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2009年5月

5月31日の日本の昔話 おんぼろ寺のカニもんどう

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 5月の日本昔話

5月31日の日本の昔話

おんぼろ寺のカニもんどう

おんぼろ寺のカニもんどう

 むかしむかし、ある村のはずれに、和尚(おしょう→詳細)さんのいないオンボロのあき寺がありました。
 いつまでもあき寺ではこまるので、
「よその村から、和尚さんをたのもう」
 村の人たちは、これまでになんどか、あたらしい和尚さんにきてもらいました。
 けれど、どの和尚さんも、その夜のうちにばけものにおそわれて、つぎの朝にはもう、くいころされてしまっているのです。
 もう、いく人の和尚さんが、ばけものにくわれたことか。
 村の人たちは、あたらしい和尚さんをたのむにたのめなくて、あきらめていました。
 ですから、寺はあれほうだいにあれはてています。
 ある日の夕方、この村に、たびの坊さんがやってきて、一けんの家の戸をたたきました。
「どうか、ひとばん、とめてもらえんだろうか?」
 坊さんは、たのみましたが、
「あいにくと、家はせまくておとめできねえが、このさきにあき寺があるで、そこにとまったらどうだべ」
 村の人にこういわれて、坊さんはあき寺にとまることにしました。
 いってみると、これがひどいあれ寺です。
 ですが、坊さんは、
「夜つゆがしのげるだけでも、ありがたい」
と、本堂にすわって、まずは、おきょうをあげはじめました。
 するとなにやら、あやしいけはいがします。
 風もないのに、ローソクの火がユラユラとゆれ、本堂の阿弥陀(あみだ→詳細)さまが、おそろしげなかおになりました。
 あみださまは、顔をまっ赤にして、大きな目の玉をグルグルとうごかしながら、
「よくきたな。グフフフフッ」
と、坊さんをにらみつけます。
(この寺に住みついている、ばけものだな。まあ、ほっておこう)
 たびの坊さんが、さらにおきょうをあげていると、黒いはかまの小坊主があらわれて、
「おまえと問答(もんどう)をしたい。こたえられねば、とってくうが、いいか」
と、ききました。
(やれやれ、しかたがない。あいてをしてやるか)
 坊さんはおきょうをやめると、小坊主にいいました。
「いいだろう。問答をしてやろう」
「では、いくぞ。大足二足(たいそくにそく)、両足八足(りょうそくはっそく)、二眼天眼通(にがんてんがんつう)にして、色紅(いろべに)とは、これいかに?」
「アハハハハハッ。これはたやすいもんどうだ。足の数でわかった。それは、カニだ!」
 たびの坊さんがどなると、
「ギャアアーッ!」
とたんに、なにやらさけびこえがあがって、あとはシーンと、しずまりかえりました。
 小坊主もきえ、阿弥陀さまも、いつものおだやかな顔にもどっていました。
 つぎの朝、村の人たちが、
「ゆうべの坊さまも、ばけものにくわれてしまったべ。気のどくなことしたなあ」
と、あき寺にやってくると、たびの坊さんは、本堂のそうじをしています。
「あんれ? ばけものは、でなかったかね?」
「いや、でることはでたが、問答をといて、どなりつけたら、どこかへきえたようじゃ。いま、そうじをしながらさがしているところだ。すまんが、てつだってくれんか?」
 みんなでさがしまわると、お寺のえんの下に、大きなカニが死んでいました。
 たびの坊さんは、カニのばけものにころされた、これまでの和尚さんたちをねんごろにとむらって、この寺の和尚さんになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界禁煙デー
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5月30日の日本の昔話 ヘビ酒をのんださむらい

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5月30日の日本の昔話

ヘビ酒をのんださむらい

ヘビ酒をのんださむらい

 むかし、伊原新三郎(いはらしんざぶろう)いうさむらいがおりましたが、徳川の世(江戸時代)になって、つかえる殿さまもなく、ブラプラとながれ歩いていました。
 ある夏のこと、三河(みかわ→愛知県)へいき、三方が原(みかたがはら)というところへ足をのばしました。
 そこは、武田信玄(たけだしんげん)の軍と、織田信長(おだのぶなが)の軍とがたたかった、名だかい古戦場(こせんじょう)でした。
 あつい日ざかりをすぎ、ヒグラシゼミが鳴きだすと、夕風がまきおこって、すずしくなりました。
 人っ子ひとりこない道を、どれくらいいったでしょう。
 林があって、ひょいと木のあいだをのぞいたところ、むこうに、まだあたらしい家が四、五けん見えます。
 しかも、たべものなどを売る店のようです。
「ここに茶店とはありがたい。ちと休んでいくか」
 新三郎は林をくぐって、すぐ店のまえへでました。
 すると、年のころ十四、五の、かわいらしいむすめがでてきて、
「おいでなさいまし。お武家さまが、いつも立ちよっていかれるお店でございますよ」
と、あいそよくいうのです。
 いわれるままに、新三郎は店へ入って、こしをおろしました。
 ほかには客がなく、店の人もいないようすでした。
「さぞ、おつかれでございましょうね。これをおめしあがりになって」
 むすめは、もちをだしてきてすすめましたが、新三郎が、
「もちは一つでよい。酒はないか」
と、いうと、
「あら、気がつきませんでした。いいのがございますとも。すこしおまちを」
と、少しまたせてから、お酒をもってきました。
「・・・うまい!」
 はらにしみわたるようなお酒でした。
 しかも、そのむすめがなれなれしいしぐさで、おしゃくをしてくれますので、新三郎は二本三本と、とっくりをからにしました。
(よいむすめじゃ。しかし、このような場所に、むすめがひとりだけとは)
 なにか、心にひっかかります。
 新三郎もさむらいですから、すこしぐらいよったって、ゆだんはしません。
「あと、もう一本たのむ」
「かしこまりました。ただいま、すぐに」
 むすめがおくへ酒をとりにいったとき、そっとついていって、台所をのぞきました。
 そして、新三郎はおもわず息をのみました。
 大きなヘビが一ぴき、てんじょうからつるしてあって、むすめは刀で、そのヘビのはらをさし、血がトクトクたれるのを、手おけにうけていました。
 そして、血のなかへ、なにかわからないものを入れてかきまぜ、ニタッとわらったとおもうと、もう酒にしてしまいました。
(ただごとではないぞ!)
 新三郎は、身の毛がよだつおもいで、店の外へととびだして走りました。
「お武家さま、おまちになって。・・・いまさら、おにげになるとは。・・・まて、まて、おまちなされ! ・・・またんか!」
 あのむすめが、さきほどとはちがった声で、おいかけてきました。
 そればかりではありません。
 むすめの後ろのほうで、聞いたこともない、なん人かの声がして、
「せっかくのえものを、とりにがすなよ!」
と、こっちへやってきます。
 ふりむいてみると、人のせたけの倍もある長いものが、ズリズリとおいかけてきているのです。
 新三郎はいちど道まででて、また林へかけこみました。
「あいつめをとりにがしたら、あしたは、わしらにわざわいがおこるぞ」
「おう、にがしてたまるか」
と、わめきたてます。
 えだにからまれ、草に足をとられ、それでも新三郎は、むがむちゅうで走って、やっと町はずれの民家にたどりつきました。
 そこの主人は、わけを聞くと、いぶかしそうに首をかしげました。
「はて、あの林のあたりには、茶店どころか、家一けんございませんよ。きっと、ばけものどもに、さそいこまれなさって・・・。まあ、ごぶじでなによりでした」
「まさか? いや、めいわくをかけたな」
 新三郎は、その夜は、とまっていた宿(やど→詳細)屋へもどりましたが、どうかんがえても、ふしぎでなりません。
 あくる日、近くの男たちを集め、きのう酒をのんだ店を、いっしょにさがしました。
 しかし、そのあたりには家一けんなく、草がボウボウとしげっているばかりで、人の足あとさえないのでした。
 ただ、草のなかに手足の少しちぎれた、大きめのほうこが一つ、すてられていました。
 ほうこは、はいはいをする幼児をかたどった、むかしの人形です。
「これが、十四、五の、あのむすめにばけたものか」
 新三郎がつぶやくと、ほかの男たちのおどろく声がして、大蛇のむくろを見つけました。
 長さが四、五メートル、色は黒く、おなかが切りさかれていました。
 また、ちょっとはなれたところに、人のがいこつが三そろい、肉も皮もとけてなくなり、まっ白い骨だけになって、よこたわっているのでした。
 ほうっておいては、なんのたたりがあるか知れませんので、新三郎は大蛇のむくろも、がいこつも、かたちをのこさないようにうちくだいたうえ、たきぎをつんで焼かせました。
 そして、堀の底へしずめました。
 ところで、伊原新三郎というさむらい、もともと病気がちでしたが、ヘビ酒をのまされたせいか、このあとはふしぎなほど元気になったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ごみゼロの日
きょうの誕生花 → おだまき
きょうの誕生日 → 1937年 左とん平 (俳優)


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5月29日の日本の昔話 しかられたゆうれい

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5月29日の日本の昔話

しかられたゆうれい

しかられたゆうれい

 あるとき、さむらいのおくさんが、あの世へたびだっていきました。
 このおくさんは、生きているときは口やかましくて、さむらいにもんくばかりいっていましたから、
「やれやれ、これで、しずかになったわい」
 さむらいは、悲しさよりも、ホッとしていました。
 ところがまもなく、おくさんのゆうれいがまいばんあらわれて、『ああでもない、こうでもない』と、もんくをいうのです。
 とうとうさむらいは、びょうきになってしまいました。
 そこで、なかまのさむらいたちが、
「ゆうれいを、おいはらってやろう」
と、かわるがわる、とまりにきてくれましたが、ゆうれいのあまりのおそろしさに、たじたじとなって、にげだしてしまいます。
 さむらいのびょうきは、おもくなるばかりでした。
 この話をきいて、
「よし、わしが、なんとかしよう」
 としよりのさむらいが、きてくれました。
 草木もねむるうしみつどき(午前二時ごろ)です。
「うらめしやあー」
 びょうきでねているさむらいのまくらもとに、おくさんのゆうれいがあらわれ、またまたもんくをいいはじめました。
「だいたい、あのときあんたが・・・。それから、あれがこうで・・・」
 としよりのさむらいは、だまってきいていましたが、ついにたまりかねて、
「だまりなさい! あなたは、さむらいのおくさんでありながら、なんとけしからんのだ! やることがひきょうですぞ。そんななさけないすがたを、人にみせるものではありません。死はしんせいな物であり、さむらいの美徳(びとく→ほめるべき、立派なこと)です。つつしみなさい!」
と、きびしくしかってやりました。
 するとゆうれいは、きまりがわるそうに、すがたをけして、それっきりあらわれませんでした。
 びょうきのさむらいは、やがてあの世へいきましたが、ゆうれいをおいかえしたとしよりのさむらいには、なんのたたりもなかったそうです。

おしまい

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5月28日の日本の昔話 おいてけぼり

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5月28日の日本の昔話

おいてけぼり

おいてけぼり

 むかしむかし、あるところに、大きな池がありました。
 水草がしげっていて、コイやフナがたくさんいます。
 でも、どういうわけか、その池で釣りをする人は一人もいません。
 それと言うのも、あるとき、ここでたくさんフナを釣った親子がいたのですが、重たいビク(→さかなを入れるカゴ)を持って帰ろうとすると、突然、池にガバガバガバと波がたって、
「置いとけえー!」
と、世にも恐ろしい声がわいて出たのです。
「置いとけえー!」
 おどろいた親子は、さおもビクもほうり出して逃げ帰り、長い間、寝こんでしまったのです。
 それからというもの、恐ろしくて、だれも釣りにはいかないというのです。
「ウハハハハハッ。みんな、意気地がないのう」
 うわさを聞いた、三ざえもんという人がやってきました。
「よし、わしがいって釣ってくる。いくら『置いとけえー』と言われても、きっとさかなを持って帰ってくるからな、みんな見とれよ」
 三ざえもんは大いばりで池にやってくると、釣りをはじめました。
 初めのうちは、一匹も釣れませんでしたが、
♪ゴーン、ゴーン。
 夕暮れの鐘が鳴ると、とたんに釣れて、釣れて、釣れて、ビクはたちまちさかなでいっぱいです。
「さあて、帰るとするか。さかなはみんな、持って帰るぞ」
 すると池に波が、ガバガバガバ。
「置いとけえー!」
 世にも恐ろしい声が聞こえました。
「ふん、だれが置いていくものか」
 三ざえもんは平気な顔で言うと、肩をゆすって歩き出しました。
 ところがしばらくすると、後ろからだれかついてくるのです。
 見ると、それはきれいな女の人です。
 女の人は、三ざえもんに追いつくといいました。
「もし、そのさかな、わたしに売ってくれませんか?」
「気の毒だが、これはだめだ。持って帰る」
「そこを、なんとか」
「だめといったら、だめだ!」
「どうしても?」
「ああ、どうしてもだ!」
「こうしても?」
 姉さまはかぶっていた着物を、バッと脱ぎ捨てて言いました。
「置いとけえー!」
 女の人の顔を見た三ざえもんは、ビックリです。
 なんと女の人の顔は、目も鼻も口もない、のっペらぼうだったのです。
 しかし、さすがは豪傑(ごうけつ)の三ざえもんです。
「えい、のっぺらぼうがなんじゃい! さかなは置いとかんぞ!」
 そういって、しっかりさかなを持って、家に帰って行きました。
「ほれ、ほれ、帰ったぞ。たくさん釣ってきたぞ」
 三ざえもんは得意になって、おかみさんにいいました。
 おかみさんは、心配そうにたずねました。
「あんた、大丈夫だったかい? こわいもんには、出会わなかったかい?」
「出会った、出会った」
「どんな?」
「それはだな・・・」
 三ざえもんが答えようとすると、おかみさんは、ツルリと顔をなでて言いました。
「もしかしたら、こんな顔かい?」
 とたんに、見なれたおかみさんの顔は、目も鼻も口もない、のっペらぼうになったのです。
 そしてのっぽらぼうは、こわい声でどなりました。
「置いとけえー!」
「ひゃぇぇぇー!」
 さすがの三ざえもんも、とうとう気絶(きぜつ)してしまいました。
 やがて目を覚ました三ざえもんは、キョロキョロとあたりを見回しました。
「あれ、ここはどこだ?」
 たしかに家へ帰ったはずなのですが、そこはさびしい山の中で、さかなもさおも、ぜんぶ消えていたということです。

おしまい

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5月27日の日本の昔話 さんぽするひとだま

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5月27日の日本の昔話

さんぽするひとだま

さんぽするひとだま

 あるばんおそく、さむらいがお城の仕事をおえて、屋敷へ帰っていく途中の出来事です。
 まっ暗やみの道を、いそぎ足で歩いていくと、急にせすじがさむくなりました。
 ふと前を見ると、なんと、フワフワとひとだま(→詳細)が飛んでいるのです。
「ややっ、これはきみょうな」
 さむらいは刀を抜くと、そのひとだまを追いかけていきました。
 ひとだまはマツの木のあるへいを、フワッとこえて、家に入りこんでしまいました。
 さむらいがへいの中をのぞくと、ねぼけ顔のおじいさんがからだをおこして、
「ばあさんや。わしはいま、ゆめをみていた。町をさんぽしていたら、さむらいにおいかけられたので、にげかえってきたゆめだ」
と、はなしています。
 さむらいはそれをきいて、ビックリしました。
 としをとると、夢を見ている間に、たましいが抜け出すと聞いたことがあるからです。
(わしも、としをとったら、きをつけねば)
 さむらいは、急いで家に帰りました。

おしまい

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5月26日の日本の昔話 舌をぬくおばけ

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5月26日の日本の昔話

舌をぬくおばけ

舌をぬくおばけ

 むかしむかし、ある村の男たちが話しておりました。
「八畳(はちじょう)のざしきに、八人でとまると、おばけがでるっちゅうぞ」
「そんなこと、あるもんか」
「いや、ほんとにでるっちゅう話だ」
「それなら、ためしに、とまってみるとしよう」
 こうして、村はずれのあき家の八畳のざしきに、八人してとまることになりました。
 さて、そのばんのうしみつどき(午前二時ごろ)。
 八人のうち、七人はグッスリとねむってしまいましたが、たいそうこわがりの男が、一人だけねむれませんでした。
(おばけがでるのかな? 妖怪がでるのかな? それともゆうれいかな? どれにしてもこわいよー)
 ふとんの中でブルブルふるえていますと、ざしきの戸が音もなく開いて、てぬぐいをかぶった若くて色の白い女の人が、けむりのように入ってきました。
 女の人はねている男の枕元にすわると、顔をピタリとくっつけて、男のくちびるをすってはニヤリと笑うのです。
 女の人はつぎつぎと男たちのくちびるをすっては笑い、ついに、ねむれないでいる男のところにきました。
 男はふとんをはねのけると、
「おばけだー! たすけてくれー!」
 むがむちゅうで、家へと逃げ帰りました。
 あくる日、男が村の人たちと、あの空き家に行って八畳のざしきをのぞいてみると、七人が七人とも、舌を抜かれて死んでいました。
 このことがあってから、しばらくたったある日のこと、男はたびにでかけました。
 とちゅうで日がくれてしまったので、一けんの家をみつけてやどをたのむと、
「それはお困りでしょう。さあ、どうぞ」
 女の人が、しんせつにとめてくれました。
 男がごはんをごちそうになってから、
「おらの村で、じつは、こんなおそろしいことがあったんだよ。八畳に八人でとまるとおばけがでるといううわさなので、ためしにとまってみるとな。そのばんのうしみつどき。ざしきの戸が音もなくあいて、てぬぐいをかぶったわかくて色の白い女が、スゥーッと入ってきたんだ。そして、男のくちびるをすっては、ニヤリとわらっただよ」
と、あのばんのできごとをはなすと、
「それはもしかして、こんな顔では・・・」
 女の人は手ぬぐいをかぶって、ニヤリとわらいました。
「うわぁー! でたー!」
「こんやは、にがさないよ」
 男はにげだそうとしましたが、あっという間に舌を抜かれてしんでしまいました。

おしまい

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5月25日の日本の昔話 ネコの大芝居

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5月25日の日本の昔話

ネコの大芝居

ネコの大芝居

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
 若い時から、二人でいっしょうけんめいはたらいてきましたが、ちっともくらしが楽になりません。
 それでもこうして、たっしゃでくらせるのは、神さまのおかげと、不平も言わずに生きてきました。
 ある日、おじいさんが言いました。
「わしらにも、子どもがあるとよかったのに」
「ほんにのう。せめてネコの子でもいてくれたら、うんとかわいがってやるのに」
 するとその日の夕方、どこからともなく一匹のぶちネコが、まよいこんできたのです。
「こりゃあ、きっと神さまがさずけてくださったにちがいない」
「今日からわしらの子どもにしましょう」
 おじいさんもおばあさんもよろこんで、このネコにぶちという名前をつけ、それはそれは大事に育てました。
 ぶちもすっかり二人になついて、どこへでもついてきて、ニャアニャアとあまえます。
 二人はぶちがかわいくて、かわいくて、おいしいものがあると、自分たちが食べないでも、ぶちに食べさせます。
 こうして十三年もたつうちに、かわいかったぶちは、まるでイヌほども大きくなりました。
 自分でしょうじの開け閉めもできれば、るすばんだってできますが、なんとなく動きがにぶくて、庭に飛んでくる小鳥にまで、からかわれるしまつです。
 ところがぶちよりも、おじいさんとおばあさんのほうが、もっとからだが弱ってきて、畑仕事や川へ洗たくに行くのもしんどくなってきました。 
 ある晩、おばあさんが言いました。
「おじいさん、わしらもずいぶん年をとったけど、ぶちも人間ならわしら以上の年よりになった。これじゃ、わしらが先に死ぬか、ぶちが先に死ぬかわからん。うまいぐあいに、ぶちが先に死んでくれたらいいが、わしらが先に死んだら、だれもめんどうを見るものがない」
「そうよのう。できることなら、みんないっしょにあの世へ行けたらうれしいのに」
 ぶちは、いろりのふちでいねむりをしながら、二人の話を聞くともなしに聞いていましたが、とつぜんからだを起こすと、二人の間にすわり、前足をきちんとそろえて言いました。
「おら、長い間二人にかわいがってもらいましたが、そろそろおひまをいただきたい」
 ネコがいきなり口をきいたので、おじいさんもおばあさんもビックリして顔を見あわせます。
 それでも、おばあさんがあわてて言いました。
「まさか、おまえに人間のことばがわかるとは思わなかったので、とんだ話を聞かせてしまった。なあに、わたしらはまだまだ元気だ。安心してここにいてくれ」
 おじいさんも、ぶちの背中をなでながら、
「かわいいおまえを残して、だれが死ぬもんか。死ぬ時はおばあさんもおまえもいっしょじゃ」
と、言いました。
 すると、ネコが、
「二人の気持ちは、おら、涙が出るほどうれしいです。でも、やっぱりこれ以上、心配をかけるわけにはいきません。ところで、二人とも芝居(しばい)が大好きでしたね。かわいがってもらったお礼に、芝居を見せたいと思いますが、どんな芝居がいいですか?」
「芝居なんかいいから、ぜひ、このままいっしょにいてくれ」
「いいえ、おらも、そろそろなかまのところへもどりますから」
 そう言われ、おじいさんもおばあさんも、ひきとめることはできませんでした。
「さあ、どんな芝居を見たいか、早く言ってください」
「そうさな・・・」
 なにしろ芝居を見たのは、うんと若い時で、それも忠臣蔵(ちゅうしんぐら)という芝居を一回きりです。
「そうだ、忠臣蔵が見たい」
 二人が同時に言いました。
「よろしい。そんなら忠臣蔵をはじめから終わりまで、たっぷり見せてあげましょう」
 ぶちが、ピンとひげをのばし、
「では、ほんとうに長い間お世話なりました。来月三日のお昼、どうか、うら山のあき地へ来てください」
 そう言うと、おばあさんにつけてもらった首の鈴(すず)を鳴らしながら、家を出ていきました。
「ああ、あんなことを言わなければよかった」
 二人は、ガッカリして頭をかかえます。
 次の日からは、ぶちのいないさみしい暮らしです。
「ああ、ぶちに会いたい」
「早く三日が来ないかな」
 おじいさんもおばあさんも、三日の日が来るのをゆびおり数え、やがて、三日がやってきました。
 おじいさんとおばあさんは、お昼になるのを待ちかねて、うら山へのぼって行きます。
 でも、あき地には大きな石がころがっているだけで、だれもいません。
「ネコは年をとると化けるというが、こりゃ、ぶちのやつにだまされたのかな?」
「いいえ、うちのぶちは、そんなネコじゃありません。きっとやってきます」
 二人で話しあっていると、近くの草むらで、チリリンと鈴の音がしました。
「それ来た。あの鈴の音はぶちの首のものにちがいない」
 そう言って、おばあさんが立ちあがると、草の中からヒョイとぶちが現れ、
「おじいさん、おばあさん、よく来てくれました。さ、そこの石にすわって、ゆっくり見物していってください」
 ていねいに頭をさげると、草の中に姿を消しました。
 そのとたん、チョンという拍子木(ひょうしぎ)の音がひびいて、草原の中にりっぱな舞台(ぶたい)が現れました。
 後ろには、白いまくもはってあります。
「こりゃ、ほんものの舞台だ!」
 二人が、ビックリしていたら、さっと幕(まく)が開いて、役者が次つぎと舞台へ出てきました。
 どの役者もきれいな衣装(いしょう)をつけていて、後ろには、三味線(しゃみせん→詳細)をひく人や歌をうたう人がずらりと並んでいます。
 やがて芝居(しばい)が始まりました。
 どの役者も、じつに芝居がじょうずで、二人はただもう、むちゅうで舞台をながめました。
「いいなあ、うまいなあ」
「なんてきれいだ」
 出てくるのは、かんどうのため息ばかりで、いつまで見ていても、あきることがありません。
 幕が開いては閉まり、閉まっては開き、忠臣蔵(ちゅうしんぐら)の長い芝居が終わった時には、まるで夢の中にいる気分です。
「よかったね。おじいさん」
「ああ、こんなりっぱな芝居を見るのは、生まれてはじめてじゃ」
 二人がホッとして、もう一度前を見たら、舞台はあとかたもなく消えていて、もとの草原に変わっています。
「ニャア」
 その時、どこかでネコの鳴く声がしました。
 でもぶちは、それっきり、二度と姿を見せなかったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → ラナンキュラク
きょうの誕生日 → 1976年 シェイン・コスギ (俳優)

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きょうの日本昔話 → ネコの大芝居
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5月24日の日本の昔話 ゆうれいのしかえし

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5月24日の日本の昔話

ゆうれいのしかえし

ゆうれいのしかえし

 むかしむかし、ある村に、みすぼらしいたびの坊さんがやってきました。
 日もくれてきたので、どこかにとめてもらわなくてはなりません。
 坊さんは、庄屋(しょうや→詳細)さんの門をたたきました。
「どうか、ひとばん、とめてください」
 すると、庄屋さんは、
「きのどくだが、とめられん。じつは、このあいだ、たびの男をとめて、だいじなものをとられてしまった。たとえ坊さんでも、たびのものはとめないことにした。さあ、はやく立ち去れ」
と、門をしめてしまいました。
「それでは、しかたがない」
 坊さんがトボトボあるいていくと、はかばがありました。
 はかばには、あたらしい土まんじゅうができています。
「もうしわけないが、ひとばん、ここでごやっかいになりましょう」
 坊さんは土まんじゅうをおがんでから、それをまくらによこになりました。
 むかしは人がなくなると、おはかにかんおけをうずめ、そのうえに、こんもりと土をかけて、おはかにしたのです。
 そのかたちが、まんじゅうににているところから、『土まんじゅう』といったのです。
「どんな人がなくなったのかなあ?」
 坊さんが、そんなことをおもいながらねむりにつくと、真夜中(まよなか)になって、白いきものをきた男のゆうれいがあらわれました。
「もしもし、お坊さん」
 坊さんは、そのこえにハッと目をさましました。
「あなたは、ゆうれいですか?」
「はい。くやしいことがあって、あの世へゆけないでいます」
「さしつかえなければ、わけをうかがいましょう」
「はい、ぜひとも。わたしは、この村の庄屋さんのやしきにはたらいていたものです。ついこのあいだ、やしきにどろぼうが入りました。庄屋さんは、どろぼうがつかまらないはらいせに、『おまえがどろぼうをやしきにひきいれたのだろう。そんなやつはゆるせん』と、わたしにつみをかぶせて、刀できり殺したのです」
「そりゃあ、ひどい!」
「わたしは、なんとかしてしかえしをしようと、まいばんゆうれいになって、やしきにいくのですが、やしきのほうぼうに、まじないふだがはってあるため、中に入ることができません。なにとぞ、まじないふだを、一まい、はぎとっていただけないでしょうか」
 ゆうれいは、なみだを流しながら手をあわせました。
 坊さんも、ながいことたびをかさねてきましたが、ゆうれいにたのみごとをされるのは、はじめてです。
「よし、おやすいことだ。つみもないあんたをころすなんて、とんでもないやつ。すぐにいって、まじないふだをはがしてやろう」
 坊さんは庄屋さんのやしきへとってかえすと、入り口にはってあるまじないふだを一枚、ペッとはがしてやりました。
「ありがとうございます」
 ゆうれいが、そこから入っていったので、坊さんがかくれてようすをみていると、
「たすけてくれえ! ゆうれいだー!」
 庄屋さんのさけひごえがしたかとおもうと、
「たいへんだー! だんなさまがゆうれいにおどろいて、いのちをおとされたぞ!」
 やしきの中は、えらいさわぎになりました。
「これでゆうれいも、まよわず、あの世へゆけよう」
 坊さんは、しずかにたちさっていきました。

おしまい

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5月23日の日本の昔話 娘の婿選び

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 5月の日本昔話

5月23日の日本の昔話

娘の婿選び

娘の婿選び

 むかし、ある長者に年頃の一人娘がいました。
 娘は家の用事で川のそばを歩いていましたが、このところの長雨つづきで川は大水です。
「まあこわい。気をつけて歩かないと。・・・あっ!」
 運悪く娘は足をすべらせてしまい、そのまま川に落ちてしまいました。
 さあ、たいへんです。
 見ていた人が川にかけよりましたが、娘はどこへながされたのか、どこをさがしても見つかりません。
 それを聞いた長者はうろたえ、通りかかった易者(えきしゃ)に娘の居場所を占わせると、
「板ぎれにつかまって、少しむこうのふかみ(→ふかいところ)にういておる」
と、教えてくれました。
 おかげで娘は見つかりましたが、川はたいへんな大水なので、とびこんでいって助ける事ができません。
 そこへ、目の見えない男がやってきて、
「わたくしがお助けしましょう。なわを用意してくだされ」
と、自分の体になわをつけて川に飛び込むと、なんとかむすめを引きあげてくれました。
 でも、娘はひどく弱っていて、今にも死んでしまいそうです
と、こんどはそこに医者がかけつけ、ありったけの手あてをしてくれたので、娘はなんとか命をとりとめることができました。
 助けてくれた三人に感謝した長者は、お礼に娘を嫁にやることにしましたが、娘は一人なのに、助けてくれたのは三人です。
 易者と目のみえない男と医者の、だれに娘をやるかまよいました。
 三人とも命の恩人ですし、三人とも娘を嫁にほしいといいます。
「はて、どうしたものかのう」
 こまった長者は、名裁きで有名な大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ→詳細)に頼むことにしました。
「どうか、大岡さまに娘の婿を選んでいただきたい。三人のうち、誰が娘を一番しあわせに出来るか、大岡さまの名裁きをお願いいたします」
「・・・うむむ」
 数々の難問(なんもん)を解決してきた越前守(えちぜんのかみ)ですが、このときばかりはさすがに困ってしまいました。
「まあ、三日まってくれ」
 とりあえず、その日は長者を帰らせて、それから三日間、夜も寝ないで考えましたが、よい知恵がうかびません。
 三日たって、再び長者がやってきましたが、
「あと、二日まて」
と、日をのばしてもらいました。
 そして、とある滝の近くへ気ばらしにでかけることにしたのです。
「ふう、こまったこまった。やっかいなことを引き受けてしまった」
 岩にこしをおろして、ボンヤリと滝をながめていると、ふと、話し声が聞こえてきます。
 じつは岩の下にほらあながあって、そこを山賊(さんぞく)が隠れ家にしているのでした。
 耳をすませてみると、なんと、今回のさばきについて話をしているではありませんか。
「大岡さまでも、あのさばきはつけられんとは、気の毒な事じゃ」
「おい、きさまなら、どうする?」
「きまっておる。わしなら、長者の娘婿(むすめむこ)には、易者や医者ではなしに、目の見えん男じゃ」
「ほほう。どうして、そうきめられるのだ?」
「わからんのか? 昔から、『たとえ火の中、水の中』ちゅう言葉があるじゃろうが。易者が占いをするのは当たり前。医者が人を助けるのは当たり前。それにくらべて目の見えん男は、本当に水の中をくぐって娘を助けたんじゃ。目の見えん男が娘を一番しあわせにするきまっておる」
 越前守は山賊の言葉になるほどと感心して、目の見えない男を長者の娘婿に決めたということです。
「うむ、これにて、一件落着!」

おしまい

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5月22日の日本の昔話 おどるしかばね

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5月22日の日本の昔話

おどるしかばね

おどるしかばね

 むかしむかし、あるところに、庄屋(しょうや→詳細)さんの夫婦がいました。
 庄屋さんはまじめで、ふだんから、ねんぶつをとなえたりする人でしたが、おかみさんときたら、神も仏(ほとけ)もしんじようとはしません。
 それどころか、やしきではたらいている人たちをビシバシはたらかせて、じぶんひとり、ぜいたくな生活をしていました。
 ところがある日、ポックリと、死んでしまったのです。
「『あの世のことなど、どうでもよい。この世さえおもしろければ、あとは野となれ、山となれ』などといっていた、どうしようもない女房だが、人なみに、そうしきをしてやらねばなるまい」
 庄屋さんは、おかみさんのしかばね(→死人の体)のまえに、おせんこうをたいて、手をあわせました。
 そのばんおそく、どこからか、ふえやたいこの音がきこえてきました。
 その音は、しだいに庄屋さんのやしきのほうへと、ちかづいてきます。
 すると不思議なことに、おかみさんのしかばねが、ゆっくりおきあがったのです。
 そして、ふえやたいこにあわせて、おどりはじめました。
 庄屋さんも、おつやに集まってきていた人たちも、ビックリするばかりです。
 ふえやたいこのねいろは、庄屋さんのやしきのやねのあたりで、しばらくなりひびいていましたが、そのうちに、どこかへとおざかっていきます。
 するとおかみさんのしかばねも、おどりながら、フラフラと、あるきさっていくのです。
「これはたいへんだ!」
 庄屋さんは、ハッとわれにかえって、にわの木のえだをへしおると、これを手にしかばねのあとをおいました。
 どんどんいくと、そこにはおはかがあって、おに火がユラユラとゆらめいていました。
 ふえやたいこの音色(ねいろ)が、いちだんとにぎやかです。
 おかみさんのしかばねは、音色にあわせて、おどりつづけています。
 庄屋さんは手にしていた木のえだで、おかみさんのしかばねをぶちました。
 とたんに、しかばねはバッタリたおれ、ふえやたいこもピタリとなりやみました。
「やれやれ、生きていたときの行いがわるかったために、まものにつれていかれようとしたのだろう」
 庄屋さんは、しかばねをせおってかえり、あくる日ぶじに、おそうしきをだしたということです。

おしまい

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5月21日の日本の昔話 テンをたいじしたネコ

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5月21日の日本の昔話

テンをたいじしたネコ

テンをたいじしたネコ

 むかしむかし、あるところに、長者(ちょうじゃ→詳細)が住んでいました。
 長者には大へんきれいな一人娘がいて、目の中に入れても痛くないほどのかわいがりようです。
 ところが、その一人娘が原因不明の病気になったのです。
 真夜中ごろになると、突然息苦しそうにうなりだし、それが朝まで続くのです。
 さっそく医者をよんでみてもらいましたが、べつに悪いところはなく、どうしてそんなことになるのか、原因がわからないといいます。
 そこで祈疇師(きとうし→おはらいをする人)にもおはらいをさせてみましたが、やっぱりききめがありません。
 長者や奥方(おくがた→おくさん)は、苦しむ娘を見るのがつらくて、ご飯ものどを通りません。
 なんとかしてあげたいと、日夜、神仏に手をあわせましたが、娘の病気は日に日に悪くなり、とうとう寝たきりになってしまいました。
(このまま娘が、死んでしまうのでは)
 そう思うと、両親は気もくるわんばかりです。
 さて、この長者の家に一匹の大きなおすネコがいました。
 かつて殿さまのかわいがっていたネコの孫というだけあって、見るからに気品のあるネコで、長者はもとより、屋敷の者もそまつにあつかうことがありません。
 そのネコが、どういうわけか、娘のそばをはなれず、ずっとまくらもとすわったきりでした。
 娘がかわいがっていたから、といっても、食事や便所に行く時以外、一歩も動こうとしないのです。
 ある日、奥方はそのことに気がつき、
(もしかして、あのネコが娘を好きになったのが原因で、毎晩苦しむのかもしれない)
と、思い、さっそく屋敷の者に命じて、ネコを娘の部屋から外へつれ出させました。
 それでもネコは、いつのまにかもどってきて、娘の枕元に座っています。
「これは困ったことになった」
 だからといって、ネコを屋敷から追い出したら、どんなたたりがあるかわかりません。
 その夜、明け方に奥方は夢を見ました。
 その中にネコが出てきて、涙を流しながら言うのです。
「わたしは、娘さんを大切に思っていても、妻にしようなんて、考えたことがありません。それなのにあなたは、わたしをうたがって、娘さんの病気の原因だと思いこんでいます。それがくやしくて、くやしくて。じつは、わたしが娘さんのそばをはなれないのは、天井に大きなテン(→イタチ科のけもの)がいて、娘さんの生気をすいとろうとしているからです。もし、わたしがいなかったら、娘さんはすっかり生気をすいとられて死んでしまうでしょう。でも、わたしの力では娘さんを守るのがせいいっぱい。テンを退治するためには、兄弟の力をかりなくてなりません。これから、何十里(一里は、約四千メートル)か先の長者の屋敷にいる弟をつれてきてください。おねがいします」
 ハッとして目を覚ました奥方は、長者にわけを話して、さっそくネコの兄弟のもらわれていった先を調べさせ、屋敷の者を使いに出しました。
 何日かして、屋敷の者が自分の屋敷にいるネコそっくりなネコをつれてきました。
 二匹のネコは、生まれた時からはなればなれで暮らしてきたのに、すぐに仲よくなり、いっしょに娘の枕元にすわります。
 その日の明け方、ふたたび奥方の夢の中に現れたネコは、
「テンは、昼間のうちは倉(くら)にかくれています。明日の午後、わたしたちを五番目の倉に入れ、外からかぎをかけてください」
と、言いました。
 そこで次の日、長者と奥方は、二匹のネコにたっぷりごちそうを食わせ、言われたとおりにしました。
 さて、ネコが倉に入ってまもなく、中からドタンバタンと、ネコのあばれまわる音。
 長者も奥方も、屋敷の者といっしょに、倉の前へかけつけます。
 中のさわぎがあまりにもはげしいので、倉の戸を開けようかどうかとまよっていたら、そのうちにまったく音がしなくなりました。
「どうしたのだろう?」
 心配になった長者が、思いきって戸を開けると、一匹のネコが血まみれになってとび出してきました。
 ビックリした長者が中へとびこんでみると、もう一匹のネコが、銀色の毛をしたテンののど元に、かみついたまま倒れています。
 そばへ行ってみると、テンはすでに死んでいましたが、ネコはかすかに息をしています。
 そこであわててネコを抱きあげ、屋敷に運んで、血まみれのネコといっしょにかいほうしてやりました。
 だけどそのかいもなく、二匹ともすぐに息をひきとったのです。
 ふしぎなことに、その時から娘の具合がよくなり、真夜中がきても苦しむことがなく、次の日の朝、娘はいままでの病気がうそのように起きだしました。
「それもこれも、みんなあのネコたちのおかげだ」
 すっかり喜んだ長者は、たくさんの坊さんをよんできて、二匹のネコのために盛大(せいだい)な葬式をあげ、屋敷の庭にネコの塚(つか)をたててやったそうです。

おしまい

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5月20日の日本の昔話 ウシのはなぐり

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5月20日の日本の昔話

ウシのはなぐり

ウシのはなぐり

♪朗読再生

 むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 きっちょむさんは、あまりお金持ちではありませんが、お金がなくなってくると、ヒョイと、いい知恵が浮かんでくるのです。
 ある日の事、きっちょむさんは畑仕事をしながら、町へ行く通りがかりの人を呼び止めては、
「すまんが、町のあらもの屋で、ウシのはなぐりを買ってきてほしいんじゃ。数は、いくつあってもいい。値段は、なんぼ高くてもかまわん」
と、変な事を頼みました。
 みんなが引き受けてくれましたが、帰ってきて、
「あいにく、売り切れとるそうじゃ。ウシの鼻につなを通す、はなぐりの輪など、めったに売れるもんではないから、ふだんはおいてないそうじゃ」
「おれもずいぶん探したが、一つもなかった。『今日はいく人も、はなぐりを欲しいという人がきた。こんな事なら、たくさん、しいれておけばよかった』と、くやしがっとったわい」
と、口々にいいました。
「それはどうも、すまん事じゃった」
 きっちょむさんは、ガッカリするどころか、喜びながら家に帰りました。
 さて次の朝、きっちょむさんは、作ってためておいたウシのはなぐりを、町へかついで行って、
「ウシのはなぐりはいりませんか?」
 町中のあらもの屋をまわりました。
「これはいいところにきてくれた。いくつでもおいていってくれ」
 昨日、もうけそこなっているので、どこのあらもの屋でも、喜んでしいれてくれました。
「さあ、これで、昨日のお客が来てくれれば、ひともうけできるぞ」
 あらもの屋は、もうけのそろばんをはじきましたが、ウシのはなぐりは、さっぱり売れません。
 もうかったのは、きっちょむさんだけでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月19日の日本の昔話 けもののかわはたたかれる

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5月19日の日本の昔話

けもののかわはたたかれる

けもののかわはたたかれる

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん→詳細)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 最近、和尚(おしょう→詳細)さんのところへ、檀家(だんか)のご隠居(いんきょ)が毎晩やってきて、夜おそくまで、ごをうっていました。
 あさのはやい小僧たちは、ねむくてかないません。
 一休さんはなんとかして、ご隠居がお寺にこないようにしようと考えました。
 このところ、とても寒いせいか、ご隠居は、けものの皮でできた、そでなしをはおっています。
(そうだ、いいことがある)
 一休さんはあくる日、お寺の門に、こんな張り紙をしました。
《けものの皮は、入るべからず》
 ご隠居は、この張り紙をみて、
「なに、入るべからずだと。これは一休のやつが、ごのじゃまをするつもりでかいたのだな。・・・さて、どうするか?」
 ちょっとかんがえましたが、すぐに平気な顔で、門をくぐりました。
 すると一休さんが、
「門の張り紙がよめないのですか。動物を殺してつくる、けものの皮は、おことわりします。おかえりください」
と、とおせんぼをすると、
「たしかにこの服は、動物を殺した、けものの皮でつくった物だ。しかし、このお寺にも、けものの皮をはった、たいこがおいてあるではないか。そうであろう」
 ごいんきょは、一休さんをやりこめたつもりでしたが、ところがとんちの一休さん、
「お寺のたいこは、罪(つみ)つぐないに、毎日、ばちでドンドンたたかれています。それっ!」
 ご隠居に、たいこのバチをふりあげました。
 ほかの小僧たちも、バチをもってとびだしてきたので、
「こりゃあたまらん。わしのまけじゃ!」
 ご隠居は、あたまをかかえて、にげかえっていきました。

おしまい

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5月18日の日本の昔話 おかみすり

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5月18日の日本の昔話

おかみすり

おかみすり

 むかしむかし、ある山寺に、すなおで正直な小僧さんが、和尚(おしょう→詳細)さんと二人ですんでおりました。
 ある日のこと、小僧さんがそうじをしていると、和尚さんが帰ってきました。
「和尚さま、お帰りなさい」
「おほん! そうじはすみからすみまでていねいに、時間をかけてな、わかっとるやろな」
 などといいながら、和尚さんはすまして自分のへやへむかいます。
 そのとき、さいふを落としたのに気がつきません。
 和尚さんは、まわりをキョロキョロ見まわしてからへやへ入り、そうっとしょうじをしめた。
 ところでこの和尚さん、川魚のアユが大こうぶつです。
 そのころのお坊さんは、魚を食べてはいけないことになっていました。
 だから和尚さんは、いつもこっそりかくれて、アユを食べていたのです。
 きょうもまた、こっそりアユを食べようと、ふところからつつみを取り出して、
「まったく、アユちゅう魚は、すがたといい、かおりといい、味といい、天下一品や」
と、和尚さんはニンマリ。
 そのとき、しょうじが開いて小僧さんが顔を出しました。
「和尚さま、さいふを・・・。あれっ? 和尚さまは魚を食べてはるんですか?」
「いやその、こ、これは魚じゃないぞ」
「では、なんなんですか?」
「おほん、これはな、おかみすりというもんや」
「おかみすりって、あの頭をそるときのでござりますか?」
「そうや、わしはこのおかみすりが大すきでのうっ」
と、いいながら、和尚さんはアユをおいしそうに食べました。
 さて、つぎの日。
 小憎さんは、遠いところまで法事(ほうじ)に出かける和尚さんのおともをすることになりました。
「そうや! いただいたかさを持っていって、だいじにしているところを見せんとな」
と、雨もふっていないのに、小僧さんにかさを持たせました。
「ではいくぞ、おとなしくついてくるんだぞ」
「へえ~い」
 和尚さんの乗ったウマが、パッカパッカといくあとを、小僧さんはかさをかかえてついていきます。
「小僧や、川やぞ!」
 大きな川を、ウマに乗った和尚さんは、ザッパ、ザッパとわたります。
 小僧さんも、いっしょうけんめい追いかけました。
と、たくさんのアユが、川のあちこちにいるではありませんか。
 小僧さんは、前をいく和尚さんに大声でいいました。
「和尚さま、いつも食べておられるおかみすりちゅうもんが、ほれ、たくさん泳いどります。和尚さまこうぶつのおかみすりが」
 そばを通りかかった旅人が、おかしそうに顔を見あわせました。
 和尚さんは、あわてていいました。
「ばかもの。なにをねぼけておる。急ぐんや」
「ええ~っ?」
 和尚さんは、あとをついてくる小僧さんに、こういいました。
「ええな、なにごとも聞いたら聞きながし、見たら見すごして、なにがおきてもだまってついてくるんや」
「へえ」
 小僧さんは首をかしげるばかりです。
 パカパカ、パカパカ。
 ウマに乗った和尚さんのあとから、小僧さんはだまってついていきました。
 すると、また川がありました。
「小僧や、また川やぞ。ものをおとすでないぞ」
と、いう和尚さんが、川のとちゅうで、タバコ入れを落としました。
「あっ、タバコ・・・」
 あわてて口をおさえた小僧さんは、流れるタバコ入れを見送りました。
(そうや、なにがおきてもだまってついてこい、そういわはった)
 そうしてまた、しばらくすると、ウマからおりた和尚さんがいいました。
「ここらで、いっぷくしよか」
 道ばたの石にこしかけた和尚さんが、タバコ入れをさがします。
「はて? タバコ入れがないぞ。おまえ、落ちたのに気づかなんだか?」
 小憎さんは、口をモゴモゴさせて、あわてて手でおさえました。
「なんや、ハッキリいうてみい」
「へえ、二つめの川で、ウマがちょいとこけたとき、ポチャンと落ちてプカプカ流れていきました」
「なんでひろわないのや!」
「ひろおうと思うたけど、なにがおきてもだまってついてこいて、えらいおこられましたやろ。ほんで」
 和尚さんはあきれかえって、小憎さんをどなりつけました。
「ばかもん! これからは、ウマから落ちたもんがあったら、なんでもひろうんや、ええな!」
「へ~い」
 いまさらどうしようもないので、二人は一休みすると出発しました。
 パカッパカッ。
 法事のある家までは、まだまだ長い道のりです。
 そのうち、和尚さんが乗ったウマが、おしりから、ポタポタ、ポタポタと、なにやら落としはじめました。
 小僧さんは、(ウマから落ちたもんがあったら、なんでもひろうんや)といった和尚さんのことばを思いだし、
「けど、どうしてひろうたらええやろ。・・・そうや!」
 小僧さんは、ウマのすぐ後ろまで走っていって、持っていたかさをひろげると、
「よいしょっと」
 落ちるフンを、かさでうけとめました。
「ほい、やっ。こらよっ。和尚さま、ウマから落ちたもんがいっぱいで、もう持てません」
「なんやて?」
 ふりむいた和尚さんは、もうビックリ。
「ばかもん! 大切なかさで、そんなもんを! ぜ~んぶ川にすててくるんや!」
「でも、ウマから落ちたものは、なんでもひろえと、和尚さまがいわはった」
「ばか正直にもほどがある。はよう! きれいさっぱり流してこい」
「へ~い!」
 小僧さんは、あわてて川のほうへ走っていき、川でかさをあらいながら首をかしげていました。
「和尚さまのいわはるとおりしとるのに、なんでしかられるんやろ」
 そのとき、きれいに洗ったかさの中に、川を泳いでいたアユが入ってきました。
 川岸で見ていた和尚さんは、そのアユがほしくてたまりません。
「ほほう、みごとなアユじゃ。小僧のやつ、あのまま持ってくればよいが」
 和尚さんがそう思っているのも知らず、小僧さんは、
「きれいなおかみすりやあ。けど、和尚さまはぜんぶ川にすててこいといわはった。そうや、かさもぜんぶすてなくちゃいかんのや」
と、かさをポーンと投げすててしまいました。
 かさは川のまん中に落ちて流れていきます。
「和尚さま、おいいつけどおり、ぜんぶ流しておきましたあ」
「ああ、わしのこうぶつのアユばかりか、大切なかさまでも。とほほほ」
 かさはドンドンながれていって、ついに見えなくなりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際親善デー
きょうの誕生花 → ばいかうつぎ
きょうの誕生日 → 1969年 槇原敬之 (シンガー)

きょうの新作昔話 → 宝を迎える村人たち
きょうの日本昔話 → おかみすり
きょうの世界昔話 → 星の金貨
きょうの日本民話 → キツネの恩返し
きょうのイソップ童話 → 1人息子と絵にかいたライオン
きょうの江戸小話 → ごみ

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5月17日の日本の昔話 めいどからかえってきたおくさん

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 5月の日本昔話

5月17日の日本の昔話

めいどからかえってきたおくさん

めいどからかえってきたおくさん

 むかしむかし、一人のお坊さんが、旅から旅の毎日をすごしていました。
 ある日のこと、お坊さんがさみしい一本道を歩いていくと、日がくれてきました。
「このままいけば、町があるはずだから、こんやは町でとまることにしよう」
 お坊さんは道ばたのお墓のところで、一休みすることにしました。
 草むらに腰を下ろして、足を休めていると、後ろの方から、ギギギーッと、変な物音がします。
 ふりむくと、かんおけのふたをおしあけて、白いきものの女の人がでてきました。
「ゆ、ゆうれい。なむあみだぶつ、なむあみだぶつ、なむあみだぶつ・・・」
 お坊さんはじゅずをならして、ねんぶつをとなえました。
 すると女の人は、お坊さんにちかづいてきて、
「どうか、たすけてください。からだがあつくてたまりません」
と、頭をさげました。
 お坊さんは、あいてがゆうれいだとおもっているので、
「まよわず、じょうぶつなさい。なむあみだぶつ、なむあみだぶつ・・・」
 さらに、ねんぶつをとなえました。
 ところが女の人は、
「わたしはまだ、ゆうれいではありません。じつはきのう、いったん、いきをひきとったので、このおはかにうめられました。わたしのたましいはからだからぬけだして、ひろい野原のようなところをあるいていったのです」
と、ふしぎな話をはじめました。
「あてもなく歩いていると、おそろしい鬼たちが現れ、わたしをつかまえて、えんま(→詳細)さまのところへ連れていきました。えんまさまは、わたしをジロジロとながめて、『おまえはまだ、ここにくるのははやい。おまえの寿命は、まだまだのこっておる』と、いったのです。それから、わたしをつれてきた鬼たちに、『すぐに、火の車に乗せて、送り返せ』と、いいつけました」
「ほう、それで、からだがあついと言われたのですね」
「はい。火の車の炎につつまれて、『あつい、あつい』ともがいているうちに、ここに戻ってきたのです」
「なるほど。それで、かんおけをやぶって、ふたたび、この世にもどったというわけじゃな」
「はい。どうか、わたしを家につれていってください」
「わかった、わかった」
 お坊さんは女の人をおんぶして、道をあんないさせました。
 女の人の家は、町のなかの大きなお店でしたが、お店は戸をしめきって、かなしみにしずんでいました。
 そこに、たびのお坊さんが、おそうしきをすませたばかりのおくさんをつれてきたので、ビックリ。
 はじめはあやしまれましたが、
「こんなありがたいことが、またとあろうか」
と、お店の人たちはよろこんで、さっそく、おいわいのせきがつくられました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月16日の日本の昔話 墓場へ行く娘

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5月16日の日本の昔話

はかばへいくむすめ

♪朗読再生

墓場へ行く娘

 むかしむかし、ある田舎に、たいそうな長者(ちょうじゃ)がいました。
 長者にはきれいな一人娘がいて、もう年頃です。
 そこで長者は、娘に婿さんをとることにしました。
 すると、そのうわさがすぐに広がって、
「よし、自分こそが、婿になろう」
「いいや、おれこそが、長者の娘婿にふさわしい」
と、婿さんの希望者(きぽうしゃ)が、大勢来るようになりました。
 ところが、次の朝には、
「あんな恐ろしい娘の婿になるなんて、とんでもない!」
と、誰もが逃げてしまうのです。
 さて、この話を耳にした旅の男が、
「これは、何かわけがありそうだ。おもしろい。別に娘の婿には興味はないが、それをつきとめてやろう」
と、長者の屋敷をたずねました。
 この男は独り者で、なかなかの男前です。
 そのうえ、とても度胸があります。
「わしの娘婿になりたいとは、ありがたい。しかし、娘には変なくせがありましてな、真夜中(まよなか)に、どこへともなく出かけていくのです。娘がどこへ行って何をしているのか、それを見届けてくれたなら、お前さんを婿に迎えましょう」
「わかりました」
 さて、その日の真夜中。
 男が娘の部屋の様子をそれとなくうかがっていると、娘がロウソクを手に白い着物姿で現れました。
 長い髪をふりみだして、裏庭の方へと出ていきます。
 まるで幽霊のようでしたが、男は気持ちを落ち着かせると娘の後をつけていきました。
 娘がやってきたのは、何と墓場でした。
「はて? こんな所で、何をするつもりだろう?」
 男が物陰からのぞいていると、娘はクワで棺桶を掘り出して、棺桶のふたを開けました。
 そして棺桶の中にあった死んだ人の骨をポキンと折って、ポリポリとうまそうに食べ始めたではありませんか。
 普通の男なら、「ギャーッ!」と叫んで逃げ出すか、腰を抜かしてしまうところですが、男は度胸をすえて、じっくりと娘の様子を観察しました。
 娘は死んだ人の骨をうまそうに食べ終わると、ニンマリとまっ赤な舌で口のまわりをなめながら、屋敷の方へ戻っていきました。
 男は娘がいなくなると、棺桶にかけよって中を調べます。
 棺桶には、娘が食べ残した骨が散らばっています。
 男がその骨を手に取って調べると、フンワリと甘いにおいがしました。
「これは、もしや」
 口に入れてみると、なんと甘いアメではありませんか。
「よし、長者に持っていってやろう」
 男は骨の形に作られたアメを持って長者の屋敷へ戻ると、さっそく見てきた通りの事を長者に説明しました。
「そしてこれが、そのアメです。どうぞ、お食べ下さい」
 男がアメを差し出すと、長者はにっこり微笑んで、
「いや、食べんでもわかっておる。それはわしが娘と相談して、アメ屋に作らせた物じゃからな。実はわしらは、この屋敷の婿にふさわしい、どんな事にも驚かん、気持ちの落ち着いた男を探そうと、度胸試しをさせてもらったんじゃ。今まで大勢の男を試してきたが、お前さんほどの男はいない。どうか、娘の婿になっていただきたい」
と、言ったのです。
「いえ、わたしは別に、婿には・・・」
 男が断ろうとするのも聞かず、長者は娘を呼びました。
 すると、きれいな着物を着た娘が現れて、
「どうぞ、末永く、お願いいたします」
と、おじぎをしました。
「あっ、その、・・・はい。こちらこそ」
 次の日、男と娘は三々九度のさかずき(→結婚の儀式)をかわして結婚し、幸せに暮らしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月15日の日本の昔話 鉢かづき姫

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 5月の日本昔話

5月15日の日本の昔話

鉢かづき姫

鉢かづき姫

♪朗読再生

 むかしむかし、河内の国(かわちのくに→大阪)に、ひとりの大金持ちが住んでいました。
 なに不自由ない暮らしをしていましたが、子どもだけはどうしてもさずかりません。
 それで毎晩、長谷寺(はせでら)の観音さま(かんのんさま)に手を合わせてお願いをして、ついに念願の子どもが生まれたのです。
 その子どもはお母さんによく似た、美しい姫です。
 ところが姫が十三才になった年、お母さんは重い病気にかかりました。
 お母さんは、姫を枕元に呼ぶと、
「わたしはまもなく遠い所へ行きます。わたしがいなくなるのは運命ですから、悲しむ必要はありません。さあ、母の形見に、これを頭にのせていなさい。きっと、役にたちますからね」
 そういって、重い箱を姫の頭の上にのせたばかりか、大きな木の鉢(はち)までかぶせました。
 そして、お母さんはなくなりました。
 お父さんは姫の頭の上の鉢を取ろうとしますが、どうしてもはずせません。
 そのために姫は『鉢かづき』といって、バカにされたり、いじめられたりしました。
 やがて、お父さんに、二度目の奥さんがやってきました。
 この新しいお母さんが悪い人で、鉢かづき姫にいじわるをしたり、かげ口をたたいたり、最後にはお父さんをうまくだまして、鉢かづき姫を追い出してしまったのです。
 家を追い出された鉢かづき姫は、シクシク泣きながら、大きな川のほとりにやってきました。
「どこへ行ってもいじめられるのなら、ひと思いに、お母さまのそばへいこう」
 ドボーン!
 思いきって川の流れに飛びこみましたが、木の鉢のおかげで浮きあがってしまいました。
 鉢かづき姫は、死ぬことさえ出来ないのです。
 村の子どもたちが、鉢かづき姫に石を投げました。
「わーい。頭がおわん。からだが人間。お化けだあー」
 ちょうどそのとき、この国の殿さまで、山陰(さんいん)の中将(ちゅうじょう)という人が、家来を連れてそこを通りかかりました。
 中将は親切な人だったので、鉢かづきを家に連れて帰って、ふろたき女にすることにしました。
 この中将には、四人の男の子がいます。
 上の三人は結婚していましたが、一番下の若君には、まだお嫁さんがいませんでした。
 心のやさしい若君は、鉢かづき姫が傷だらけの手で水を運んだり、おふろをたいたりするのを見てなぐさめました。
「しんぼうしなさい。きっと、よい事があるからね」
「はい」
 鉢かづき姫は、どんなにうれしかったことでしょう。
 こんなにやさしい言葉をかけられたのは、お母さんが死んでから初めてです。
 それから、何日か過ぎました。
 若君は、お父さんの前へ出ると、
「父上。わたしは、あの娘と結婚しようと思います。しんぼう強く、心のやさしいところが気にいりました」
と、言ったのです。
 もちろん、お父さんの中将は反対です。
「ならん! あんな、ふろたき女など!」
「いいえ! あの娘は素晴らしい女性です。あれほどの娘は、他にはいません!」
「素晴らしい? 他にはいないだと? ・・・よーし、では嫁合わせをしようではないか。兄たちの嫁と、あの鉢かづきを比べようではないか」
 三人の兄の嫁は、とても美しい娘です。
 こうすれば、鉢かづき姫は恥ずかしくて、自分からどこかへ行ってしまうだろうと考えたのです。
 さて、いよいよ嫁合わせの夜がきました。
 鉢かづき姫は思わず手を合わせて、長谷寺のほうをおがみました。
「お母さま。観音さま。今夜、嫁合わせがあります。お兄さま方のお嫁さんは、とても美しい姫君たちと聞きます。わたしのような鉢かづきが出て行って、いとおしい若君に恥をかかせるくらいなら、いっそこのままどこかへ・・・」
 そのときです。
 今までどうしてもはずれなかった頭の木鉢が、ポロリとはずれたのです。
 鉢の下からは、かがやくばかりの姫が現れました。
 そして鉢の中からは、金・銀・宝石があとからあとからこぼれ出ました。
 そこへ現れた若君が言いました。
「やはり、あなたは素晴らしい娘だ。さあ、美しい姫よ、嫁合わせにいきましょう」
 屋敷の中では、三人の兄たちの美しく着飾った姫たちがならんでいます。
 そこへ鉢かづき姫が、ニコニコと笑いながら現れました。
「おおーっ」
 お父さんの中将が思わず声をあげたほどの、まぶしいばかりの美しさです。
 中将は鉢かづき姫の手をとって自分の横にすわらせると、若君にいいました。
「まったく、お前のいうとおり素晴らしい娘だ。この娘を妻とし、幸せにくらすがよい」
「はい、父上!」
「ありがとうございます。お父さま」
 それから若君と姫は、仲むつまじく暮らして、二人の間には何人かの子どもも生まれました。
 あるとき、鉢かづき姫が長谷寺の観音さまにお参りをしたときのことです。
 本堂の片すみで、みすぼらしい姿のお坊さんに会いました。
 そのお坊さんの顔を見て、鉢かづき姫はびっくり。
「まあ、お父さまではありませんか」
「姫、姫か!」
 二人は抱きあって、数年ぶりの再会を喜びました。
 すっかり落ちぶれて、あたらしい奥さんにも見捨てられたお父さんは、鉢かづき姫を追い出した事を後悔して、旅をしながら鉢かづき姫を探していたのです。
「すまなかった。本当にすまなかった」
 泣いてあやまるお父さんに、鉢かづき姫はにっこりほほえみました。
「いいえ。いろいろありましたが、今はとても幸せなのですよ」
 それからお父さんは鉢かづき姫のところにひきとられ、しあわせに暮らしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ヨーグルトの日
きょうの誕生花 → カーネーション
きょうの誕生日 → 1982年 藤原竜也 (俳優)

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5月14日の日本の昔話 ゆうれいのでるやしき

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5月14日の日本の昔話

ゆうれいのでるやしき

ゆうれいのでるやしき

 むかしむかし、あるところに、とても正直な夫婦がいました。
 でも、正直すぎて人にだまされてしまい、ひどい貧乏ぐらしです。
 ごはんもろくに食べないので、赤ん坊がうまれても、おかみさんのおっぱいがまんぞくにでません。
 そこで、
「よそへいって、はたらこう」
と、ある町の長者(ちょうじゃ→詳細)のやしきで、はたらかせてもらうことになりました。
 長者はまじめにはたらく二人に感心して、一軒(けん)のやしきをあたえました。
「ふるいやしきだし、夜中(よなか)にゆうれいが出るとのうわさもあるが、ただであげるから、しんぼうしなさい」
「はい、ありがとうございます」
 夫婦がそのやしきにすんでみると、なるほどたしかに、へんなことがつづきました。
 かぜもないのに、行灯(あんどん→詳細)の火がきえたり、戸がガタガタとなったり、てんじょうからは、きもちのわるいわらいごえがきこえてきたりするのです。
「わしは、こんなやしきはごめんじゃ」
 だんなはおそろしくなって、もとの村へかえろうといいましたが、しっかりもののおかみさんはへいきです。
「いくらあやしいことがあっても、わたしらには、なんのわざわいもないではありませんか。村へかえりたいなら、ひとりでかえりなさい。わたしは子どもと、ここにのこります」
 そしてほんとうに、あかんぼうとふたりで、このやしきにのこりました。
 すると、そのばんおそく、ゆかいたがギシギシとなったかとおもうと、目の前におじいさんとおばあさんのゆうれいがでてきて、
「わしらは、このやしきの宝をまもる者じゃ。おまえは、しっかりもので度胸(どきょう)もある。まったくたいしたもんじゃ。このやしきの宝はおまえにやろう。これで、もう心残りはない。あすからはしずかになるから、あんしんしてくらせ」
と、宝のありかを教えてくれました。
 おかみさんが次の朝、ゆうれいにおしえられたところをほってみると、なんと千両箱がいくつも出てきました。
 正直者のおかみさんは、そのことを長者に知らせて、出てきた千両箱をすべて差し出しましたが、長者はニッコリ笑って、
「これは、まじめで正直なおまえにくださったものだ。わしはいらないから、おまえたち家族で使いなさい」
と、言ってくれました。
「はい、ありがとうございます」
 おかみさんは村に帰ってだんなを呼び戻すと、そのお金でしあわせに暮らしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 温度計の日
きょうの誕生花 → われなぐさ
きょうの誕生日 → われなぐさ


きょうの日本昔話 → ゆうれいのでるやしき
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5月13日の日本の昔話 地獄のあばれもの

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5月13日の日本の昔話

地獄のあばれもの

地獄のあばれもの

♪朗読再生

 むかしむかし、ある町に一人の医者がおりましたが、人の病をなおすどころか、自分が病にかかって死んでしまいました。
 死んだ人は三途(さんず)の川をわたり、あの世へいくのですが、よい行いをした人は極楽(ごくらく→天国)に、悪い行いをした人は地獄(じごく)に行くのです。
 そして極楽行きか地獄行きかは、えんま大王が決めるのでした。
 医者は、えんま大王にいいました。
「大王さま、わたくしめは医者でございます。生前(せいぜん→生きているとき)は、人々のお役にたったのでございます。どうぞ、極楽へやってくださいませ」
「こら! うそつきめ。お前はにせ医者で、あくどくもうけおったではないか」
「そんな、めっそうもない」
「だまれ! わしに口答えする気か。おまえは地獄行きじゃ!」
 医者は鬼につまみあげられ、ポイッとほうりなげられてしまいました。
「ヒャァーーッ!」
 落ちたところは、地獄へとつづく道でした。
 医者は覚悟を決めると、かたわらの石に腰をおろしました。
「どうせ地獄行きじゃあ。だれか、道づれが来るのを待とう」
 さて、次にえんま大王のところへきたのは、山ぶしでした。
 山ぶしは、えんま大王の前に進み出て。
「せっしゃは、人助けの山ぶしというて、世間のわざわいをとりのぞきもうした。まちがいなく、極楽行きでしょうな」
「うそをつくでない! おまえは神仏のたたりじゃというて、なんでもない人々から、金をまきあげたじゃろ!」
「と、とんでもない」
「お前は、地獄行きじゃあ!」
 山ぶしも、ポイッとほうりなげられました。
 地獄への道では、医者が待っていました。
「やあ、あんさんも地獄行きで? これで二人になったが、もう一人いれば心強いなあ」
 すると山ぶしも、腰をおろして、
「どうせ地獄行きじゃ。あわてる事はない。もう一人来るまで待とう」
 さて、次にあらわれたのは、かじ屋のおやじです。
「大王さま、おらは百姓(ひゃくしょう)のカマやクワをたくさん作って人助けしました。極楽行きでしょう」
「お前は鉄にまぜものをして、なまくら道具を売ったな! ほら、ちゃんとえんま帳(えんまちょう→生前の罪を書きとめるとされる帳面)に書いてあるわい」
「まぜものをしないと、安くはなりません。安くねえと、貧乏人には買えません」
「口答えするでない。地獄へ行け!」
 かじ屋もポイッとほうりなげられ、地獄への道までふっとんでくると、医者と山ぶしが、ニコニコ顔でむかえました。
「これで三人」
「では、ぼちぼちまいりましょうか」
 そんなわけで、三人はつれだって地獄の入り口、地獄門につきました。
 門番の鬼が、おそろしい顔で言いました。
「ほれ! さっさと入らんか。そして、あの山を登っていくんだ」
 三人が見ると、なんとそれは、するどい刃物がズラリとならんだ、つるぎの山でした。
「あんな山を登ったら、足がさけちまうよ」
「ど、どうしよう」
 医者と山ぶしがおろおろしていると、かじ屋がニッコリ。
「ここは、おいらにまかしとけ」
 なにをするのかと思えば、とりだしたヤットコ(→大きなペンチの様な道具)で、ポキポキとつるぎをへし折り、火をおこして、トンカン、トンカンと、それをうちなおしました。
「そら出来た。鉄のわらじだ。これをはいて歩けば大丈夫」
 三人は鉄のわらじをはいて、つるぎの山へのぼっていきました。
 するとポッキン、ポッキン、つるぎはおもしろいように折れてしまいます。
「うひゃー、こりゃあすごい! 後ろから来る者のために、道をつくっておこう」
 ポッキン、ポッキン、
 ポキポキ、ポッキン。
「それそれ、どんどん、折れ折れ」
 たまげたのは、鬼たちです。
「なんだ、あいつら!」
「た、たいへんだ! 大王さまに知らせねば」
 それを聞いたえんま大王は、おこったのなんの。
「つるぎの山に道を作っただと? ばっかも~ん! だまって見とるやつがあるか! さっさとひっとらえて、カマへほうりこめ。カマゆでじゃ~!」
 たちまち三人はつかまって、大きなカマの中にほうりこまれました。
 鬼たちは、下からドンドンと火をたきます。
「あちっちっち、こりゃいかん!」
「もうだめじゃ!」
 すると今度は、山ぶしが、
「ここは、わたしにまかせなされ。じまんの法力(ほうりき)を見せてくれる」
と、呪文(じゅもん)をとなえました。
「ぬるま湯になれ、ぬるま湯になれ。ナムウンケイアラビソワカ、か~っ!」
 すると不思議な事に、お湯は、ちょうどいい湯かげんになりました。
「おぬしの術は、たいしたもんじゃ」
「こんなりっぱな山ぶしどんを地獄に送るなんて、えんまも目がないのう」
「それにしても、いい湯じゃ」
「お~い、そこのオニたち。手ぬぐいをかしてくれんか。からだを洗いたいんじゃ」
 三人はすっかりいい気分で、うかれて歌まで歌いだすしまつ。
 さて、いかりくるったえんま大王は。
「うぬぬぬ、あやつら、地獄をバカにしおって! ゆるせん! ゆるせん! わしが、じきじきにせいばいしてくれるわ!」
 えんま大王は大きな手で三人をひとつかみにすると、ポイッと、口の中へほうりこんでしまいました。
 ヒューーーッ、ストーン!
 三人は、えんま大王のはらの中に落ちていきました。
「うむ、さすがはえんま大王のはらの中、なかなか広いわい」
 でも、おもしろがっている場合ではありません。
「あっ、なんだか体がムズムズしてきた」
「大変じゃ、体かとけてきた!」
「今度こそ、もうだめじゃ!」
 山ぶしとかじ屋は泣き出しましたが、医者はおちついたもので、
「心配するな。いま、体のとけぬ薬を作ったで、飲んでみなされ」
 その薬を飲むと、たちまち体はシャンとなりました。
 三人は大喜びで、えんま大王のはらの中を探検(たんけん)です。
「医者どん、これは何だ?」
「そりゃ、笑いのひもじゃよ」
 医者がその笑いのひもをひっぱると、えんま大王は、急に笑いだしました。
「ウヒ、ウヒ、ウヒャハハハハハー」
 今度は、泣きのひもをひっぱると、
「うぇーん、うぇーん。悲しいよう」
と、なみだがポロポロ。
 わけもなく、笑ったり泣いたりするえんま大王に、鬼たちはきみわるそうに顔を見合わせました。
「こりゃあ、おもしろい」
 はらの中の三人は、笑いのひもに、泣きのひも、それから怒りのひもに、くしゃみのひもと、あちらこちらのひもをメチャクチャにひっぱりました。
「ギャハハハハハッ、はひ? ガオーッ、ガオーッ、うぇ~ん、へっくしょーん!」
 いやはや、もう大変なさわぎです。
 山ぶしとかじ屋が大笑いしていると、医者がはらの中に、なにか薬をぬりながらいいました。
「さて、そろそろ下し薬をぬって、外へ出よう。うっひひひ。・・・これはきくぞ」
 泣いたり笑ったりしていたえんま大王は、急にはらをかかえて便所にかけこみました。
 ピー、ゴロゴロ。
 えんま大王のおしりから、医者、山ぶし、かじ屋が、次々と飛び出してきました。
 ニコニコ顔の三人を見た大王は、
「よくも、わしに恥をかかせたな。お前たちは、地獄におるしかくもないわい! とっととしゃばへもどれっ!」
と、三人を地上へふきとばしてしまいました。
 こうして、この世にまいもどった三人は、顔を見合わせて大笑い。
 それから三人は、いつまでも仲良くくらしたという事です。

おしまい

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5月12日の日本の昔話 いうな地蔵

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5月12日の日本の昔話

いうな地蔵

いうな地蔵

 むかしむかし、あるところに、すぐにけんかをする、あばれもののばくちうちがいました。
 大きなからだの力持ちですが、はたらきもしないで、
「なにかええことはねえもんかなあ」
と、まいにち、ブラブラしています。
 ところがある日、ばくちうちは、
「おれもこの土地さえでたら、ちったあ運がまわってくるかもわからん」
と、考えて、ヒョッコリと旅に出ました。
 けれども、運がまわってくるどころか、持っていたお金をすべて使い果たしてしまい、
「あーあ、はらはへってくるし、銭はなし。どうしたものか」
と、とほうにくれて、とうげのお地蔵(じぞう)さんの前にこしをおろしていると、下のほうから大きな荷物を重そうにかついでくる、ひとりの男がいました。
「これはしめた。あのなかにゃ、うめえもんがどっちゃりへえってるにちげえねえ。ひとつ、あいつを殺してとってやれ」
 ばくちうちは、近づいてきた男に声をかけました。
「おいこら! いったいなにかついどるんじゃい!」
 いきなりどなられた男は、ギョッとして、
「こっ、こりゃ食いもんじゃ」
「そんなら、みんなおいていけ! 銭も持ってるなら銭もだせえ!」
と、ばくちうちは男のかついでいる荷物をつかむと、むりやりひきずりおろそうとしました。
「い、いや、これはやれん。うちに持ってかえって食わせなならん。子どもらが、はらすかしてまっとんじゃ」
「そんなことはしらん! よこさんと殺すぞ!」
 ばくちうちは荷物を取り上げると、必死に取り返そうとする男をなぐりつけて、とうとう殺してしまいました。
「ふん! すぐにわたさん、おまえが悪いんじゃ」
 ばくちうちはまわりを見わたして、人がいないことを確かめると、そばにあったお地蔵さんにいいました。
「おい。見ていたのはおまえだけじゃ。だれにもいうなよ」
 そして、そのまま荷物を持って立ち去ろうとすると、お地蔵さんが、とつぜんしゃべりました。
「おう、わしはいわんが、わが身でいうなよ」
 そして、ニヤリとわらったのです。
「じ、地蔵がしゃべった!」
 ビックリしたばくちうちは、いそいで荷物をかつぐと、山道をころげるように走り去りました。
 それから何十年もすぎた、ある日のことです。
 あのばくちうちは、まだ旅をしていました。
 今ではずいぶん年もとって、どちらかといえば、人のよいおじいさんになっていました。
 旅のとちゅうで、ひとりのわかものと知りあい、そのわかものとすっかり仲がよくなって、ずっといっしょに旅をつづけています。
「あの山をこえたところに、おらのうちがあるんじゃ。ぜひよっていってくれ」
 わかものにそうさそわれて、ばくちうちは、
「そうか。では、ちょっとよせてもらおうか」
 話がまとまり、さっそくいそぎ足になったふたりがさしかかったのが、あのお地蔵さんのあるとうげでした。
 ばくちうちがお地蔵さんを見てみると、あの日のことなどまるでうそのように、お地蔵さんの口は一の字にしまっています。
 ばくちうちはつい、なかのよいわかものに、このお地蔵さんのことをしゃべりました。
「おい、おもしろいこと教えてやろうか?」
「ああ、なんじゃ」
「じつはな、この地蔵さんはしゃべるんじゃ」
「お地蔵さんがしゃべったりするかえ」
「ほんとうじゃ。げんにこの耳で、ちゃんときいたんじゃ」
「じゃ、なんてしゃべったね」
 そうきかれて、ばくちうちは、
「いいか、ぜったいにだれにもいうてくれんなよ。おまえだけにいうんじゃでなあ。ぜったいじゃぞ」
 なんどもなんどもねんをおすと、
「もう、ずいぶんむかしのことじゃ。そのころはまだ、おらもわかかったで、ずいぶん悪いこともしてきた。・・・じつはおら、ここで人殺してしまったんや。その殺した男というのが、・・・」
 わかものに、あの日のことを全部話してしまいました。
 それを聞いていたわかものの顔が、えんま大王のように、みるみるまっ赤になってきました。
「うん? どうした、こわい顔をして」
 わかものは、ばくちうちをにらみつけると、
「それはおらの親じゃ、かたきうちをしてやろうと、こうして旅をしながらさがしていたが、かたきはあんたじゃったのか。おのれ、親のかたき! かくご!」
 わかものはそうさけぶなり、ぬいた刀できりかかりました。
 ふいをつかれたばくちうちは、あっというまに、殺されてしまいました。
 そしてそのとき、あのお地蔵さんがしゃべったのです。
「ばかな男じゃ、わしはだまっていたのに、自分でしゃべりおったわい」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月11日の日本の昔話 海ぼうず

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5月11日の日本の昔話

海ぼうず

海ぼうず

 むかしむかし、あるところに、荷物船でにぎわう港がありました。
 あるときのこと。
 夏だというのに、今にも雪がふりだしそうな、はだ寒い天気です。
 船頭たちが集まって、
「どうしたわけだ。寒うてかなわん」
「おかしな日よりじゃ。こんな日は、船をださんほうがええ」
「ああ、なにがおこるか、わからんからな」
と、はなしあっておりました。
 すると、ひとりの船頭が、
「なあに、一日休めばそれだけだちんがへるわ。ゆうれい船でも海ぼうずでも、でてきよったら、とっつかまえてやるわい」
と、人がとめるのもきかずに、ひとりで荷物船をあやつって、港をでていきました。
 ところが、おきへでていくらもしないうちに、
「おうい、おうい」
と、だれかが、よぶ声がきこえてきたのです。
「はて、こんな海のなかで、なんじゃろ」
 ろを休めてあたりをみわたしましたが、なにもみえません。
「ふん、そら耳か」
 船頭はまた、ろをこぎはじめました。
 そんなことが、二ど、三どとつづきましたが、船頭はたいして気にとめず、船をすすめていると、こんどはすぐ後ろから、
「おうい、おうい」
と、きこえたのです。
 おもわずふりかえってみると、生白いものが、大きくなったり小さくなったりしながら、船のうしろにとりついていました。
「これは、海ぼうずだ!」
 船頭は、あわててひしゃくを手にすると、
「こうしてくれるわ!」
と、ひしゃくの頭で、海ぼうずをなぐりつけました。
 とたんに海ぼうずは、海のなかへもぐってしまいました。
と、おもうまに、ふたつになって顔をだしたのです。
 ビックリしてまたなぐると、こんどは四つになりました。
「な、なんてやつらだ」
 船頭がなぐればなぐるほど、海ぼうずは数をばいにしていきます。
 そうして、うすきみ悪いわらい声をだしながら、きゅうに小山のように大きくなったり、みるみるしぼんだりしながら、船のまわりにとりついてきます。
「こりゃ、どうもならん」
 船頭はひしゃくをなげすてると、力まかせにろをこぎだしました。
 ところが、海ぼうずたちがじゃまをして、船は前にすすみません。
 それどころか、右へ左へと、船をゆさぶるのです。
 船頭がきもをつぶして、
「た、たすけてくれ!」
と、さけぶと、海ぼうずたちのすがたが、フッと、きえてしまいました。
「・・・ああ、たすかったか」
 ホッと息をついてあたりをみまわすと、また、海がザワザワとさわぎはじめ、こんどは、さっきなげすてたひしゃくと同じものが何十本もでてきて、船のなかへ、ザブンザブンと、水をくみ入れはじめたのです。
「な、なにするか!」
 けんめいに水をかきだしますが、間に合いません。
 海ぼうずたちは、つぎつぎに顔をだして、
「はよう、しずんでしまえ。しずんでしまえ」
と、いいながら、あとからあとから、水をくみ入れました。
「やめてくれえ。たすけてくれえ」
と、船頭がなきさけびますが、水はドンドンあふれて、ついに船はしずんでしまいました。
 海へなげだされた船頭は、死にものぐるいでおよぎはじめましたが、すぐに足をつかまれ、くらい海の底へ引きずり込まれてしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 長良川鵜飼い開き
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5月10日の日本の昔話 あまのじゃくくらべ

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5月10日の日本の昔話

あまのじゃくくらべ

あまのじゃくくらべ

 むかしむかし、彦一(ひこいち→詳細)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 彦一の村に金作(きんさく)という、つむじまがりのおじいさんがすんでいました。
 人が山といえば、川というし、右といえば左といいます。
 どうしようもなくあまのじゃくで、がんこなおじいさんでした。
 村の人たちは、すっかりこまりはてて、ある日、彦一のところにやってきました。
「のう、彦一。おまえさんのちえで、金作じいさんのつむじまがりをなんとかなおしてくれないか」
 彦一は、ちょっと考えていましたが、
「わかった。おらにまかせておくれ」
と、ニッコリ笑ってこたえました。
 あくる日、彦一は金作じいさんのところへやってきていいました。
「こんちは、金作じいさん。いい天気だね」
「おう彦一か。なにが、いい天気なもんか。こんなに日ばかりてっていては、道がかわいて、ほこりがたってしょうがないわい。雨でもふりゃあいいんだ」
「あらら、さすがは、あまのじゃくで有名な金作じいさんだね」
 彦一はニヤニヤしながら、
「ねえ、じいさん。あしたからおれと、あまのじゃくくらべをしようじゃないか」
「なに、あまのじゃくくらべだと」
 金作じいさんは、うれしそうに、彦一の方を向きました。
「そうだよ。なにをいっても『うん』ってへんじをしないで、はんたいのことをいうのさ」
「アハハハハハッ。バカなやつじゃ。わしゃ、子どものころからのあまのじゃく。おまえがいくらとんち小僧といっても、あまのじゃくくらべで、わしにかなうわけがなかろう」
「さあね。かなうかかなわんか、あしたからくらべっこしよう」
「ようし。まけてなきべそかくな。わしにまけたら、もう、とんち小僧なんていわせんぞ」
「いいとも」
 さて、あくる日のことです。
 金作じいさんは、川へさかなをつりにいきました。
「ほう、きょうはようつれるわい」
 すぐに、カゴにいっぱいのさかながつれました。
「ずいぶんつれたぞ。さて、帰るとしようか」
 金作じいさんは、つりざおをしまうと、さかながいっぱい入ったカゴをぶらさげて、帰ろうとしました。
 そこへ、彦一がやってきて、
「やあ、じいさん、さかなつりかい?」
と、ききました。
『うん』と、こたえたら、あまのじゃくくらべにまけてしまいます。
 そこでじいさんは、
「なあに。さかなをすてにきたのさ」
と、こたえて、さかなの入ったカゴをポンと投げすてました。
 すると彦一は、ニッコリ笑って、
「もったいない。すてたさかななら、おらがひろっていこう」
と、さかなのカゴをかついで、さっさといってしまいました。
「彦一め! よくもやったな」
 金作じいさんは、腹がたってなりません。
 そのあくる日。
 金作じいさんは、彦一が田んぼでイネかりをしているのをみつけました。
「しめたぞ。あのイネをとりあげてやろう」
 金作じいさんは、ノコノコと彦一のところへやってきて、
「おう、彦一。イネかりか?」
と、声をかけました。
 彦一も、ここで『うん』と、いったらまけになるので、
「いいや、イネすてだよ」
と、こたえました。
 それをきいて金作じいさんは、うれしそうにわらって、
「ほう、すてたイネなら、わしがひろっていこう」
と、彦一がかったイネを、みんなかついで、村のほうへもっていってしまいました。
 けれども彦一は、平気な顔で、おじいさんのあとについて歩くのです。
 そして、じぶんの家の前までくると、
「金作じいさん。おらのたんぼにイネをひろいにいったのかい?」
と、いいました。
 金作じいさんはすかさず、
「いいや。イネかりにいったのさ」
と、こたえました。
「アハハハハハッ。かりたものなら、かえしておくれよ」
 彦一はそういって、イネをみんなとり返してしまいました。
 金作じいさんは、彦一のイネを、田んぼから家まではこんでやったようなものです。
 さすがの金作じいさんも、これにはすっかりまいってしまいました。
「いやいや、おまえはたしかに、たいしたとんち小僧だ。この勝負は、わしの負けだ。もう、あまのじゃくはいわないことにするよ」
 金作じいさんは、それからはすっかりすなおな、よいおじいさんになったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日本気象協会設立記念日
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きょうの誕生日 → 1970年 トモ (芸人)


きょうの日本昔話 → あまのじゃくくらべ
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5月9日の日本の昔話 ばばいるか

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5月9日の日本の昔話

ばばいるか

ばばいるか

 むかしむかし、山のなかの一けん家に、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
 子宝にはめぐまれませんでしたが、ふたりはひともうらやむほどに、なかむつまじくくらしていました。
 あるとき、おじいさんがいいました。
「ばば、わしもそろそろ年じゃ。いつ死なんならんやもしれんが、わしゃ、死んでも墓にゃ入りとうない。いつまでも、このざしきにおいてくれ」
 それからいく日もせず、ほんとうにおじいさんは、ポックリ死んでしまったのです。
「じいさまとの約束じゃ。墓にうめるこたあでけん」
 おばあさんはそういって、おじいさんを生きていたときのまんまのすがたで、ざしきにかざっておいたそうです。
 そして、死んだおじいさんが夜になると、
「ばばいるか、ばばいるか」
と、よぶのです。
 おばあさんはそのたびに
「ああ、ああ、おるわいやあ」
と、へんじしていましたが、まい夜、こうへんじばっかしていては、村に用たしにもでられず、こまっていました。
 そんなあるばんのこと、だれかが家の戸をたたきます。
「こんなおそうに、いったいだれやろう」
 戸をあけてみますと、大きな荷物をしょった男がたっていました。
「わたしは薬売りじゃけんど、とちゅう道にまようてしまい、日はくれるやら山道やらで、ホトホトこまっとるけん、どうか今夜ひとばんとまらしてもらえんじゃろか」
 男はいってたのみました。
「そりゃあ、なんぎなことで。こがなきたなげなうちでよけりゃあ、さあさ、とまりんさい」 
「こりゃあ、ありがたい。地獄で仏とは、このとこじゃ。そんならひとばんおたのみもうします」
 そういうて薬売りは荷をおろすと、足を洗って、いろりにすわりました。
 するとおばあさんは、こりゃあええとばかり、
「薬屋さん、お客のあんたにたのんではえらいすまんが、わしゃあ、今夜あんたがきてくれたをさいわいに、ちょっとばかり用たしにでてくるからに、るすばんしとってもらえんやろか。じきにもどるけん」
「ああ。そのくらい、たやすいこと。まあ、いってきんさい。わたしがるすばんしよるわい」
 おばあさんはよろこんで、そそくさと身じたくをすますと、
「じつはな、おくのざしきに死んだじいさまをまつってあるが、わしをこいしがってからに、ときどき、『ばばいるか、ばばいるか』いうてたずねるけんのう、そのときにゃあ、『ああ、ああ、おるわいやあ』ていうてやってくだされ。それだけでいいけんのう」
「はあ、たやすいことで。そんなら、いってきんさい」
 そうはいったものの、薬売りはひとりになってみて、
「なんや、心細うなってきた。こまったことをうけおうたぞ」
と、おもいましたが、このあたりには、ほかにうちもないので、しかたありません。
 するとさっそく、おくのざしきから、
「ばばいるか、ばばいるか」
と、おじいさんのこえがしました。
「ああ、ああ、おるわいやあ」
 薬売りは、おばあさんに教えられたとおりにへんじしましたが、またしばらくすると、
「ばばいるか、ばばいるか」
 ぶきみなこえに、せすじがゾゾッとします。
「ああ、ああ、おるわいやあ」
 薬売りのこたえるこえが、ふるえてきました。
 すると、またじきに、
「ばば、今夜は寒いのう。かぜひかんよう、ぬくうしとれや」
 さっきとはちがう言葉に、薬売りはなんとこたえていいかわからず、
「ああ、ああ、おるわいやあ」
と、いうと、
「ばば、わしのいうことをきいとらんのかい」
 あわてた薬売りは、
「ああ、ああ、おるわいやあ」
 またおなじ返事をすると、
「ばば、ばば、ほんとうにばばかえ」
 ふすまがスーッと開いて、おくのざしきから骨と皮ばっかりのおじいさんがでてきました。
「ウギャーーーー!」
 薬売りはおそろしくなって、そのまま外に逃げだしてしまいました。
 すると、骨と皮のおじいさんが、
「ばば、まってくれ。わしをおいていくな」
 逃げる薬売りを追いかけていき、二度ともどって来なかったそうです。 

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月8日の日本の昔話 牛池

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5月8日の日本の昔話

牛池

牛池

 むかしむかし、とある山の中に、美しい水をたたえた、深い池がありました。
 その池から、さほど遠くないところに、小さな山里がありました。
 その山里のある家に、よくの深いおばあさんと、気立てのやさしい娘とが住んでおりました。
 その家のまどから娘が顔をのぞかせると、外はふりつづく白い雪です。
「烏やウシに生まれたほうが、どれほどよかったかしれねえな・・・」
 娘は、まどの外をながめながら、そう思うのでした。
「こらっ、また機(はた)をはなれとるな。このなまけもんが!」
 おばあさんがおそろしい声をはり上げます。
 娘は、くる日もくる日も、機をおらされているのでした。
 娘のおる反物(たんもの)は、たいそう高く売れました。
 ですから、よくの深いおばあさんは、娘を一日として休ませなかったのです。
「よその娘は、一冬に四反もおりあげるちゅうのに、このグズ娘がっ!」
 おばあさんが部屋を出ていくと、娘はそっと、なみだを流しました。
「おらに、四反もおれるわけねえ。でも、少しでもおらないと、おまんまがたべられねえ」
 娘はさむさにふるえながら、機おりをはじめました。
♪おら機おる だれが着る
♪べべ着て おしろいぬって
♪うれしかろ うれしかろ
♪どこのだれやら 顔見てえな
 悲しく歌いながら機をおる娘のとなりの部屋では、おばあさんが、反物を売って何を買おうかと考えていました。
♪一度 機屋たずねてこ たずねてこ
♪ひやめし食わしょ たこ食わしょ
♪手のたこ食わしょ みそつけて
 こうしているうちにも、春がきました。
 家から出してもらえない娘も、春はやはりうれしいものです。
 ある日のこと。
 まどべに一わの白い小鳥がまいこんできました。
 まどにとまる小烏に、娘は思わず見とれて、機をおる手足の調子をみだし、機のたて糸をバッサリ切ってしまいました。
 切れた糸を見たおばあさんは、くるったようにさけびました。
「なおせ! なおせ! なおらんうちは、めしを食わさんからな!」
 おばあさんがねてしまった夜中、娘はフラフラと外へさまよい出ました。
 なにもかもねしずまって、物音ひとつしない春の夜。
「こんなに、こんなに、外はきれいなのに。おらは、いつも家の中。・・・どこかへ行きたい」
 娘はせつなくなって、そのままなきくずれてしまいました。
 ふと、なにかがそばにきた気配に、娘が顔をあげると、目の前にウシがいます。
 おばあさんのかっているウシが、娘のなみだにぬれた目をジッとみつめました。
 ウシは、娘をせなかにのせ、月の光の中を、ゆっくりゆっくりと歩きだし、そのままどこかへ行ってしまいました。
 それから、長い長い年月がながれ、いつのまにか、山の池には牛池という名がついていました。
 そしてふしぎなことに、月の明るいばんには、牛池のあたりから、トンカラリ、トンカラリと、機をおる音が聞こえてくるということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界赤十字デー
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きょうの誕生日 → 1965年 さくらももこ (漫画家)

きょうの新作昔話 → 山姥(やまんば)
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5月7日の日本の昔話 あぶらとり

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5月7日の日本の昔話

あぶらとり

あぶらとり

 むかしむかし、ある村に平作(へいさく)というなまけものがいました。
 いい年をしているくせに、嫁もむかえず、仕事もほったらかしで、日がな一日ゴロゴロしているのです。
 村人はあきれてしまい、あいてにしませんでしたが、平作は観音様(かんのんさま→詳細)に、
「観音さんや、おら、ずいぶんはたらいてきましたで、これからは、うまいものを食うてあそんでいられるところを教えてくだせえまし」
と、お願いしたのです。
 すると、観音さまがゆめまくらにあらわれ、
「平作、あすの夜明けに西へすすんでいくがよい。すれば、おまえのねがったところへいけるぞよ」
と、おつげをしてくださりました。
 平作は、一番どりをまってとびおきると、西へむかって走っていきました。
 村をぬけ、野原をつっきり、川をとびこえ、山をこえると、なんと海にでてしまいました。
「なんだ。ここでいきどまりでねえか。ここが、おつげのところか?」
 平作があたりをみまわすと、一けんのあばら家がありました。
 なかをのぞくと、しらがをふりみだしたおばあさんがでてきて、ジッと平作をみつめます。
 平作が観音さまのおつげをはなすと、
「ああ、それ、それ。それはむこうの島だ」
と、いいます。
 平作は、島といわれてこまっていると、
「なんもしんぱいいらん。浜にたって手を三つたたけば、むかえの舟がくるわい」
と、いって、おばあさんは、おくへひっこんでしまいました。
 平作はいわれるままに浜にたって、手をパン、パン、パンと三つたたきました。
 すると、おきから波をけって、一そうの舟が浜に近づいてきます。
 よくみると、ひとりのおじいさんがのっていて、ろで舟をこいでいます。
 おじいさんは浜にあがると、平作にうやうやしくおじぎをして、
「おむかえにあがりましたで、どうぞ」
と、いいました。
 平作が舟にのると、舟は波をきっておきへすすみ、あっというまに島へつきました。
「平作どんといいましたな。おめえさまのねがいは、よーくわかっております。このさきのやかたへいってみなされ」
 おじいさんはそういうと、どこかへいってしまいました。
 平作は坂をのぼると、石がきにかこまれたやかたがありました。
 門の前にたって、
「もうし、もうし、おつげのうちはここですか」
と、いうと、なかからあぶらぎった男があらわれ、
「おお、遠いところよくきてくださった。おまちしておりましたぞ」
と、おくのへやへと案内しました。
 そこには、酒やさかながならべてあります。
「えんりょはいらん。さ、やってくだせえ。さ、さ」
と、男は酒をついでくれました。
 平作は、しこたまのんで食って、ねてしまいました。
 しばらくして目をさますと、男がすわっていて、
「さあのめ、さあ食え」
と、またまた酒をついでくれるのです。
「この世の中にも、こんなすばらしいところがあったのかいな。さすが観音さまのおつげだ」
 平作は毎日、朝からのんでねむり、食ってねむっていました。
 日がたつと、平作はまるまると太って、からだじゅうがギラギラとあぶらぎってきました。
 その平作を、男はまんぞくそうにながめて。
「ようこえなすったな。おめえさんをみれば、だれだってきたがりますで、ここから一歩も外へでたり、ほかのへやをのぞいたりせんでくだされ。さ、さ」
と、いって、男はまた、酒をついでくれます。
 あるばんのこと。
 平作がしょうべんにいこうとすると、むこうのへやからうめき声がしてきました。
「こんな夜中に、いったいなんだべ」
と、戸のすきまからなかをのぞいてみると、
「あーっ!」
 平作は、血の気をうしなってしまいました。
 へやのまんなかには、炭火が真っ赤にもえており、その上になべがグラグラとにえたぎっています。
 そして、てんじょうからは、男がさかさづりにされて、目から鼻から、口から耳、いや全身から、あぶらがポターリ、ポタリと、なべのなかにたれているのです。
 ろばたには、あの男がすわっていて、ときどき、なべのなかのあぶらをすくっては、あじみをしています。
「うん、だいぶこくなってきたぞ。だが、まだたらんわい。これに平作のあぶらをたすとするか。やつには、しこたま酒やさかなを食わしてきたでな。あしたが楽しみじゃ」
 こわくなった平作は外へととびだし、ドンドンと逃げ出しましたが、やかたの男が、
「まてえ、まてえ、平作!」
と、おいかけてきました。
 平作はふとっているので、おもうように走れません。
 ころんではおき、手や足をすりむきながら、やっとのことで浜につきました。
「まてえ、動くなっ!」
 男の声は、だんだん近づいてきます。
 平作が、もうこれまでとおもったとき、うまいぐあいに舟をみつけました。
 そしてそれにとびのって、島をはなれていきます。
「やれやれ、たすかった」
と、思って海を見てみると、男も舟でおってくるのです。
「こらいかん。どこかにかくれねば」
と、平作は、そこらをさがして舟小屋をみつけると、そこにとびこんで息を殺していました。
 男は、小屋のまわりをウロウロしています。
「たしかにここへきたはずだぞ。このなかにいるにちがいねえ」
 男は小屋にドカドカと入ってきて、手あたりしだいに、ヤリで突き刺します。
 平作は、もう生きた気がしません。
 ブルブルとふるえていると、
「はーん、ここにおったか。平作! かくごせいっ!」
と、男はヤリをつきさしました。
「た、たすけてくれえーー!」
 平作がさけんで目をさますと、なんとそこは、観音堂だったのです。
 むしのいい願い事をする平作を、観音さまがこらしめたのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 博士の日
きょうの誕生花 → 薔薇
きょうの誕生日 → 1979年 窪塚洋介 (俳優)


きょうの日本昔話 → あぶらとり
きょうの世界昔話 → 天の猟師オリオン
きょうの日本民話 → 湖山長者
きょうのイソップ童話 → ラクダとゾウとサル
きょうの江戸小話 → かまが大事

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5月6日の日本の昔話 旅人ウマ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 5月の日本昔話

5月6日の日本の昔話

旅人ウマ

旅人ウマ

 むかしむかし、あるところに、ふたりのわかものがいました。
 ひとりは金持ちむすこで、もうひとりは、びんぼうむすこでしたが、ふたりはたいそうなかがよくて、いっしょに旅にでることにしたのです。
 テクテクと歩いていたある日のこと、山のなかで日がくれてしまいました。
 ふとみると、一けんの家があります。
 ひとばんとめてもらおうとたのむと、おばあさんがでてきて、なかへ入れてくれました。
 ふたりがねた、真夜中のこと。
 びんぼうむすこは、ふと目がさめて、ねむれなくなりました。
 となりのへやには、まだあかりがついています。
「ばあさまは、まだおきているのか。少し、はなしでもしよう」
 そうおもい、なかをのぞいてみると、おばあさんが火の気のないいろりにかがみこんで、いっしょうけんめいに灰をかきならしていました。
 そのかっこうが、なにやら田をたがやしているのににているので、
「おかしなことするもんだな」
と、かげからみていました。
 しばらくするとおばあさんは、ふところからふくろをとりだして、タネのようなものを灰のなかにバラバラとまきました。
 すると、みるみる芽がでてきて、なえがはえそろいます。
 おばあさんは、それをつまんでぬくと、田うえをするときのようにうえかえ、あれよあれよといううちに、かぶが二倍にふえて、それがまもなく黄色になって、たわわないねになりました。
 こんどは、それをかりとって実を落とし、それを手にとってギュウギュウギュウと三かいにぎると、もうまっ白いもちができあがっていました。
 ふしぎなこともあるもんだと、かんがえていったむすこは、きゅうに、ドロ沼にひきずりこまれるようなねむ気がさしてきて、ふとんにのめりこむようにしてねてしまいました。
 やがて夜が明けて、目をさましたむすこが、あれはゆめだったのだろうかと、ボンヤリとかんがえていると、
「あついお茶入れましたで、どうぞ」
と、おばあさんによばれました。
 金持ちむすこは、もういろりばたにこしをおろして、おばあさんと茶をのんでいます。
 そのそばに、ゆうべのもちがあります。
 びんぼうむすこは、金持ちむすこのそばにとんでいき。
「あやしいもちじゃあ、食わんほうがええぞ」
 しきりにそでひっぱったりして、教えましたが、
「うまそうなもちじゃのう、ひとつごちそうになろうか」
と、ほおばってしまいました。
 すると、たちまち金持ちむすこのからだが、ガクンと前におれて、あっというまにウマになってしまったのです。
「やはり、ゆめではなかった!」
 びんぼうむすこは、わけもわからず、おばあさんのところをにげだしました。
 けれど、なかよしの友だちをほうっておくわけにはいきません。
 あっちのもの知り、こっちの医者にと、たすける方法をきいてまわりましたが、だれも知っているものはいません。
 とほうにくれて、道ばたの石にこしをおろしていると、白いひげのおじいさんがとおりかかりました。
 むすこは、さいごのたのみとおもって、
「もの知りなおかたとおもうておたずねします。どうぞ、ウマになった友だちをたすける方法を教えてください」
と、たのみました。
 すると、おじいさんは、
「ここから東にいくと、ナスの畑がある。そこで、一本の木に七つ実がなっているのをさがして、食べさせよ」
と、教えてくれたのです。
 むすこは、おじいさんのいうとおり、東に歩いていきました。
 すると、おじいさんのいったとおりに、ナス畑があります。
 大喜びで、一本の木に実が七つなっているのをさがしてまわりましたが、一本の木に五つなっているのしかみつかりません。
 そこで、また東に歩いてみました。
 するとまた、ナス畑がありました。
 そこには、一本の木に実が六つのはありますが、七つのはありません。
 しかたなくまた東へ、東へと歩いていくと、また畑がありました。
 そこでやっと、実が七つなっているのをみつけることができました。
「これで、たすけられる」
 むすこはナスをふところにねじこんで、走りに走ってもどってきました。
 おばあさんの家へつくと、ウマはちょうど、のらしごとからかえってきたところです。
 さんざんぶたれたり、はたらかされたりしたらしくて、全身ドロだらけで、せなかの皮はむけて、血がにじんでいます。
 むすこはウマに近づくと、
「これを食え、食えばもとにもどれる」
と、ナスをとりだしました。
 すると、ウマはサクサクと四つ食べましたが、あとは頭をふって食べようとしません。
 むすこは、
「みんな食わんと、人間にもどれんのだぞ」
と、むりやり口のなかにおしこんで食べさせます。
 そうして、ちょうど七つめを食べおわったとき、ウマは大きくいなないてたちあがると、頭、胴と、だんだんに金持ちむすこのすがたにもどっていきました。
 ふたりのむすこは、手をとりあってにげだして、自分たちの村へかえっていきました。
 そこで金持ちむすこは、びんぼうむすこにざいさんわけてやって、なかよくくらしたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ゴムの日
きょうの誕生花 → しゃが
きょうの誕生日 → 1972年 高橋尚子 (マラソン)

きょうの新作昔話 → 娘に恩返しをした水牛
きょうの日本昔話 → 旅人ウマ
きょうの世界昔話 → コウノトリ
きょうの日本民話 → 一日おくれのショウブ売り
きょうのイソップ童話 → キツネとお面
きょうの江戸小話 → いしゃちがい

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5月5日の日本の昔話 ちゃくりかき

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5月5日の日本の昔話

ちゃくりかき

ちゃくりかき

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 ある日のこと、きっちょむさんが、お茶とカキとクリの実をかごに入れると、肩に背負って、
「さあ、これを売りにいこう」
と、町へ出かけていきました。
「さて、茶とカキとクリの実を、どういって売って歩けばいいかなあ?」
と、きっちょむさんは考えました。
 そして、大きな声で、
「ちゃくりかき、ちゃくりかき!」
と、どなって歩いていきました。
 ところが、いくら歩いても、ちっとも売れません。
 とうとうタ方になってしまって、きっちょむさんは一つも売れないかごを背負って、トボトボとうちへ帰ってきました。
 近所の人がそれを見て、
「おや、なぜそんなに売れなかったのかなあ。きっちょむさんは、いったいどういって売って歩いたのだね?」
「うん、ちゃくりかき、ちゃくりかきと、どなって売って歩いたのに、ちっとも売れなかったんだよ。変だなあ」
「アハハハハハッ。そんなわからぬ売り声では、だれも買わないのがあたりまえだ」
「じゃあ、どういう売り声ならよいのだ?」
「ちゃくりかきと、一口にいってしまってはだめだよ。茶は茶、クリはクリ、カキはカキと、別ベつにいわないといけないよ」
と、教えてくれました。
「なるほど、じゃあ、あすはそういって売ることにしよう」
と、きっちょむさんは、うなずきました。
 そのあくる日、きっちょむさんは、
「よし、きょうは、うまくやるぞ」
と、またかごをかついで、元気よく出かけました。
 そうして、町へやってくると、
「きのうのように、ちゃくりかきは、だめなんだな。みんな、別べつにいうんだな」
 そして、大きな声で、
「えー、茶は茶で別ベつ。クリはクリで別ベつ。カキはカキで別ベつ」
と、どなり続けましたが、やはり、だれも買ってくれる人はいません。
 ガッカリしたきっちょむさんは、
「やれやれ、きょうも、ちっとも売れない」
と、重いかごを背負って、うちへ帰ってきました。
 近所の人がそれを見て、
「あれ、また売れなかったんだね。いったい、どんな売り方をして歩いたんだい?」
「うん、きのうおそわったとおりに、別ベつにいったよ。茶は茶で別ベつ。クリはクリで別ベつ。カキはカキで別ベつと、そういって歩いたんだ」
「なんてまあ、あきれた呼び方だ。それじゃあ、三つも売れないのがあたりまえだ」
 そういって、大笑いしました。

おしまい

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5月4日の日本の昔話 田植え地蔵

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5月4日の日本の昔話

田植え地蔵

田植え地蔵

 むかしむかし、あるところに、はたらき者のおじいさんとおばあさんがすんでいました。
 二人は毎日なかよく、山の田んぼに出かけます。
 途中の道ばたに、小さなおじぞう(→詳細)さまありました。
 おじいさんとおばあさんは、毎日そのおじぞうさまに手を合わせます。
「今日も元気で働けますように」
 そう言って、熱心にお参りしました。
 春が過ぎて、田うえの時期が来ました。
「さあさあ、田うえじゃ、田うえじゃ」
 けれども、曲がった腰をさすりながらでは、なかなか田うえははかどりません。
 そこへ、クリクリ頭の元気な男の子がやってきました。
「おいらが手伝ってやろうか?」
「それはありがたい。それじゃあ、たのもうか」
 男の子が田うえを始めると、そのしごとの早いこと早いこと。
 たちまち田うえは終わってしまいました。
 おじいさんもおばあさんも大喜びです。
「田うえが終わったから、おいらは帰る」
 男の子は大急ぎで山を下りていきました。
 男の子に田うえのお礼をしようと、おじいさんとおばあさんは後を追いかけましたが、いつものおじぞうさまのところで、男の子を見失ってしまいました。
「あの、おじぞうさま、このへんに男の子は通らなかったかのう」
 そう言っておじぞうさまの足元をふと見てみると、田んぼの泥がベッタリとついています。
 顔もよく見てみると、なんと、さっきの男の子にそっくりではありませんか
「おやおや、わしらの田うえを手伝ってくれたのは、おじぞうさまでしたか、ありがたい、ありがたい」
 ふたりはそれからも、毎日毎日おじぞうさまに手を合わせました。

おしまい

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5月3日の日本の昔話 じぞうの田うえ

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5月3日の日本の昔話

じぞうの田うえ

じぞうの田うえ

 むかしむかし、あるところに、よくはたらくわかものがすんでいました。
 田をたがやすのも、畑をつくるのも、ひとりでしました。
 わかものは田へでかけるとき、畑からうちへもどるとき、いつも村はずれのおじぞう(→詳細)さまに、ていねいに手をあわせて、おがみました。
「ありがたい。おじぞうさまはありがたい。おじぞうさまをおがんでいると、こころがはればれする。あなたもおがんでごらんなさい」
 村の人にも、こういってすすめました。
「そんなにおじぞうさまをおがんで、なにかいいことがありますか」
 村の人がきくと、わかものはわらってこたえました。
「わたしは、おじぞうさまがすきなのです。いいことがなくてもよいのです。おじぞうさまのニコニコしたお顔をみると、きもちがよいのです」
 そのわかものが、びょうきになりました。
 ちょうど、田うえをするころで、一日もあそんではいられないときです。
 田うえがおくれては、よいイネはできません。
「こまったな。はやくおきて、田うえをしたいものだ」
 わかものは、こころのなかでおじぞうさまにたのみました。
「おじぞうさま、びょうきをなおしてください。わたしは、はやくはたらきたいのでございます。はたらくほど、きもちのよいことはありません」
 そのばんのことです。
 村の人が、わかものの田のそばをとおると、だれかが田のなかにたっていました。
「こんばんは」
と、いうと、
「はい、こんばんは」
と、こたえました。
 村の人は、ふしぎにおもいました。
 いままでみたこともない、どこかの人です。
 その人は、つぎの日も、わかものの田に入っていました。
 ひとりで、せっせと田うえをしていたのです。
「こんにちは」
と、いうと
「はい、こんにちは」
と、こたえました。
 そのしらない人は、とてもしごとがはやくて、ひと晩と一日で、わかもののうちの田うえを、すっかりすませてしまいました。
「ふしぎな人だ。いったい、どこのだれだろう」
 村の人たちは、うわさをしました。
 うわさが、殿さまにもきこえました。
 殿さまは、そのしらない人をお城によびました。
「おまえは、びょうきのわかものの田うえをしてやったそうだな。かんしんなことだ。よその人のこまっているのをたすけるのは、よいことだ。ほうびにいっぱいのめ」
 殿さまは、お酒をのませました。
「ありがとうございます」
 だれもしらないどこかの人は、うまそうにお酒をのみました。
「もっとのめ、もっとのめ」
 殿さまはすすめました。
 しらない人は、顔をまっかにして、手をふりました。
「もうのめません。これでかえります」
 フラフラッとたちあがりました。
「まてまて」
 殿さまはよびとめました。
「このさかずきをおまえにやろう。また、酒をのみたくなったら、ここへまいれ」
と、さかずきをやりました。
 しらない人は、さかずきをヒョイと頭にのせ、フラフラしながらかえっていきました。
 びょうきのわかものは、このはなしをきいて、くびをひねってかんがえました。
「うちの田うえをしてくれた人って、いったいだれだろう?」
 いくらかんがえてもわかりません。
「だれだかしらないが、ありがたいことだ。これも、おじぞうさまのおかげにちがいない。おれいにいってこよう」
 わかものは、すこしからだがよくなったので、おじぞうさまのところへいきました。
「おじぞうさま、おひさしぶりですね。・・・あっ!」
 わかものはおじぞうさまをみて、ビックリしました。
 おじぞうさまの頭の上に、さかずきがチョンとのっていました。
 そればかりではありません。
 足には田んぼのドロが、こびりついていました。
「おじぞうさま、田うえをしてくださったのは、あなたでしたか。このさかずきは、殿さまからいただいたさかずきで、ドロは田の土でございましょう。おかげさまで、ことしもおこめがとれます。わたしがびょうきだったので、おほねおりをかけました。もったいない、もったいない」
 わかものは、おじぞうさまの足のドロを、きれいにおとし、お酒をかってきて、おじぞうさまにあげました。

おしまい

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5月2日の日本の昔話 雷さまとクワの木

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5月2日の日本の昔話

雷さまとクワの木

雷さまとクワの木

 むかしむかし、お母さんとニ人ぐらしの男の子がいました。
 ある日、お母さんが男の子にいいました。
「畑にナスをうえるだに、ナスのなえを買ってきてくんろ」
「はーい」
 男の子は、いちばんねだんの高いなえを、一本だけ買ってきたのでした。
「なんで、もっとやすいなえをいっぱい買ってこなかっただね」
「さあ? なんでだかわからねえ」
 でも男の子は、心のなかで、そっと思いました。
(一本きりでも、ねだんの高いなえは、きっとたくさん実がつくだよ)
 男の子の思っていたとおりでした。
 何日かすると、ナスのなえはグングンのびていったではありませんか。
「どうだ、おっかあ。やっぱ、ねだんの高いなえはちがうじゃろう。わあ! 雲までのびていったあ」
 ナスのくきは、雲をつきぬけていきました。
「アハハ、アハハ、うれしいなあ」
 男の子は、いつまでも空を見上げています。
 ナスは、うすむらさきの花をちらせた後、それはそれはみごとな実をいっぱい実らせたのです。
 つぎの日の朝、男の子は家からはしごを持ち出しました。
「これ、どこいくだ。あぶねえからやめとけ。こらっ!」
 お母さんがはしごをとりあげようとしましたが、男の子はナスの木に、はしごをかけてのぼっていきます。
「あぶなくねえだ。ちょっくら雲さ見てくる」
「これっ、やめなってば。おちたら死んでしまうでねえだか。あん人も、屋根からおっこちて死んだんだ」
 お母さんは、いまにも泣き出しそうな顔で男の子を見送りました。
♪とうちゃん死んだの、五年前。
♪三十ちょっとで、こんころり。
♪あれからかあちゃん、泣き虫だい。
♪だけどおらは、強虫ころり。
♪山さのぼって、こんころり。
♪田んぼさもぐって、こんころり。
♪こんころり、こんころり。
 男の子は、うたいながら、
「うんしょ、よいしょ」
と、天にのびたナスの木をのぼっていきました。
 男の子は、いつのまにか雲の上に出ていました。
 なんと雲の上には、りっぱなおやしきがあります。
 男の子はふしぎに思って、おやしきのとびらを、そうっとあけてみました。
「あっ、星だ、星だっ!」
 そこは、星の世界でした。
 そして、男の子の目の前に、ナスを持ったおじいさんがいました。
「それは、おらのナスでねえだか?」
「ほう、このナスは、おまえさんがうえたナスか。毎日毎日、おいしくいただいていますよ。それなら、おまえさんに、なにかおれいをしなきゃならんなあ」
と、いうわけで、男の子はおじいさんにつれられて、雲の上をどんどん、どんどん歩いていきました。
 おじいさんのおやしきにつくと、二人のきれいな娘がおりました。
「わあっ、おどろいただなあ」
 おじいさんと娘たちは、男の子にたくさんのごちそうを出して、歌ったりおどったり、楽しいえんかいがはじまりました。
「ほれ、ほれ。そりゃ、そりゃ」
「いいぞ、いいぞ」
 えんかいは、いつまでもいつまでもつづきました。
 やがて星が消え、朝の光がさしこんできました。
 おどりつかれたのか、男の子はいつのまにかねむってしまいました。
 男の子にとって、こんなに楽しかったことは、ひさしぶりのことです。
 どのくらいねむったでしょうか。
 男の子は目をさまして、あたりを見まわしましたが、だれもいません。
「あれ? みんな、どこさいっただ」
 男の子の声が聞こえたのか、ふすまのむこうからおじいさんの声がしました。
「わしたちは、ちょっくらしごとにいってくるけん、るす番しといてくれや」
「雲の上にもしごとがあるだか?」
「そりゃあ、あるわさ。これで、けっこういそがしいのよ」
「なら、おらもしごとしたいけん、つれてってくれろ」
と、いいながら、男の子はふすまをガラリとあけたのです。
「うわっ! 鬼だ、鬼だぁ!」
 なんと、あのおじいさんは、あたまにツノがはえた鬼だったのです。
 そばには二人の娘も立っています。
 こわくなった男の子は、バッタリたおれて死んだふりをしました。
「おら、もう死んだだ! 死人の肉はうまくないけん、食えねえだ」
 死んだふりをしながら、大声でさけぶ男の子に、鬼はわらいながらいいます。
「それは、つごうがいい。わしらは、死んだ人間の肉のほうが、つめたくてすきだに」
 男の子はとびあがりました。
「うわっ、生きてる、生きてる。ほら、このとおり」
 鬼は、大わらいです。
「ワッハハハハ、うそじゃよ。わしたちは、人間を食べるわるい鬼でねえ。雨をふらす、よい鬼なんじゃよ。ほれ、こんなぐあいにな」
と、鬼がたいこを鳴らすと、娘たちがひしゃくで雨をふらせます。
「わかった、おじいさん、かみなりさま(→詳細)だべっ」
「そうじゃ、かみなりさまだ。これから雨をふらせにいく」
「おらもいっしょにいく」
 鬼と娘たちののった雲に、男の子もとびのりました。
 男の子は、雲の上から下を見ました。
「あっ、おらたちの村だ!」
 鬼は立ちあがって、たいこを鳴らしました。
 娘の一人が、かがみで光を地上へてらしました。
 いなびかりです。
 もう一人の娘は、ひしゃくで雨をふらせます。
 その日は、ちょうど村の夏まつりでした。
 おおぜいの人が集まっていたからたまりません。
「うわあ! 夕立だあっ」
 とつぜんのかみなりの音とともに、いなずまが光り、雨がふりだしたので、もう、上を下への大さわぎ。
 雲の上から見ていた男の子は、そのようすがおもしろくてたまりません。
「ねえ、娘さん、おらにも雨のひしゃくをかしてくれろ」
 男の子はひしゃくをかりて、おもしろがって雲の上から雨をふらせました。
 村は、たきのような大雨です。
「それっ、それっ。わあっ、おもしれえな」
 そのとき、ひしゃくのえが、ポキンと、おれてしまったのです。
 おれたひょうしに、男の子は雲から足をふみはずしてしまいました。
「うわっ、たすけてくれ! まだ、死にたくないようー!」
 雨の中をおちていく男の子は、クワ畑の上へドシン!
 なんと、男の子のからだは、運よくクワの木にひっかかり、いのちだけはたすかったのでした。
 これを見て、かみなりさまはいいました。
「せっかく、わしの後をつがせようと思ったのに。おしいことをしたのう」
 でも、もっとざんねんがっていたのは、二人の娘たちでした。
 二人とも心のなかでは、あの男の子のおよめさんになりたいと思っていたからです。
 それからというもの、クワの木のそばには、けっしてかみなりはおちないという話です。
 きっと、かみなりさまが、男の子をたすけてくれたクワの木へ、おれいをしているつもりなのでしょう。
 だから、いまでもかみなりが鳴るときは、クワの枝をきってきて、それを家ののき下へぶらさげるとよいといわれています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月1日の日本の昔話 花咲じいさん

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5月1日の日本の昔話

花咲じいさん

花咲じいさん
花咲じいさんの豆本」 

♪朗読再生

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 二人は子どもがいなかったので、シロというイヌをとてもかわいがっていました。
 ある日、シロが畑でほえました。
「ここほれワンワン、ここほれワンワン」
「おや? ここをほれと言っているのか。よしよし、ほってやろう」
 おじいさんがほってみると、
「ややっ、これはすごい!」
 なんと、地面の中から大判小判がザクザクと出てきたのです。
 この話を聞いた、となりの欲ばりじいさんが、
「わしも、大判小判を手に入れる。おめえのシロを、わしに貸してくれや」
 欲ばりじいさんは、シロを無理矢理畑に連れて行きました。
 そして、いやがるシロがキャンキャンないたところをほってみると、くさいゴミがたくさん出てきました。
「この役立たずのイヌめ!」
 怒ったよくばりじいさんは、なんと、シロを殴り殺してしまったのです。
 シロを殺されたおじいさんとおばあさんは、なくなく、シロを畑にうめてやると、棒(ぼう)を立ててお墓を作りました。
 次の日、おじいさんとおばあさんがシロのお墓参りに畑へ行ってみると、シロのお墓の棒が、ひと晩のうちに大木になっていたのです。
 おじいさんとおばあさんは、その木で臼(うす)を作って、おもちをつきました。
 すると不思議な事に、もちの中から宝物がたくさん出てきました。
 それを聞いた、欲ばりじいさんは、
「わしも、もちをついて宝を手に入れる。おめえの臼を、わしに貸してくれや」
と、臼を無理矢理かりると、自分の家でもちをついてみました。
 しかし、出てくるのは石ころばかりで、宝物は出てきません。
「いまいましい臼め!」
 怒った欲ばりじいさんは、臼をオノでたたきわると、焼いて灰にしてしまいました。
 大切な臼を焼かれたおじいさんは、せめて灰だけでもと、臼を焼いた灰をザルに入れて持ち帰ろうとしました。
 その時、灰が風に飛ばされて、枯れ木にフワリとかかりました。
 すると、どうでしょう。
 灰のかかった枯れ木に、満開の花が咲いたのです。
 おじいさんは、うれしくなって。
「枯れ木に花を咲かせましょう。パアーッ」
と、いいながら、次々に灰をまいて、枯れ木に美しい花を咲かせました。

はなさかじいさん

 ちょうどそこへ、お城のお殿さまが通りかかりました。
「ほう、これは見事じゃ」
 お殿さまはたいそう喜んで、おじいさんにたくさんのほうびをあげました。
 それを見ていた欲ばりじいさんが、
「おい、わしも花を咲かせてほうびをもらう。その灰を、わしによこせ!」
 無理矢理に灰を取り上げると、お殿さまに言いました。
「殿さま、この灰はわしの物です。わしが枯れ木に花を咲かせますから、わしにもほうびを下さい。バァーッ!」
 欲ばりじいさんは、殿さまの前でたくさん花を咲かせようと、灰をいっせいにまきました。
 すると灰がお殿さまの目に入って、欲ばりじいさんはお殿さまの家来にさんざん殴られたということです。

おしまい

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