚めた時には、もとの海辺に立っていて、一匹のネコを抱いていました。
 姉むこは大喜びで家にもどると、嫁さんにわけを話し、とっておきのアズキを一合食べさせました。
 するとネコのおしりから、小判がドンドンとびだしてきて、見る見るうちに、一升分ほどになりました。
 姉むこはその小判で、大きな魚やら高価な着物を買いこみ、それを持ってお百姓さんの家へと行きました。
「どうして、こんな高価なものを?」
 お百姓さんもおかみさんも、とびあがるほどおどろき、姉むこに初めて酒やごちそうをふるまいました。
「それにしても、しばの束しか持ってこられないおまえが、なんだって金持ちになった?」
 二人が聞くので、姉むこは、乙姫さまからネコをもらったことを正直に話しました。
「なに、竜宮のネコだって!」
 欲の深いおかみさんは、急にそのネコがほしくなりました。
「すまんが、わしにそのネコを貸してくれ」
と、言って、姉むこといっしょに家までついてきます。
 姉むこも嫁さんもしかたなく、
「そんなら、ほんの二、三日だけだよ。一日に一合のアズキを食わせるようにしてください」
と、言って、ネコを渡しました。
(しめしめ、このネコさえいれば、大金持ちになれるぞ)
 おかみさんは家にもどると、さっそくアズキを一合食わせようとしましたが、
(まてよ、一合で一升の小判を生むなら、五合食わせれば五升の小判を生むわけだ)
 そこで、いやがるネコにむりやり五合のアズキを食べさせると、ネコはくさいフンを山のように出して、そのまま死んでしまいました。
「なんだ、なんだ。小判を生むなんて、とんでもない。山のようなフンなんかしやがって!」
 お百姓さんもおかみさんもカンカンに怒って、姉むこの家へどなりこんできました。
「よくも、わしらをだましたな」
「だますなんて、とんでもない」
 姉むこは、すぐにお百姓さんの家へ行って、死んだネコをもらい受けてきました。
「かわいそうに。どうか、かんべんしておくれ」
 姉むこはネコを庭にうめ、毎日手を合わせました。
 すると二、三日して、ネコをうめたところから南天(なんてん→メギ科の常緑低木)の木が生えてきて、見る見る大きくなり、たくさんの実をつけました。
 姉むこはそれを見ると、かわいかったネコの目を思い出し、思わず木をゆさぶってみました。
 すると、南天がバラバラこぼれて、黄金に変わったのです。
 黄金のおかげで、姉むこは大金持ちになり、娘は三人の姉妹の中で一番しあわせな一生を送ったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 中華まんの日
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1月24日の日本の昔話 貧乏神と福の神

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月24日の日本の昔話

貧乏神と福の神
イラスト 小技のイラスト作品集 (C)KOWAZA

貧乏神と福の神

♪ 朗読再生

 むかしむかし、ある村に、とても貧乏な男がいました。
 働き者の男ですが、いくら働いても暮らしはちっとも楽になりません。
 それというのも、実は男の家には、貧乏神が住み着いていたからです。
 そんな男に、村の人たちが嫁(よめ)の世話をしました。
 この嫁は美人な上に働き者で、朝から晩まで働きます。
「いい嫁ごだ。よし、わしも頑張るぞ!」
 男は以前にもまして、働くようになりました。
 そうなると、困ったのは貧乏神です。
「何とまあ、よう働く夫婦じゃ。これでは、ここに居づらくなってきたのう。わしゃ、どうすればいいんじゃろう?」
と、だんだん元気がなくなってきました。
 それから何年かたった、ある年の大みそか。
 男の家では、わずかながらもごちそうを用意して、ゆっくりと正月を迎えようというとき。
「うぇ~ん、うぇ~ん」
 天井裏から、泣き声が聞こえてきます。
「おや? だれじゃろう?」
 男が見に行くと、なんとも汚い身なりのおじいさんが一人、声をはりあげて泣いていました。
「あんたは、一体だれかね?」
「わしか? わしゃ、貧乏神じゃ。ずっとむかしからこの家に住んでおったのに、お前ら夫婦がよう働くもんで、今夜、福の神がやってくるちゅうんじゃ。そしたらわしは、出ていかんとならんのだ。うぇ~ん、うぇ~ん」
 男は自分の家の守り神が貧乏神と聞いて、少しガッカリしましたが、それでも神さまは神さまです。
 下の部屋におりてもらって、嫁にわけを話しました。
 そして貧乏神が可哀想になった男は、ついこんな事をいいました。
「せっかく、長い事おったんじゃ。これからもずっと、ここにおってくだされ」
 すると、嫁も口をそろえて。
「そうじゃ、そうじゃ。それがええ」
 どこへ行っても嫌われ者の貧乏神は、はじめてやさしい言葉をかけられて、今度はうれし泣きです。
「うぇ~ん、うぇ~ん」
 こうしているうちに夜もふけて、除夜(じょや)の鐘がなりはじめました。
 これが、神さまの交代する合図です。
 そのとき、トントントンと戸をたたく音がしました。
「こんな夜更けに、どなたですじゃ?」
「ガッハハハハ。お待たせ、お待たせ。わしは神の国からはるばるやってきた幸福の使い、誰もがわしを待ち望む、福の神だ」
 ついに、福の神がやってきました。
 福の神は、貧乏神に気がつくと、
「なんだ、薄汚い奴め、まだおったんか。はよ出ていかんと、力ずくでも追い出すぞ!」
 だが、貧乏神も負けていません。
「なにお~っ!」
と、福の神に突進しましたが、やせてヒョロヒョロの貧乏神と、でっぷりと太った福の神では勝負になりません。
 それを見ていた夫婦は、
「あっ、危ない!」
「貧乏神さま、負けるでねえぞ!」
 それを聞いておどろいたのは、福の神です。
「なんで? なんで貧乏神を、応援するんじゃあ?」
 夫婦は貧乏神といっしょに、福の神を家の外へ押し出します。
「わっせい! わっせい!」
 とうとう三人がかりで、福の神を家の外へ押し出してしまいました。
 追い出された福の神は、あぜん、ぼうぜん。
「わし、福の神よ。中にいるのが貧乏神。貧乏神は嫌われて、福の神は大切にされるはずなのに、これはいったい、どういうこと?」
 首をひねりながら、すごすごと引きあげていきました。
「やった、やった!」
 次の日は、めでたいお正月です。
 貧乏神も一緒に、お正月のお祝いをしました。
 それからというもの貧乏神のせいで、この家はあまり金持ちにはなりませんでしたが、それでも元気で幸せに暮らしたという事です。

おしまい

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1月23日の日本の昔話 カニのすもう

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月23日の日本の昔話

カニのすもう

カニのすもう

 天下人となった秀吉(ひでよし)は、大阪城(おおさかじょう)という、大きなお城にすんでいました。
 大阪城にはきれいな池があって、そこに金でつくったカニがおいてありました。
 一匹や二匹ではありません。
 大きいのやら、小さいのやら、何百匹ものカニが、キラキラとかがやいていました。
 ところが秀吉は、こんど京都に新しい城をつくったので、そちらにうつることにしたのです。
 そこで秀吉は、この池の金のカニをけらいたちにわけてやることにしました。
「ただし、だれにでもやるのではない。なぜカニがほしいか、どういうことに使うか、わけをいうがよい。わしがそれならカニをやってもよいと思うようなわけをいったものに、やることにしよう」
 秀吉は、けらいたちの顔をみまわして、そういうのです。
 みんなは首をひねって、なんといえば、あのカニをもらえるだろうかと考えました。
 そのうち、ひとりがすすみでて、
「殿さま。わたくしは、とこのまのかざりものにしたいと思いますので、ぜひ、一匹くださいませ」
「おお、とこのまのかざりか。それならよかろう。大きいのを一匹つかわそう」
「ありがとうございます」
 そのけらいは、大きいカニを一匹もらって、とくいそうな顔をしています。
 すると、もうひとりのけらいが、
「わたくしは、紙をおさえるぶんちんにしたいと思いまして」
「そうかそうか。ではおまえには、ぶんちんに中くらいのを、一匹やろう」
「わたくしは、子どもや孫の代まで、いいえ、もっと先までつたえて、家のまもり神にしたいとぞんじます」
「わたくしは、・・・」
 みんなつぎからつぎへと、いろいろなことをいってはカニをもらいました。
 ところが、曽呂利(そろり)さんだけは、だまってそれをながめているばかりで、なにもいいません。
「これ、曽呂利。おまえはさっきからなんにもいわないが、ほしくはないのか?」
 秀吉がたずねると、曽呂利はつるりと顔をなでて、
「いえいえ、もちろんいただきとうございます。しかし」
「しかし、どうした」
「わたくしがつかいますのは、一匹ではたりませんので」
「なに、一匹ではたりぬと。ふむ、いったい、なににつかうのじゃ?」
「はい。わたくしはいさましいことがだいすきでございますので、あのカニにすもうをとらせてみたいのでございます」
「ほう、すもうか。それはおもしろい。では二匹いるのじゃな」
「いえいえ、すもうはやはり、東と西にわけて、横綱(よこづな)、大関(おおぜき)、小結(こむすび)と、幕下(まくした)まで、それぞれいなければ、おもしろくありませぬ」
「なるほど。それもそうじゃ。それでは曽呂利、のこりのカニは、みんなそちにやろう。もっていけ」
「はっ、ありがとうございます」
 曽呂利さんは、ニコニコ顔で、のこりのカニをかきあつめて、持っていってしまいました。
 カニをもらいそこなったけらいたちは、
「曽呂利め、すもうとは考えたな。わしは、武者合戦(むしゃがっせん)とでもいえばよかった」
と、くやしがりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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1月22日の日本の昔話 雪女

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月22日の日本の昔話

雪女

雪女

 むかしむかしの、寒い寒い北国でのお話です。
 あるところに、茂作(しげさく)とおの吉という、きこりの親子がすんでいました。
 この親子、山がすっぽり雪につつまれるころになると、鉄砲を持って猟に出かけていくのです。
 ある日の事、親子はいつものように雪山へ入っていきましたが、いつのまにか、空は黒雲におおわれて、吹雪(ふぶき)となりました。
 二人は何とか、きこり小屋を見つけました。
「今夜はここで泊まるより、しかたあるめえ」
「うんだなあ」
 チロチロと燃えるいろりの火にあたりながら、二人は昼間の疲れからか、すぐにねむりこんでしまいました。
 風の勢いで、戸がガタンと開き、雪がまいこんできます。
 そして、いろりの火が、フッと消えました。
「う~、寒い」
 あまりの寒さに目を覚ましたおの吉は、そのとき、人影を見たのです。
「だれじゃ、そこにおるのは?」
 そこに姿を現したのは、若く美しい女の人でした。
雪女!」
 雪女は、ねむっている茂作のそばに立つと、口から白い息を吐きました。
 茂作の顔に白い息がかかると、茂作の体はだんだんと白くかわっていきます。
 そしてねむったまま、しずかに息をひきとってしまいました。
 雪女は、今度はおの吉の方へと近づいてきます。
「たっ、助けてくれー!」
 必死で逃げようとするおの吉に、なぜか雪女はやさしく言いました。
「そなたはまだ若々しく、命が輝いています。望み通り、助けてあげましょう。でも、今夜の事を、もしも誰かに話したら、そのときは、そなたの美しい命は終わってしまいましょう」
 そういうと雪女は、降りしきる雪の中に、吸い込まれように消えてしまいました。
 おの吉は、そのまま気を失ってしまいました。
 やがて朝になり、目が覚めたおの吉は、父の茂作がこごえ死んでいるのを見つけたのです。
 それから、一年がたちました。
 ある大雨の日、おの吉の家の前に、一人の女の人が立っていました。
「雨で、困っておいでじゃろう」
 気だてのいいおの吉は、女の人を家に入れてやりました。
 女の人は、お雪という名でした。
 おの吉とお雪は夫婦になり、かわいい子どもにもめぐまれて、それはそれは幸せでした。
 けれど、ちょっと心配なのは、暑い日ざしをうけると、お雪はフラフラと倒れてしまうのです。
 でも、やさしいおの吉は、そんなお雪をしっかり助けて、なかよくくらしていました。
 そんなある日、針仕事をしているお雪の横顔を見て、おの吉は、ふっと遠い日のことを思い出したのです。
「のう、お雪。わしは以前に、お前のように美しいおなごを見たことがある。お前とそっくりじゃった。山でふぶきにあっての。そのときじゃ、あれは、たしか雪女」
 すると突然、お雪が悲しそうにいいました。
「あなた、とうとう話してしまったのね。あれほど約束したのに」
「どうしたんだ、お雪!」
 お雪の着物は、いつのまにか白くかわっています。
 雪女であるお雪は、あの夜の事を話されてしまったので、もう人間でいる事が出来ないのです。
「あなたの事は、いつまでも忘れません。とても幸せでした。子どもを、お願いしますよ。では、さようなら」
 そのとき、戸がバタンと開いて、つめたい風がふきこんできました。
 そして、お雪の姿は消えたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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1月21日の日本の昔話 無用の位

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月21日の日本の昔話

無用の位

無用の位

 むかしむかし、ある山国の村に、伊助(いすけ)という、たいそう正直ではたらき者の男がいました。
 身よりのない伊助は、朝から夜ふけまで、村人の手伝いをしては、くらしをたてています。
 ある年のこと、伊助は都へほうこう(→他家に住みこんで、家事や家業に従事すること)にあがることになりました。
 伊助がほうこうしたのは、たいそう位の高い公卿(くぎょう)さまの屋敷でした。
 伊助は、水くみ、まきわり、ウマ小屋のそうじと、一日中、休みなくはたらきつづけました。
 そして、長い長い年月がたちました。
 年をとった伊助は、故郷(こきょう)がこいしくなり、
「ああ、村に帰りたいのう」
 とうとう伊助は、公卿さまにおねがいしました。
「どうか、おいとまをくださりませ」
「勤めが、つろうなったか?」
「いいえ、故郷に帰って、なつかしい人たちとくらしとうございます」
「そうか」
 公卿さまは、伊助がよくはたらいた礼に、位をさずけて、故郷ににしきをかざらせてやろうと思いました。
「これ伊助、近うよれ」
と、伊助の頭にかんむりをのせると、
「伊助、位をいただいたからには、いつも大切に身にまとうのだぞ」
「は、はい」
 かんむりをつけた伊助は、なにやら自分がえらくなったような気がしました。
 村人たちは、何十年ぶりに帰ってきた伊助のすがたにおどろき、そしてよろこびました。
「伊助、りっぱになったもんじゃ」
「ほんに、伊助さんは村のほこりじゃ」
 口々にほめられた伊助は、つんととりすまして、
「なに、それほどもないわい」
 伊助は広い土地を手に入れ、大きな家をたてはじめました。
 そんな伊助に、むかしなじみの友だちが声をかけます。
「伊助、畑にゃ、なにうえるだ?」
「これ! 口のきき方がわるいぞ!」
 伊助のえらそうなたいどに、むかしなじみの友だちもビックリ。
 村の衆は、はじめのうちこそ大かんげいでいろいろ世話をしましたが、やがて、だれも伊助に近づこうとはしなくなりました。
 ある日、伊助は村の衆が、立ち話をしているのを聞いてしまいました。
「伊助さんは、なんで、ああいばりくさっとるんじゃ」
「位なんかさずかると、ああも人間がかわるもんかのう。まるで化け物じゃ」
 伊助は、ハッとしました。
「そ、そうか。このかんむりのために、お、おらは」
 伊助は、はずかしさでいっぱいになり、すぐに都へと旅立ちました。
「なに、位を返したいとな?」
「はい、公卿さま。わたしは故郷で、みんなとなかよくくらしたいと思っとりました。ところが、位をさずかったばかりに、ひとりぼっちでさびしくくらすはめになりました。わたしのようなものにとっては、この位は無用の長物(むようのちょうぶつ → あっても、かえってジャマになるもの)なのです。これはお返しします」
 位を返した伊助は、とぶようにこきょうへもどりました。
 村の衆は、すっかり百姓(ひゃくしょう)らしい身なりで帰ってきた伊助をみて、
「どうしたんじゃ。そのなりは?」
「かんむりも着物も、位といっしょにきれいさっぱり返してきたわい」
 そういうと伊助は、すぐに畑に出てはたらきはじめました。
 それからというもの、伊助はみんなと仕事にはげみ、なかよくつきあいながら、しあわせにくらしたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 料理番組の日
きょうの誕生花 → ろうばい
きょうの誕生日 → 1947年 高田純次(タレント)

きょうの新作昔話 → 天人女房(てんにんにょうぼう)
きょうの日本昔話 → 無用の位
きょうの世界昔話 → 身代わりにされたクマ
きょうの日本民話 → 二つのおむすび
きょうのイソップ童話 → イヌと主人
きょうの江戸小話 → しりちがい

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1月20日の日本の昔話 まさかの話

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月20日の日本の昔話

まさかの話

まさかの話

 むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 きっちょむさんの村に、話しをきくのがなによりも好きな、お金持ちのおじいさんがいました。
 いろんな人から話しをきくのですが、話しがおもしろくなると、
「まさか、そんなことはありゃんすめえ」
と、かならずいうのです。
 だから、このごろはだれも相手にしてくれません。
 おじいさんは、たいくつしきっていました。
 そこへ、きっちょむさんが通ったので、おじいさんが話しをしてくれとせがみました。
「してもいいですが、話しのとちゅうで、『まさか、そんなことはありゃんすめえ』と、言わないとやくそくしてくれますか?」
 きっちょむさんがきくと、
「よし。もし言ったら、米を一俵(いっぴょう)やろう」
 おじいさんは、やくそくしました。
「それでは、話しましょう」
 縁側にこしかけて、きっちょむさんが話しはじめました。
「むかし、ある国の殿さまが、りっぱなカゴにのって、けらいをつれて旅をしていた。殿さまのカゴが山道にさしかかると、どこからか、トンビが一羽とんできて、ピーヒョロロロロと、カゴのまわりをグルグルまいはじめたのです」
「ふむ、なるほど」
「『なんとよいなき声じゃ。どこでないておるのじゃ』と、殿さまがカゴの戸をあけて、からだをのりだすと、トンビがなきながら、殿さまのはおりのそでに、ポトンとフンをおとしたんだと」
「ふーむ、なるほど」
 おじいさんは、米を一俵もとられてはたいへんと、いつもの口ぐせをいわないよう、気をつけています。
「殿さまは、けらいにいいつけて、『はよう、はおりのかわりを持ってまいれ』といい、持ってきたはおりに着替えた」
「なるほど、なるほど」
「はおりをきがえて、しばらくいくと、またさきほどのトンビが、ピーヒョロロロと、ないたんだと。そこで殿さまが、カゴの戸をあけて、からだをのりだすと、こんどはトンビのフンが、殿さまの刀にポトン」
「うーむ。まさか・・・」
 おじいさんは、そこまでいいかけて、あぶなくおもいとどまりました。
「殿さまは、けらいにいいつけて、刀のかわりを持ってこさせ、さしかえた。しばらくいくと、さっきのトンビがピーヒョロロロと、ないたんだと。殿さまが、カゴの戸をあけて、からだをのりだすと、ピーヒョロロロ。こんどはトンビのフンが、殿さまの頭にポトンとおちた。すると殿さまは『はよう、くびのかわりをもってまいれ』と、けらいにいいつけ、じぶんの刀でくびをチョンときってな。けらいのもってきた代わりの首とすげかえて、なにごともなく、旅をつづけたということじゃ」
 おじいさんは、おもわず、
「まさか、そんなことはありゃんすめえ!」
と、大声でいってしまいました。
 そこできっちょむさんは、やくそくの米を一俵もらって、さっさとかえっていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 玉の輿の日
きょうの誕生花 → デンファレ
きょうの誕生日 → 1983年 矢口真里(歌手)

きょうの新作昔話 → 鼻かぎ権次(ごんじ)
きょうの日本昔話 → まさかの話
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きょうのイソップ童話 → 鳥刺しとコウノトリ
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1月19日の日本の昔話 一休のくそとなれ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月19日の日本の昔話

一休のくそとなれ

一休のくそとなれ

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 まだ一休さんが小さい頃、はじめて修行をしていたお寺の和尚(おしょう)さんは、ひどいけちんぼうでした。
 おまけに、お寺では食べてはいけない塩ザケをみそ汁の中へにこんで、
「ああ、うまい、あったまるのう」
と、平気で食べているのです。
 とうぜん、一休さんには一度もわけてはくれません。
 しかも、塩ザケを食べるときの、和尚さんの言葉がとても気どっていました。
「これなる塩ザケよ、そなたは、かれ木とおなじ。たすけたいと思うても、切り身にされては、生きて海をおよぐことなどできぬ。よって、このわしに食べられ、やすらかに極楽(ごくらく)へまいられよ」
「ふん、なにが極楽だ。バチあたりの和尚め」
と、一休さんも、はらいせにかげ口をたたいていました。
 さて、ある日のこと。
 朝のおつとめをすませると、一休さんはさかな屋へ走っていって、大きなコイを一ぴき買ってきました。
 お寺へもどると、一休さんは、まな板とほうちょうを取り出して、なベをかまどにかけました。
 和尚さんはビックリして、
「一休! おまえ、そのコイをどうするつもりぞ!」
「はい。このコイを食べます。このあいだ、和尚さんに教わったお経をとなえますので、きいてください」
「おまえ、いったい正気か!」
「はい、正気でございますとも」
 一休さんは、すこしもあわてず、コイをまな板へのせて、お経をとなえました。
「これなる生きゴイよ、そなたは、この一休に食べられて、くそとなれ、くそとなれ」
 となえおわると、右手に持ったほうちょうをストンとふりおろして、コイの頭を落としました。
 そしてさっさと切り身にすると、なベに放り込みます。
「むむっ。・・・『くそとなれ』か」
 和尚は、いままで塩ザケにむかって、「極楽へまいられよ」なんていったのが、はずかしくなりました。
「くそとなれ、くそとなれ」
と、いいはなった小さい一休さんに、してやられたと思ったのです。
(こいつはきっと、大物になるぞ。わしのところではなく、もっといい和尚のところにあずけるとするか)
「それでは、ちょうだいします」
 一休さんは和尚さんの顔色などうかがうこともなく、コイこくをおいしそうに食べました。

※ コイこくとは、コイを輪ぎりにして煮込んだみそ汁です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → のど自慢の日
きょうの誕生花 → バンダ
きょうの誕生日 → 1983年 宇多田ヒカル(歌手)

きょうの新作昔話 → 凍ってしまった声
きょうの日本昔話 → 一休のくそとなれ
きょうの世界昔話 → ウシ飼いと裁判官
きょうの日本民話 → おらびの妖怪
きょうのイソップ童話 → サルとラクダ
きょうの江戸小話 → いいそうな顔

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1月18日の日本の昔話 とっつくひっつく

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月18日の日本の昔話

とっつくひっつく

とっつくひっつく

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
 ある日、おじいさんはとおくの畑へいったのに、大事な弁当をわすれてしまいました。
 そこで、おばあさんが後から弁当を持って出かけていくと、とちゅうのくらい森で、
「とっつくぞう~、ひっつくぞう~」
と、おそろしい声がきこえてきました。
 おそろしくなって、かけだしたおばあさんは、ようやくおじいさんの畑にたどりつくと、そのことを話しました。
「帰りもおなじところを、とおらないといけないし、こまったことじゃ」
 おばあさんがいうと、
「その声がしたら、『とっつくなら、とっつけ。ひっつくなら、ひっつけ』と、いってみたらどうじゃ」
 おじいさんがいったので、おばあさんもしょうちして、かえっていきました。
 するとやっぱり、
「とっつくぞう~、ひっつくぞう~」
と、おそろしい声。
「とっつくなら、とっつけ! ひっつくなら、ひっつけ!」
 おばあさんがおもいきってさけぶと、どこからともなく小判がとんできて、ピタピタとからだにひっつきました。
 おばあさんがこしをぬかしていると、心配したおじいさんがかけつけてきました。
 二人はおばあさんにひっついた小判のおかげで、たいしたお金持ちになりました。
 すると、となりのよくばりばあさんが、
「どうして、こんな金持ちになったか、教えろやい!」
と、やってきたので、ありのままに教えると、さっそく次の日に、おなじことをまねしてみました。
 ばあさんはじいさんに、わざと弁当をわすれさせて、とおくの畑へいかせました。
 そして、じいさんのところへ弁当を持っていくと、そのかえりにやっぱり、
「とっつくぞう~、ひっつくぞう~」
 へんな声が、きこえてきました。
 ばあさんがよろこんで、
「とっつくなら、とっつけ。ひっつくなら、ひっつけ。うんとひっつけ」
と、さけぶと、松ヤニのかたまりが、どこからともなくとんできて、からだじゅうがベタベタです。
「小判をかついでかえろう」
 たのしみにやってきたじいさんも、松ヤニを小判とまちがえて、ばあさんにさわったものですから、二人はくっついたきりはなれなくて、どうにもこうにもこまったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 都バス記念日
きょうの誕生花 → パフィオペディルム
きょうの誕生日 → 1947年 ビートたけし(タレント)

きょうの新作昔話 → 米ぶきと粟ぶき
きょうの日本昔話 → とっつくひっつく
きょうの世界昔話 → かしこいチビの仕立屋さん
きょうの日本民話 → 鬼のうで
きょうのイソップ童話 → 泉のほとりのシカとライオン
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1月17日の日本の昔話 空家のゆうれい

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月17日の日本の昔話

あきやのゆうれい

空家のゆうれい

 むかしむかし、ある町はずれに、古い空家がありました。
 いく年か前までは、お金持ちがすんでいましたが、今はあれほうだいです。
 やねのかわらはずりおち、のきにはクモの巣(す)がはりめぐらされ、みるかげもありません。
 ところが、この空家から夜になると、ゆうれいが出るとのうわさがひろがりました。
「それがまあ、なんともきれいな女のゆうれいなんだ。年のころなら、十七、八。ヒュー、ドロドロドロと、あらわれるんだ」
 これをきいた気の強い男が、
「よし、おれがゆうれいの正体をつきとめて、人をまどわさないようにしてやろう」
と、イヌをつれて、ゆうれいの出る空家へでかけていきました。
 でも、ゆうれいはイヌがきらいなのか、いっこうにあらわれません。
「はやく、出てくれないかなあ」
 男がまちくたびれていると、つれてきたイヌがふるい井戸(いど)のそばで、やたらにほえました。
 そして、イヌはなにをおもったのか、井戸のまわりの土を、せっせとほりはじめたのです。
「なんだ、ここに何かうまっているのか?」
 男もほるのを手伝うと、なんと、千両箱がいくつもでてきました。
 そのとき、どこからともなく、女の人の声がしました。
「イヌは苦手です。どこかへやってください」
「やや、おまえがうわさのゆうれいだな。どこにいるんだ?」
「イヌは苦手です。どこかへやってください」
「よし、わかった」
 男がイヌを家の外に追い出すと、十七、八の女のゆうれいがあらわれました。
「わたしは、この家ではたらく女中(じょちゅう)でした。この家の主人の悪い親類が、イタズラで主人の千両箱をかくしたのですが、それをわたしのせいにされて、わたしは主人に殺されてしまいました。お金がなくなったため、家はほろびましたが、わたしのむねんははれません。どうか、このお金を使い果たしてください。お金が無くなれば、わたしは成仏できます」
 泣きながらうったえるゆうれいに、男は、
「よしよし、このお金は、わしが、のこらずつかってやろう。だから、成仏せいよ」
「ありがとう・・・」
 ゆうれいはそれ以来、あらわれなくなったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 防災とボランティアの日
きょうの誕生花 → こちょうらん
きょうの誕生日 → 1952年 坂本龍一(ミュージシャン)

きょうの新作昔話 → スズメの身がわり
きょうの日本昔話 → あきやのゆうれい
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1月16日の日本の昔話 うたよみゆうれい

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1月16日の日本の昔話

うたよみゆうれい

うたよみゆうれい

 むかしむかし、あるところに、空家がありました。
「空家のままでは、もったいない」
 大家さんが、《貸し家(かしや)》のふだをはると、すぐにかりる人がみつかりました。
 ところが二、三日すると、大家さんにあいさつもなく、かりた人がでていってしまいました。
 また、空家です。
 大家さんがあらためて、《貸し家》のふだをはると、今度もすぐに、かりる人がみつかりました。
 ところがまた、二、三日もすると、かりた人が、だまってでていってしまいました。
 こうしたことが、何度もくりかえされるので、
「いったい、どうしたわけだろう?」
 大家さんがくびをひねっていると、
「なんだ。大家さんのくせに、しらないのかい。毎晩、ゆうれいがでるってうわさだよ」
 通りがかりの人が、教えてくれました。
 うわさは、町中にひろがりました。
 こうなると、かりる人もいません。
 大家さんがこまっていると、町で一番どきょうのいい男がやってきて、
「おれが、ゆうれいをみとどけてやろう」
と、空家にとまることにしました。
 男がざしきのものかげにかくれて、ゆうれいがあらわれるのをまっていると、家のおくのほうからミシッ、ミシッ。
 あやしげなもの音がしたかとおもうと、長い髪をみだした女のゆうれいがあらわれて、いろりのふちにすわりました。
 ゆうれいは、いろりの灰をかきまぜながら、
♪かきまぜる灰は
♪はまべのいろににて
と、いって、なきだしました。
 それを、何度もくりかえすので、ものかげの男は、
(これはきっと、歌の後ろ半分ができないために、毎晩でてくるのだろう)
と、かんがえました。
 そこで、ゆうれいがまた、
♪かきまぜる灰は
♪はまべのいろににて
と、いったときに、すかさず、
♪ゆるりが海か ※
♪おきのみゆるに ※
 歌の後ろ半分を、いってやりました。
 すると、ゆうれいは、あんしんしたらしく、
「いいうたができて、これでもう、心残りはありません。どうもありがとうございました」
 お礼をいってきえ、二度とあらわれなかったそうです。

※ゆるりは、いろりの事。
※おきは、海のおきと、いろりのおき火をひっかけたことば。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 禁酒の日
きょうの誕生花 → デンドロビューム
きょうの誕生日 → 1930年 東松照明(写真家)

きょうの新作昔話 → お坊さんになりたかったキツネ
きょうの日本昔話 → うたよみゆうれい
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きょうの日本民話 → 死ぬのはこわい
きょうのイソップ童話 → 造船所のイソップ
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1月15日の日本の昔話 わらしべ長者

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1月15日の日本の昔話

わらしべ長者

わらしべ長者

 むかしむかし、ある若者が、お寺で観音様(かんのんさま)にお願いをしました。
「どうか、お金持ちになれますように」
 すると、観音様が言いました。
「ここを出て、はじめにつかんだものが、お前を金持ちにしてくれるだろう」
 喜んだ若者は、お寺を出たとたん、石につまずいて、スッテンと転びました。
 そしてそのひょうしに、一本のわらしべ(→イネの穂の芯)をつかみました。
「観音様がおっしゃった、はじめにつかんだものって、これのことかなあ? とても、これで金持ちになるとは思えないが」
 若者が首をひねりながら歩いていると、プーンと一匹のアブが飛んできました。
 若者はそのアブをつかまえると、持っていたわらしべに結んで遊んでいました。
 すると、向こうから立派な牛車(ぎっしゃ)がやってきて、中に乗っている子どもが言いました。
「あのアブが欲しいよう」
「ああ、いいとも」
 若者が子どもにアブを結んだわらしべをあげると、家来の者が、お礼にミカンを三つくれました。
「わらしべが、ミカンになったな」
 また歩いていると、道ばたで女の人が、のどがかわいたと言って苦しんでいます。
「さあ、水の代わりに、このミカンをどうぞ」
 女の人はミカンを食べて、元気になりました。
 そしてお礼にと、美しい布をくれました。
「今度は、ミカンが布になったな」
 若者がその布を持って歩いていると、ウマが倒れて困っている男の人がいました。
「どうしました?」
「ウマが病気で倒れてしまったのです。町に行って布と交換(こうかん)する予定だったのに。今日中に布を手に入れないと、困るのです」
「では、この布とウマを交換してあげましょうか?」
 若者が言うと、男の人は大喜びで布を持って帰りました。
 若者がウマに水をやったり体をさすったりすると、ウマはたちまち元気になりました。
 よく見ると、大変立派なウマです。
「今度は布が、ウマになったな」
 そのウマをつれて、また若者が歩いていると、今度は引っ越しをしている家がありました。
 そしてそこの主人が、若者の立派なウマを見て言いました。
「急に旅に出ることになって、ウマが必要なのじゃが、そのウマをわしの家や畑と交換してもらえないかね」
 若者は立派な家と広い畑をもらって、大金持ちになりました。
 一本のわらしべから大金持ちになったので、みんなはこの若者を、わらしべ長者(ちょうじゃ)と呼びました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → アダルトの日
きょうの誕生花 → オンシジューム
きょうの誕生日 → 1962年 石原良純(俳優)

きょうの新作昔話 → ふたつのネズミ船
きょうの日本昔話 → わらしべ長者
きょうの世界昔話 → 魔法のあみ棒
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きょうのイソップ童話 → ウサギとカエル
きょうの江戸小話 → かんびょう

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1月14日の日本の昔話 おくびょうな男とゆうがおおばけ

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1月14日の日本の昔話

おくびょうな男とゆうがおおばけ

おくびょうな男とゆうがおおばけ

 むかしむかし、あるところに、たいそうおくびょうな男がいました。
 夜になると、ひとりでは便所にもいけないありさまです。
 いつも夜中に、おかみさんをおこしては、
「化け物がでるかもしれん、すまんが、いっしょにきてくれや」
と、たのむのでした。
「化け物など、おりゃあせんのに、いい年をして、ほんとにこまったもんだ」
 おかみさんはシブシブ、ちょうちんをさげて、かわや(→トイレ)へいくのですが、ねむくてかないません。
 毎晩、寝不足がつづいていました。
「夜中でも、ひとりでかわやにいけるように、なんとかせんならん。なにか、よいかんがえはないもんじゃろか?」
 おかみさんは、あれこれかんがえました。
 そしてあるとき、大きなゆうがお(→ウリ科の植物で、かんぴょうのもと)の実を、こっそり、かわやのなかにぶらさげておきました。
 男はそんなこと、まったく知りません。
 そのばんおそく、
「化け物がでるかもしれん、すまんが、いっしょにきてくれや」
 またまた、たのみましたが、
「化け物なんて、おりゃあせんて。かわやくらい、ひとりでいけないようで、どうするね。もしものことがあれば、すぐにとんでいくから、今夜はひとりでいってみなさいな」
 おかみさんは、そういって、おきようとしません。
「・・・しかたねえ。ひとりでいってくるとするか。だいじょぶかなあ?」
 男はしかたなし、ひとりでかわやへでかけていきました。
 かわやは、まっくらです。
 戸を開けて中に入ろうとすると、ひたいになにか、ゴツンとぶつかるものがありました。
「ひえーっ! で、でたあ!」
 男はビックリして、こしをぬかしてしまいました。
 そこにおかみさんが、ちょうちんをさげてあらわれ、
「なにがでたっていうんです?」
 かわやを、明るくしてみせました。
「い、いま、ば、化け物が、そこに」
 男がおそるおそる目をあけると、大きなゆうがおの実がぶらさがっていました。
「あら、ゆうがおの実じゃ、ありませんか。あしたの朝、おみおつけにして食べましょうね」
 おかみさんはつぎの朝、ゆうがおの実をきざんで、おみおつけに入れました。
「こりゃあ、うまいもんじゃのう。これが化け物なら、毎晩でてもいいや。おれはもう、おっかねえものなどない」
 男はおみおつけを、三ばいもおかわりしました。
 それですっかり、こわいものしらずになって、
「どこかに化け物がでたら、おれがたいじしてやる」
と、いばるようになりました。
 すると、そのうち、
「村のとうげに、でっかいウシの化け物がでるそうだ。おそろしがって、夜はだれひとりとおるものがないってことだ」
 村に、うわさがひろがりました。
 男は、
「どうせまた、ゆうがおの実じゃろ。おれがたいじして、おみおつけにして食ってやる」
と、まっくらなとうげをのぼっていきました。
「いたいた。あいつだな」
 道のまんなかに、大きなウシの化け物が、どてっとねころんで道をふさいでいます。
「やい、化け物。おまえはゆうがおの実だべ。おれはちっとも、おっかなくねえぞ。じゃまだから、そこをどけやい」
 男がしかりつけると、
「おら、ゆうがおなんかじゃねえ」
 化け物がいいました。
「それならいったい、なにもんだ?」
「おら、金のばんをしているウシだ。おらがねそべってるこの下には、金がめ、銀がめ、銅がめがうずまっとるんじゃ。おら、そのことをおしえてやろうとおもっとるに、ほかのものはおそろしがって、みんなにげちまう。なのに、おまえは、ちっともおそろしがらん。金がめ、銀がめ、銅がめ、みんなおまえにやる」
 ウシの化け物は、そういってきえました。
「はて、化け物がいったこと、ほんとだべか」
 男が、化け物のいたあたりをほりおこすと、金、銀、銅のお金がピカピカひかって、まぶしいのなんの。
 男はそれをもちかえって、おかみさんと一生、しあわせにくらしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → タロ、ジロの日
きょうの誕生花 → シンビジューム
きょうの誕生日 → 1955年 石田純一(俳優)

きょうの新作昔話 → モグラ退治
きょうの日本昔話 → おくびょうな男とゆうがおおばけ
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1月13日の日本の昔話 二人の甚五郎

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1月13日の日本の昔話

二人の甚五郎

二人の甚五郎

 むかし、飛騨(ひだ→岐阜県)の山奥に、佐吉(さきち)という、彫り物のとても上手な男が住んでいました。
 あるとき、佐吉はうで試しをしようと、旅に出かけました。
 ところが、尾張(おわり→愛知県)の国まで来たときには、持っていたお金をすっかり使いはたしてしまいました。
 宿(やど)の支払いにも困った佐吉は、宿の主人に何か彫り物をさせてほしいと頼みました。
「よし、それじゃ、宿代のかわりに、何か彫っておくんなさい」
 主人が許してくれたので、佐吉はさっそく彫り始めました。
 翌朝、佐吉は見事な大黒さまを、宿の主人に差し出しました。
「これは見事! こんな素晴らしい大黒さまは見たことがない。これは、家の家宝にさせていただきます」
 大喜びする宿の主人に、佐吉は申し訳なさそうに。
「彫る木が手元になかったもので、この部屋の大黒柱(だいこくばしら)をくり抜いて使わせてもらいました。お許しください」
「・・・?」
 宿の主人が大黒柱を調べてみましたが、きず一つ見当たりません。
「はて、この大黒柱でしょうか?」
「はい。これです」
 そういって、佐吉がポンと手をたたくと、カタンと、柱の木がはずれました。
 なるほど、たしかに中は空洞です。
 すっかり感心した宿の主人は、佐吉の事を、その頃、日光東照宮(にっこうとうしょうぐう)の造営(ぞうえい→建物を建築すること)にたずさわっていた彫り物名人、左甚五郎(ひだりじんごろう)に知らせました。
 甚五郎は、さっそく佐吉を呼び寄せて、
「何でもいい、お前の得意な物を彫ってくれ」
と、いいました。
 そこで佐吉が彫ったのは、いまにも動き出しそうな、見事な仁王(におう)さまです。
 甚五郎はすっかり感心して、佐吉を東照宮の造営に参加させることにしました。
「わたしは、竜を彫ろう。佐吉、お前は山門のネコを彫れ」
 天下の左甚五郎に認められたうれしさに、佐吉は力いっぱい彫り続けました。
 毎日毎日、彫り続けて、とうとう山門のネコが彫りあがりました。
 そして、甚五郎やほかの弟子たちの仕事もすべて終わり、東照宮は完成しました。
 検査(けんさ)の役人たちも、その見事さには、ただ驚くばかりです。
 甚五郎をはじめ、みんなはたいそういい気分になり、その夜は酒やごちそうでお祝いをしました。
 酒を飲み、歌い、盛り上がったみんなは、疲れていたのか、たくさんのごちそうを残したまま、グーグーと、ねむってしまいました。
 ところがその翌朝、みんなが目覚めてみるとどうでしょう。
 あれほどたくさんあったごちそうが、一晩のうちになくなっているのです。
「お前が食べたんじゃろうが!」
「とんでもない、お前こそ!」
 弟子たちのいいあらそいを聞くうちに、甚五郎と佐吉は、ハッと顔を見合わせました。
 甚五郎はノミと木づちを持ち、山門へと急ぎました。
 佐吉もだまって、あとを追います。
 山門へきてみると、佐吉の彫ったネコのまわりに、ごちそうを食いちらしたあとがあります。
 甚五郎はクワッと目を見開くと、カーンと、ノミと木づちをふるいました。
 その一刀のもとに、佐吉のネコはねむりネコになってしまいました。
 佐吉は甚五郎の腕のあまりのすごさに、思わず地面にひれふしました。
「左甚五郎先生!」
 甚五郎は、佐吉の肩に手をおき、しみじみといいました。
「佐吉よ、彫り物のネコにたましいが入るとは、お前はまことの名人じゃ。これより、わしの名をとって、飛騨の甚五郎と名のるがよい」
「はいっ、ありがとうございます!」
 佐吉の彫ったネコは、そのあと、『日光東照宮のねむりネコ』として、とても評判になりました。
 それにつれて、飛騨の甚五郎の名前も、たいへん有名になったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → たばこの日
きょうの誕生花 → カトレア
きょうの誕生日 → 1968年 長山洋子(歌手)

きょうの新作昔話 → 照島神社(てるじまじんじゃ)
きょうの日本昔話 → 二人の甚五郎
きょうの世界昔話 → おりこうハンス
きょうの日本民話 → ろくろっ首
きょうのイソップ童話 → 人間とゼウス
きょうの江戸小話 → かぜものぼれまい

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1月12日の日本の昔話 おばあさんのおおてがら

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1月12日の日本の昔話

おばあさんのおおてがら

おばあさんのおおてがら

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
 年が年なので、おばあさんは、もうだいぶ耳がとおくなっていました。
 二人は、つつましくくらしていましたから、だんだんに、お金がたまってきました。
 おじいさんは、毎晩ねるまえに、ためたお金をかぞえるのが、たのしみでなりません。
 ある晩、おじいさんがお金を、チャリーン、チャリーンと、かぞえていると、どろぼうがふしあなからこれを見ていて、夜中にしのびこんできました。
 そして、あり金をのこらずぬすんでいってしまったのです。
 二人はガッカリして、
「一文なしでは、どうにもならん。よそへいって、はたらくとしよう」
 おじいさんは、たくさんのにもつをせおい、おばあさんは、雨戸を一まいせおって、たびにでかけました。
 やがて日がくれたので、二人が、ちんじゅさま(→土地の神をまつった社)の大きな木の下でやすんでいると、どろぼうたちがやってきたので、二人はいそいで木にのぼって、かくれることにしました。
 どろぼうたちは、そんなこと、ちっとも知りません。
 ぬすんできた宝物やお金を、みんなでかぞえはじめました。
 おばあさんは、木につかまっているだけでもやっとなのに、せなかにせおっている雨戸がおもたくてかないません。
「おもい、しんどい、くたびれた」
と、ぶつぶついいだしました。
 すると、おじいさんが、
「どろぼうにきこえたら、ただではすまんぞ。だまっておれ」
と、たしなめましたが、おばあさんは耳がとおいので、
「雨戸をおろして、すててもよい」
と、ききちがえてしまい、
「ああ、よかった」
と、雨戸をおろしました。
 雨戸は、
 バタン、ドタン、ガタン!
と、大きな音をたてながら、どろぼうたちのあたまの上に、おちていきました。
 おどろいたのは、どろぼうたちです。
「テングさまじゃあ! にげろ!」
 宝もお金もおいて、バラバラににげだしてしまいました。
 おじいさんとおばあさんは、どろぼうたちがおいていったものをひろいあつめて村にかえり、たいそうなお金持ちになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スキーの日
きょうの誕生花 → ラケナリア
きょうの誕生日 → 1952年 楠田枝里子(タレント)

きょうの新作昔話 → 水かけ地蔵
きょうの日本昔話 → おばあさんのおおてがら
きょうの世界昔話 → お月さま狩り
きょうの日本民話 → サルのうめたつぼ
きょうのイソップ童話 → ハエたち
きょうの江戸小話 → 焼き氷

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1月11日の日本の昔話 ふたりゆうれい

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1月11日の日本の昔話

ふたりゆうれい

ふたりゆうれい

 むかしむかし、あるところに、ゆうれいが出るとうわさされるお寺がありました。
 そのゆうれいは二人で、お互いに話し合うというのです。
「そんなばかな。ゆうれいが二人で、おしゃべりするなど。・・・よし、おれが、この目でたしかめてやる」
 うわさをきいて、気の強いひとりの男が、おはかにしのんでいきました。
 やがて、草木もねむる、うし三つどき(→午前二時ごろ)です。
 ヒソヒソッ、ヒソヒソヒソッ。
 どこからか、話し声がきこえてきました。
 男が声をたよりに、はか石のあいだをぬっていくと、小さなはか石のそばで、男のゆうれいと女のゆうれいが、手をとりあって、言葉をかわしています。
 男のゆうれいは、まだ三十まえですが、女のゆうれいは、六十すぎのおばあさんでした。
 話のようすからすると、二人は夫婦(ふうふ)のようです。
「やっぱり、うわさどおりだ。しかし、夫婦にしては、こんなに年がちがうのはおかしい」
 そこで気の強い男は、次の朝、お寺の和尚(おしょう)さんにわけをはなして、おはかにきてもらいました。
「ゆうれいは、このあたりにいたのだね。それはきっと、このはかから現れたのだろう」
 和尚さんは、小さなはか石のまえで足を止めました。
「ここには、四十年近く前に、若い奥さんを残して死んだ男がとむらってあった。残された奥さんは長生きをしたが、このあいだ、六十をすぎて死んだので、いっしょにとむらってやったんだ。だが、おまいりに来てくれる人もいないので、あの世へゆけんのじゃろうて」
 和尚さんの話に、二人のゆうれいの年の違うわけがわかりました。
「死んでから、ゆうれいになっても、なかむつまじくするなんて、うらやましい。・・・おれも、いい嫁さんをみつけなくちゃ」
 気の強い男は、和尚さんにたのんで、ねんごろにお経をあげてもらいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 鏡開き
きょうの誕生花 → シェフレラ(カポック)
きょうの誕生日 → 1973年 深津絵里(俳優)

きょうの新作昔話 → 橋立小女郎(はしだてこじょろう)
きょうの日本昔話 → ふたりゆうれい
きょうの世界昔話 → コウノトリになった王さま
きょうの日本民話 → とうふとおみそのけんか
きょうのイソップ童話 → イヌとライオンの皮
きょうの江戸小話 → 小便

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1月10日の日本の昔話 若様はひとり

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1月10日の日本の昔話

若様はひとり

若様はひとり

 むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 となり近所の町や村にまで、利口(りこう)な子どもの話しが広がり、とうとううわさは、お城の殿さまの耳にまで入りました。
「そんなに利口なら、ひとつとんちの力試しをしてやろう」
と、彦一をお城に呼んだのです。
 彦一は大広間に呼ばれて、かしこまっていると、
「そちがちまたで評判の彦一じゃな。くるしゅうない、面(おもて→顔)を上げい。・・・ほほう、利発(りはつ→かしこそう)な顔をしておるな。ところで余にも、おまえくらいの若がひとりおる。そのほう、これからは若の遊び相手をしてやってくれ」
 殿さまはこう言ったあと、けらいの者に若さまを呼びに行かせました。
 やがてふすまが開いて、一人、二人、三人、四人、五人と、同じ着物を着た子どもがぞろぞろと入ってきました。
 着物だけではありません。
 五人とも、兄弟のように顔がよくにています。
「どうじゃ、おまえに本当の若が当てられるか? さあ、うわさに聞く知恵でさがし当てたら、ほうびをつかわすぞ」
 まわりにいたけらいでさえ、若さまを当てる自信がありません。
 それを、若さまを見たことのない子どもが、見ただけでわかるはずがないと、殿さまは得意顔(とくいがお)です。
「さあ、どうした。無理なら無理と、正直にいうがよい」
 ところが彦一は、ニコニコしながら言いました。
「どの子も同じように見えますが、本物の若さまは、おらにはちゃんとわかるだ。本物の若さまは手ならいのあととみえて、手に墨(すみ)がついとります」
 この言葉につられて、本物の若さまは自分の手を見て、他の子どもはそれをのぞきこみました。
 ところが、どこをさがしても、墨はついていません。
「ほれ、その方が若さまです」
 彦一のかしこさに、殿さまはすっかり感心して、
「これはまいった。ほうびを持ってまいれ」
 彦一は、山のようなほうびをもらうことができました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 明太子の日
きょうの誕生花 → アナナス
きょうの誕生日 → 1935年 浜村淳(司会者)

きょうの新作昔話 → 鴻(こう)の湯の由来
きょうの日本昔話 → 若様はひとり
きょうの世界昔話 → ゆうれいをせおう娘
きょうの日本民話 → ネコのおけさ節
きょうのイソップ童話 → ライオンとロバ
きょうの江戸小話 → なぞなぞ

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1月9日の日本の昔話 へっついゆうれい

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1月9日の日本の昔話

へっついゆうれい

へっついゆうれい

 むかしは、どこの家の台所にも、土でできた、へっついという道具がありました。
 ひらたくいえば、かまどのことです。
 これがないと、ごはんがたけません。
 さて、ある町に、いせいのいい大工(だいく)さんがいました。
 あるとき、この大工さんの家のへっついが、こわれてしまいました。
 でも、新しいへっついを買うほど、お金がありません。
 そこで、古道具屋(→リサイクルショップ)へでかけました。
「おやじ、へっついのほり出し物はねえか?」
「へい、ございますとも。これなど、いかがでしょうか。お安くしておきます」
 おもったよりも安くかえたので、大工さんはホクホクしながら、そのへっついを台所にすえつけました。
「これで、あしたの朝は、おまんまがたけるってわけだ。ありがてえ、ありがてえ」
 さて、そのばん、大工さんはま夜中にふと、のどがかわいて目がさめました。
「どれ、水でも飲むか」
 台所におりて、水がめの水をグググッと、うまそうに飲んだ大工さんが、なにげなく、へっついに目をやると、
「ややっ!」
 青白いおに火が、チロチロしているではありませんか。
 おに火は、本当の火ではありません。
 ゆうれいが出てくるときのほのおです。
 大工さんはビックリです。
「えんぎでもねえ、うすきみのわるいへっついを買っちまったもんだ」
 大工さんがこわごわながめていると、今度は、そのへっついから、すすでよごれた男のうでが一本、ニューーッと出てきました。
「うわあー!」
 大工さんは、つぎの朝、さっそく古道具屋へ、へっついを返しにいきました。
「なにか、あやしいことでもありましたか?」
 古道具屋は、くびをひねりました。
「あったもなにも、このへっついから、ゆうれいが出るんだ。ほかのへっついととりかえてくれ」
「それはかまいませんが、あなたにかっていただいたこのへっついは、これまで何度もかわれては、すぐにもどされます。なんでも夜中におに火がもえたり、男のうでがでてくるとか」
「そのとおりだ! こんなへっついをしょうちでうるなんて、とんでもねえ。金をかえしてくれ」
 大工さんにいわれて、古道具屋は、なるほどとおもい、
「それなら、いっそのこと、たたきこわしてみましょう」
 古道具屋と大工さんは、へっついをうちこわしました。
 すると中から、小判が五まいも出てきたのです。
 そこで古道具屋が、このへっついのもとの持ち主をしらべると、持ち主の男は、しばらくまえに死んでいることがわかりました。
「せっかくためたお金を、どろぼうにとられないよう、へっついにぬりこんだまま死んでしまったので、それが気にかかって、ゆうれいとなって出てきたのだろう」
 古道具屋と大工さんは、坊さんを呼んで、死んだ男とへっついのくようをしてあげたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 風邪の日
きょうの誕生花 → かんのんち
きょうの誕生日 → 1974年 岡本真夜(シンガー)

きょうの新作昔話 → 雑炊橋(ぞうすいばし)
きょうの日本昔話 → へっついゆうれい
きょうの世界昔話 → ハリネズミのハンスぼうや
きょうの日本民話 → イヌになった男
きょうのイソップ童話 → ノミとウシ
きょうの江戸小話 → 大声のしらみ、小声のわたくず

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1月8日の日本の昔話 こぶとりじいさん

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月8日の日本の昔話

こぶとりじいさん

こぶとりじいさん

 むかしむかし、あるところに、ほっぺたに大きなこぶのあるおじいさんがすんでいました。
 おじいさんがまきをわるたびに、ほっぺたのこぶが、ブルルン、ブルルン。
 それはそれは、とてもじゃまなこぶでした。
 でもこのおじいさん、そんなことはちっとも気にしない、のんきなおじいさんです。
 おなじ村に、もう一人、ほっペたにこぶのあるおじいさんがすんでいました。
 こっちのおじいさんは、このじゃまなこぶが気になってか、いつもイライラおこってばかり。
 ある日、のんきなおじいさんは、森のおくで木を切っていました。
 すると、いつのまにやら、ポツリ、ポツリとふりだした雨が、とうとうどしゃ降りになってしまいました。
 おじいさんは、大きな木のうろにとびこんで雨やどりをしました。
 そのうち、このおじいさん、ウトウトとねむりこんでしまったのです。
 雨がやんでも、月が出ても、グーグー、グーグー、高いびき。
 いつのまにやら、日もとっぷりとくれて、ま夜中になってしまいました。
 するとどこからか、にぎやかなおはやしの音が聞こえてきたではありませんか。
「おや、どこからじゃろ?」
 目をさましたおじいさんは、その音のするほうへ近づいていって、それはもうビックリ。
 この森のおくにすむ鬼たちが、歌いおどっていたのです。
♪ピーヒャラ、ドンドン。
♪ピーヒャラ、ドンドン。
 赤い鬼、青い鬼、大きい鬼、小さい鬼。
 みんな、飲んで歌っての大にぎわいです。
 見ていたおじいさんは、こわさをわすれて、思わずおどりだしてしまいました。
 おどろいたのは、鬼のほうです。
「あんれ、おもしれえおどりじゃ」
 おじいさんのおどりが、あまりにも楽しいので、こんどは鬼のほうが、おじいさんといっしょにおどりはじめました。
 そしてとうとう、鬼のおかしらが立あがって、おじいさんと手をとりあっておどります。
 のんきなおじいさんと陽気な鬼たちは、時がたつのもわすれておどりつづけました。
 そのうちに、東の空が明るくなってきました。
 もう、夜明けです。
「コケコッコー」
「ややっ、一番鳥がないたぞ」
 朝になると、鬼たちは自分のすみかに帰らなくてはなりません。
「おい、じいよ、今夜もおどりにこいよ。このこぶをあずかっておくからな。今夜きたら返してやる。えい!」
 鬼のおかしらは、おじいさんのこぶをもぎとってしまいました。
 おじいさんは、思わずほっペたをなでました。
「おおっ、こぶがない」
 きずものこさず、こぶはなくなっていたのです。
 村へ帰ったおじいさんは、うれしさのあまり、もう一人のこぶのおじいさんに、ゆうべのことを話しました。
「なに! 鬼がとってくれただと」
 こっちのおじいさん、うらやましいやらくやしいやら。
「よし! わしもとってもらおう」
と、夜になると森のおくへ出かけていきました。
 やがて、おはやしの音が聞こえてきました。
 このおじいさん、心が暗い人でしたから、陽気な鬼のおどりを見ても、すこしも楽しくなれません。
 おどる鬼たちを見て、ただ、ブルブルとふるえているだけです。
 でも、鬼のところへ出ていかないと、こぶはとってもらえません。
 おじいさんは、思いきって鬼の前に出ていきました。
「よっ、まってました!」
 鬼たちは、大よろこびです。
 でも、おどりなんか大きらいなこのおじいさんに、楽しいおどりをおどれるはずはありません。
「・・・・・・!」
 とてもへたなおどりに、鬼のおかしらは、だんだんきげんがわるくなってきました。
 そして、
「二度とくるな、こんなもの返してやる!」
 ペタン!
 おじいさんは、ほっぺたにもう一つのこぶをつけられてしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 勝負事の日
きょうの誕生花 → ははこぐさ(おぎょう)
きょうの誕生日 → 1971年 田村亮(芸人)

きょうの新作昔話 → カエルと娘
きょうの日本昔話 → こぶとりじいさん
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1月7日の日本の昔話 かべの中から

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1月7日の日本の昔話

かべのなかから

かべの中から

 むかしむかし、あるところに、仲の良いおじいさんとおばあさんがいました。
 二人は、ある晩、
「なあ、ばあさんや。どちらかが先に死んだら、お墓には入れないで家のかべにぬりこめよう。そうすれば、いつまでも一緒にいられる」
「そうですね。そして死んだ者が、かべの中からよんだら、かならず返事をすることにしましょう」
と、約束しました。
 ところが間もなく、おばあさんがポックリ、あの世へ行ってしまったので、おじいさんは約束通り、おばあさんの亡きがらをかべにぬりこめたのです。
 すると、その日から毎日、
「おじいさん、いるかい?」
 かべの中のおばあさんが聞いてきます。
「ああ、ここにいるよ」
「何をしているんだい?」
「わら仕事だよ」
またしばらくすると、おばあさんが聞きます。
「おじいさん、いるかい? 何をしているんだい?」
 一日に何度も聞かれるので、おじいさんはだんだん面倒くさくなってきました。
「だれか、わしにかわって、返事をしてくれる者はおらんかなあ」
 おじいさんがため息をついていると、うまいぐあいに旅の男がやってきました。
「すみません。旅の者です。よければ一晩、泊めていただけませんか?」
 それを聞いたおじいさんは、大喜びで言いました。
「どうぞどうぞ。遠慮なく泊まっていってくれ。そのかわり、かべの中から、『おじいさん、いるかい?』と、声がしたら、『ああ、ここにいるよ』と、答えてくれんか。『何をしているんだい?』と、聞かれたら、適当に答えてくれりゃあいい」
「はい。そんな事なら、おやすいごようですよ」
 旅の男が引き受けてくれたので、おじいさんはやれやれと、お酒を飲みに出かけました。
 留守を頼まれた男は、かべの中のおばあさんの声に、いちいち答えていましたが、何度となく聞かれるので、やがて面倒になってつい、
「うるせえなあ。おじいさんは、酒を飲みに出かけたよ」
と、本当の事を言ってしまったのです。
 すると突然、ガバッ!  と、かべが破れて、半分がガイコツの、ものすごい顔のおばあさんの幽霊が飛び出してきました。
「おじいさんは、どこだーー! お前は誰だーー!」
「うひゃあー! でっ、出たーー!」
 男は驚いたのなんの、命からがら逃げていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 七草がゆ
きょうの誕生花 → せり
きょうの誕生日 → 1948年 水木一郎(アニメ歌手)

きょうの新作昔話 → クジラとモグラ
きょうの日本昔話 → かべのなかから
きょうの世界昔話 → 青い山からきたタバコ
きょうの日本民話 → ものぐさ桃太郎
きょうのイソップ童話 → ウサギとカメ
きょうの江戸小話 → キツネつき

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1月6日の日本の昔話 おわかれにきたむすめ

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1月6日の日本の昔話

おわかれにきたむすめ

おわかれにきたむすめ

 むかしむかし、ある村に、ひとりぐらしのおばあさんがいました。
 むすめをとおくの町へお嫁にやってしまってから、長いことひとりぐらしです。
「このあいだの、むすめの手紙では、からだがおもわしくないといっていたが、いまごろ、どうしておるかいのう?」
 あるばん、おばあさんが心配していると、いつかえってきたのか、むすめがボンヤリとたっていました。
「おや。よくかえったな。さあ、おあがり」
 すると、むすめはスーッと、ざしきにあがってきて、おばあさんにおじぎをしました。
 ニコリともしないし、ひとこともしゃべりません。
 むすめはぶつだんに手をあわせると、まもなく、スーッと、きえてしまいました。
「ふしぎなこともあるもんじゃ。むすめがきていたあの着物は、嫁にやるときにもたせてやったもの。むすめにまちがいないのに、どうして、ひとこともいわないで、かえってしまったんじゃろ」
 さて、つぎの日。
 おばあさんのところに、町から使いがきました。
 むすめがきのうのばん、いきをひきとったというのです。
「それは、何時ごろのことで、むすめが死んだときに、これこれこういうがらの着物をきておらなかったじゃろか?」
 おばあさんがきくと、
「はい。そのとおりですが、どうして、知っているんです?」
 つかいの男がたずねかえしました。
「やっぱり、あれはむすめがゆうれいになって、おわかれにきてくれたんだね」
 おばあさんからわけをきいた男は、くびをひねりながら、かえっていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 東京消防出初め式の日
きょうの誕生花 → ゆずりは
きょうの誕生日 → 1958年 チャゲ(歌手)

きょうの新作昔話 → 不思議なびわ
きょうの日本昔話 → おわかれにきたむすめ
きょうの世界昔話 → 雪の女王
きょうの日本民話 → 男は重々しく
きょうのイソップ童話 → キツネとイヌ
きょうの江戸小話 → 平林

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1月5日の日本の昔話 じっと見つめていました

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1月5日の日本の昔話

じっと見つめていました

じっと見つめていました

♪ 朗読を再生

 むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 そのきっちょむさんが、まだ子どもの頃のお話です。
 ある秋のこと。
 家の人はみんな仕事に出かけるので、きっちょむさんがひとりで留守番をすることになりました。
 出かける前に、お父さんが言いました。
「きっちょむや、カキがもう食べられる。あした木から落とすから、今日は気をつけて見ていてくれ」
「はい。ちゃんと見ています」
 きっちょむさんは、元気な声で返事をしました。
 でも、食べられるカキがいっぱいあるのに、だまって見ているきっちょむさんではありません。
 お父さんたちの姿が見えなくなると、さっそく村の中を走り回りました。
「おーい、うちのカキがもう食べられるぞ。みんな食べに来い」
 これを聞いた村の子どもたちは、大喜びできっちょむさんの家にやってきました。
 そして、長い棒でカキを落とすと、みんなでお腹いっぱい食べてしまったのです。
 さて、夕方になってお父さんが家に戻ってくると、きっちょむさんは柿の木の下にすわっていました。
「おまえ、一日中、そうやっていたのか?」
「はい。だって、気をつけて見ていろと言うから、ジッと柿の木を見ていたんです」
「そうか。えらいぞ」
 感心したお父さんが、ふと、柿の木を見上げてみると、カキの実がずいぶんとへっています。
「おや? カキの実がずいぶんへっているな。これは、誰かが取っていったに違いない。おい、きっちょむ、これはどうしたことだ?」
 するときっちょむさんは、へいきな顔で言いました。
「はい、村の子どもたちが次々と来て、棒を使ってカキの実をもいでいきました。私は言われたとおり、気をつけて見ていたからまちがいありません」
「とほほ。・・・カキ泥棒が来ないよう、気をつけて見ていろと言ったのに」
 お父さんはそう言って、ガックリと肩を落としました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → イチゴの日
きょうの誕生花 → うらじろ
きょうの誕生日 → 1941年 宮崎駿(アニメ作家)

きょうの新作昔話 → 松屋のびんつけ
きょうの日本昔話 → じっと見つめていました
きょうの世界昔話 → 不思議なリンゴの木
きょうの日本民話 → あの世でことづけられた話
きょうのイソップ童話 → お百姓と息子たち
きょうの江戸小話 → たこあげ

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1月4日の日本の昔話 ゆうれいのそでかけ松

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話

1月4日の日本の昔話

ゆうれいのそでかけ松

♪ 朗読を再生

 むかしむかし、漁師が川に船を出して、夜釣りをしていました。
 ところが、どうしたことか、きょうは一匹も釣れません。
「今夜は、あきらめて帰るとするか」
 漁師がそう思っていると、釣りざおがとつぜん、弓なりになりました。
 めったにない、大物の手ごたえです。
 よろこんで引き上げると、
「・・・へっ? ギャァァァーー!」
 釣り糸の先には、若い娘のなきがらがひっかかっていました。
「わわぁ、なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」
 漁師は、なきがらを捨てるわけにもいかず、船に引き上げました。
「ああ、かわいそうに・・・」
 漁師は、娘のなきがらを近くのお寺にはこんで、和尚(おしょう)さんにとむらってもらいました。
 すると次のばんから、お寺の古い松の木の下に、あの若い娘のゆうれいがあらわれはじめました。
「手あつくほうむってやったのに、まだ、この世にうらみでもあるのだろうか?」
 和尚さんがふしぎにおもっていると、むすめのゆうれいがあらわれて、
「先日は、ありがとうございました。まよわず、あの世へいきたいのですが、心残りが・・・。ひとこと、おききくださいませんか」
 かすかな声で、いいました。
「なんなりと、はなしなさい」
「はい。じつは、好きな人のもとへ、お嫁(よめ)にいくことになっていたのですが、家がまずしいため、嫁入りの着物がつくれないでいました。そのため、せっかくの縁談(えんだん)が、こわれてしまったのです」
「それはさぞ、つらかったろう。よしよし、いまとなっては手おくれながら、わしが、嫁入りの着物を、そろえてやろう」
 和尚さんがいうと、むすめのゆうれいはなみだをふいて、フッと消えさりました。
 あくる日、和尚さんはやくそくの着物をかってきて、ふるいマツのえだにかけておきました。
 すると、夜中にむすめのゆうれいがあらわれて、着物をきがえていったのでしょう。
 嫁入りの着物は消えて、かわりに、娘がおぼれて死んだときの着物のそでが、えだにかけられていました。
 そのときから、このマツは「ゆうれいのそでかけマツ」と、よばれるようになったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 石の日
きょうの誕生花 → すいせん
きょうの誕生日 → 1944年 子門真人(歌手)

きょうの新作昔話 → 桂川(かつらがわ)の餅屋の娘
きょうの日本昔話 → ゆうれいのそでかけ松
きょうの世界昔話 → とおせんぼう
きょうの日本民話 → 人食いザメとお坊さん医者
きょうのイソップ童話 → ライオンを追いかけるイヌとキツネ
きょうの江戸小話 → お国は火事

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1月3日の日本の昔話 百姓じいさんとテング

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1月3日の日本の昔話

百姓じいさんとテング

百姓じいさんとテング

♪ 朗読を再生

 むかしむかし、百姓(ひゃくしょう)のおじいさんが、ウマをつれて、うたいながら山道をあるいていました。
♪こころたのしや
♪山坂ゆけば
♪ウマのすずまでこだまする
♪エーイソラ ホイホイ
 すると向こうの方から、ズシンズシンと大きな足音をたてながら、大テングがやってきました。
 その大テングの鼻ときたら、おじいさんの腕ほど長くて大きく、顔ときたら、ぬりたての神社のとりいより、まっ赤です。
 大テングとおじいさんは、細い山道でぶつかりました。
「こら、じいさま。道をよけろっ!」
 大きな声の大テングに、おじいさんは負けじと、
「よけろというたって、ここはおらが道じゃ。おまけに、おらこのとうり、ウマとふたり連れじゃ。おまえがよけろ」
と、大テングをにらみつけます。
「ヒヒ、ヒヒーン!」
 ウマもないて、おじいさんの応援です。
「このじじいめ。つべこべぬかすと、つまんで食うてしまうぞー!」
「そうかい。おらもこの年、食われて死ぬのはこわくないが、おまえに食われる前に、ひとつ見たいもんがあるんじゃ」
「なんじゃい、それは」
「テングは、誰でも術というもんを使うそうじゃが、ほんとうかいのう」
「ワハハハハッ。わしはこれでも、テングの頭じゃ。術ぐらい使えんでなんとする」
「そうかい。テングいうもんは、どこのテングでも、天まで大きゅうなれるというが、おまえさまは、なれるかね」
「天まで大きゅうなる。そんなことができんで、どうなる」
「そうかのう。じゃあ、おらが食われる前に、ちょっくら見せてもらおうか。あの世への話のたねというもんじゃ」
「よし。よう見とれっ」
 そこで大テングは、鼻を上にむけてゴォーーッと、息をすいこみました。
 すると、グングングングン、大テングの背が伸びて、とうとう雲をつきぬけてしまいました。
 そこでおじいさんはニヤリと笑い、いかにも感心したようにいいました。
「テング様、テング様。ようわかったから、もとにもどってくだされ」
 すると大テングは、シューッと息をはいて、もとの大きさにもどりました。
「どうじゃ、じいさま。ビックリしたろう。さあ、食うてやるか」
と、手をのばす大テングに、おじいさんは、カラカラと笑って、
「そんなこと言うても、テング様が天まで大きゅうなるのは、どこのテング様でもやることでねえか。おまえ様は、さっきテングの頭と言うたが、いくら頭でも、小そうなるこたぁできまい」
「なにっ。わしは日本一のテングじゃ。大きゅうばかりなれて、小そうはなれん、そんなケチなテングじゃないわい。見とれ。いま見せてやるわ」
 大テングはそう言うて、フーッと息をはき出しました。
 するとドンドン小さくなっていって、おじいさんの小指ほどになってしまいました。
 そこでおじいさんは、ヒョイと大テングを手のひらにのせて、
「よう。もっと小さく、もっと小さく。そうそう」
 ついに大テングは、豆つぶのように小さくなってしまいました。
「かかったな」
 おじいさんは大テングをつまむと、ポイと口の中ヘほうり込んで、ゴクンと飲みこんでしまいました。
 そして、
♪そよらそよらと
♪たてがみなでて
♪ふくや春風里までも
♪エーソラ ホイホイ
 うたいながらウマをひいて、家の方へ帰って行きました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ひとみの日
きょうの誕生花 → ふくじゅうそう
きょうの誕生日 → 1956年 小堺一機(タレント)

きょうの新作昔話 → 白ギツネの恩返し
きょうの日本昔話 → 百姓じいさんとテング
きょうの世界昔話 → カエルの王さま(鉄のハインリ)
きょうの日本民話 → どっちが本物?
きょうのイソップ童話 → ごちそうに招かれたイヌ
きょうの江戸小話 →

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1月2日の日本の昔話 酒呑童子

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1月2日の日本の昔話

酒呑童子

酒呑童子

♪ 朗読を再生

 むかしむかし、大江山(おおえやま→京都府)に酒呑童子(しゅてんどうじ)と言う、鬼の盗賊がいました。
 酒呑童子はお酒に酔うと、いつも上機嫌になって、ポンポンと頭をたたいて、ニヤニヤと笑うのがくせでした。
 ところが、源頼光(みなもとのよりみつ)たちに退治されてからは、酒呑童子は首だけになってしまいました。
 お酒好きの酒呑童子は、首だけになっても酒を飲むのをやめられません。
 昼も夜も、まっ黒な雲にのって空をとんであるき、酒屋を見つけるとおりてきて、
 グワグワグワーァ
と、きみのわるい声でおどかして、酒をただ飲みするのです。
 こんなふうにして、酒屋をあらしまわったものですから、京都や大阪では、黒雲を見ただけで、どこの酒屋も大戸をおろしてしまいます。
 しかたなく、酒呑童子は黒雲にのって、江戸ヘやってきました。
「ありゃ。あそこに酒屋があるぞ」
 酒屋のまえで、ヒラリと雲からとびおりると、
 グワグワグワーァ
「上等の酒を五升(→9リットルほど)ばかり、かんをつけて持ってこーい!」
 酒屋のものたちは、まっ青になりました。
 持っていかなければ、なにをされるかわかりません。
 いそいで、かんをつけると、さかずきがわりにどんぶりをそえて、ブルブルふるえながらさし出しました。
「ど、どうぞ。手じゃく(→自分でつぎながら酒を飲むこと)でお飲みなすって」
 おいて逃げようとすると、首がどなりました。
「おい、おい。おれは、このとおり首だけだ。手じゃくではやれん。飲ませてくれ」
と、大きな口をバックリとあけました。
 酒屋の主人はしかたなく、どんぶりについでは飲ませ、ついでは飲ませして、五升の酒を、みんな飲ませてやりました。
 童子の首はすっかりよっぱらって、上機嫌です。
「ああ、ひさしぶりで、なんともいえん、いい気持ちだ。ついでに、わしの頭をポンポンとたたいてくれ」
と、いいます。
 酒屋の主人が、こわごわポンポンとたたいてやると、首はいかにもうれしそうに、ニヤッと、笑ったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 初夢
きょうの誕生花 → たけ
きょうの誕生日 → 1974年 さとう珠緒(俳優)

きょうの新作昔話 → いも正月
きょうの日本昔話 → 酒呑童子
きょうの世界昔話 → オー・ツール王とガチョウ
きょうの日本民話 → 天福地福
きょうのイソップ童話 → 塩をはこぶロバ
きょうの江戸小話 → 主人おもいのこぞう

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元旦の日本の昔話 ネコがネズミをおいかけるわけ

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元旦の日本の昔話

ネコがネズミをおいかけるわけ

ネコがネズミをおいかけるわけ

♪ 朗読を再生

 むかしむかし、人間も生まれていない、おおむかしのある年の暮れのことです。
 神さまが、動物たちに言いました。
「もうすぐ正月だ。元旦には、みんな私のところに来なさい。そして、先に来たものから十二番目までを、その年の大将としよう」
 ところが、うっかりもののネコは集まる日を忘れたので、友だちのネズミに聞きました。
 するとネズミは、
「ああ、新年の二日だよ」
と、わざとうそを教えました。
 さて、元旦になりました。
 ウシは足がおそいので、朝早くに家を出ました。
 チャッカリもののネズミは、こっそりウシの背中に乗って、神さまの前に来ると、ピョンと飛び降りて、一番最初に神さまの前に行きました。
 それでネズミが最初の年の大将になり、ウシが二番目になりました。
 その後、トラ・ウサギ・タツ・ヘビ・ウマ・ヒツジ・サル・ニワトリ・イヌ・イノシシの順になりました。
 ところがネコは、ネズミに教えられたとおり、二日に神さまのところへ行きました。
 すると神さまは、
「遅かったね。ざんねんだけど、きのう決まったよ」
と、言うではありませんか。
 くやしいのなんの。
「ネズミめ、よくもだましたな!」
 おこったネコは、それからずっと、ネズミを見ると追いかけるようになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 元旦
きょうの誕生花 → まつ
きょうの誕生日 → 0574年 聖徳太子

きょうの新作昔話 → 助けたツルの恩返し
きょうの日本昔話 → ネコがネズミをおいかけるわけ
きょうの世界昔話 → ミツバチマーヤの大ぼうけん
きょうの日本民話 → 死の国へはこぶ火の車
きょうのイソップ童話 → よくばりなイヌ
きょうの江戸小話 → ぞうきんとお年玉

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