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2009年2月

2月28日の日本の昔話 クラゲのおつかい

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月28日の日本の昔話

クラゲのおつかい

クラゲのおつかい

 むかしむかし、深い海の底に、竜宮(りゅうぐう)がありました。
 ある日のこと、病気のおきさきが、急にサルのきもを食べたいと言い出しました。
 サルのきもは、どんな病気でも治すと言われているからです。
 そこで王さまは、クラゲにサルのきもを手に入れてくるように命じました。
 命じられたクラゲは、はりきって、海の底からサルがたくさん住んでいる、サルが島へやってきました。
 ちょうど一匹のサルが、波うちぎわで遊んでいます。
「よう、サルさん、こんにちは」
「おや、クラゲくん、いい天気だね」
「ねえ、サルさん。きみ、竜宮へ遊びにこないかい? とってもいい所だよ」
「竜宮! いくいく! ・・・でも、だめだよ。ぼくは泳げないんだもの」
「それなら大丈夫さ。ぼくの背中に乗せていってあげるよ」
「ほんとうかい、うれしいなあ」
 サルは、すぐにクラゲの背中に飛び乗りました。
 クラゲは、スイスイ泳いで海の中へ。
「うわっ、海の中ってきれいだなあ」
 珍しい景色に、サルは、ただうっとり。
「さあ、サルさん、もうすぐ竜宮だよ」
 ところで、少しまのぬけたクラゲは、うっかりサルに聞いてしまいました。
「ねえ、きみ、きもを持ってる?」
「きも? どうして?」
「竜宮のおきさきさまが、食ベたいんだって」
(そ、それでぼくを。こりゃ、たいへんだ!)
 サルはビックリです。
 きもを取られては、死んでしまいます。
 でも頭のいいサルは、少しもあわてず、残念そうにいいました。
「そりゃ、あいにくだな。きょうはお天気がいいから、木の上にほしてきたよ。クラゲくん、ご苦労だけど取りに帰ろうよ」
「そうかい。しかたがないや。じゃ、ひき返そう」
 そこでクラゲは、また、サルが島へ逆もどりです。
 島につくと、サルはあわてて飛び降りて言いました。
「やーい、やーい、クラゲのおばかさん。きもは木の上なんかにありゃしないよ。ぼくのからだの中さ。アハハハハッ」
「ええっ! ほんとうかい」
 クラゲはくやしがりましたが、もうしかたがありません。
 トボトボと竜宮へ帰っていったクラゲは、
「この、まぬけクラゲめっ!」
「お前なんか、消えてしまえ!」
 王さまやさかなたちに、メチャクチャにたたかれました。
 クラゲが今のように骨なしになったのは、このためだそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バカヤローの日
きょうの誕生花 → みすみそう(ゆきわりそう)
きょうの誕生日 → 1978年 菊川怜 (タレント)

きょうの新作昔話 → まこもが池のオシドリ
きょうの日本昔話 → クラゲのおつかい
きょうの世界昔話 → トラになった王さま
きょうの日本民話 → カッパのわび証文
きょうのイソップ童話 → 足をけがしたふりをするロバとオオカミ
きょうの江戸小話 → おれじゃない

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2月27日の日本の昔話 旅は道連れ

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2月27日の日本の昔話

旅は道連れ

旅は道連れ

 むかしむかし、一人の武士(ぶし)が、京へ向って旅をしていました。
 ちょうど鈴鹿山(すずかやま)をこえようとした時、急に耳もとで、何か人の話し声がしました。
(はて、きみょうな)
と、あたりを見まわしましたが、誰もいません。
「風の音かな?」
と、歩き始めると、また耳元で話し声がします。
 何を言っているのかわかりませんが、あんまり近くに聞こえるので、もう一度、あたりを見回しました。
「やはり、誰もおらぬか」
 しばらく歩いていくと、遠くの方に、旅の町人と虚無僧(こむそう→詳細)が、連れ立ってあるいているのが見えました。
(なんだ、あの二人の話し声か。・・・いや、それにしてはおかしい。これだけはなれておって、すぐ耳元で聞こえるとは。よし、行ってみるか)
 武士は早足で二人に追いつき、追いこしざまに、二人の顔を見ました。
「・・・!」
 町人の方はふつうですが、虚無僧の顔が変で、ちり紙をクシャクシャにしたような顔なのです。
 おまけに声は聞こえますが、何を言っているのか、さっぱりわかりません。
(さては、虚無僧。妖怪変化のたぐいと見える。ことあらば、一太刀(ひとたち)に切って捨てん)
 武士はゆっくり歩き、すぐ後ろに二人が来た時、武士はバッとふりかえりました。
 とたんに、
「うわーっ」
と、さけんだ町人が、いきなり武士にしがみついてきました。
「お、恐ろしや・・・。恐ろしや・・・」
 町人は、ガタガタふるえながら、
「消えて、き、消えてなくなりました。い、今まで、一緒にまいりました虚無僧が、あなたさまが後ろをむかれたとたんに」
 言われて武士は、
(しまった、とりにがしたか)
と、くやしがりましたが、そ知らぬ顔で町人にたずねました。
「これまで、何を話しながら、ここまでまいられたかな?」
「はい。あの虚無僧殿が、わしは遠い国の者だ。このあたりはいっこうに知らぬゆえ、今夜はどこへ宿をとったらよろしかろうと、申されました」
「それで」
「さ、さいわい、わたくしどもが宿屋をいたしておりますので、今夜はおとめいたしましょうと、そう申しておったところで、ございます」
と、町人は、まだふるえがとまらず、オロオロした声で答えました。
「ところで、おぬしはそやつの顔を見たか?」
「いいえ」
「まるで、ちり紙をクシャクシャにしたような顔であったぞ」
「ひえーっ。では、あの、化け物か何かで」
「まあ、そう、こわがることもあるまい。たとえ相手が化け物でも、旅は一人よりも多い方がたのしいわい。あははははっ」
 底抜けに明るい声で笑うと、武士は町人と連れだって、町まで歩いて行ったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 新撰組の日
きょうの誕生花 → サキシフラガ(くもまぐさ)
きょうの誕生日 → 1969年 富田靖子 (俳優)

きょうの新作昔話 → 大アワビの怒り
きょうの日本昔話 → 旅は道連れ
きょうの世界昔話 → わすれな草
きょうの日本民話 → カッパと伝次の約束
きょうのイソップ童話 → ライオンの皮を着たロバとキツネ
きょうの江戸小話 → ふとん

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2月26日の日本の昔話 ひっぱりあいず

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2月26日の日本の昔話

ひっぱりあいず

ひっぱりあいず

 むかしむかし、ある村に、せけんしらずのむこさんがいて、あるとき、お嫁(よめ)さんといっしょにお嫁さんの実家によばれました。
 実家では、ごちそうをつくってまっています。
 お嫁さんは、せけんしらずのむこさんが、ごちそうをたべるじゅんばんをまちがえて、親にわらわれないよう、むこさんの服に糸をつけて、
「あたしがよこで、この糸をひっぱってあいずをします。ツンと、一回引っぱったら、おつゆを飲み、ツンツンと、二回引っぱったら、ごはんを食べ、ツンツンツンと、三回引っぱったら、おかずを食べるのですよ」
「うん、わかった」
 お嫁さんの実家につくと、さっそく、ごちそうのはじまりです。
 むこさんは、あいずにしたがって、おつゆも、ごはんも、お料理も、じゅんじょよく、おちついてたべはじめました。
 お嫁さんの親たちは、それをみて、
「せけんしらずどころか、たいしたもんじゃ」
と、かんしんしました。
 そのうちに、お嫁さんは、トイレにいきたくなったので、
「すこしのあいだくらい、だいじょうぶでしょ」
と、糸のさきを、うしろのはしらにむすんで、そっとたちました。
 するとそこに、ネコがやってきて、糸にじゃれつき、ツンツン、ツン、ツンツンツンツンツンと、むちゃくちゃに、ひっぱりました。
「これはたいへんだ! いそがしいぞ」
 むこさんは、ネコが引っぱるのに合わせながら、おつゆも、ごはんも、おかずも、むちゅうで口にほうりこみました。
 そのようすをみていたお嫁さんの親たちは、
「やっぱり、そうとうな、せけんしらずじゃわい」
と、あきれはててしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 咸臨丸の日
きょうの誕生花 → スノードロップ
きょうの誕生日 → 1956年 桑田佳祐 (ミュージシャン)

きょうの新作昔話 → 大平長者
きょうの日本昔話 → ひっぱりあいず
きょうの世界昔話 → ソバとゆうだち
きょうの日本民話 → おたつ女郎
きょうのイソップ童話 → 旅に出たディオゲネス
きょうの江戸小話 → 七の字

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2月25日の日本の昔話 カニにまけたネコ

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2月25日の日本の昔話

カニにまけたネコ

カニにまけたネコ

 むかしむかし、一ぴきのネコが、川のそばの道を急いでいたら、カニがのっそり、のっそり歩いていました。
「じゃまだ、じゃまだ。早く歩かないとふみつぶすぞ!」
 ネコがイライラしてどなります。
 するとカニが、ハサミをふりあげて言いました。
「早く歩こうが、おそく歩こうが、おらの勝手(かって)だ!」
「なに、足がおそいくせに、えらそうなことを言うな!」
「さて、どっちの足がおそいか、くらべてみなくちゃわからない」
「なんだと、おまえがわしより足が早いと言うのか」
 ネコは、すっかり腹をたて、
「よし、そんなら、向こうの森までかけくらべをしよう」
「いいとも!」
 カニも負けずに言いかえしました。
 ネコは、カニをばかにして、
(ふん、カニがいくらよこばしりしたところで、わしにかなうわけがない。ゆっくりかけていくか)
 と、思いましたが、足の早いところを見せつけたくて、サッとしっぽをふりあげます。
 そのとたん、カニはネコのしっぽにとびつきました。
 ネコはそれに気づかず、いっきにかけだして、あっというまに約束の森へついてしまいました。
「ふん、どんなもんだい」
と、言わんばかりに、後をふり向きますが、カニの姿は見えません。
「ばかなやつめ。ここへやってきたら、ほんとにふみつぶしてやるから」
 すると、ネコのしっぽにつかまっていたカニが、ヒョイととびおり、後ろから声をかけました。
「なにをえらそうな。おら、さっきから待っていたぞ」
 ネコがビックリして、後ろを見たら、なんとカニがいるではありませんか。
「あっ、ばかな! おまえ、いつのまに」
 ネコはあわてました。
 いくら考えても信じられません。
「だから、言わんこっちゃない。おらにくらべたら、ネコの足なんて、カメよりおそいくらいだ」
「くっ・・・」
 なんと言われようと、ネコには言いかえすことばもありません。
「わかったら、頭をさげてあやまれ!」
 カニがいばって言うと、ネコはしかたなく、頭をさげ、
「カニどんの足が、そんなに早いとは知りませんでした。それなのにえらそうなことを言って、まことに申しわけない」
と、しぶしぶあやまりました。
 それからというもの、ネコはカニの姿を見かけると、カニが横切るまで、ジッと待つことにしたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 夕刊紙の日
きょうの誕生花 → カランコエ
きょうの誕生日 → 1972年 有野晋哉 (芸人)

きょうの新作昔話 → さかな売りとキツネ
きょうの日本昔話 → カニにまけたネコ
きょうの世界昔話 → やまのおかしら
きょうの日本民話 → よっぱらったスズメ
きょうのイソップ童話 → 家がらくらべをするキツネとサル
きょうの江戸小話 → まんじゅうこわい

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2月24日の日本の昔話 よっぱらいのばけものたいじ

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2月24日の日本の昔話

よっぱらいのばけものたいじ

よっぱらいのばけものたいじ

 むかし、酒のみのさむらいが、酒のうえのしっぱいから、浪人(ろうにん→詳細)になってしまいました。
「どこかに、つとめ先がないかなあ」
 浪人が京の町をあるいていくと、たてふだのまわりに人だかりがしています。
 なんだろうと、のぞいてみると、
《三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)のばけものをたいじしたものには、のぞみのほうびをとらせる》
と、かかれています。
 浪人はさっそく、御所(ごしょ→天皇のいるところ)へでかけ、役人にいいました。
「ばけものをたいじしてきますから、酒をかう金をかしてください」
 こうして酒を手に入れた浪人が、三十三間堂のかたすみでよっぱらっていると、ま夜中に、ものすごい足音がして、ヒゲモジャの三つ目大入道が現れました。
「おい、おきろ!」
 浪人を、ひとつかみにしようとしましたが、浪人はよっぱらっているので、おそろしくもなんともありません。
「これはこれは、ばけものさまでございますか。まずは、はじめまして」
 おどけたちょうしで、あいさつしました。
「ほほう、おまえのようなかわりものは、はじめてじゃ。・・・ああ、はじめまして。して、ここへ、なにをしにきた」
「ばけものさまは、聞いたところによりますと、たいそうのばけじょうずとか、せけんでは、もっぱらのひょうばんです。そこで、そのばけっぷりを、とくとはいけんしたいと思い、ここでおまちしておりました」
 浪人におだてられて、ばけものは、わるい気がしません。
「そうか、それほど有名なのか。オホン。では、ちょいとみせてやるか。いくぞ!」
 まずは、きれいなお姫さまにばけました。
「おおっ、さすがは、ばけものさま。天下一のばけっぷり」
 浪人のおだてに、気をよくしたばけものは、「トラ」、「カッパ」、「りゅう」、「赤鬼」など、つぎつぎに化けて見せました。
「いや、これはおみごと! うわさにまさるばけっぷりですな。しかし、さすがのあなたさまも、小さなウメボシには、ばけられないでしょうな」
「なにをいうか、みておれ」
 ばけものはひとつぶのウメボシに、ばけてみせました。
「おおっ、うまそうだ。酒のあてには、これが一番」
と、いうと、浪人はそのウメボシをペロリと食べてしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 月光仮面の日
きょうの誕生花 → クロッカス
きょうの誕生日 → 1967年 コージー冨田 (タレント)

きょうの新作昔話 → 長者の森
きょうの日本昔話 → よっぱらいのばけものたいじ
きょうの世界昔話 → 橋の上の幸福
きょうの日本民話 → 爺婆かぼちゃ
きょうのイソップ童話 → よっぱらいとおかみさん
きょうの江戸小話 → 小男のねがい

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2月23日の日本の昔話 ひろったさいふ

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2月23日の日本の昔話

ひろったさいふ

ひろったさいふ

 むかし江戸の町に、左官屋(さかんや→壁をぬる職人)のでんすけという人がすんでいました。
 ある年の十二月、仕事の帰りに道でさいふをひろいました。
 中を調べると、一両小判が三枚入っていました。
「おやおや、もうじき正月がくるというのに三両(→約二十一万円)ものお金を落とすなんて、気の毒に。落とした人はさぞ、困っているだろうな」
 でんすけがさいふをよく調べてみると、名前と住所を書いた紙が入っていました。
「なになに、神田(かんだ)の大工の吉五郎(きちごろう)か。よし、ひとっぱしり、届けてやろう。いまごろきっと、青くなって、探しているだろうよ」
 親切なでんすけは、わざわざ神田までいって、ようやく吉五郎の家を探し出しました。
「こんにちは。吉五郎さん、いますか?」
「ああ、おれが吉五郎だが、何か用かね?」
「わたしは左官のでんすけというんだがね、お前さん、さいふを落とさなかったかね?」
「ああ、落としたよ」
「中に、いくら入っていたんだね?」
「そんなこと、なんでお前さんが聞くんだい?」
「なんでもいいから、答えてくれよ」
「三両だよ。お正月がくるんで、やっとかき集めた大事な金だったんだ」
 それを聞いて、でんすけは、
「そうかい。それじゃこれはたしかにお前さんの落としたさいふだ。ほら、受け取ってくれ」
と、さいふを差し出しました。
 ところが吉五郎は、さいふをチラッと見ただけで、プイと横を向いていいました。
「それは、おれのじゃないよ」
「えっ? だってお前さん、いま、大事な三両が入ったさいふを落としたって、いったじゃないか。それにお前さんの名前と住所を書いた紙も、入っていたんだ。このさいふは確かにお前さんの物だよ」
「そりゃあ、たしかにおれはさいふを落としたよ。だけど、落とした物は、もう、おれの物じゃない。ひろったお前さんの物だ。持って帰ってくれ」
「なんだって!」
 でんすけは、ムッとしました。
「なんて事をいうんだ。ひろった物をだまって自分の物にするくらいなら、わざわざ探しながらこんなところまで届けに来たりするもんか。素直に『ありがとうございます』と、いって受け取ればいいじゃないか」
「ちえっ、お前さんもごうじょうっぱりだなあ。おれはそのさいふはお前さんにくれてやるっていってるんだぜ。そっちこそ素直に『ありがとうございます』と、いって、さっさと持って帰りゃあいいじゃないか。第一、この十二月になって、三両もの金が手に入れば、お前さんだって、助かるだろうに」
「ばかやろう!」
 とうとうでんすけは、吉五郎をどなりつけました。
「おれはこじきじゃねえ。人の物をひろってふところへ入れるほど、おちぶれちゃいないんだ。ふざけるのもいいかげんにしろ。とにかく、これは置いていくぜ」
 でんすけがさいふを置いて帰ろうとすると、
「おい待て!」
 吉五郎はその手をつかんで、さいふを押しつけました。
「こんな物、ここに置いて帰られちゃ、迷惑くだよ。持って帰ってくれ」
「この野郎、まだ、そんな事をいってるのか」
 二人のがんこ者は、とうとう、とっくみあいのけんかを始めました。
 その騒ぎを聞いてやってきた近くの人たちが、いくらなだめても、二人とも聞きません。
 近所の人たちは困り果てて、とうとうお奉行(ぶぎょう)さまに訴えました。
 その時のお奉行さまは、名高い、大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ)という人でした。
 越前守(えちぜんのかみ)は、二人の話を聞くと、
「大工、吉五郎。せっかくでんすけが届けてくれたのだ。素直に礼をいって、受け取ったらどうじゃ」
「とんでもありません、お奉行さま。落とした物は、なくしたのと同じでございます。ですから、もう、わたくしの物ではありません」
「では、左官でんすけ。吉五郎がいらないというのだ。この三両はひろったお前の物だ。受け取るがよいぞ」
「じょうだんじゃありません、お奉行さま。ひろった物をもらうくらいなら、何もこの忙しい年の暮れに、わざわざ神田まで届けに行ったりなどしやしません。落とした物は落とした人に返すのがあたりまえです」
 二人とも、がんこにいいはってききません。
 すると越前守は、
「そうか。お前たちがどちらもいらないというなら、持ち主がないものとして、この越前(えちぜん)がもらっておこう」
「へっ?」
「へっ?」
 お奉行さまに金をよこどりされて、二人はビックリしましたが、でも、いらないといったのですから、しかたがありません。
「はい。それでけっこうです」
「わたしも、それでけっこうです」
と、答えて、帰ろうとしました。
 そのとき、越前守は、
「吉五郎、でんすけ、しばらく待て」
と、二人を呼び止めました。
「お前たちの正直なのには、わしもすっかり感心した。その正直にたいして、越前から、ほうびをつかわそう」
 越前守はふところから一両の小判を取り出すと、さっきの三両の小判とあわせて四両にし、吉五郎とでんすけに二両ずつやりました。
ところが二人とも、なぜ二両ずつほうびをもらったのか、わけのわからないような、みょうな顔をしています。
 そこで越前守は、笑いながらいいました。
「大工の吉五郎は、三両を落として二両のほうびをもらったから、差し引き一両の損。左官のでんすけは、三両をひろったのに、落とし主に届けて、二両のほうびをもらったから、これもやはり、一両の損。この越前も一両を足したから、一両の損。これで三方、一両損というのはどうじゃ?」
「なるほど!」
 吉五郎とでんすけは顔を見合わせて、ニッコリしました。
「さすが名奉行(めいぶぎょう)の大岡さま。みごとなおさばき、おそれいりました」
「このお金は、ありがたくいただいてまいります」
「うむ。二人とも珍しいほどの正直者たちじゃ、これからのちは友だちとなって、仲よくつきあっていくがよいぞ」
「はい。ありがとうございます」
 吉五郎とでんすけは、ここに来たときとはまるで反対に、うまれたときからの仲良しのように、肩をならべて帰っていきました。
「うむ、これにて、一件落着!」

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 税理士の日
きょうの誕生花 → じんちょうげ
きょうの誕生日 → 1956年 野口五郎 (歌手)

きょうの新作昔話 → 踊る三毛猫
きょうの日本昔話 → ひろったさいふ
きょうの世界昔話 → かしこいグレーテル
きょうの日本民話 → 黒ギツネの霊カ
きょうのイソップ童話 → 山賊とクワの木
きょうの江戸小話 → 負け惜しみ

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2月22日の日本の昔話 つめときばをとられたネコ

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2月22日の日本の昔話

つめときばをとられたネコ

つめときばをとられたネコ

 むかしむかし、ある商人の家に、ネコがかわれていました。
 正月が近づいたので、この家でも、もちつきをすることになり、小僧さんたちが、かわるがわるもちをつきます。
 もちの大好きなネコは、うれしくてたまりません。
 これでまた、正月にたっぷりもちを食わせてもらえるかと思うと、ひとりでにのどが鳴ってきます。
 もちつきの翌日、天気がいいので、すすはらい(→掃除)をすることになりました。
 朝早くから主人のさしずで、小僧さんたちが店の中の掃除を始めた。
 ネコは、じゃまになってはいけないと考え、外に出てへいの屋根にのぼりました。
 すると、長いささぼうきを持った小僧さんが出てきて、
「へいの掃除をするから、家の中へ入っとれ」
と、言うのです。
 ネコがあわてて家の中へ入ろうとすると、主人が言いました。
「おまえにウロウロされては、すすはらいができない。外へ出ていろ」
 ネコはこまりました。
 外へ出れば、小僧さんに、
「中へ入っとれ」
と、言われるし、中へ入ろうとすると、主人に、
「外へ出てろ」
と、しかられます。
(いったい、どこにいればいいんだ)
 ネコはしかたなくはしごをつたって、天井裏(てんじょううら)へのぼっていきました。
 そこには、ネズミたちが集まっていて、下のさわぎは自分たちを追い出すためだと思いこみ、おびえきった顔をしていました。
 ネコを見て、ネズミの親分が言いました。
「やっぱりあいつが来た。こうなってはジタバタしても始まらん。みんな覚悟(かくご)せい」
 ところが、ネコはネズミにとびつくどころか、親分の前に行って両手をつきます。
「今日は、おまえたちを食うために来たんじゃない。なにもしないから、一日だけここへ置いてくれ」
「それはまた、どういうわけだ?」
 ネズミの親分が首をかしげます。
「じつは、家のすすはらいで、わしのいるところがないのだ。どこへ行っても、『じゃまだ、じゃまだ』と、ほうきの先で追いはらわれ、くやしいったらありゃしない」
「それじゃ、おれたちを追い出すさわぎじゃないのか」
「いくらすすはらいといっても、天井裏まで掃除する者はおらんよ。あのさわぎはおまえたちを追い出すためじゃない」
「なんだ、そうだったのか」
 ネズミたちはホッとして、おたがいに顔を見あわせました。
 すると、親分が急にいばった態度(たいど)で言います。
「今日一日、ここに置いてやってもいいが、家賃(やちん)のかわりに、おまえさんの足のつめと、きばを残らず渡してくれ」
「なんだって!」
 ネコがおどろいて聞きかえしました。
「いやなら、すぐ出ていってくれ。家賃を払わないでここにいるというなら、わしらにも覚悟がある。ここにいるものみんなが死ぬ気でかかれば、おまえさんだって倒せないはずはない」
 それを聞いて、ネズミたちが、いっせいに立ちあがりました。
「わかった。わかった。おまえの言うとおりにするよ」
 ネコは、泣く泣く足のつめときばをぬき、親分の前にさしだしました。
「そんなら、今日一日、ここでゆっくりすごすがいい。ただし、どんなことがあっても、わしらのからだにさわらないこと。といっても、つめときばなしじゃ、どうにもならんがね」
 ネコは、そんなひにくも頭に入りません。
 むりやり抜いたつめときばのあとが痛くて、ネズミのかしてくれたやぶれ座布団(ざぶとん)につかまり、一日中うなっていました。
 やがて夕方になって、すすはらいも終わったらしく、家の中がしずかになりました。
「お世話になった」
 ネコは痛みをがまんしながら、ゆっくり下へおりていきました。
「おまえ、どこへ行っていたんだ」
 小僧さんたちが、ネコを見て、もちを持ってきてくれます。
「さあ、食え。おまえ、もちが大好きだろ」
 でも、きばがなくては、もちどころか、ご飯も満足に食べれません。
(ふん、さんざんじゃまものにしておきながら、いまさらなにを言うか)
 ネコは腹をたて、こたつの中へもぐりこみました。
 そこへ主人がやってきて、
「よし、今日は、みんなつかれているだろうから、早く寝てよいぞ」
 小僧さんたちは、すぐにとこへつきました。
 ところが、こたつの中にいるネコを見つけた主人は、
「こら、おまえは寝ちゃいかん。ネズミにもちをとられないよう、しっかり番をするのだ」
と、言って、ネコを引きずり出し、台所へつれていったのです。
 ネコは台所にすわって、むしろに広げられたもちをうらめしそうに見ています。
 みんなが寝しずまったころ、急に天井裏がさわがしくなり、親分を先頭にネズミたちがゾロゾロとはしごをおりてきました。
「さあ、みんな、どんどん運ぶのだ」
 親分は、ネコに目もくれません。
 ネコはたまりかねて、
「おいおい、わしがここにいるのがわからんのか。もちを持っていくと承知(しょうち)しないぞ」
 それを聞いて、親分がわらいだします。
「そんなら、わしらをつかまえようというのかい。つめもきばもなくて、どうやってつかまえる」
「・・・・・・」
 ネコは、なにも言いかえすことができません。
 くやしいのをガマンして、ネズミたちがもちを運ぶところを見ているより、しかたありませんでした。
 ネズミたちはすっかりあんしんして、しっぽでもちをまくやつやら、せなかにのせてしっぽでおさえるやつやら、思い思いのかっこうで、はしごをのぼっていきます。
 親分が、ネコの前に立って歌をうたいだしました。
♪ひけよひけよ、もちをばひいて。
♪はや行く年を、おいたてて。
♪また来る年を、むかえよや。
 ネズミたちも、それにあわせて、いっしょにうたいながら、はしごをなんどもおうふくしました。
 それでもネコは、なにもすることができません。
「よし、このへんでいいだろう」
 すきなだけもちを運びおえた親分は、ネコをふりかえり、
「それじゃ、よいお正月を」
と、言って、みんなの後からはしごをのぼっていきました。
 次の朝、台所にやってきた主人は、もちがちらばっているのを見て、ガッカリするやら、腹をたてるやら。
「あれほど言ったのに、ネズミの番もできないのか!」
と、言って、ネコをなぐりつけました。
 気のどくに、ネコはからだがはれあがり、おまけにきばもつめもないので、もちが食えず、泣き正月をおくることになったのです。
 いっぽうネズミは、もちをたらふく食って、おおよろこびの正月をおくったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 猫の日
きょうの誕生花 → アフェランドラ
きょうの誕生日 → 1948年 都はるみ (歌手)

きょうの新作昔話 → 一枚のうろこ
きょうの日本昔話 → つめときばをとられたネコ
きょうの世界昔話 → おばあさんと山のヤギ
きょうの日本民話 → イノシシを退治した侍
きょうのイソップ童話 → トビとヘビ
きょうの江戸小話 → 外からエヘンエヘン

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2月21日の日本の昔話 死に神のつかい

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月21日の日本の昔話

死に神のつかい

死に神のつかい

 むかし、たとえ殿さまでも、けらいにいつ首をとられるかわからない、戦国(せんごく)の世のことです。
 ある夕方、かみのまっ白な、見たこともないじいさんがお城へやってきました。
 門番がおいかえそうとしましたが、じいさんは、スルリと門をくぐりぬけて、なかへ入ったのです。
「くせものじゃ、とりおさえろ!」
 さむらいたちがさわぎだしたとき、じいさんはもう、影武者(かげむしゃ→敵をあざむくため、主将などと同じかっこうをさせた武者)のへやのしょうじをあけていました。
「そのほう、なにものか?」
「おまえさまを、おむかえにまいってございます」
「むかえにとは、わしをいったいどこへ?」
「めいどの旅へでございます。あすのいまじぶん、またまいりますゆえ、おしたくをなさっておかれませ」
「なんと、おぬしは死神のつかいか。わしはまだ死なぬ。死んでたまるか!」
 影武者はひどくうろたえ、そばにヤリがなかったので、刀のつかに手をかけました。
 でも、じいさんはおちついたひくい声で、
「どうしても死にとうないとおおもいなら、おまえさまとよく似たお方を、このへやにおかれませ。そのお方をつれてまいっても、よろしいのでございますよ」
と、いうと、フッときえてしまいました。
 影武者は少しかんがえて、ニンマリとわらいました。
「これこそ、もっけのさいわいというもの。わしが、いままでみたいな影武者ではなく、ほんとの殿さまになれるときがきた。うつくしいおくがたが、わしの妻になるし、この領地も、そっくりわしがおさめるのだ。フフフフッ、こいつはいい」
 あくる日、あのふしぎなじいさんからいわれたとおりにするのは、ごくたやすいことでした。
 殿さまに、
「きょうはあぶのうございます。わたくしめがかわって・・・」
と、いって、立場を入れかえればいいのですから。
 夕方近く、きのうとおなじに、お城の中庭で、
「くせものじゃ!」
と、いう声がしました。
 影武者と入れかわって、せまいへやにいた殿さまは、じいさんを見るなり、大声でさけぼうとしました。
「ぶれいもの! だれかある」
 しかし、いいかけたまま、バタッとたたみの上にたおれてしまいました。
 わけを知っていたのは、影武者ひとりだけです。
 戦国の世が終わりかけたといっても、武将たちは少しもゆだんなどできません。
 殿さまが急死したと知れたら、なにがおこるかわかりません。
 それで、殿さまのなきがらは、こっそりとお城からはこびだされ、影武者のおもうとおりにうまくいったのです。
 つぎの日、おもだったけらいたちが、広間へ集められました。
 殿さまになった影武者は上きげんで、かずかずのいくさのてがらにたいし、ほうびをとらせるともうしわたしました。
 ところが、ふと気がつくと、けらいたちのなかに、あのじいさんがチョコンとすわっていたのです。
「そのほう、用はすんだはずじゃ。なにゆえに、またまいった?」
 殿さまになった影武者は、血がこおるおもいで、うしろに立てかけてあるヤリをつかみました。
 けらいたちも息をのみ、いっせいに、かみのまっ白なじいさんを見つめました。
「おそれながら、おむかえに。殿さまのご寿命(じゅみょう)も、影武者と一日ちがいでございました。まあ、一日でも願いがかなって、よろしゅうございましたな」
「おのれ、死神め!」
 殿さまになった影武者は、じいさんをひとつきにしようと走りだしました。
 そのとたん、どうしたはずみか、手にしたヤリで、じぶんののどをついて死んでしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日刊新聞創刊の日
きょうの誕生花 → ひがんざくら
きょうの誕生日 → 1964年 モモコ (漫才師)

きょうの新作昔話 → 山童(やまわらべ)
きょうの日本昔話 → 死に神のつかい
きょうの世界昔話 → ウサギどん キツネどん
きょうの日本民話 → おかしな手紙
きょうのイソップ童話 → カラスと白鳥
きょうの江戸小話 → ネズミおろし

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2月20日の日本の昔話 火事の知らせ方

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月20日の日本の昔話

火事の知らせ方

火事の知らせ方

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 あるばんの事です。
 きっちょむさんが、かわや(→トイレ)におきると、向こうの空がまっ赤にそまっています。
「ややっ、火事かな。どのへんじゃろ? うん? あの辺りは、もしや!」
 どうやら、庄屋(しょうや→詳細)さんの屋敷の辺りです。
「たっ、大変だー! すぐに、すぐに知らせに行かなくては!」
 きっちょむさんは、かわやを飛び出して、はだしでかけだそうとしましたが、
「・・・いや、まてよ」
 寝ていたおかみさんを起こして、まず、お湯をわかしてもらって、ていねいにひげをそりました。
 それから、大事な時に着る「かみしも」を着て、たびをはいて、せんすを手にして、ゆうゆうと落ち着いて、庄屋さんの屋敷へ出かけました。
 火事は、庄屋さんの屋敷のはなれでした。
 まだ、誰も気がついていません。
「庄屋さん、庄屋さん。はなれが火事でございますよー」
 きっちょむさんは、雨戸をしずかに叩いて、庄屋さんを呼び起こしました。
 声が小さかったし、戸の叩き方もおとなしかったので、庄屋さんは、なかなか目をさましません。
「庄屋さん、庄屋さん。はなれが火事でございますよー。はやく消さないと、大変なことになりますよー」
「・・・・・・」
 しばらくたってから、
「なに、火事じゃと!」
 庄屋さんがやっと起きて戸を開けると、はなれはもう、ほとんどやけてしまったあとでした。
 次の朝、庄屋さんはカンカンにおこって、きっちょむさんの家にやってきました。
「おまえはゆうべ、火事だというのに、なぜ、かみしもなどつけて、ゆっくりきた。しかも、あんなおとなしい知らせかただ。はなれを丸やけにしてしまったではないか。火事のときは、なにをさておいてもかけつけて、大きな声やもの音で、知らせねばだめだ!」
と、きつい文句をいいました。
「へい、次からは、そうしましょう。・・・けど庄屋さんは、いつも、『男はいざというときはおちついて、みなりもきちんとせよ』と、言っていたではありませんか」
「それも、ときとばあいじゃ! そのくらいのことをわきまえないで、どうする!」
 せっかく火事を知らせてあげたのに、きっちょむさんは、おもしろくありません。
 さて、それからいく日かたった、ばんのこと。
 きっちょむさんは、よなかにはねおきると、丸太をかついで、庄屋さんの屋敷にかけつけました。
 そして、丸太を力いっぱいふりあげて、
 ドンドン! ドンドン!
と、雨戸をたたいて大声でいいました。
「火事だ! 火事だ! 火事だー!」
 庄屋さんは、とびおきました。
 あま戸をあけると、きっちょむさんがいます。
「火事はどこだ! おいおい、そんなにたたくな。屋敷がこわれるではないか」
 すると、きっちょむさんは、丸太をほうりだして、
「ああ、くたびれた。どうです。本当に火事があったときには、今くらいの知らせ方で、いかがでしょうか?」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 歌舞伎の日
きょうの誕生花 → おうばい
きょうの誕生日 → 1950年 志村けん (タレント)

きょうの新作昔話 → 絵から抜け出した子馬
きょうの日本昔話 → 火事の知らせ方
きょうの世界昔話 → リスとマツの木
きょうの日本民話 → おぶさりてえ
きょうのイソップ童話 → クジャクとカラス
きょうの江戸小話 → 話半分

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2月19日の日本の昔話 ふたをとらず

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2月19日の日本の昔話

ふたをとらず

ふたをとらず

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん→詳細)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 ある日のこと。
 お金持ちの加平(かへい)さんがごちそうしましょうと、一休さんを家に呼びました。
 いってみると、おぜんにはたくさんのごちそうが並んでいます。
「いただきます」
と、一休さんがはしを持ったときです。
「そのおわんは、ふたを取らないで食べて下さい」
と、加平さんが言いました。
 一休さんはしかたなく、他のごちそうだけを食べていきました。
 でも加平さんは、そばによってきて、
「そのおわんには、ほんとうにおいしいお汁が入っています。ぜひ、めし上がって下さい」
と、しつこくいいます。
 すると一休さんが言いました。
「お汁が冷めてしまいました。おわんのふたを取らないで、あたたかい物と取りかえて下さい」
「・・・・・・」
 おわんのふたを取らずに、お汁を変えることは出来ません。
 加平さんは、
「いや、これはまいりました。うわさどおりのとんちの持ち主ですなあ」
と、言って、一休さんに頭を下げました。
 このことがみんなに知れわたり、一休さんのとんちは、ますます評判(ひょうばん)になりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → プロレスの日
きょうの誕生花 → すみれ
きょうの誕生日 → 1966年 薬丸裕英 (歌手)

きょうの新作昔話 → 白ギツネの恩返し
きょうの日本昔話 → ふたをとらず
きょうの世界昔話 → 月の夜の訪問者
きょうの日本民話 → トラのあぶら
きょうのイソップ童話 → 壁とくぎ
きょうの江戸小話 → なべや

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2月18日の日本の昔話 ネコの大カボチャ

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2月18日の日本の昔話

ネコの大カボチャ

ネコの大カボチャ

 むかしむかし、あるところに、ネコを飼(か)っている家がありました。
 ネコはすっかり年をとっていて、一日中、家の中でゴロゴロしています。
 ある日、その家のおかみさんが、カガミの前で化粧(けしょう)をしていたら、そこへネコが来て、
「まあ、きれい」
と、言いました。
「おせじでも、うれしいねえ。だれだい?」
 おかみさんがふり向いてみると、ネコしかいません。
「しゃべったのは、おまえかい? ・・・まさかね」
「はい、今日のおかみさん、ほんとにきれい」
「・・・!!!」
 そのとたん、おかみさんは部屋をとびだし、主人の部屋にかけこみました。
「たっ、たいへんだよ! うちのネコは化けネコだよ!」
「そんな、ばかな」
「なにがばかなもんか。化けネコでなくちゃ、ものを言うわけがない」
 おかみさんは、さっきのできごとをくわしく話しました。
 話を聞いているうちに、主人もだんだん恐ろしくなってきました。
「いまのうちになんとかしなくちゃ、おまえさんもわたしも食い殺されてしまうよ」
「そうだな。かわいそうだが、殺してしまおう」
 主人は庭(にわ)で寝ていたネコを、いきなり棒(ぼう)でなぐり殺し、その死がいをうらの畑にうめました。
「まよわず、成仏(じょうぶつ)してくれよ。なまんだぶ、なまんだぶ」
 一年間は、なにごともなくすぎました。
 その次の年、ネコをうめたところに、大きなカボチャがなりました。
 これまでに見たこともない大きなカボチャで、見るからにおいしそうです。
「これも、ネコを退治(たいじ)したおかげだ」
 主人は大喜びでカボチャをとり入れ、家中で食べました。
 ところが、カボチャを食べたとたん、みんな苦しみだして、まるでネコのようなうなり声をあげます。
 近所の人がおどろき、さっそく医者をつれてきてくれましたが、食あたりの薬を飲ませても、さっぱりききめがありません。
「カボチャを食べたぐらいで、こんなことになるとは、わけがわからん」
と、医者までもさじを投げだす始末。
「もしかしたら、なにかのたたりかもしれない」
 そこで、今度は占い師をよんできてみてもらったら、やっぱり、なにかのたたりのようです。
「近ごろ、生きものを殺したおぼえはないか?」
 占い師が、寝ている主人にたずねました。
「じつは一年前、ネコを殺して畑にうめました」
「原因はそれだ! ネコがうらんで、カボチャを食わせたのだ。ネコをうめたところを、もう一度掘りかえしてみよ」
 占い師に言われて、近所の人がカボチャのなっていた茎(くき)をとりはらい、根をほってみると、がい骨になったネコの口から、カボチャのくきが出ていました。
「やっぱり、占い師の言ったとおりだ」
 そこで、あらためてネコの墓をつくり、そこに骨を入れ、ねんごろにほうむってやりました。
 するとふしぎなことに、主人やおかみさんをはじめとして、カボチャを食べた者たちの病気がうそのようになおってしまったのです。
 それ以来、この家では、どこのネコであっても、家にやってくるネコを大事にあつかったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → エアーメールの日
きょうの誕生花 → たんぽぽ
きょうの誕生日 → 1961年 影山ヒロノブ (歌手)

きょうの新作昔話 → カワウソのいたずら
きょうの日本昔話 → ネコの大カボチャ
きょうの世界昔話 → 三人の軍医さん
きょうの日本民話 → 炭やき長者
きょうのイソップ童話 → 旅人とカラス
きょうの江戸小話 → 滝のぼり

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2月17日の日本の昔話 ハマグリ姫

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月17日の日本の昔話

ハマグリ姫

ハマグリ姫

 むかしむかし、若い漁師が、おかあさんとふたりで暮らしていました。
 漁師は、おかあさんを、とてもたいせつにしていました。
 ある日、いつものように小さい舟に乗って、さかなを取りに行きましたが、どうしたのか、一ぴきもつれません。
「これじゃ、おかあさんの晩ごはんに、あげるものがない。どうしよう?」
 ひとりごとをいっていると、つり糸の先に、何かかかりました。
 引きあげてみると、アメだまぐらいの、小さなハマグリでした。
 漁師はガッカリして、ハマグリを舟の中にほうりだしました。
 ところがふしぎなことに、ハマグリは、みるみる大きくなって、両手でもかかえきれないほどになったのです。
 しばらくすると、貝の中からキラキラと金色の光がさして、貝は二つに割れました。
 そして中から、きれいなお姫さまが現われたのです。
 漁師は、腰を抜かして、
「あ、あなたさまは、どなたです」
と、たずねました。
 すると、お姫さまは、
「わたしは、どこのだれか、じぶんでも知りません。どうぞ、あなたのおうちへお連れください」
と、悲しそうにいいました。
 漁師は気の毒に思って、お姫さまを家へ連れて帰りました。
 びんぼうな漁師の家に、天女(てんにょ→詳細)が現われたといううわさは、すぐに国じゅうへひろまりました。
 おおぜいの人が天女をおがみに来て、お米やあさのたばをあげていきました。
 お姫さまは、そのあさを糸につむいで、ビックリするほど美しい織物(おりもの)を織(お)りあげました。
 そして、
「これを都へ持って行って、三千両(二億円ほど)で売ってきてください」
と、漁師にいいました。
 漁師は都へ行って、一日じゅう、織物(おりもの)の買い手をさがしましたが、三千両というねだんを聞くと、だれもがあきれて買ってくれません。
 あきらめて帰りかけると、おおぜいのお供を連れた、りっぱなおじいさんが来ました。
 漁師は、そのおじいさんに織物を見せました。
「これは、めずらしい織物だ。ねだんはいくらだ」
「その、三千両でございます」
「それは安い! 買ってやるから、やしきまで持ってきなさい」
 おじいさんは漁師をりっぱなご殿へ連れて行って、ごちそうをしたり、おどりを見せたりして、もてなしました。
 それがすむと、けらいにいいつけて、三千両のお金を漁師の家にとどけさせました。
 漁師が帰ってみると、お金はちゃんととどいていました。
 お姫さまは、
「織物が売れて、よろしゅうございましたね。それではこれで、おわかれいたします。おしあわせに」
と、いいました。
 漁師とおかあさんはビックリして、
「まあ、これから三人で、楽しく暮らそうと思っていましたのに」
と、いっしょうけんめいに、引きとめました。
「では、ほんとうのことをもうしましょう。わたしは、観音様(かんのんさま)のお使いで、おかあさんをたいせつにしているあなたを、助けるために来たのです。もう、用事もすみましたから帰ります。しあわせにお暮らしなさい」
 お姫さまはそういって、空にまいあがっていきました。
 漁師はみんなから、しんせつなお金持ちとうやまわれて、おかあさんとしあわせに暮らしたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ツタンカーメン王墓発掘の日
きょうの誕生花 → しゅろちく
きょうの誕生日 → 1963年 マイケル・ジョーダン (バスケットボール)

きょうの新作昔話 → ぼっけもんの大蛇退治
きょうの日本昔話 → ハマグリ姫
きょうの世界昔話 → はたらくことをおぼえた人間
きょうの日本民話 → ウナギ釣り
きょうのイソップ童話 → ネズミの会議
きょうの江戸小話 → 水、おのぞみしだい

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2月16日の日本の昔話 もちのまと

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月16日の日本の昔話

もちのまと

もちのまと

 むかしむかし、田野(たの)というところの、いなかの人たちは、その年も、去年も、おととしも、お米がよく取れたので、みんなが大喜びでした。
 そこは、お米を作るのに、たいへんよい土地だったのでしょう。
 日でりといって、すこしも雨が降らないで、田に水がなくなったら、稲(いね)はうまく育ちません。
 反対に、長い雨が降りつづいても、稲は、うまくみのりません。
 お米づくりは、なかなかやっかいな仕事なのです。
 ところが、田野の人びとは、あんまりお米が取れるので、だんだんお米のありがたいことを忘れてしまうようになってきました。
「取れたお米で、お酒をつくって飲もう」
 ひとりがいうと、
「お米でもちをついて、腹いっぱい食べよう」
 ほかのひとりは、そんなふうにいいます。
 そのうちに、めいめいが、じぶんの家で食べたり、飲んだりしているだけではつまらなくなりました。
 そこで近所の人がおおぜい集まって、みんなでごちそうを食べたり、お酒を飲んだりするようになりました。
 お酒を飲むと、みんなは、ばかにうれしくなって、
「それっ、歌をうたえ」
「それ、おどりをおどれ」
 みんなはいい気になって、なん日もなん日も遊びくらしていました。
 ある日、若い男たちが何人か集まったときに、その中のひとりが、
「どうだ、ここにかがみもちがある。このもちをまとにして、だれがいちばん、じょうずに矢をまとにあてることができるか、そのうでくらべをしてみようではないか」
 そういって、大きな丸いもちを見せました。
「へえ、もちのまとか。これは、見たことも聞いたこともない話だ。おもしろい。さっそくやるとしよう」
 若い男たちは、ワイワイいいながら、かがみもちにひもをつけて、庭さきの木の枝につりさげました。
「さあ、だれからでもよい。やってみろ!」
 みんなが見ていると、ひとりの男が弓に矢をつがえ、もちのまとを目がけて、ヒュッ! とはなちました。
 すると、もちに矢が当たったとたんに、
「ああっ!」
 ふしぎなことに、もちはまっ白い鳥になって、南の空をめざし、遠く遠く飛んでいってしまいました。
 あとには、木の枝からつりさがったひもだけが、フワリフワリと、風にゆれているばかりです。
 これからあと、この田野というところは、すこしもお米が取れなくなって、びんぼうになってしまったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 天気図記念日
きょうの誕生花 → ふきのとう
きょうの誕生日 → 1975年 相川七瀬 (歌手)

きょうの新作昔話 → 二月の桜
きょうの日本昔話 → もちのまと
きょうの世界昔話 → 赤い靴
きょうの日本民話 → 丸岡城の人柱
きょうのイソップ童話 → ライオンとヒツジ飼い
きょうの江戸小話 → 井戸ほり

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2月15日の日本の昔話 ネズミのよめいり

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2月15日の日本の昔話

ネズミのよめいり

ネズミのよめいり

♪ 朗読再生

 むかしむかし、ネズミの一家がいました。
 父さんネズミと母さんネズミと一人娘のチューコです。
「ねえ、おとうさん。そろそろチューコにも、おむこさんを見つけなくてはなりませんね」
「そうだな、チューコは世界一の娘だから、世界一のおむこさんを見つけてやらないとな。ところで、世界一強いのは、やっぱりお日様だろうな」
 父さんネズミと母さんネズミは、お日様のところへ行って頼んでみました。
「世界一強いお日様。チューコをお嫁にもらってくれませんか?」
「そりゃうれしいが、雲はわしより強いぞ。わしをかくしてしまうからな」
 そこで、父さんネズミと母さんネズミは、雲のところへ行ってみました。
「世界一強い雲さん。チューコをお嫁にもらってくれませんか?」
「そりゃうれしいが、風はわしより強いぞ。わしを簡単にふきとばしてしまうからな」
 そこで、父さんネズミと母さんネズミは、風のところへ行ってみました。
「世界一強い風さん、チューコをお嫁にもらってくれませんか?」
「そりゃうれしいが、壁はわしより強いぞ。わしがいくら吹いても、わしをはね返してしまうんじゃ」
 そこで、父さんネズミと母さんネズミは、壁のところへ行ってみました。
「世界一強い壁さん。チューコをお嫁にもらってくれませんか?」
「そりゃうれしいが、わしよりも強いものがいるぞ。それはネズミじゃ。ネズミにかじられたら、わしもおしまいだからな」
「なんと、世界で一番強いのは、わしらネズミだったのか」
 そこでチューコは、めでたくネズミのお嫁さんになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → お菓子の日
きょうの誕生花 → ひなぎく(デージー)
きょうの誕生日 → 1967年 堀ちえみ (歌手)

きょうの新作昔話 → 冬の竹の子
きょうの日本昔話 → ネズミのよめいり
きょうの世界昔話 → 魔法のボウシ
きょうの日本民話 → 寝太郎物語
きょうのイソップ童話 → 毛をかられるヒツジ
きょうの江戸小話 → 新しい

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2月14日の日本の昔話 よくわかる説教

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月14日の日本の昔話

よくわかる説教

よくわかる説教

 むかしむかし、ある坊さんが、いつも町の集まりにでかけては、ためになる話をしていましたが、みんな無駄口(むだぐち→おしゃべり)をたたいたりで、なかなか熱心には聞いてくれません。
 なんとか話をちゃんと聞かせたいと、考えた坊さんは、次の説教(せっきょう→詳細)の日、坊さんはみなの衆に向かって、
「さあ、これから私がみなさんに何をお話しするか、わかるかのう?」
と、聞きました。
「そらあ、わからねえなあ」
と、みんなが口をそろえていいます。
「そうか、わからぬか。わからぬ話をしてもしょうがないから、今日はやめにするか」
 こう言って、そそくさと帰ってしまいました。
 このまた次の説教の日、坊さんは前と同じことを聞くと、今度は帰られては困るので、
「はい、よくわかってまさあ」
と、言いましたが、ところが坊さんは、
「ほお、わかっておるのか。大したものだ。それなら説明することもあるまい、今日はこれまで」
と、またまた帰ってしまいました。
 みなの衆はこまりはて、次の説教の日を待ちました。
 さて次の説教の日、坊さんは今度も同じことを聞くと、
「知っている者と、知らん者がおりやす」
 すると、坊さんは喜んで、
「ほんにありがたいことじゃ。それなら知っておる者が、知らない者に教えておくれ」
 そしてやっぱり、出て行ってしまいました。
 みなの衆は、どうしたもんかと相談して、
「これはきっと、わしらがまじめに説教を聞かんから、坊さまが怒りなさったに違えねえ。みなであやまりに行くべ」
と、寺まで行って説教を続けてくれるよう、たのんだそうです。
 次の集まりからは、みながじっくり話を聞くようになったので、坊さんも、いっそう熱心に説教をしました。
 人の話は、ちょんと聞かなくてはいけません。
 話を聞かないと、その人はこの坊さんのように、話してくれなくなりますよ。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バレンタインデー
きょうの誕生花 → シネラリア
きょうの誕生日 → 1971年 酒井法子 (歌手)

きょうの新作昔話 → 犬のお使い
きょうの日本昔話 → よくわかる説教
きょうの世界昔話 → マメ子と魔物
きょうの日本民話 → お銀と小金物語
きょうのイソップ童話 → 金持ちと皮なめし屋
きょうの江戸小話 → さぞおりこうで

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2月13日の日本の昔話 とろかし草

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月13日の日本の昔話

とろかし草

とろかし草

 むかしむかし、あるところに、清兵衛(きよべえ)というきこりがおりました。
 ある日のこと、清兵衛が木を切っておると、
「助けてくれ~っ!」
と、いうさけび声が聞こえてきました。
 首をのばしてみると、うわばみ(→大蛇)が、一人の旅人を追いかけているところでした。
 清兵衛は、大あわてでそばの木によじのぼります。
 そして木の上から見ていると、旅人は清兵衛の目の前で、うわばみにパクリと飲みこまれてしまいました。
 うわばみのはらは、大きくポッコリとふくれあがります。
 そのうち、うわばみは草むらの中にあった黄色い草を食べはじめました。
 すると、ポッコリふくれあがったはらが、スーッと細くなったのです。
「なんじゃ。あの草は、食べたものをとろかすんだな」
 うわばみがいなくなると、清兵衛は草むらの中をさがしまわって、うわばみが食べていた草をさがしました。
 そして、その草を見つけると、ひとつかみぬいてふところに入れ、いちもくさんににげ帰りました。
 村へ帰ると、清兵衛はうわばみのことを話しました。
 だけど、あの草のことは、だれにも話しませんでした。
 つぎの日、命びろいのおいわいをしようということになって、みんなは清兵衛の家に集まったのです。
 おいわいといっても、山の村のことで、たいしたごちそうはありません。
 手打ちソバをさかなに、酒を飲むだけです。
 そのうち、村一番の長者(ちょうじゃ→詳細)といわれる男が、こんなことをいいだしました。
「どうじゃ、山もりにもったソバを、つづけて五はい食えるもんがおったら、田畑一反(土地の単位で、約300坪)、やってもええ」
 村人たちはわらいだしました。
「長者どん、そりゃむりじゃよ。うわばみじゃあるめえし。ハハハハハ・・・」
 ところが、清兵衛がなのり出ました。
「よし、わしがやっちゃるわい!」
「清兵衛どん、いくらなんでも、そりゃむりだ。いくらおまえが大のソバずきでもよ」
 清兵衛は、まわりのものが止めるのも聞かず、ソバを食べはじめました。
「え~い、めんどくさい」
 清兵衛は、ソバにつゆをかけ、大きなどんぶりでガツガツ食べます。
「へえ、なかなかたいしたもんじゃねえか。あれはソバを食ってんじゃねえ。ソバのほうから口の中へ入ってるんだ。おいらたちではああはいかねえ」
 清兵衛は、一ぱい、二はい、三ばいまではなんとか食べましたが、四はいめからは、どうしても食べられません。
 おもしろがって見ていた村人たちも、清兵衛のようすがおかしいのに気がつきました。
「清兵衛どん、どうした。だいじょうぶか? だいぶ苦しそうだが」
「はあ、はあ、はあ」
「清兵衛どん、もうやめろよ。むりだよ」
 村人たちが止めても、清兵衛は、意地でもやめません。
「こうなったら命がけじゃあ」
「命がけなんて、おだやかじゃねえ」
 みんなは心配しましたが、清兵衛は大きなおなかをかかえて立ちあがると、
「ちょっくら、便所へいってくるけん」
 清兵衛は、便所の中に入ると、ふところからなにやらとり出しました。
 それは、あのうわばみが食べていた黄色い草でした。
 それから、いくら待っても清兵衛は便所から出てきません。
「お~い、いつまで入っとるんじゃ」
 村人たちは、ドンドン、ドンドンと、便所の戸をたたきます。
 便所の中でたおれているんじゃないかと、みんなは心配になってきました。
「清兵衛どん! 清兵衛どん!」
 いくらよんでも返事がないので、とうとう戸をぶちやぶって便所の中へ入ってみると、
 なんとまあ! 便所の中には清兵衛のすがたはありません。
 ようく見ると、清兵衛の着ていた着物だけがのこっていました。
 あの草は、食べたものをとかす草ではなく、人間をとかす草だったのです

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 銀行強盗の日
きょうの誕生花 → ローダンセ
きょうの誕生日 → 1965年 南原清隆 (タレント)

きょうの新作昔話 → 和田の竜
きょうの日本昔話 → とろかし草
きょうの世界昔話 → イブのいろんな子どもたち
きょうの日本民話 → ネコの置物を売る店
きょうのイソップ童話 → お百姓と、こごえたヘビ
きょうの江戸小話 → 用心

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2月12日の日本の昔話 金の持ち主

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2月12日の日本の昔話

金の持ち主

金の持ち主

 ある日、庄屋(しょうや)さんが道を歩いていると、大きな袋が落ちていました。
 中を見ると、小銭がザクザクと入っています。
 ざっと見ただけでも、二千枚はありそうです。
「これは、えらい落とし物だ。落とし主は、泣いとるじゃろう」
と、庄屋さんは家に持って帰り、村に知らせの者をやりました。
 すると、さっそく現れたのが、吾助(ごすけ)と兵六(ひょうろく)です。
 二人とも
「おらのだ」
「いや、おらのだ」
と、言うのです。
 袋を隠して、二人の前に出た庄屋さんは、
「落としたお金のことを、くわしく話しておくれ」
と、言いました。
 するとまずは、吾助が、
「へえ、あのお金はおらが貧しい中から一文、二文と、つぼにコツコツ貯めた物だ。だども、おっかあが病気になったで、町へ医者さ呼びに行くのに、袋に入れて持って行く途中だったべ」
 これを聞いていた兵六が、
「うそをつけ! この盗っ人(ぬすっと→どろぼう)が。あれはおらがつぼに貯めた金だ。一生懸命に貯めたが、今日、つぼを見ると空っぽになってた。きっとこいつが盗んで袋に入れて行こうとしたにちがいねえ、庄屋さん、こいつはとんでもねえやつでごぜえます。第一、こんな貧乏人に金が貯められるわけねえ」
 二人の話を聞いた庄屋さんは、
「そうか。ところで吾助に兵六。なくしたお金は何枚ぐらいじゃった?」
「それが、数えた事がねえから・・・。だども、つぼの首まではあっただ」
「おらもはっきりとは。だども、きっちりつぼの首のところまで貯まっただ」
 二人とも、ちゃんとは答えられません。
 そこで庄屋さんは、
「わしが見たところ、千枚はあったが。そんじゃひとつ、お前さん方のつぼに入れてきっちり首まで入った方が本当の持ち主ということになるな。よし、二人とも、つぼを取りに帰っておいで」
 二人はさっそく家に帰り、めいめい、つぼをかかえて戻ってきました。
 ところが吾助のつぼは、何とも大きなつぼです。
「庄屋どん、吾助のやつは欲深じゃて。あんなにでっけえ、つぼさ持ってきて」
と、得意そうに差し出した兵六のつぼへ、庄屋さんはお金をザラザラッと入れますと、たちまちお金はあふれて、ザクザクと畳の上へ落ちました。
 青くなる兵六に庄屋さんは、
「兵六、金は首のところまで貯まっていたのでは、なかったかのう?」
 続いて吾助のつぼに入れかえると、ピッタリ首のところまで入りました。
「このお金は吾助の物じゃ。お金は本当は二干枚あったんじゃが、千枚と言うたら、うそをついておる者が千枚くらい入るつぼを探して持ってくるじゃろうと思うたんじゃ。こら兵六、悪い事はもう二度とするでないぞ。それから吾助、こんな大事な物、もう落とさんように気をつけるのじゃぞ」
 こうしてお金は無事に、持ち主の吾助のところにもどりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ブラジャーの日
きょうの誕生花 → ねこやなぎ
きょうの誕生日 → 1979年 上原あやか (タレント)

きょうの新作昔話 → 生まれかわった赤ちゃん
きょうの日本昔話 → 金の持ち主
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2月11日の日本の昔話 笛の名人

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2月11日の日本の昔話

笛の名人

笛の名人

 むかしむかし、京の都に、源博雅(みなもとのひろまさ)という、たいそう笛のじようずな人がいました。
 そのころ都には、五人も十人もで押しかける、集団のどろぼうがいて、人びとは大変困っていました。
 ある晩、博雅(ひろまさ)のやしきにも、このどろぼうが押し入りました。
 手に手に、弓や、なぎなたを持っています。
 どれもこわい顔をした、らんぼうそうな、どろぼうたちです。
 召し使いたちはおどろいて、みんな、思い思いのところへ逃げたり、かくれたりしました。
 博雅もえんの下にかくれて、ジッとしていました。
 やがて、どろぼうたちは品物やお金を取って出ていきました。
 足音も聞こえなくなって、静かになると、
「もう、行ってしまったらしい。出ても、だいじょうぶだろう」
と、博雅は、えんの下からはいだしました。
 召し使いたちも出てきました。
 家の中を見て、みんなビックリ、なにもありません。
「やあ、よく取っていったものだ。こわれたなべのふたまでない」
 博雅は、あきれてしまいました。
 ざしきをあちらこちら、歩いてみますと、置き戸だなが一つ残されてありました。
「どうせ、中の物は持っていってしまったのだろう」
 それでもあけてみると、笛が一本入っていました。
「これはありがたい。よいものを残していってくれた」
 博雅はうれしくて、笛を取ってそこにすわると、静かに吹きはじめました。
 なんと、美しい笛の音でしよう。
 高く、低く、暗い外へ流れていきました。
 博雅の家から引きあげたどろぼうたちは、夜ふけの都を歩いていましたが、
「いい笛の音だなあ」
と、先頭にいたどろぼうのかしらが、ふと足をとめました。
「ほんとうに、いい音色だ」
「いい音色だなあ」
 みんな耳をすませて、ウットリとして聞き入りました。
 聞いているうちに、かしらはじぶんがどろぼうをしてきたことが、恥ずかしくてたまらなくなりました。
 よい音楽を聞いて、心がきよらかになったのです。
「おい、みんな、引きかえそう。取ってきたものをかえすのだ」
 かしらの言葉に、手下たちもうなずきました。
 博雅は、どろぼうたちが引きかえしてきたので、おどろいて笛を吹くのをやめました。
 かしらは、博雅の前に両手をついて、
「あなたの笛の音を聞いているうちに、どろぼうがいやになりました。これからは、よい人間になります。取ったものはおかえしします。どうか、お許しください」
と、いって、あやまりました。
 手下たちも、そろって頭をさげました。
 そして、荷物を置くと、かしらをはじめみんなは、どこかへ逃げていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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2月10日の日本の昔話 盗っ人小僧

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2月10日の日本の昔話

盗っ人小僧

盗っ人小僧

 むかしむかし、彦一(ひこいち→詳細)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 あるとき、殿さまのおつかいで、船に乗って遠くの島に行くことになりました。
 船はどんどん沖に出て、今夜は船で寝ることになりました。
(さて、そろそろ寝るとするか)
と、思ったそのとき。
「かいぞくだー!」
と、言うさけび声がしました。
 海を見ると、かいぞく船が、もうまぢかにせまっています。
 お客は持っている金や大切なものを、どこにかくすかまよって、上を下への大さわぎです。
 船は大ゆれにゆれるし、このままでは、かいぞくにおそわれる前に、船がひっくり返ってしまいそうです。
 そこで、彦一は台の上にのって、大きな声で言いました。
「みんな、落ちついて。お金は少しだけ自分のふところに入れて、あとは全部おらにあずけてくんろ。かいぞくが来ても、お金はおらがちゃんと守るで」
 どうせこのままでは、かいぞくに有り金ぜんぶ取られてしまいます。
 お客たちはワラにもすがる思いで、彦一にお金をあずけました。
 彦一はお金を少しずつ袋(ふくろ)に分け、見ただけではわからないように、着物のあちこちにかくしました。
 そして、お客にたのんで、柱に体をグルグル巻きにしばりつけてもらいます。
 それからしばらくして、船に乗り込んできたかいぞくの親分(おやぶん)は、お客から財布(さいふ)を取り上げにかかりましたが、柱にしばられた彦一に気づいて声をかけました。
「小僧! そのざまはどうした?」
 彦一はうそ泣きをして、目に涙をうかべると。
「かんにんしてくだせえ。おら、みなし子で腹がへってたまらねえから、船にしのび込んで客の財布さ、ぬすもうとしただ。だども一文も取らねえうちに、つかまってしもうただ」
「ふん。小僧のぶんざいで金をとるとは、大したやつだ。けども、おめえも運が悪いのう。この船の客はみんなびんぼう人ばかりじゃ。今度コソ泥に入るときは、もっと金持ちをねらえよ」
 親分はそう言いながら、手下とともに自分の船にもどって行きました。
 お客は命びろいをした上に、お金も少し取られただけですんだので、かしこい彦一にたいへん感謝(かんしゃ)したということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1944年 高橋英樹 (俳優)

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2月9日の日本の昔話 もち屋の禅問答

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2月9日の日本の昔話

もち屋の禅問答

もち屋の禅問答

 むかしむかし、あるところに、とても大きなお寺がありました。
 寺はとても立派ですが、困ったことに、この寺の和尚(おしょう)ときたら、勉強が嫌いな上に、物知らずです。
 さて、ある日のこと、一人の旅の坊さんがやってきて、
「それがし、禅問答(ぜんもんどう)をいたそうとぞんじて、まかりこしたが、寺の和尚どのはおられるかな」
と、ちょうど玄関の掃除をしていた、この寺の和尚さんにたずねたのです。
 さあ、問答と聞いて、和尚さんはビックリしました。
 相手は仁王(におう)さまのような大男。
 しかも、あちこちの寺をまわり歩いては問答をしかけ、一度も負けたことはござらぬという顔です。
(こりゃあ、どえらいことになったわい。いったい、どうしたもんじゃろう。・・・そうじゃ。もち屋の六助(ろくすけ)がよい)
と、思いつき、ともかく、旅の僧を本堂に案内して、
「和尚さまは、ただいま、お留守にございますが、近くにまいっておられますので、さっそくよんでまいりましょう」
 言い終わると、ころげるように、もち屋の六助の家へ行きました。
「六助どの。たったいま、これこれ、しかじか。ぜひ、わしの身代わりになって、問答をやってくだされ」
と、両手をあわせて、たのみました。
 日頃から、信心(しんじん→神仏を思う気持ち)ぶかいもち屋の六助は、
「へえ、和尚さまのおためなら」
と、引き受けました。
 六助は和尚さんの部屋で着替えると、しずしずと本堂に入って、旅の僧と向かい合いました。
 和尚さんが隠れて様子を見ていると、さっそく、もち屋と旅の僧の問答が始まりました。
「白扇(はくせん)さかしまにかかる東海(とうかい)の天」
 旅の坊さんが口を開きました。
 雪をいただいた富士山(ふじさん)が、白い扇(おおぎ)を、さかさまにかけたように、海にうつっているが、そのながめはいかに?
と、聞いたのですが、わけのわからないもち屋の六助は、うんともすんともいいません。
 すると旅の僧が、
「和尚どのは、無言(むごん)の行(ぎょう)でおわすか?」
と、聞きました。
 六助は、それにも答えません。
 二人の間で、無言の行がはじまりました。
 しばらくして旅の僧が、右手を上げて、人差し指と親指とで、小さな輪をつくれば、六助はそれを見て、両手を上げて大きな輪(わ)をつくりました。
 すると旅の僧は、おそれいったという様子で、ていねいに頭をさげます。
 そして今度は、人差し指を一本、突き出して見せました。
 六助はすばやく、五本の指をパッと開きます。
 旅の僧は、また、ていねいに頭をさげました。
 今度は三本の指を、高く差し上げました。
 するとそれを見た六助は、アカンベエをしたのです。
 それを見た旅の僧は、あわてて両手をついて、
「ははーっ」
と、頭をたたみにすりつけると、逃げるようにして寺から出ていきました。
 和尚さんは、ホッと胸をなでおろしました。
 それにしても、今の問答は、なんともわけがわかりません。
 そこで和尚は、小僧をよんで、
「お前、いまの僧がとまっておる宿(やど)ヘ行って、わけを聞いてこい」
と、いいつけました。
 宿にやってきた寺の小僧さんを前にして、旅の僧は冷や汗をふきながらいいました。
「いやはや、わしも天下の寺でらを歩いて、問答をいたしたが、今日ほど、えらいめにおうたことはない。
 まずわしが、このように輪をつくって、
『太陽は、いかに?』
と、問いかけたのじゃ。
 すると和尚どのは、
『世界を照らす!』
と、大きな輪をつくって見せてくだされた。
 次に、
『仏法は、いかに?』
と、人差し指を差し出すと、パッと五本の指を出されて、
『五界を照らす!』
と、答えなさる。
 負けてはならじと、三本の指を出して、
『三仏身(さんぶつしん)は、これいかに?』
と、問いもうした。
 すると和尚どのは、『目の下にあり』と、答えなされたのじゃ」
 そこまでいうと旅の僧は、しみじみと小僧さんの顔を見て、
「お前さんはまだ年が若いで知るまいが、
 三仏身とは、すなわち法身(ほっしん)・報身(ほうしん)・応身(おうしん)のご三体で、ほっしんとは宇宙の法理であって、光明かがやく仏さま。
 ほうしんとは、世のもろもろの悪を清め、われわれ人間はじめすべての生物をお救いなさる阿弥陀如来(あみだにょらい)さま。
 おうしんとは、ときに応じて、われわれをみちびくために現れなさるお方、いわばお釈迦(しゃか)さまじゃ。
 このもったいないお三方が、和尚どのの目下にあるとは、ああ、なんと、なんと」
 旅の僧は涙ぐんで、小僧さんの前に手をつくと、
「まことに、まことに、あのようなお方にお目にかかるばかりか、問答などをいたしまして、いやはや、面目(めんもく)しだいもございませぬ」
と、わびるようにいいました。
 小僧さんは、
(ヒェー! あのもち屋の六助さんが)
と、ビックリして寺ヘ帰ってきました。
 すると、これはまたどうしたことか、六助さんは和尚さんを前にして、カンカンに怒っています。
 小僧は、六助さんの前に手をついて、ていねいに、
「もし、もし。六助さま。いったい、どうなさいました?」
と、たずねると、もち屋の六助は、
「なさいましたも、クソも、ないもんだ。えーい、わしゃ、この年までいろんな人におうてきたが、今日の坊主ほど、ずうずうしいやつにおうたことはないわい」
「・・・?」
「あのクソ坊主め。手まねで小さな輪をつくって、
『おまえのもちは、これくらいか?』
と、聞きおった。
 わしは、腹がたってこんちくしょうとばかり、両手で、でっかいやつをつくって見せたわい。
 すると今度は、人差し指を差し出して、
『それはいくらか?』
と、聞く。
 わしが、
『五厘じゃ!』
と、五本の指を出せば、坊主め、三本の指を出しおって、
『三厘にまけろ』
と、ぬかしおった。
 あんまり腹がたったもんで、わしゃ、アカンベエをしてやったわい」
と、いったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ふくの日
きょうの誕生花 → ストック
きょうの誕生日 → 1951年 あだち充 (漫画家)

きょうの新作昔話 → お経をよむ木仏
きょうの日本昔話 → もち屋の禅問答
きょうの世界昔話 → バナナの皮
きょうの日本民話 → わがままな星神さま
きょうのイソップ童話 → 石を引き上げた漁師
きょうの江戸小話 → おまけ

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2月8日の日本の昔話 ウグイス長者

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2月8日の日本の昔話

ウグイス長者

ウグイス長者(ちょうじゃ→詳細)

 むかしむかし、さむい冬空の下を、トボトボと歩いていく、一人の男がおりました。
 男の商売は茶売りで、ほかにこまごまとした品物もあきなっています。
 この日は、どういうわけか、さっぱり売れません。
 さびしい山道を歩いているうちに、男は、いつのまにやら竹やぶの中にいました。
「どうやら、道にまよってしもうたらしい」
 うす暗い竹やぶをぬけると、みょうに明るい場所へとでました。
 庭には、ちらほらとウメのかおりがただよっています。
 男はウメの花に顔を近づけました。
「ほう、よいにおいじゃあ」
 すると、とつぜん女のわらい声がしました。
 なんと、美しい娘が四人、ウメの木のかげからあらわれたのでした。
 男は娘たちのあんないで、娘たちの家へとつれていかれました。
 すると、もう一人女の人が出てきて。
「わたしは、娘たちの母親です。どうぞ今夜はゆっくりと、とまっていってくださいませ」
 そういって、男の持っている品物を、みんな買ってくれたのです。
 つぎの日、母親はあらためて男にいいました。
「ここは、女だけの家ですから、どうぞゆっくりしていってくださいませ。それに、娘が四人おりますから、だれぞのむこになってくださいませ」
 なにやら、夢のような話です。
 こうして、男は長女のむことなりました。
 やがて冬もおわり、あたたかな春がやってきました。
 母親が男にいいました。
「きょうは日よりがいいので、娘たちをつれてお花見にいってきます。すみませんがおるす番をおねがいします。たいくつでしたら、うちのくらでも見ていてください。でも、四つめのくらは、けっして開けてはいけませんよ」
 女たちの出かけた後、男はなにもすることがなくて、ただボンヤリしていましたが、
「そうじゃ、くらの中でも見てみるか」
 男はまず、一番目のくらの戸を開けてみました。
 すると、
 ザザーッ。
 波が男の足もとにおしよせます。
 まぶしい青空と、白い入道雲。
 そこには、真夏のけしきが広がっていました。
「海か、気持ちいいのう」
 それから男は、二番目のくらへうつりました。
 そこは、美しい秋の山でした。
 赤や黄色に色づいた木々、大きなカキの木と、まっ赤にうれたカキの実。
「モミジにカキとは、風流(ふうりゅう)じゃのう」
 男は三番目のくらへいきました。
 戸を開けてみれば、そこは一面の雪げしきです。
「うー、寒い、寒い」
 男は、寒そうに身をふるわせて、三番目のくらを出てきました。
 そして、とうとう四番目のくらへとやってきたのです。
 戸を開けようとした男は、母親が出がけにいったことばを、ハッと思い出しました。
「四つめのくらは、開けてはいけませんよ」
 開けてはいけないといわれると、よけいに見たくなります。
「なにか、とくべつなものでもあるのかな? ・・・ちょっとだけ」
 男はがまんしきれず、四番目のくらの戸を開けました。
「ほう、これは見事だ」
 そこは、のどかな春のけしきでした。
 サラサラと流れる小川のほとりに花がさき、ウメの木には、ウグイスが飛びかっています。
「ホーホケキョ、ホーホケキョ」
 ウグイスが、美しい声で鳴きました。
「ウグイスじゃあ、きれいじゃなあ」
 でも、ウグイスたちは男のすがたを見ると、ピタッと鳴くのをやめて、どこかへとんでいってしまいました。
 男がおどろいていると、まわりのけしきがスーっと消え、美しい庭は、いつのまにか草やぶにかわり、男はそのまん中で、ポツンと立っていたのです。
 そこへ、どこからともなく、母親の声がきこえてきました。
「あなたは、やくそくをやぶって、四番目のくらを開けましたね。わたしたちは、ここにすむウグイスです。きょうは日よりがいいので、みんな、もとのすがたにもどって遊んでいたのです。そのすがたを見られたからには、もう、いっしょにくらすことはできません」
 男はしかたなく、トボトボと一人で山をおりていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 針供養
きょうの誕生花 → きんせんか
きょうの誕生日 → 1924年 久米明 (俳優)

きょうの新作昔話 → 八百比丘尼(やおびくに・はっぴゃくびくに)
きょうの日本昔話 → ウグイス長者
きょうの世界昔話 → 十二人の狩人
きょうの日本民話 → ヘビになったマメのサヤ
きょうのイソップ童話 → ヘビになったマメのサヤ
きょうの江戸小話 → まぬけな文吉

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2月7日の日本の昔話 徳政じゃ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月7日の日本の昔話

徳政じゃ

徳政じゃ

 むかしむかし、京の町に、大きな宿(やど)屋がありました。
 いつも、旅の人が大勢とまっていて、とてもにぎやかでした。
 ところで、この宿屋の亭主は、いったいどこで耳に入れたのか、近いうちに徳政令(とくせいれい→借金を帳消しにするおふれ)のあることがわかったので、心の中でニヤリと笑いました。
(こいつで、タンマリと、もうけてやろう)
 亭主は、ひと部屋ひと部屋まわり歩いて、とまり客の持ち物を見せてもらいました。
「ほう、このわきざし(→)は、けっこうなお品で。じっくりと拝見(はいけん)いたしとうございますが、しばらくお貸しくださるまいか」
「この大きな包は何でござりましょう。ほほう、立派な反物(たんもの→着物のきじ)がこんなにもドッサリ。実は、娘や女房に買うてやりたいとぞんじますので、ちょいと、拝借を」
と、いう具合に、客の持ち物を、次から次と借りていきました。
 客たちは亭主のたくらみなどは、夢にも知りませんので、
「お役にたてば、お安いこと」
「さあさあ、どうぞ」
と、気楽に何でも貸してくれました。
 こうして、どの部屋からも目ぼしいものを借りまわったおかげで、主人の部屋には、客の品が山のようにたまりました。
 さて、二、三日すると、思ったとおり、おかみのおふれが出ました。
 役人がほら貝をふきたて、鐘を打ちならして、
「徳政じゃあー。徳政じゃ」
と、町をわめき歩きます。
 町のあちこちに、徳政の立礼(たてふだ)がたちました。
 そこで宿の亭主は、してやったりと、広間に客を集めてこういいました。
「さてさて、困った事になりもうした。この徳政と申すは、かたじけなくも、おかみからのおふれでございます。このおふれのおもむきは、天下の貸し借りをなくし、銭・金・品物などによらず、借りた物はみな、借り主にくだされます。さようなわけで、皆さまからお借りした品々は、ただいまから、わたくしの物になったわけでございます」
と、いかにも、もっともらしくいいました。
 さあ、これを聞いた客はびっくりです。
 たがいに目を見合わせて、とほうにくれ、中には泣き出す者もいて、たいへんな騒ぎです。
 けれど、
「返してほしい!」
と、どんなに頼んでも、亭主は、
「なにぶん、このおふれは、わたくしかってのものではござりませぬ。天下のおふれ、おかみからのご命令。借りた物はみな、わたくしの物でございます」
と、いっこうに聞き入れません。
 こうなっては、客たちも大事な物を亭主に貸したことをなげくばかりです。
 ところが客の中に、頭の切れる男かおりました。
 男はつかつかと亭主の前に進み出ると、こういいました。
「なるほど、天下のおふれとあれば、そむくことはなりますまい。そちらヘお貸しもうした物は、どうぞ、お受け取りくださるように」
 この言葉に、ほかの客たちがあきれていると、男は続けて、
「ただ、こうしたおふれが出まして、あなたさまには、まことにお気の毒ではござります。だが、それもいたしかたのないこと。わたくしどもは、こうして、あなたさまのお宿をお借りしましたが、おもいもかけず、このたびの徳政。いまさらこの家をお返しすることも出来ぬことになりました。どうぞ、妻子(さいし→おくさんと子ども)、めし使い一同をお連れになって、いますぐこの家からおたちのきくださるよう」
と、おごそかな声でいいました。
 さあ、今度は亭主の方がびっくりです。
「なんだと! この宿は、むかしからわしらの持ち物。いまさら人手に渡すことはならぬ。ならぬわい!」
と、まっ赤になってどなったのです。
「いやいや。ご亭主。あなたさまが、先ほどいわれたとおり、おふれはおふれ。この家はお借りもうした、わたくしどもの物です」
「そ、そんなむちゃな」
 宿の亭主は怒って、奉行所(ぶぎょうしょ→今でいう、裁判所)にうったえ出ました。
 すると、お奉行(ぶぎょう→裁判官)は、まじめくさった顔で、宿の亭主に、
「お前のいい分は通らぬぞ。借りた物は、借り主にくださるが徳政。お前は、妻子、めし使い一同をつれて、家からたちのくがよい」
と、いいわたしました。
 宿屋を借りていたお客たちは、荷物こそは宿屋の亭主に取られましたが、宿屋を手に入れて、しあわせに暮らすことができました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 北方領土の日
きょうの誕生花 → おたふくなんてん
きょうの誕生日 → 1949年 柳井正 (ユニクロ社長)

きょうの新作昔話 → 金魚に取りつかれた若者
きょうの日本昔話 → 徳政じゃ
きょうの世界昔話 → ふしぎな玉
きょうの日本民話 → あの世への迎え
きょうのイソップ童話 → マムシとミズヘビ
きょうの江戸小話 → かけ値

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2月6日の日本の昔話 雪の夜どまり

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2月6日の日本の昔話

雪の夜どまり

雪の夜どまり

 むかしむかし、ある年の冬のこと。
 ひとりのまたぎ(→狩人のこと)が、ふかい山のなかでえものをおっかけているうちに、すっかり日がくれてしまいました。
 さてどうしたもんだろうと、あたりをみまわすと、それほど遠くないところに、ポツンとひとつあかりがみえました。
「こら、天のたすけだ」
 またぎは、あかりのほうへと歩きだしました。
 ふかい雪の中をころがったり、しりもちをついたりして、やっとたどりついてみますと、それは炭焼き小屋でした。
 ドンドンドン
 またぎが小屋の戸をたたくと、親方が顔をだしてきました。
「おら、秋田からこの山さきた、またぎだども、山んなかでこの大雪だ、家さ、かえろうにもかえられねえ。なんとかひとばん、どこぞのかたすみでええから、とまらしてくれねえべか」
 またぎが、すがるようにしてたのむと。
「ああ、ええとも、ええとも。まんずこんなあばら家だが、入ってけれ」
 親方はこころよく、またぎをむかえ入れて、ろばた(いろりのそば)へすわらせました。
 またぎがホッとしていると、親方がこんなことをいいだします。
「じつは、ひとつたのみてえことがあるだ。こんな大雪だども、おら、なんとしても下の村さおりていかねばなんねえ用事があってな。ちょうどいいぐあいに、おめえさまがきてくれた。なんともすまんだども、じきにかえってくるけに、ちょっとのあいだるすをたのまれてけれ」
 またぎは、小屋に入れてもらったお礼にと、
「ああ、ええとも、ええとも。おやすいご用だ。安心していってけれや」
と、るすをひきうけました。
「それをきいて大だすかりした。ただ、火をもやすことだけは、わすれねえようにしてけれや。そこのすみっこにたきぎがなんぼでもあるから、どんどんもやしてけれ」
と、いいのこして、親方は大雪のなかをいそぎ足ででていきました。
 またぎはろばたにポツンとひとりすわって、たきぎをくべているうちに、からだもあったまってきたし、つかれもでてきたので、いつのまにかウトウトと、ねむってしまいました。
 ハッと気がつくと、火が下火になっています。
 へやのすみっこのほうからたきぎをもってきて、くべながら、
「それにしても親方のかえりはおせえなあ。もっとも、この大雪でこの暗さじゃあ、きっとなんぎしているんだべ」
 などとかんがえながら、またウトウトと、ねむってしまいました。
 どのくらいたったのか、ゾクゾクと寒さをおぼえて目をさましてみると、もうすっかり火がきえてしまっています。
「こらいかん、火がきえたら、オオカミ(→詳細)のやつがやってくるぞ」
と、たちあがって、たきぎをとりにいこうとすると、へやのかたすみにたてかけてあるびょうぶのかげで、なにやらものの動くけはいがしました。
「はて、この小屋には、今夜はおらのほかには、だれもおらんはずじゃが」
 するとこんどは、ズリッズリッと音がしました。
 またぎがこわごわそっちのほうをみてみると、びょうぶのむこうに、女の人の首がみえます。
「わあっ、ばけもんだ。た、た、たっ、たすけてけれ!」
 おもわずさけぶと、そこらにあった杉の葉やたきぎやらを、かまわずなげこんで、大いそぎで火をつけました。
 火がパッと、あかるくもえあがります。
 すると、なにやらバタバタとにげていくような音がして、やがてしずかになりましたが、またぎはもう、生きたここちがしません。
 ガタガタとふるえながら、
「はやく夜が明けてけれ、はやく親方かえってきてけれ」
と、おんなじことをとなえるばかりです。
 ようやく夜が明けてきました。
 またぎがホッとしたところへ、親方が村人を四人ばかりつれてかえってきました。
「ああ、すまねがった。とうとう夜が明けちまったが、ゆんべはよくねむれたべか」
「いんや、ゆんべは、えらいおっかねえめにあった。とてもねむられるどこのさわぎじゃねえ」
と、ゆうべおこったことを、すっかり親方にはなしてきかせたのです。
 すると親方は、あらたまった顔になって、
「なんともすまねがった。じつはにょうぼうが、きゅうにからだのあんべえ悪くなってな、死んでしまったんだ。おめえさまのくる少し前のこんだった。それで、村さおりて人をよばってこようとおもったども、るすのあいだに火がきえてしまえば、オオカミがやってきて、にょうぼうを食ってしまう。はて、どうしたもんだろうと思案しておったところへ、おめえさまがやってきてくれた。それで、おめえさまには悪いとおもったども、だまってるすばんをたのんで、でていったっちゅうわけだ。夜中に火がきえたとき、オオカミのやつが、にょうぼうばつかまえてでていこうとしたのだべえ。おめえさまが火をもしてくれたおかげで、たすかっただ。こわいめばあわして、めんほくしだいもねえ。これこのとおりあやまるで」
と、またぎに頭をさげてあやまりました。
 ゆうべは、ばけもんのほうにすっかりきもをつぶしてしまって、オオカミには気がつきませんでしたが、そういわれてあたりをみまわすと、たしかに小屋のゆかに、けものの足あとがいくつかついています。
 またぎは山のなかでなん十年とくらしてきましたが、こんなおそろしいめにあったのは、あとにもさきにも、これがはじめてだったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 海苔の日
きょうの誕生花 → あぶらな
きょうの誕生日 → 1940年 デヴィ夫人 (インドネシア大統領の第三夫人)

きょうの新作昔話 → 少女ギツネ
きょうの日本昔話 → 雪の夜どまり
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2月5日の日本の昔話 星を落とす

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月5日の日本の昔話

星を落とす

星を落とす

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 ある日のこと、きっちょむさんが、村の人たちみんなにむかっていいました。
「今夜、わたしは空の星を、ほうきではいて落とすから。みんなで拾いにきてください」
「なんだって? 空の星をほうきで落とす。はん。ばかばかしいことをいいなさんな」
「じゃあ、こなくてもいいよ。わたしひとりで落とすから。あの空の星はみんな金だから、わたしひとりでひろって、お金持ちになるよ。あとでうらやましがったって知らないから」
 きっちょむさんの言葉に、村の人たちもついつい欲が出て、
「それじゃあ、いってみようか」
と、いうことになりました。
 やがて夜になりますと、きっちょむさんの家の回りに、みんながぞろぞろと集まってきました。
「おーい。きっちょむさん」
と、呼んでみますと、
「おーい。ここだ」
と、頭の上で答える声がします。
 見てみると、きっちょむさんが屋根の上に登っていて、手に長い竹ぼうきを持っていました。
「きっちょむさん、星はまだ落ちないのかい?」
「まあ、そんなに急ぐもんじゃあないよ。もう少し、待ちなさい」
 そういって、きっちょむさんは空を見あげました。
 暗い空には、キラキラとたくさんの星が光っています。
「きっちょむさん、あんな高い空まで、ほうきが届くのかい?」
と、みんなが笑いながらいいますと、きっちょむさんはまじめな顔で、
「届くとも、今にきっと、金の星をはたき落としますよ」
 そういいながら、ほうきを振り回しましたが、星は一つも落ちてきそうにありません。
「あれ、おかしいな?」
 きっちょむさんも、少しあわててきました。
「ほれ、ほれ、落ちろ! はやく落ちろ!」
 どなりながら、まだ、ほうきをふっています。
「もう、よしなよ、きっちょむさん」
「なに、よすものか。見ていろ!」
 きっちょむさんは、なおもほうきをふり続けました。
 するとそのとき、空の星が1つ、スーッと流れて、どこかへ落ちていきました。
 それは流れ星です。
 でも、きっちょむさんは、
「よし、やったぞ!」
と、大きな声でよろこびました。
「そら、そら、星が落ちただろう。わたしがほうきで落としたんだよ。みんないって、ひろっておいで」
と、得意になっていいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → プロ野球の日
きょうの誕生花 → ぼけ
きょうの誕生日 → 1956年 大地真央 (俳優)

きょうの新作昔話 → 灰まき童子
きょうの日本昔話 → 星を落とす
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2月4日の日本の昔話 頭の池

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2月4日の日本の昔話

頭の池

頭の池

♪朗読再生

 むかしむかし、あるところに、どうにも貧乏な男がいました。
「人なみに、くらしたいなあ。そうだ、観音様(かんのんさま)にお願いしてみよう」
 男が村の観音様にかよって、おまいりを続けていると、ある晩、観音様が現れて、
「いいだろう。お前の願い、かなえてしんぜよう。夜があけたらお宮の石段を降りていって、最初に見つけた物をひろい、それを大事にしなさい」
と、つげました。
 やがて男が石段を降りていくと、何か落ちています。
「ははん。これだな」
 ひろいあげると、それはカキのタネでした。
「なんだ、こんなものか」
 男は捨てようかと思いましたが、せっかくおつげをもらったのですから、そまつにできません。
 ありがたくおしいただくと、これは不思議。
 カキのタネが男のひたいにピタッとはりついて、取ろうにも取れません。
「まあいい、このままにしておこう」
 するとまもなく、カキのタネから、めがでてきました。
 めは、ズンズンのびて、りっぱな木になりました。
 男が、たまげていると、カキの木は枝いっぱいに花をつけ、花がおわると、すずなりに実をつけました。
「うまそうだな。ためしに食べてみよう」
 男が食べてみると、甘いのなんの。
 男はさっそく、町へカキを売りにいきました。
「頭にカキの木とは、めずらしい」
「おれにもくれ」
「おれもだ」
 カキは飛ぶように売れました。
 男はお金をふところに、ホクホク顔でしたが、おもしろくないのは町のカキ売りたちです。
「おれたちの商売を、よくもじゃましたな!」
 男をかこんで、ふくろだたきにすると、頭のカキの木をきりたおしてしまいました。
「ああ、もう、金もうけできない・・・」
 男がしょげていると、きりたおされたカキの木のねもとに、カキタケという、めずらしいキノコがはえてきました。
 おいしいキノコなので、男が売りにいくと、これまた飛ぶように売れました。
 おもしろくないのは、町のキノコ売りたちです。
「おれたちの商売が、あがったりだ!」
 男をかこんで、ふくろだたきにすると、カキの木のねもとを、ひっこぬいてしまいました。
 男はガッカリです。
 頭には、大きなくぼみができてしまいました。
 やがて、このくぼみに雨がたまって、大きな池ができました。
「こうなったらいっそのこと、池に身投げをして死んでしまいたい」
 男がなげいていると、頭の池で、パチャンとはねるものがありました。
 手にとってみると、大きなコイです。
 頭の池には、いつしか、コイやらフナやらナマズやらが、育っていたのです。
 男は頭の池の魚を売りにいって、またまた、お金をもうけましたが、町の魚売りたちはあきれて、ポカンとながめているだけでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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2月3日の日本の昔話 節分の鬼

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2月3日の日本の昔話

節分の鬼

節分の鬼

♪ 朗読再生

 むかしむかし、ある山里に、ひとりぐらしのおじいさんがいました。
 この山里では今年も豊作で、秋祭りでにぎわっていましたが、だれもおじいさんをさそってくれるものはおりません。
 おじいさんは、祭りの踊りの輪にも入らず、遠くから見ているだけでした。
 おじいさんのおかみさんは、病気で早くになくなって、ひとり息子も二年前に病気で死んでいました。
 おじいさんは、毎日、おかみさんと息子の小さなお墓に、お参りする事だけが楽しみでした。
「かかや、息子や、早くお迎えに来てけろや。極楽(ごくらく→天国)さ、連れてってけろや」
 そう言って、いつまでもいつまでも、お墓の前で手を合わせているのでした。
 やがて、この山里にも冬が来て、おじいさんの小さな家は、すっぽりと深い雪に埋もれてしまいました。
 冬の間じゅう、おじいさんはお墓参りにも出かけられず、じっと家の中に閉じこもっています。
 正月が来ても、もちを買うお金もありません。
 ただ、冬が過ぎるのを待っているだけでした。
 ある晴れた日、さみしさにたえられなくなって、おじいさんは雪にうまりながら、おかみさんと息子に会いに出かけました。
 お墓は、すっかり雪にうまっています。
 おじいさんは、そのお墓の雪を手で払いのけると。
「さぶかったべえ。おらのこさえた甘酒だ。これ飲んであったまってけろ」
 おじいさんは甘酒をそなえて、お墓の前で長いこと話しかけていました。
 帰る頃には、もう、日もくれていました。
 暗い夜道を歩くおじいさんの耳に、子どもたちの声が聞こえてきます。
は~、外! 福は~、内!」
「鬼は~、外! 福は~、内!」
 おじいさんは、足を止めてあたりを見回しました。
 どの家にも明かりがともって、楽しそうな声がします。
「ほう、今夜は節分(せつぶん)じゃったか」
 おじいさんは、息子が元気だった頃の節分を思い出しました。
 鬼の面をかぶったおじいさんに、息子が豆を投げつけます。
 息子に投げつけられた豆の痛さも、今では楽しい思い出です。
 おじいさんは家に帰ると、押し入れの中から、古いつづらを出しました。
「おお、あったぞ。むかし息子とまいた節分の豆じゃあ。ああ、それに、これは息子がわしにつくってくれた鬼の面じゃ」
 思い出の面をつけたじいさんは、ある事を思いつきました。
「おっかあも、かわいい息子も、もういねえ。ましてや、福の神なんざにゃ、とっくに見はなされておる」
 こう思ったおじいさんは、鬼の面をかぶって豆をまきはじめました。
「鬼は~内、福は~外。鬼は~内、福は~外」
 おじいさんは、わざとアベコベにさけんで豆をまきました。
「鬼は~内、福は~外」
 もう、まく豆がなくなって、ヘタヘタと座り込んでしまいました。
 そのとき、おじいさんの家にだれかがやってきました。
「おばんでーす。おばんです」
「だれだ。おらの家になにか用だか?」
 おじいさんは、戸を開けてビックリ。
「わあーーっ!」
 そこにいたのは、赤鬼と青鬼でした。
「いやー、どこさ行っても、『鬼は~外、鬼は~外』って、嫌われてばかりでのう。それなのに、お前の家では、『鬼は~内』って、よんでくれたでな」
 おじいさんは震えながら、やっとの事で言いました。
「す、すると、おめえさんたちは節分の鬼?」
「んだ、んだ。こんなうれしい事はねえ。まんずあたらしてけろ」
と、ズカズカと家に入りこんできました。
「ま、待ってろや。いま、たきぎを持ってくるだに」
 この家に客が来たなんて、何年ぶりの事でしょう。
 たとえ赤鬼と青鬼でも、おじいさんにはうれしい客人でした。
 赤鬼と青鬼とおじいさんが、いろりにあたっていると、またまた人、いえ、鬼がたずねてきました。
「おばんでーす。おばんです」
「『鬼は~内』ってよばった家は、ここだかの?」
「おーっ、ここだ、ここだ」
「さむさむ。まずは、あたらしてもらうべえ」
 ぞろぞろ、ぞろぞろ、それからも大勢の鬼たちが入ってきました。
 なんと、節分の豆に追われた鬼が、みんな、おじいさんの家に集まってきたのです。
「なんにもないけんど、うんとあったまってけろや」
「うん、あったけえ、あったけえ」
 おじいさんは、いろりにまきをドンドンくべました。
 じゅうぶんにあったまった鬼たちは、おじいさんに言いました。
「何かお礼をしたいが、欲しい物はないか?」
「いやいや、なんもいらねえだ。あんたらに喜んでもらえただけで、おら、うれしいだあ」
「それじゃあ、おらたちの気がすまねえ。どうか、望みをいうてくれ」
「そうかい。じゃあ、あったかい、甘酒でもあれば、みんなで飲めるがのう」
「おお、引き受けたぞ」
「待ってろや」
 鬼たちは、あっというまに出ていってしまいましたが、
「待たせたのう」
 しばらくすると、甘酒やら、ごちそうやら、そのうえお金まで山ほどかかえて、鬼たちが帰ってきました。
 たちまち、大宴会のはじまりです。
「ほれ、じいさん。いっペえ飲んでくれや」
 おじいさんも、すっかりごきげんです。
 こんな楽しい夜は、おかみさんや息子をなくして以来、はじめてです。
 鬼たちとおじいさんは、いっしょになって、大声で歌いました。
♪やんれ、ほんれ、今夜はほんに節分か。
♪はずれもんにも福がある。
♪やんれ、やんれさ。
♪はずれもんにも春がくる。
 大宴会はもりあがって、歌えや踊れやの大騒ぎ。
 おじいさんも、鬼の面をつけて踊り出しました。
♪やんれ、やれ、今夜は節分。
♪鬼は~内。
♪こいつは春から、鬼は内~っ。
 鬼たちは、おじいさんのおかげで、楽しい節分を過ごすことが出来ました。
 朝になると鬼たちは、また来年も来るからと、上機嫌で帰っていきました。
 おじいさんは、鬼たちが置いていったお金で、おかみさんと息子のお墓を立派な物になおすと、手を合わせながら言いました。
「おら、もう少し長生きする事にしただ。来年の節分にも、鬼たちをよばねばならねえでなあ。鬼たちにそう約束しただでなあ」
 おじいさんはそういうと、晴れ晴れした顔で、家に帰っていきました。

おしまい

※ この福娘童話集の「節分の鬼」は、新作狂言の「鬼は内」として、和泉流狂言野村万蔵家にて年四回講演されています。

新作狂言「鬼は内」.txt
新作狂言「鬼は内」のパンフレット.pdf
株式会社TMDネットワーク 和泉流狂言野村万蔵家

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 節分
きょうの誕生花 → ひいらぎ
きょうの誕生日 → 1963年 川合俊一(タレント)

きょうの新作昔話 → とうがらし売りとかき売り
きょうの日本昔話 → 節分の鬼
きょうの世界昔話 → オオカミと七匹の子ヤギ
きょうの日本民話 → 冗談のお願い
きょうのイソップ童話 → メスネコとアフロディテ
きょうの江戸小話 → 鬼は外

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2月2日の日本の昔話 おだんごコロコロ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月2日の日本の昔話

おだんごコロコロ

おだんごコロコロ

♪朗読再生

 むかしむかし、おだんごを作るのが、とても上手なおばあさんがいました。
 ある日の事、おばあさんがおだんごを作っていると、そのうちの一つが、コロコロコロと、転がり落ちて、外へ行ってしまいました。
「これこれ、おだんごよ、待ってくれ」
 おだんごは、コロコロコロコロ転がって、道ばたの穴にストンと落ちました。
 追っかけてきたおばあさんも、続いて穴の中にストンと落ちてしまいました。
 穴の中は広い原っぱで、石のお地蔵さまが、たいくつそうに立っています。
「お地蔵さま、わたしのおだんごが、来なかったかの?」
「きた、きた。わしの前を通って、向こうの方へ、コロコロコロ」
「ありがとよ」
 おばあさんが少し行くと、また、お地蔵さまが立っていました。
「そのおだんごなら、向こうの方へ、コロコロコロ」
 おばあさんは教えられた通りに行くと、またお地蔵さまです。
「ああ、あのおだんごは食べたよ。とってもおいしかった。ごちそうさん」
「おんやまあ。お地蔵さまが食ベたのなら、まんず、よかんべ」
 そのとき、ドスンドスンと、大きな足音が近づいてきました。
「おばあさんや、大変じゃ! 鬼どもが来るぞ! はよう、わしの後ろに隠れるがいい」
「ヘいへい、ありがとうさんで」
 おばあさんは、お地蔵さまの後ろに隠れました。
 やがて赤鬼と青鬼がやってきて、鼻をピクピク動かします。
「ふんふん、くさいぞ、人間くさい。・・・そこにいるな!」
 おばあさんは、すぐにつかまってしまいました。
 おばあさんを屋敷へ連れて帰った鬼が、しゃもじを一つ渡して言います。
「米粒を一つ、カマに入れて、水をいっぱいにしてたくんだ。煮えたら、このしゃもじでグルリとかき回す」
 言われた通りにすると、お米はムクムクとふえて、まっ白なごはんがカマいっぱいになりました。
「あれまあ。なんて不思議な、しゃもじじゃろう」
 おばあさんは毎日、せっせとごはんをたきました。
 でも、家に帰りたくてしかたがありません。
 そこである日、鬼どもが山ヘ遊びにいっているすきに、不思議なしゃもじを持って逃げ出しました。
 まもなく、おばあさんの行くてに、大きな川が現れました。
 けれども、都合のいい事に、舟が一そうつないであります。
 おばあさんの乗った舟が、川のまん中あたりまでいったとき、鬼どもが岸まで追いかけてきました。
「おいみんな、水を飲んで舟を止めよう」
 鬼どもは岸にならんで、川の水をガボガボと飲みはじめます。
 水はドンドン少なくなって、舟はとうとう動かなくなってしまいました。
「困ったのう、どうすベえ。おお、そうじゃ」
 おばあさんは、しゃもじを取り出し、舟の中でひょっとこ踊りをしました。
♪あっそれ、よいよい、すっとんとん。
 その踊りがあまりにもおもしろいので、鬼どもは思わず、
「ワッハッハッハッ・・・」
 とたんに飲んだ水が口からふきだして、流れ出た水のいきおいで舟は向こう岸につきました。
 おばあさんは、お地蔵さまの原っぱを通って穴をよじ登り、どうにか家に帰ることができました。
 さて、家に帰ったおばあさんが、このしゃもじでお米の粉をこねてみると、粉はドンドンふえて、ビックリするくらい大きなおだんごができました。
 こうして、おだんご作りの上手なおばあさんは、不思議なしゃもじで、いつまでもいつまでも、おだんごを作ったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バスガールの日
きょうの誕生花 → パンジー
きょうの誕生日 → 1972年 HISASHI (GLAY)(タレント)

きょうの新作昔話 → 米塚山と糠塚山
きょうの日本昔話 → おだんごコロコロ
きょうの世界昔話 → ジャックとマメの木
きょうの日本民話 → 黄門さまのイジワル
きょうのイソップ童話 → ハイエナ
きょうの江戸小話 → 聞きまちがい

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2月1日の日本の昔話 いなばの白ウサギ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話

2月1日の日本の昔話

いなばの白ウサギ

いなばの白ウサギ

♪朗読再生

 むかしむかし、隠岐(おき→島根県)の島という小さな島に、一匹の白ウサギが住んでいました。
 ウサギは毎日浜辺に出ては、海の向こうに見える大きな陸地に行きたいと思っていました。
 ある日の事、良い事を思いついた白ウサギは、海のサメに言いました。
「サメくん、ぼくの仲間と君の仲間と、どちらが多いか比べっこをしよう。君たちは向こう岸まで海の上を並んでくれ。ぼくはその上を数えながら飛んでいくから」
「いいよ」
 お人好しのサメは、白ウサギの言う通りに向こう岸まで並びました。
「じゃあ、始めるよ。ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」
 白ウサギはサメの上をジャンプしながら、向こう岸まで渡りました。
「やーい、だまされたな。比べっこなんてうそだよ。お人好しのサメくん。ぼくはこっちに渡りたかっただけなのさ」
 それを聞いたサメは怒ってウサギをつかまえると、ウサギの皮をはいでしまいました。
「うぇーん、痛いよ!」
 皮をはがされたウサギが泣いていると、若い神さまたちがそこを通りかかり、
「海水をあびて、太陽と風にあたるといいよ」
と、言いました。
 ウサギが教えられた通り海水をあびると、ますます痛くなりました。
 そして太陽と風に当てると、さらにもっと痛くなりました。
 そこへ、大荷物を持った神さまがやってきました。
 その神さまは、意地悪な兄さんたちに荷物を全部持たされていたので、遅れてやってきたのです。
「かわいそうに、まず池に入って、体の塩気を良く洗うんだ。それから、がまの穂(ほ)をほぐしてその上に寝転がればいいよ」
 ウサギがその通りにすると、やがて痛みも消えて、全身に元どおりの毛が生えてきました。
 この心やさしい神さまは、のちにオオクニヌシノミコトと呼ばれ、人々にうやまわれたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バスガールの日
きょうの誕生花 → うめ
きょうの誕生日 → 1964年 磯野貴理子(タレント)

きょうの新作昔話 → テングに気に入られた男
きょうの日本昔話 → いなばの白ウサギ
きょうの世界昔話 → わがままな大男
きょうの日本民話 → なますの好きな侍
きょうのイソップ童話 → ニワトリとネコ
きょうの江戸小話 → 身投げ

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