« 2009年5月 | トップページ

2009年6月

6月30日の日本の昔話 野ギツネ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月30日の日本の昔話

野ギツネ

野ギツネ

 むかしむかし、山にキツネが一ぴきすんでいました。
 ときどき村へ出てきて、三本松(さんぼんまつ)のあたりで、人をばかすのです。
 ある日のこと。
 百姓(ひゃくしょう→詳細)が、このキツネのことを話していました。
 すると、そこへ旅のさむらいがとおりかかって、
「そんな野キツネの一ぴきぐらい、拙者(せっしゃ)が、たいじしてくれるわ」
と、毛だらけの太いうでをまくって、ポンとたたいて見せました。
 かなりの腕自慢のようです。
 そして、三本松までやってくると、
「まだ出んか、まだ出んか」
と、待っていましたが、やがて、
「ややっ、ついに出たぞ」
 山のほうから、きれいなむすめがひとり、しゃなりしゃなりと歩いてきました。
 むすめはさむらいを見ると、そばへきて、
「わたしは村までいくものですが、時はもう夕方で、ぶっそうです。おさむらいさま、どうかわたしを村までおつれくださいませ」
と、きれいな声でいいました。
 でも、さむらいは、
「なにをぬかす。このドギツネめ! 拙者が見やぶったからには、逃げしはせんぞ!」
と、つかみかかりました。
 すると、むすめはニコッと笑って、パッと消えました。
と、思っていたら、今度は若い商人になって、
「わたしは、江戸のものでございますが、どうも、ひとり旅というものは、さびしいもんでございます。おさむらいさま、どうぞ旅の道づれになってくださいませぬか」
「なにっ! おまえもさっきのキツネじゃろう。拙者をだまそうたって、その手はくわぬぞ!」
 キツネは見やぶられて、今度は、おじいさんにばけました。
 それも見やぶられると、おばあさんに。
 おばあさんも見やぶられると、坊さんに。
 坊さんも見やぶられると、キツネは、よっぽどこまったとみえて、とうとう、一ぴきの野ギツネになってしまいました。
 さむらいは、大笑いしながら、
「ウワハハハ。正体をあらわしおったな。このドギツネめ。生けどりにしてやるわ」
と、両手をひろげておいかけました。
 キツネはむちゅうで逃げますが、さむらいはキツネのしっぽをつかまえると、
「えいや、えいや」
と、引っぱります。
 キツネはしきりに、
「ココン、ココン」
と、泣いてあやまりますが、
「いくら泣いたって、ようしゃはせんぞ」
 さむらいは両手に力をこめて、グイグイしっぽを引っぱります。
 すると、
 スポーン!
 大きな音がして、キツネのしっぽがぬけました。
「コンコーン!」
 しっぽのぬけたキツネは、泣きながらどこかへ行ってしまいました。
「逃がしたか、まあいい。化けギツネのしっぽとは、いいみやげができたわい」
 すると、そのとき。
「こりゅ、おさむらいさま、なにをなさる!」
 ふりむくと、百姓が目をつり上げて立っています。
 百姓は、さむらいの手にあるものをひったくると。
「わるさするのも、いいかげんにせい。なんで、おらが畑のダイコンをぬいた」
「へっ? ・・・ああっ! しっぽがダイコンに化けた!」
 さむらいは、すっかりキツネにばかされてしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → みその日
きょうの誕生花 → びようやなぎ(ヒペリカム)
きょうの誕生日 → 1975年 ラルフ・シューマッハー(F1レーサー)


きょうの日本昔話 → 野ギツネ
きょうの世界昔話 → バラ色の泉の水
きょうの日本民話 → ものを言うネコ
きょうのイソップ童話 → 人間とセミ
きょうの江戸小話 → ちかづきのしるし

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月29日の日本の昔話 かじかびょうぶ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月29日の日本の昔話

かじかびょうぶ

かじかびょうぶ

 むかしむかし、古くからさかえた家がありました。
 ところがその家のいまの主人は、菊三郎(きくさぶろう)といって、生まれつきのなまけものです。
 ノラリクラリとあそんでくらすうちに、たくさんの山や畑も売りつくして、とうとうさいごにのこった、おくの山を売らないといけないようになってしまいました。
 それである日、そのおくの山を見にのぼっていきました。
 谷川をどこまでもどこまでものぼっていって、きれいな流れになるあたりいったいが、菊三郎の持ち山です。
 山には、天にもとどくような杉の木が、谷をはさんで、あっちの山にもこっちの山にも、何千本としげっています。
 足もとはと見れば、みどりのこけがビッシリとはえ、谷川の水はつめたくすきとおって、なんとも美しい山でした。
 それにこのあたりの谷川には、かじか(→カエルの一種。谷川の岩間にすみ、色は暗褐色でオスは美声で鳴きます)がたくさんすんでいて、とてもいい声で鳴きます。
 それで人はみんな、かじか沢とよんでいました。
 さて菊三郎は、そのかじか沢を、のぼったりくだったりしながら、この山を売ろうか、あの山を売ろうかと考えていましたが、すっかりくたびれてしまいました。
「どれ。一ねむりしようか」
 菊三郎は、大きな一枚岩の上にひっくりかえりました。
 杉木立(すぎこだち)のあいだの、青い空が目にしみるように美しく、かじかの美声が谷の底からわきあがるように聞こえてきます。
(気のせいか、きょうのかじかは、なにやらものかなしげに鳴いとるのう)
 そんなことを考えているうちに、ウトウトと、ねむってしまいました。
「だんなさま、だんなさま」
 どこからともなく、しわがれた声が聞こえてきます。
「菊三郎さま」
 名まえをよばれてからだをおこすと、すぐ目の前に、きみょうな顔をしたおじいさんがひとり、すわっていました。
 カエルみたいな顔で、着物のすそからは、しずくがポタポタとたれています。
「のう、菊三郎さま。おねげえでござります。このかじか沢だけは、どうか売らんでいてくださりませ。おたのみもうしますだ」
「そういう、おまえさんは?」
「へえ、もうしおくれまして。わっしゃ、このあたりいったいにすむ、かじかの頭領(とうりょう→親分)でごぜえます。だんなさまが、このかじか沢をお売りなさるってんで、あわててやってきました。なにとぞ、このかじか沢をお売りにならんよう、おねげえもうしますだ」
 頭領はにじりよって、菊三郎の手をとってあたまを下げました。
 その手の、なんとつめたいことでしょう。
 そこで、菊三郎はハッと目がさめました。
「いまのは、ゆめだったのか」
と、てのひらをみてみれば、びっしょりと水でぬれています。
 あまりのふしぎさに、菊三郎はもう山を見る気もしなくなって、そのまま家にかえりました。
 山からかえると、菊三郎は、なんとかしてかじか沢は売らずにすませたい、そればかりを考えるようになりました。
 それで、売りのこした古いかけ軸やら道具なんかを、あれやこれやとかきあつめて売りにだし、どうにか、かじか沢を売らずにすませました。
 もはや、家にのこっているものといったら、なんのねうちもないような、絵のかいてない白いびょうぶぐらいのものでした。
 その晩のこと、菊三郎はゆめの中で、なんだかおそろしくたくさんのかじかの声を聞いたような気がしました。
 このあいだ山で聞いたときとはちがって、それはたのしそうな声でした。
 目がさめると、もうあたりはあかるくなっています。
 菊三郎は、ふとんの中でのびをすると、
「ありゃっ?」
 のばした手が、つめたいものにさわりました。
 おどろいておきあがってみると、なんと、まくらもとがビッショリとぬれています。
 そればかりか、水にぬれた小さな足あとが、縁側のほうからつづいているではありませんか。
 その足あとの先を見ておどろきました。
「あっ!」
 なんと目の前のびょうぶには、いつのまにか墨の色もあざやかに、たくさんのかじかがえがかれているではありませんか。
 そのびょうぶは、見れば見るほどよくかけています。
 とんだりはねたり、のどをふくらましたりと、本物そっくりです。
 どんな名人がかいたかしりませんが、ほんとうに、いまにも鳴きだしそうでした。
 さて、菊三郎のかじかびょうぶは、あっというまにひょうばんになって、村じゅうはもちろん、遠い町々からも見物がくるようになりました。
 しまいには、都の名高い絵師たちまでが、わざわざ見にきて、おどろきかんしんしてかえるのです。
 千両箱をいくつもかさねて、ゆずってくれといってくる人も、ひとりやふたりではありませんでしたが、菊三郎はどうしても、このびょうぶを手ばなす気にはなりませんでした。
 そして、なまけものだった菊三郎が、まるで人がかわったように、はたらきだしたのです。
 おかげで、だんだん田畑もふえて、むかしにまけないほどのりっぱな家になりました。
 人がらも、むかしの菊三郎とは、まるっきりちがいます。
 まずしい人には金や米をわけてやり、こまっている人には、ちえをかしてやります。
 こうして、菊三郎はしあわせにくらして、もう八十歳をこえる老人になりました。
 さすがの菊三郎も、年にはかてません。
 からだもガックリとおとろえて、このごろでは、ずっとねたっきりの身となりました。
 そんなある日、殿さまの使いの家老(かろう)が、おおぜいの家来をしたがえて、やってきました。
 菊三郎のまくらもとに、千両箱をいくつもつみかさねて、天下にひょうばんのかじかびょうぶを売れというのです。
 菊三郎は、キッパリとことわりました。
「だいじなびょうぶじゃ、あいてが殿さまであろうと、手ばなすわけにはいかん」
 ところが、家老ははらをたてて。
「えい、この無礼者(ぶれいもの)め。殿さまのおぼしめしを、なんとこころえるか。それっ!」
 家来どもは、ねている菊三郎をふみこえて、びょうぶをうばってしまったのです。
 菊三郎は息もたえだえで、どうすることもできません。
と、そのとき、
 ザワザワザワザワ
 家老や家来どもの足もとを、何百というかじかが、はってゆくではありませんか。
 なんとそれは、家老のかかえている、かじかびょうぶからはいだしてくるのでした。
 そして見るまに、かじかびょうぶは、ただの白いびょうぶにかわってしまいました。
「そうじゃ、そうじゃ。それでよいのじゃ。みんな、かじか沢へかえるがよい」
 つぶやきながら、菊三郎はニッコリわらって、死んでしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 星の王子様の日
きょうの誕生花 → あじさい
きょうの誕生日 → 1959年 引田天功(2代目・奇術師)

きょうの新作昔話 → 食わずの梨 弘法大師
きょうの日本昔話 → かじかびょうぶ
きょうの世界昔話 → 白いウマ
きょうの日本民話 → コウノトリの恩がえし
きょうのイソップ童話 → シカとブドウの木
きょうの江戸小話 → いれ目

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月28日の日本の昔話 イモころがし

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月28日の日本の昔話

芋ころがし

イモころがし

 むかしむかし、ある村の金持ちの家で、法事(ほうじ)がありました。
 法事には、村中の家が呼ばれました。
 さて、法事には立派な膳(ぜん→ごちそう)が出るという話をうわさに聞いた村の人たちは、そんな立派な膳に呼ばれたときの作法(さほう→マナー)を知らず、どうしたらよいか途方にくれていました。
 そこで、村の人たちは、村一番の物知りおじいさんのところへ相談に行きました。
「なんじゃ。そんなこたあ、心配せんでよい。みんなわしの真似をすりゃあええのじゃ」
 おじいさんがそういってくれたので、みんなは安心して、法事に呼ばれていきました。
 さてさて、話の通り、座敷には今までに見たことのないほど立派な料理が並べられております。
 村の人たちがおじいさんを見ていると、おじいさんはまず、お汁を飲みました。
 それを見て、みんないっせいにお汁を飲みます。
 次におじいさんが少しばかりご飯を食べると、みんなも、すぐにおじいさんの真似をしました。
 ところが、おじいさんがお皿のサトイモをはしで取ろうとしたとき、おじいさんの手もとがくるい、イモはツルリッと皿から飛び出し、畳(たたみ)の上をころがりました。
 おじいさんは大あわてで、転んだイモをはしでひろって食べますと、それを見ていた村の人たちもおじいさんのまねをして、次から次へとイモをころがし始めたではありませんか。
 これには、物知りおじいさんもビックリ。
 恥ずかしくなって、こっそりと座敷を出ていってしまいました。
 すると、みんなもいっしょに、出ていってしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ニワトリの日
きょうの誕生花 → ざくろ
きょうの誕生日 → 1971年 藤原紀香(女優)


きょうの日本昔話 → イモころがし
きょうの世界昔話 → ビンの中のお化け
きょうの日本民話 → お花とごんべえ
きょうのイソップ童話 → 漁師とマグロ
きょうの江戸小話 → 急病

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月27日の日本の昔話 カッパのねんぐ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月27日の日本の昔話

カッパのねんぐ

カッパのねんぐ

 むかしむかし、船頭(せんどう→船で人や荷物を運ぶ人)さんが、いい気持ちで舟をこいで川をくだっていました。
 すると、
「船頭さん、船頭さん」
と、岸のほうから、声をかけたものがあります。
 ヒョイとそっちを見ると、かみしもすがたの、りっぱな男が岸に立っていました。
「船頭さん。どちらまでおいでですか」
「へえ。清河橋(きよかわばし)までいくんですが、なにか、ご用ですかい?」
「それはありがたい。じつは、このタルを河橋のたもとにある問屋(とんや)まで、とどけていただけませんか。受け人は、この手紙に書いてあります。おたのみします」
「へえ。どうせついでですわい。ひきうけやしょう」
 舟を岸につけると、その男は手紙を船頭さんにわたして、
「では、このタルを」
と、そばにある大きなタルを指さしました。
 そして船頭さんに、お金をわたしていいました。
「ただ、くれぐれもいうておきますが、このタルは、けっしてあけんようにしてください」
「へえ」
「どんなことがあっても、あけんようにですぞ。よろしいですな」
「へえ。しょうちしやした」
 船頭さんは、思いがけない大金をもらったので、上きげんです。
 大きなタルを舟につむと、また川をくだっていきました。
 ところが、しばらくいくうちに船頭さんは、
「あのお方は、このタルをあけるなあけるなと、いやにねんをおしとったが」
と、タルのことが気になってきました。
「まさか、死体でも入っているのではあるまいな」
 どうにも気になって、
「ええ、くそっ。ままよ」
 船頭さんは、思いきってタルのふたをあけてみました。
「??? ・・・こりゃあ、きみょうなもんじゃ」
 タルの中には、いままで見たこともない、どす黒いものが、いっぱいにつまっています。
「なんじゃろう?」
 さわってみたり、においをかいでみたりしましたが、いっこうにけんとうがつきません。
「おお、そうそう」
 船頭さんは、タルといっしょにわたされた手紙のことを思いだして、さっそくよんでみました。
 そこには、
《カッパ(→詳細)の王さまへ。いつもいつも、われわれ臣下(しんか→けらい)のものをおまもりくださいまして、みなみな、心から感謝いたしております。さっそくながら、ことしのねんぐをおおさめもうします。なお、ひとこともうしそえますが、ことしは人間どもがわれわれを用心すること、いままでになくきびしく、そのためにきもが九十九しかとれませんでした。まことにもうしわけないことですが、のこる一つは、この船頭のものをさしあげます。どうぞ、ごえんりょなくおとりくださるよう、つつしんでおねがいもうしあげます》
 これをよんだ船頭さんは、カンカンにおこって、
「人間さまのきもをねんぐにとるとは、なんちゅうこっちゃ。えーいっ!」
 その大タルをかかえあげると、川の中へドボーンと、ほうりこんでしまいました。
 そしてまた、何事もなかったかのように、舟をこいでいきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日照権の日
きょうの誕生花 → びわ
きょうの誕生日 → 1980年 優香(タレント)


きょうの日本昔話 → カッパのねんぐ
きょうの世界昔話 → 世界のはじまり
きょうの日本民話 → 身投げ石
きょうのイソップ童話 → 父親と2人の娘
きょうの江戸小話 → 病人がへた

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月26日の日本の昔話 船ゆうれい

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月26日の日本の昔話

船ゆうれい

船ゆうれい

 むかしむかしの、ある浜でのいいつたえです。
「お盆の夜には、けっして舟をだすでねえ。あかとりをとられて、舟の中へ水を入れられて、おぼれ死にさせられてしまうからのう」
 あかとりというのは、舟の底にたまった水をくみだすひしゃくのことです。
 年よりたちは、このいいつたえをまもっていましたが、若いものはそんなことは聞きはせん。
「なあに、迷信(めいしん)じゃ、迷信じゃ」
「さかなをとるのに、盆も正月も、あろうかい」
と、とうとう十人ばかり、いせいのいい若いものが、お盆のむかえ火をあとに、沖へこぎだしていってしまいました。
 海はおだやかで、星は空いちめんに光っています。
 若いものたちは沖にでると、はなうたをうたいながら、さかな取りのアミを流していきました。
 アミを流しおわったころ、
「おい。ありゃあ、なんじゃ!」
と、ひとりが沖のほうを指さしました。
 見ると、沖あいから黒い雲がやってきます。
「こいつは、まずいことになったぞ」
 若いものたちは、いそいでひきあげるしたくにかかりました。
 すると、沖からだんだんこっちへやってくる雲の中から、
「まってくれーい」
「まってくれーい」
と、なにやら、気味のわるい声が聞こえてきます。
「おいっ、まってくれと、いってるぞ」
「くそっ、まってたまるかい。ひきあげろ、ひきあげろ」
 黒い雲は、だいぶ近くまできてしまいました。
 グルグルッと、空に大きなうずをまいたかと思うと、見るまに大きな形のかわった船になって、海の上をすべるように、こっちへとやってきます。
 その船といったら、それこそいままでに見たこともない、ふしぎな形をしていました。
「ありゃあ、異国(いこく→外国)の船だぞ」
「へさきに、竜(りゅう)の首がついとるわい」
「おう、見ろ。万燈(まとび→東日本で盆にもやす松明)だ」
「万燈だ、万燈だ」
 その船には、いつのまにやら、船べりにも甲板(かんぱん)にも帆柱(ほばしら)にも、万燈があかるくかがやいていました。
 そのあかりが、海にキラキラキラキラうつり、なんともいない美しさです。
 みんなが思わず見とれていると、船はグングン近づいてきます。
「みょうだ。あの船には、だれものっておらんぞ」
 船が、ぶつかりそうなほど近づいたとき。
「あかとりがほしいー」
「あかとりがほしいー」
 泣くような、うめくような声がきこえてきました。
 若いものたちは、背すじがゾクゾクしました。
 あかとりをとられたら、いのちをとられる。
 村のとしよりの言葉を思い出しました。
「あかとりを、わたしてはならんぞ」
「おい。かくせ、かくせ。あかとりをかくせっ」
 そうさけんだとき、船いっぱいについた万燈が、ふわりと浮きました。
 そして、フワリフワリと、とんできたかと思うと、若いものたちの舟をグルリとかこんでしまったのです。
 そして、一つ一つの万燈から、ぬーっと白い手がでてきていいました。
「おぼれ死ぬもんは、だれじゃー」
「おれたちのなかまになるもんは、だれじゃー」
と、
「助けてくれー! 船ゆうれいだ」
「船ゆうれいだ!」
 叫んだときには、もう何百という白い手が、船をしっかりとつかんでいて、船は動くことができません。
「あかとりを、よこせー」
「あかとりを、よこせー」
 船ゆうれいの手が、すーっと、ひとりの漁師の顔をなでました。
「ギャアァァァー!」
 その男は、むちゅうであかとりを海へなげてしまいました。
と、その一つのあかとりが、何十、何百というあかとりになりました。
 そして船ゆうれいのながい手が、ひとつのこらずあかとりを持つと、海の水をくんでは、ザブーリ、ザブーリと、船の中へ入れたのです。
「たすけてくれーっ!」
「船ゆうれいだーっ!」
 若いものたちは、くるったようにさけびました。
 でも、さけんでもさけんでも、白い手はザブーリ、ザブーリと、あかとりで水を入れます。
 船は、いまにもしずみそうです。
 そのとき、浜のほうで大きなほのおが、いくつもいくつもあがりました。
 浜でたいていた、お盆のむかえ火です。
 そのほのおが、ボーッと空高くもえあがったかと思うと、まっ赤な雲のようなかたまりになって、とぶようにこっちへ走ってきました。
 そして、船ゆうれいたちの上までくると、空いっぱいにひろがって、パチパチッ、パチパチッ、パチパチッと、火の粉をちらしながらさけぶのです。
「異国の亡者どもよ。しずまれーっ!」
「浜にもえておる火を見るがいい」
「おれたちは、海ではたらいて死んだもんじゃ」
「おまえらも、海で死んだ仲間じゃろう」
「おんなじ仲間じゃあないか」
「消えるがいい、消えるがいい」
「わるさをするでねえだ!」
 その声をきくと、白いながい手はパーッと、ちって、うつくしい万燈にかわりました。
 そして、フワリフワリと、もとの船にもどっていったのです。
 それから、船いっぱいに万燈をともした異国の船は、キラキラと波にあかりをうつしながら、沖へ沖へと消えていってしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 雷記念日
きょうの誕生花 → グロリオーサ
きょうの誕生日 → 1928年 中松義郎(Dr.中松・発明家)

きょうの新作昔話 → 文珠の知恵(ジャータカ物語)
きょうの日本昔話 → 船ゆうれい
きょうの世界昔話 → おやゆび小僧
きょうの日本民話 → 村をおおった大木
きょうのイソップ童話 → ロバのかげ
きょうの江戸小話 → 川の字

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月25日の日本の昔話 幸運をまねくネコ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月25日の日本の昔話

幸運をまねくネコ

幸運をまねくネコ

 今より四百年ほどもむかしです。
 ある寺に、天極秀道(てんごくしゅうどう)というお坊さんが住んでいました。
 文字どおりの破れ寺で、屋根はすっかりかたむき、くずれた土塀(どべい)の穴から中がまる見えでした。
 それでも秀道はまったく気にもかけず、この寺にまよいこんだ一匹のネコと、のんびり暮らしていました。
 ある年の春、秀道は寺の緑側(えんがわ)に座って、ひなたぼっこをしていました。
 ひざの上のネコの頭をなでながら、なにげなくひとりごとです。
「ネコの子ほども役立たず、ということがあるけれど、わしはまるで役立たずの人間だわい。おまえは幸いにも無事に育つことができた。まずしくとも、食べる心配はなかろう。どうだな、このあたりでチットは、役に立つネコになっては」
 そのとたん、ネコはひざからピョンととびおり、「ニャーオ」と鳴きました。
「おや、怒ったのかい? 気にするな。いまのは冗談。おまえは役立たずでけっこう」
 秀道はふたたびネコを抱いてひざの上にのせ、一日中ネコといっしょにいねむりをしていました。
 そんなひとりごともすっかり忘れてしまったある日のこと、表の方から、にぎやかなウマのひづめの音が聞こえてきました。
 めったに人のたずねてこない寺です。
 秀道がなにごとかと庭(にわ)に出てみたら、七、八人の狩装束(かりしょうぞく→狩りの時の服装)をつけたさむらいが、次つぎとウマをおりて、境内(けいだい)に入ってきました。
「なにかごようかな?」
 秀道がふしぎに思って声をかけると、その中の主人らしいさむらいが、ていねいに頭をさげて。
「わしは彦根(ひこね→滋賀県)城主の井伊直孝(いいなおたか)と申す。この地方を新しく将軍さまから拝領(はいりょう→主人からいただくこと)することになったので、遠乗りのついでに土地を見にきた。たまたま寺の前を通りかかると、ネコがさかんに手招きをするので、つい、立ちよったまでじゃ」
「それはそれは。こんな破れ寺に、よく立ちよってくださいました。わたしはこの寺の住職で天極秀道といいます。ごらんの通りの貧乏暮らしで、なにもさしあげるものはございませんが、せめてお茶なりともいっぷく」
 秀道は一行(いっこう)を居間(いま)に案内して、お茶の用意を始めました。
 すると、急に空がくもりだし、はげしい雷鳴(らいめい)とともに滝のような雨が降ってきました。
 この寺に立ちよらなければ、いまごろずぶぬれになっていたところです。
 直孝(なおたか)はひどく喜んで、
「いやあ、助かった。あのネコに招かれたおかげで、運よく雨やどりができた。これもなにかのめぐりあわせであろう」
と、言いました。
「おそれいります。役立たずのネコにしては上出来。どうぞ雨があがりますまで、ゆっくりしていってください」
 城主であっても、まるでいばったところのない直孝の態度に、秀道はすっかり感心して、心からもてなしました。
 直孝のほうも、貧乏寺の住職とは思えない秀道の人柄(ひとがら)にほれこみました。
 やがて雨もあがり、直孝の一行は、晴ればれとした気分で寺を出ていきました。
 秀道は、すぐにネコを抱きあげ、
「人助けをするとは、たいしたやつ。おかげでわしも、久しぶりにりっぱな人と話すことができたぞ」
「ニャー」
 ネコはうれしそうに、秀道の胸に顔をうめました。
 このことがきっかけで、直孝は遠乗りの時は、いつもこの寺をたずねるようになり、秀道は直孝のために、仏の道についてのあれこれを語って聞かせました。
 そのすぐれた知識に直孝は、
「これぞ、まことの高僧(こうそう)である」
と、言って、この寺を井伊家の菩提寺(ぼだいじ→一家の先祖を代だいをまつってある寺)とすることにしたのです。
 こうして、いままでは荒れるにまかせていた寺は、井伊家によって改築(かいちく)され、各地からつぎつぎと修行僧も集まり、寺はいよいよ栄えていきました。
 さて、そのネコは、寺がりっぱになってまもなく死んでしまいました。
 秀道はネコのために石碑(せきひ→はかいしのこと)をたて、命日には必ずおとずれたといいます。
 直孝も、ネコのことが忘れられず、
「あのネコは、観音菩薩(かんのんぼさつ)の化身(けしん→仏が、人間や動物の姿に変身したもの)にちがいない。わしは、ネコに招かれたおかげで、そなたに会い、仏の道のすばらしさを学び、寺を復興(ふっこう)させる喜びまで与えてもらった。どうだろう。招き観音として、本堂のそばにまつってあげては」
「ネコにとっても、わたしにとっても、この上なくありがたいおことばです」
 秀道は、すぐに本堂のそばに新しくネコをまつりました。
 すると、この話がたちまち広まり、「幸運を招くネコ」として、お参りにくる人がふえたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 住宅デー
きょうの誕生花 → ゆり
きょうの誕生日 → 1986年 松浦亜弥(歌手)


きょうの日本昔話 → 幸運をまねくネコ
きょうの世界昔話 → 十三匹のハエ
きょうの日本民話 → 一つおぼえ
きょうのイソップ童話 → ノミと人間
きょうの江戸小話 → 昼寝

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月24日の日本の昔話 じょうるり半七

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月24日の日本の昔話

じょうるり半七

じょうるり半七

 むかしむかし、ある村に、半七(はんしち)という、じょうるり(→物語を語ること。人形をつかったお芝居の人形浄瑠璃が有名)ずきの若者がいました。
 自分ではうまいつもりですが、だれも半七のじょうるりをほめてくれません。
 ところが、ある日のこと。
 その半七のところへ、わざわざ山のおくから、ひとりのお百姓(ひゃくしょう→詳細)がたずねてきました。
「半七さま、わしには、はたらきもんの娘がひとりおりまして、それがこんど、むこをとることになりました」
「それは、おめでたいことで」
「そこで半七さま。その祝いに、ぜひ、あんたさんにきてもろうて、じょうるりを語っていただきたいのでございます」
「はい。そのようなことなら、よろこんでひきうけましょう」
 半七はあくる朝、はやくから山へでかけていきました。
 教えられたとおりに山道を歩いて、丸木橋(まるきばし→一本の丸太で作ったはし)をわたって川をこえていきましたが、いくら歩いても、目印の大きな松の木が見えません。
 たのまれた百姓の家も、見つかりません。
「もっと、先のほうかな?」
と、歩いていくうちに、だいぶ暗くなってきました。
 半七は心ぼそくなって、あたりをグルグル見まわしていると、チラリと、むこうの山の中にあかりが見えました。
「やれやれ、あそこにちがいない」
 あかりを目ざしていくと、なるほど、大きな松の木があります。
 木のそばには、これはまたりっぱな百姓家があって、にぎやかな人の声がきこえてきます。
 半七が中に入ると、きのうのお百姓が羽織(はおり)はかまであらわれて、
「さあさあ、こちらへ」
と、おくに案内しました。
 ひろい座敷(ざしき)には、百姓の女房や娘夫婦、近所の人たちが集まっており、すでに、にぎやかな酒もりをはじめていました。
 半七は、座敷の上座(かみざ→目上の者が座る席)にすわらされました。
 足のついた朱ぬりのおぜんを前にだされ、おいしい酒もちょうだいしました。
 半七は、これほどていねいな客あつかいをうけたのははじめてで、すっかりうれしくなりました。
 それで、いざじょうるりというときには、ふだんよりもいっそう心がこもって、なんともすばらしい気持ちで、語ることができたのでした。
 半七のじょうるりが、あんまりみごとなもので、みんな、すっかり聞きほれています。
 一段語りおわると、
「どうぞ、もう一段」
 そこで、また一段語りおわると、また、
「ぜひ、もう一段」
と、のぞまれて、そのころになると、半七は自分でもビックリするほど、うまく語ることができるようになっていました。
 語りおわった半七は、だいぶ夜もふけていたので、この家にとまることになりました。
 いままでねたこともないような、フカフカの上等のふとんで、ゆっくりねむらせてもらいました。
「ああ、芸というものは、ありがたいものじゃ」
 半七は、しみじみ思いました。
 つぎの朝、半七は目をさましてビックリ。
「これは、また、どうしたことじゃ?」
 半七はフカフカの上等のふとんではなく、わらの上にねていたのです。
 周りを見まわすと、そこは山おくの、ひどいあばら家でした。
 さてはと、きのうお礼にもらった祝儀袋(しゅうぎぶくろ)を開けてみると、中からヒラヒラと、一まいの木の葉がおちてきました。
 里にもどった半七は、このふしぎなできごとを、村いちばんのおじいさんに話しました。
 するとおじいさんは、
「半七や。わしの若いころにタヌキが人間にばけて、山おくから芝居をしてくれと、たのみにきたことがあったわい。おまえも、タヌキの婚礼(こんれい→結婚式)によばれたのじゃろう」
「なるほど。そうかもしれん。それにしても、ようまあ、あんなに身を入れてきいてくれたもんじゃのう。ありがたいことじゃ。ありがたいことじゃ」
 半七はだまされながらも、あの晩のことを思うとうれしく、それから芸にもいっそうはげむようになりました。
 それからというものは、半七のじょうるりはたいへんな人気をよんで、「竹本狸太夫(たけもとたぬきだゆう)」とよばれて、近くの村むらはいうにおよばず、遠くの町まちからも、よばれるようになったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → UFOの日
きょうの誕生花 → すいせんのう
きょうの誕生日 → 1964年 野々村真(タレント)

きょうの新作昔話 → 雨の夜のかさ 豊臣秀吉
きょうの日本昔話 → じょうるり半七
きょうの世界昔話 → お百姓と悪魔
きょうの日本民話 → 竜宮へ行った海女
きょうのイソップ童話 → 旅人とオノ
きょうの江戸小話 → 早業

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月23日の日本の昔話 なぞかけあねさま

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月23日の日本の昔話

なぞかけあねさま

なぞかけあねさま

 むかしむかし、ひとりもので、男前(おとこまえ)のわかものが、お伊勢(いせ)まいりにでかけました。
 さて、お伊勢まいりをすませ、茶店でひとやすみしていると、絵からぬけだしたような、うつくしいあねさまが、おなじ茶店にたちよりました。
(世のなかにゃあ、なんときれいなあねさまがいるもんだろうか)
 わかものは、しばらくみとれていましたが、
「こんやの宿(やど→詳細)をさがさんと、日がくれてしまう」
と、町はずれのはたご屋(旅人のための宿)に、わらじ(→詳細)をぬぎました。
 すると、おなじはたご屋に、茶店でみかけた、あのあねさまが入ってきて、わかもののとなりのへやにとおされました。
「あんなきれいなあねさまと、おなじはたご屋でとまりあわせただけでも、お伊勢まいりにきたかいがあったというものだ。せめて、どこのどなたか、名まえだけでもしりたいものだが、・・・気はずかしくて、たずねられん」
 その夜、わかものは、むねがドキドキして、なかなかねつけません。
 あくる朝、ねぼうしてしまいました。
 となりのへやのあねさんは、もう、はたご屋をでたあとです。
「ああっ、二どと、あのあねさまにはあえんだろう」
 わかものが一日のたびをおえて、つぎの宿場のはたご屋にとまったところ、となりのへやに、あのあねさまがとまっているではありませんか。
「これは、お伊勢さまのおひきあわせ。よくよく、えんがあるにちがいない。あすの朝、名まえだけでもきかせてもらおう」
 わかものは、このばんも、むねがドキドキして、ねつけません。
 つぎの朝も、ねぼうしてしまい、となりのへやをたずねてみると、あねさまのすがたはありません。
 わかものがガックリしていると、はたご屋の番頭(ばんとう→詳細)がやってきて、
「このへやにとまったむすめさんから、これをたのまれました」
と、むすび目のあるてがみをわたされました。
 てがみをひろげてみると、
《恋しくば、たすねきてみよ十七の国、トントン町のそのさきの、くさらぬ橋のたもとにて、夏なく虫のぼたもちがまつ》
「はて、なんじゃ、こりゃ? なぞなぞのうたのようだが、さっぱりわからん」
 わかものは、よむのがやっとで、このうたにこめられたいみがわかりません。
 それでも、あのあねさまからもらった、だいじなてがみです。
 村へもってかえりました。
 いく日たっても、わかものは、あねさまのすがたがわすれられません。
 畑にでても、ためいきばかりついていました。
 そんなある日、たびの坊さんが村をとおりかかったので、わかものは、あねさまからもらったてがみをよみといてくれるよう、たのんでみました。
 さすがに、坊さんはものしりです。
「いいかね。十七の国とは、年のわかい国。つまり、若狭(わかさ→福井県)の国じゃ。トントン町とは、おけをつくっている町の音だから、おけ屋町。くさらぬ橋とは、石の橋。夏なく虫といえば、セミで、ぼたもちは、おはぎのこと。つまり、こうじゃ。『恋しいなら、若狭の国へたずねてきてください。おけ屋町のさきの石橋のたもとにある蝉屋(せみや)のおはぎがまっていますよ』。よかったの。はやく、たずねてゆきなされ」
「ヨッシャア!」
 さあ、わかものは、よろこんだのなんの。
 とるものもとりあえず、若狭の国へかけつけ、おけ屋町のさきの石橋のたもとにある、『蝉屋』という、大きな店に、おはぎさんをたずねあてました。
 すると、店の中からあのあねさまが出てきて、
「いまか、いまかと、まっておりました。さあ、おあがりくださいな」
 わかものは、おはぎさんと両親にむかえられ、めでたく、おむこさんになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 踏切の日
きょうの誕生花 → みやこわすれ
きょうの誕生日 → 1967年 南野陽子(女優)


きょうの日本昔話 → なぞかけあねさま
きょうの世界昔話 → 大きな家と小さな家
きょうの日本民話 → キツネの毒キノコ
きょうのイソップ童話 → ライオンとプロメテウスとゾウ
きょうの江戸小話 → でき心

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月22日の日本の昔話 こんにゃくえんま

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月22日の日本の昔話

こんにゃくえんま

こんにゃくえんま

 むかしむかし、ある村に、えんま(→詳細)大王をまつったお堂がありました。
 えんま大王といえば、地獄(じごく)の王さまです。
 金色の目をむいて、大きな口をクワーッと開けて、すごい顔でにらんでいます。
 見ただけでもおそろしいものだから、あんまりおまいりの人もきませんでした。
 ところがこのえんま堂に、雨がふっても風が吹いても、一日もかかさず、おまいりにくるおばあさんがいました。
 おばあさんは両方とも目が見えないので、孫の小さな女の子に、いつも手をひかせてくるのでした。
 ポカポカとあたたかい、お彼岸(ひがん→春分・秋分の日を中日として、その前後7日間)のある日。
 おまいりにきたおばあさんは、いつものように、えんまさまの前にすわります。
 女の子はこわいので、おばあさんのうしろにかくれていました。
「なんまいだー。なんまいだー。おじひぶかいえんまさま。どうぞ、あなたさまのお力で、このババの目をなおしてくだされ」
 おばあさんは、くりかえしくりかえし、えんまさまの前でおじぎをしました。
 えんま大王も、こうしてまい日まい日おがまれると、声をかけずにいられません。
「これ、ババよ。おまえのねがいはきいてとらす。よう信心(しんじん→神仏をしんこうすること)してくれたお礼に、わしの片目をしんぜよう」
 えんまさまが口をきいたので、おばあさんはビックリして上を向きました。
 すると、
「ありゃ! 見える、見える。あたりがよう見える!」
 おばあさんの右の目が、パッと開いたのです。
 おばあさんは、はじめてえんまさまの大きなおすがたを見て、ビックリするやらよろこぶやら。
 そのとき、女の子がさけびました。
「あっ、えんまさまの目が一つない」
 ハッと見あげると、えんまさまの目が、一つつぶれています。
 おばあさんは、ボロボロとなみだを流して、
「ああ、もうしわけございませぬ。おまえさまを、かたわ(不完全なこと)にして、わしが見えるようになるとは。ああ、もったいない、もったいない」
 すると、片目のえんまさまがいいました。
「まあ、そう心配せんでもいい。わしはおまえたちとちごうて、べつにはたらかなくてはならんということもない。ここに、こうしておるぶんには、片目でもじゅうぶんじゃ」
「へえ、もったいない。ところで、なにかお礼をさせていただきとうございますが」
「お礼か。・・・いや、そんなものはいらぬ」
「いいえ、そうおっしゃらずにどうぞ。わたしにできますことを、させてくださいまし」
「・・・さようか。それでは、こんにゃくをそなえてくれ。わしは、こんにゃくが大すきでな」
 そういわれたおばあさんは、まい日まい日、えんまさまに、こんにゃくをおそなえしました。
 そのことが村じゅうのひょうばんになって、えんまさまは、「こんにゃくえんま」と、よばれるようになりました。
 それからはおまいりの人もふえて、まい月の縁日(えんにち)には、境内(けいだい→社寺のしきち)に、こんにゃくおでんの店が、ズラリとならぶようになったのです。
 おかげでえんまさまも、すっかり顔つきがかわって、のこった片目をほそめて、ニッコリ笑うのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ボウリングの日
きょうの誕生花 → かんぞう(やぶかんぞう)
きょうの誕生日 → 1964年 阿部寛(俳優)

きょうの新作昔話 → アルキメデスの最後
きょうの日本昔話 → こんにゃくえんま
きょうの世界昔話 → 3匹のクマ
きょうの日本民話 → 大火事を知らせた男
きょうのイソップ童話 → ライオンとクマとキツネ
きょうの江戸小話 → おたばこいれ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月21日の日本の昔話 百目

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月21日の日本の昔話

百目

百目(→詳細)

 むかしむかし、春の日ざしがだいぶかたむきかかったころ。
 ひとりの商人が、荷物をせおって山道をいそいでいました。
 あたりはシーンとして、商人の足音だけが山の中にひびきわたります。
 商人はビクビクしながら、ほそい山道を進んでいきました。
 ふと前をみると、だれか先をいくものがいます。
 商人はホッとして。
「やれやれ、これでやっと道づれができたわい」
 いそいで追いつくと、声をかけました。
「なんとも、おみ足のおはやいことで」
「へえ」
 なんと、ふりむいた男は盲目(もうもく→目の見えない人)でした。
 両目とも、かたくふさがっています。
 商人は、ふと思いました。
(めくらなのに、つえも持たんで、なんであんなにはやく歩けるんじゃろう)
 商人は盲目のあとを歩きながら、話しかけました。
「あんたさんは、目が不自由のようですのに、よくまあ、はように歩けますなあ」
 話しあいてができたうれしさに、商人はきかれもしないのに、どんどんしゃべりました。
 村のまつりで反物(たんもの→衣服)を売ってもうけたこと、まつりの山車(だし→まつりなどで引く、飾りのついた車)のみごとだったこと、娘たちの着物や帯のはやりのこと、なんのかんのと、しゃべりつづけました。
 盲目は、ただ、
「ふんふん、ふんふん」
と、うなずくばかりです。
 山道が、ひどい石ころ道になりました。
 盲目は、じょうずに石をよけながら歩いていき、商人のほうは、ついていくのがやっとです。
と、盲目が、ピタリと立ちどまりました。
(やれやれ、小便でもする気かな)
 商人が、一息つこうとすると、
「ほう、こんなところにも、春がかくれておりますわい」
 みょうなことをいって、盲目は身をかがめました。
 商人がのぞきこむと、草のかげに、チラリとスミレの花がのぞいています。
 商人はおどろきました。
(こやつ、めくらのくせに。しかもこの日ぐれがたに、よくもこんな小さな花を)
 なんだか、ゾッとしてきました。
が、あわてて、つくり笑いをしながらいいました。
「おまえさんはめくらなのに、このわしよりよっぽど、よう見えるようですなあ」
 すると盲目は、
「なあに、めくらというものは、なんでも見えるもんですよ」
 そういって、またどんどん歩きだしました。
 商人もしかたなく、あとからどんどんついていきます。
 日がおちると、山の中はきゅうに暗くなりました。
 商人がちょうちん(→詳細)をともすと、盲目がいいました。
「すまんことですが、あかりをちょっと、かしてもらえんでしょうか。わらじ(→詳細)のひもをむすびなおしたいんで」
「・・・? ・・・さあさあ、どうぞ」
(目が見えないのに、あかりとは?)
と、思いましたが、商人は足もとにちょうちんをさしだしてやりました。
 盲目が着物のすそをまくりあげたとたん、商人は、
「ウヒャーー!」
と、さけんで、こしをぬかしてしまいました。
 なんと、盲目のひざから足もとにかけて、ギラギラと光る目玉が、百もついていたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スナックの日
きょうの誕生花 → さつき
きょうの誕生日 → 1963年 青山剛昌 (漫画家)


きょうの日本昔話 → 百目
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 ワニとライオン退治
きょうの日本民話 → ナマズを食べない村
きょうのイソップ童話 → 黒イタチ
きょうの江戸小話 → おいはぎかご

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月20日の日本の昔話 十七毛ネコ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月20日の日本の昔話

十七毛ネコ

十七毛ネコ

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 あるとき、きっちょむさんは町で、こんな話しを耳にはさみました。
「オスの三毛ネコ(→ネコの毛色で、白・黒・茶の三色の毛がまじっているネコ)を、船にのせておくと、どんなにひどいあらしにあっても、しずむことがない。それで船乗りは、オスの三毛ネコを、よいねだんでかいとるんじゃと。メスはいくらでもおるが、オスの三毛ネコは、めったにおらんからのう」
 きっちょむさんはしめたとおもって、はまの船乗りのところへいくと、
「わしのうちには、オスの三毛ネコより、もっとめずらしい、十七毛のオスネコがおるわい」
と、へんなじまんをしました。
「ほう、十七毛とはめずらしい。ゆずってくれんか?」
「いや、うるわけにはいかん。なにしろ、わしのうちのたからものじゃ」
 そういわれると、船乗りは、ますますほしくなって、
「五両(三十五万円)だすが、どうだ?」
と、いいました。
「まあ、それほどにいうなら、しかたあるまい。うることはできんが、しばらくかすことにしよう」
 そこであくる日、船乗りは、わざわざきっちょむさんのうちをたずねてきました。
「大事にしている物をかりるのだから、だだでは申し訳ない。おれいのしるしに、一両(七万円)とっておいてくれ」
「せっかくのおこころざしですから、ありがたくいただきましょう。では、おすの十七毛のネコを連れてきますでな」
 きっちょむさんは、おし入れから、きたない三毛ネコをつまみだしてくると、船乗りにいいました。
「よくかぞえてくだされよ。こいつはオスの三毛ネコじゃが、このあいだ、火ののこっているかまどにもぐりこんで、せなかをちょいとヤケドしました。つまり、八毛」
「しかし、きっちょむさん。三毛と八毛をたしても、十一毛にしかならんぞ。十七毛には、まだ六毛たらんのではないかね」
「いやいや。しりのところの毛が、むけておりましょう。つまり無毛(六毛)。三毛と、八毛と、六毛。ぜんぶあわせると、十七毛」
「うーん、こりゃあ、まいった」
 ふなのりは、きっちょむさんのとんちに感心すると、ほかの船乗りにも同じ話しで自慢(じまん)してやろうと、その十七毛ネコを持って、よろこんで帰りました。

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 健康住宅の日
きょうの誕生花 → ちがや(べにちがや)
きょうの誕生日 → 1967年 ニコール・キッドマン (俳優)


きょうの日本昔話 → 十七毛ネコ
きょうの世界昔話 → ギルガメシュのぼうけん
きょうの日本民話 → ウサギを追っ払ったキツネ
きょうのイソップ童話 → 2匹のイヌ
きょうの江戸小話 → どうでも、しやぁがれ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月19日の日本の昔話 たけのこのおとむらい

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月19日の日本の昔話

たけのこのおとむらい

たけのこのおとむらい

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん→詳細)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 一休さんのお寺のタケやぶのとなりに、さむらいのやしきがありました。
 ある日、一休さんが庭そうじをしていると、となりのやしきのさむらいが、タケノコこのかわを、ザルに入れてきて、
「わしのやしきへ、こいつがあいさつもなしに、はえてでた。ぶれいなやつなので、刀にかけてやったが、からだは、わしがゆでてくう。しかし、はぎとったきものは、かえしてやろう」
と、ザルをつきだしました。
「お寺のタケノコをひとりじめして、かわだけもってくるなんてひどいや。ようし、みていろ」
 一休さんがさむらいのやしきへいくと、タケノコがちょうど、ゆであがるところでした。
「たとえ、タケノコであっても、ねんごろにお経をあげて、とむらってやらねばなりません。ですから、このタケノコのからだを、いただいてゆきます」
 一休さんは、ゆでたタケノコをもちかえると、簡単にお経をあげて、あとはみんなで、おいしくいただきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ベースボール記念日
きょうの誕生花 → イキシア
きょうの誕生日 → 1053年 白河天皇 (天皇(72代)

きょうの新作昔話 → 左甚五郎(ひだりじんごろう)の竜
きょうの日本昔話 → たけのこのおとむらい
きょうの世界昔話 → 大きなカブ
きょうの日本民話 → ものをいうじぞうさん
きょうのイソップ童話 → オオカミと少年
きょうの江戸小話 → ネコのまねしたお嫁さん

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月18日の日本の昔話 百物語

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月18日の日本の昔話

百物語

百物語

 むかしむかし、江戸の浅草花川戸(あさくさはなかわど)に、道安(どうあん)という医者が住んでいました。
 ある日のこと。
《伝法院(でんぽういん)の広間(ひろま)で、百物語(ひゃくものがたり→詳細)をもよおすので、ぜひご出席いただきたい》
と、いう、つかいがきました。
 伝法院(でんぽういん)といえば、浅草境内(あさくさけいだい)にある、ゆいしょある大きな寺です。
 日がくれると、道安は寺へでかけていきました。
 この伝法院には、小堀遠州(こぼりえんしゅう→江戸前期の有名な茶人・造園家)がつくったといわれる、江戸でも名高い、りっぱな庭がありました。
 この庭を前にして、広間には、九十九本のローソクが立てられています。
 そして、その一本一本のローソクのうしろには、九十九人の男女が、きちんとすわっているのでした。
 年はさまざまでしたが、男も女も礼儀ただしくすわっているところをみると、みんな、そうとうな格式(かくしき→身分や家柄がすぐれていること)を持った人たちのように思われます。
「どうぞ、こちらへ」
 道安は庭が正面に見える、一座のなかの上座(かみざ→目上の人がすわる場所)にすわらされました。
 紋(もん)つき羽織(はおり)に、はかまをはいた、世話役らしい老人が、しらが頭をていねいにさげて、こういいました。
「では百人、ちょうどそろいましたので、会をひらかせていただきます。今夜はじめてご出席のかたもおられますので、ちょっともうしのべますが、この百物語は、おひとりが一つずつ、ばけものの話をなさって、ご自分の前のローソクを消してまいります。そういたしますと、百本のローソクが消されましたとき、ほんとうのばけものがあらわれるのでございます」
と、そのとき、道安はカラカラと笑って、
「この世にばけものなど、おろうはずはない。もしおったら、死んでもよいからお目にかかりたいものじゃ」
と、いいました。
 すると、広間じゅうのローソクがパッと消えると同時に、そこにいた九十九人が、ひとりのこらずすがたを消してしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 海外移住の日
きょうの誕生花 → おもだか
きょうの誕生日 → 1942年 ポール・マッカートニー (ビートルズ)


きょうの日本昔話 → 百物語
きょうの世界昔話 → むすびこぶ
きょうの日本民話 → 貧乏長者
きょうのイソップ童話 → ヤギとロバ
きょうの江戸小話 → れんこんのあな

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月17日の日本の昔話 ちょうふく山のやまんば

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月17日の日本の昔話

ちょうふく山のやまんば

ちょうふく山のやまんば

 むかしむかし、ちょうふく山という山のふもとに、小さな村がありました。
 このちょうふく山には、おそろしいやまんば(→詳細)がすんでいるという話です。
 ある年の十五夜のばん、村のものがお月見をしていると、にわかに空がかきくもり、おそろしげな声がひびきわたりました。
「ちょうふく山のやまんばが、子どもをうんだで、もちもってこう! こねば、人もウマも食いころすだどう!」
 村のものはビックリ。
 みんなで米を出しあって、大あわてでやまんばへの、いわいのもちをつきました。
 ところが、いざそのもちをやまんばへとどけることになると、みんなおそろしがって、だれもいこうとしません。
 どうすべえ、と話あったところ、
「そうだ、いつも力じまんばかりしていばっておる、かも安(やす)と権六(げんろく)にいかせるべえ」
と、いうことになりました。
「だ、だがよ、おれたちゃ道をしらね。どうやってもちをとどけりゃいいんだ?」
 すると、村いちばんの年よりの、大ばんばが進み出ました。
「わしが知っとるで、道あんないするべ」
 こうなっては、かも安と権六は、いまさらこわいとはいえません。
 もちをかかえると、トボトボと大ばんばの後をついて、ちょうふく山ヘとのぼっていきました。
 山道はだんだん日がくれ、なまあたたかい風がふいてきます。
「お、大ばんば、だいじょうぶだか?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶさ」
 そのとき、さっと強い風がふきつけ、
「もちはまだだか!」
と、ぶきみな声がひびきました。
「ひえっ、出たあ!」
「た、助けてくれえ!」
 かも安と権六はふるえあがって、たちまちにげだしてしまいました。
「ああっ、これ、またんか。・・・やれやれ、わし一人では、もちを運べんのになあ」
 しかたありません。
 大ばんばは、もちをおいて、やまんばの家をたずねていきました。
 やまんばは大ばんばを見ると、うれしそうに笑いました。
「ごくろうじゃな。きのう赤子をうんで、もちが食いとうなったで、その子を使いに出したんじゃ。して、もちはどこじゃな?」
 大ばんばはビックリです。
 あのおそろしい声を出したのが、生まれたばかりの赤ん坊だったとは。
「はい、はい。もってきたども、あんまりおもたいもんで、山のとちゅうにおいてきましただ」
 これを聞くと、やまんばは赤ん坊をふりかえっていいつけました。
「これ、まる。おまえ、ちょっといってもちをとってこい」
 すると、まるとよばれた赤ん坊は、風のようにとびだすと、おもいもちをかついで、あっというまにもどってきました。
 さすがは、やまんばの子です。
 おそろしくなって、大ばんばが帰ろうとすると、やまんばがひきとめました。
「せっかくきただ。すこしおらんちの用事をかたづけていってくれろ」
 大ばんばは、いやともいえず、それから二十一日のあいだ、やまんばの家で、あれこれとはたらいたそうです。
 やがて、
「里ヘ帰りたい」
と、やまんばにたのんでみると、
「長いことひきとめてすまんかった。それじゃ、みやげにこれをやるべ」
と、やまんばは、みごとなにしきの布を大ばんばにくれました。
「ほれ、まる。大ばんばを村まで送ってやるだよ」
 いわれたまるは、大ばんばを軽々とかつぎあげ、あっというまに村に運んでいきました。
 さて、村に帰ってみると、もう大ばんばは死んだものと、大ばんばのそうしきのさいちゅうでしたから、村のものはビックリ。
 大ばんばはわけを話して、やまんばがくれたにしきを、村のものに分けてやりました。
 ところがその布は、いくら使ってもすこしもへらない、ふしぎなにしきでした。
 それからというもの、そのにしきはこの村の名物となり、みんなしあわせにくらしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → おまわりさんの日
きょうの誕生花 → リアトリス
きょうの誕生日 → 1947年 今くるよ(漫才師)

きょうの新作昔話 → アルキメデスの新兵器
きょうの日本昔話 → ちょうふく山のやまんば
きょうの世界昔話 → 小ウサギのしょうばい
きょうの日本民話 → まめになれないとうふ
きょうのイソップ童話 → ウシと車軸
きょうの江戸小話 → つみなひとだま

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月16日の日本の昔話 光る玉

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月16日の日本の昔話

光る玉

光る玉

 むかしむかし、ある町に、よくのふかい和尚(おしょう→詳細)さんがいました。
 ある日のこと。
 和尚さんが、壇家(だんか→むかしから付き合いのある家)のおつとめにいきましたが、かえりがおそくなってしまいました。
 カゴにのってかえればよいものを、よくのふかい和尚さんはお金がもったいないと、ひとりで夜道をトコトコトコトコ歩いてかえってきました。
 壇家でごちそうになったお酒が、ホロホロとまわってきて、とてもいい気持ちです。
 代宮橋(だいかんばし)までかえってくると、橋のてすりの上に、ピカリピカリと光るものがありました。
 見れば、たいそう美しい玉です。
 和尚さんは、よろこんで、
「こりゃあ、けっこうなおさずけもんがあるわい。さっそく、いただいてかえりましょう」
 それをつかんで、ふところへ入れようとすると、光る玉はコロコロコロころがって、先のほうでとまりました。
 和尚さんは、
「これこれ、かってにころがるでない。きずがつくわい」
と、そばへいって、ひろおうとしました。
 すると玉は、またキラキラ光りながら、コロコロコロッと、先のほうへころがっていきます。
 ころがってもころがってもよごれずに、ピカリピカリと光っています。
 和尚さんは、ますますその玉がほしくなって、
「こりゃまて。こりゃまて」
と、追いかけていくうちに、もらってきたおふせも、ごちそうのつつみも、だいじなじゅず(仏・菩薩を礼拝する時に手にかける用具。小さい珠を108個、糸に貫いて作ります。108個あるのは、人間の持つ108の煩悩をうちけすため。宗派によって54・27・36・18個のものあります)も、みんなおとしてしまい、とうとう、もとの町の中までもどってしまいました。
 町の人は、和尚さんがフーフーいいながら追いかけているのを見て、
「それ。みんなで、和尚さんを手つどうてやれ」
と、和尚さんのあとから、みんなして光る玉を追いかけました。
 そのうちに、玉は町はずれの百姓(ひゃくしょう→詳細)家の庭へ、コロコロコロッと、ころがりこんだかと思うと、
 ピョンと、やぶれた障子(しょうじ)の穴から、家の中へとびこんでしまいました。
「それっ!」
と、みんなが中へ入ると、百姓がひとり柱にもたれて、大きな口をパックリ開けてねむっていました。
 玉はその口の中ヘ、ピョーンと、入ってしまいました。
「ありゃ、ありゃ」
「こりゃまあ、どうしたこっちゃい」
 和尚さんも町の人もビックリして、
「これ、これ。・・・えい、これ、おきんかい!」
と、百姓をゆさぶりおこすと、
「おまえ、いま、その大きな口で、なにを食ったんじゃい」
と、聞きました。
 百姓は、目をパチパチさせて、
「わしは、なにも食いはせん。いまやっとのことで、家へもどってきたとこですわい。ああ、しんど」
「なに? 家へもどったところじゃと」
「へえ、わしゃ、用がありまして、さっき代官橋(だいかんばし)までいきましたら、どこの人やらしれんが、いやもうおそろしい人においかけられて、にげてにげて、やっといま、家にもどったとこですわい。ほれ、胸がこのように、ドキドキしとります」
 百姓のことばをきくと、町の人はひどくおかしくなってきて、みんなでクスクスとわらいだしました。
「さては和尚さんは、ここのおやじさんのたましいをおいかけてござったんじゃ」
「それにしても、和尚さんの足のはやいこと」
 和尚さんはきまりがわるくなって、あわててその家をとびだすと、ショボショボと家へかえりました。
 そして、
「それにしても、百姓のたましいってものは、きれいなもんじゃなあ」
と、つぶやいたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ケーブルテレビの日
きょうの誕生花 → まつばぎく
きょうの誕生日 → 1966年 上杉和也・達也 『タッチ』


きょうの日本昔話 → 光る玉
きょうの世界昔話 → くさったリンゴ
きょうの日本民話 → 金を拾ったら
きょうのイソップ童話 → 天文学者
きょうの江戸小話 → タイのおかわり

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月15日の日本の昔話 ネズミ経

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月15日の日本の昔話

ネズミ経

ネズミ経

♪朗読再生

 むかしむかし、ある山の中に、ひとりのおばあさんが住んでいました。
 おばあさんは、たいへん仏さまを大事にしていましたので、毎日毎晩、仏だんの前で手を合わせましたが、お経のことばを知りません。
 あるとき、ひとりの坊さんがやってきていいました。
「道に迷って困っています。どうか一晩泊めてください」
「ああ、いいですとも」
 おばあさんは、坊さんをしんせつにもてなしましたが、ふと、気がついていいました。
「お願いです。どうか、お経のことばを教えてください」
 ところが、この坊さんはなまけ者で、お経のことばを知りませんでした。
 でも、坊さんのくせにお経を知らないともいえないので、しかたなしに仏だんの前にすわると、なんといおうかと、考えました。
 すると、目の前の壁の穴から、ネズミが一匹顔を出しました。
 そこで坊さんは、
「ネズミが一匹顔出したあー」
と、お経の節をつけていいました。
 すると今度は、二匹のネズミが穴から顔を出したので、
「今度は、二匹顔出したあー」
と、坊さんはいいました。
 さて、つぎになんといおうかなと、考えていると、三匹のネズミが穴から顔を出して、こちらを見ています。
 そこで坊さんは、
「つぎには、三匹顔出したあー」
 大きな声でいうと、三匹のネズミはビックリして穴から逃げ出しました。
 そこで、
「それから、みーんな逃げ出したあー」
 坊さんはそういって、チーンと鐘を鳴らしていいました。
「お経は、これでおしまいです。すこし変わったお経ですが、大変ありがたいお経です。毎日、今のようにいえばいいのです」
 おばあさんは、すっかり喜んで、それから毎朝毎晩、
「ネズミが一匹顔出したあー。今度は二匹顔出したあー。つぎには、三匹顔出したあー。それから、みーんな逃げ出したあー」
と、お経をあげました。
 ある晩、三人のどろぼうが、こっそりおばあさんの家に、しのびこみました。
 ちょうど、おばあさんが仏だんの前でお経をあげているときでした。
「あのばあさん、なにをしているのかな?」
 ひとりのどろぼうが、おばあさんの後ろのしょうじから、そっと顔を出すと、
「ネズミが、一匹顔出したあー」
 おばあさんが、大声でいいました。
「あれっ、おれのことをいってるのかな?」
「なにをブツブツいってるんだい」
 もうひとりのどろぼうが、顔を出すと、
「今度は、二匹顔出したあー」
 おばあさんが、また大きな声でいいました。
「やっぱり、おれたちのことを、いってるみたいだぞ」
「どれどれ」
 三人めのどろぼうが顔を出すと、
「つぎには、三匹顔出したあー」
 また、おばあさんの声がしました。
「うへえっ、あのおばあさん、後ろに目がついているんだ。こわい、こわい」
 三人のどろぼうはビックリして、あわてて逃げ出しました。
 そんなことは知らないおばあさんは、また、
「それから、みーんな逃げ出したあー」
と、大声でいうと、チーンと鐘を鳴らして、仏だんに手を合わせました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 暑中見舞いの日
きょうの誕生花 → たちあおい
きょうの誕生日 → 1937年 伊東四朗(タレント)

きょうの新作昔話 → 川場温泉
きょうの日本昔話 → ネズミ経
きょうの世界昔話 → ハメルンの笛吹
きょうの日本民話 → 子守り娘のお伊勢参り
きょうのイソップ童話 → アリとコガネ厶シ
きょうの江戸小話 → おしょうの約束

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月14日の日本の昔話 山寺の菩薩

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月14日の日本の昔話

山寺の菩薩

山寺の菩薩

 むかしむかし、京の都にちかい山寺に、それはそれは学問のある、えらい和尚(おしょう→詳細)さんがおりました。
 そしてふしぎなことに、このお寺には、とてもありがたいことがおこるのです。
「さよう、普賢菩薩(ふげんぼさつ)ともうされて、いつもお釈迦(しゃか)さまのおそば近くにつかえて、わたくしどもにおじひをおさずけくださる、ありがたい仏さまが、像(ぞう)におのりになって、まい晩まい晩、この寺にお見えになるのでございます」
 この話は都にもつたわって、おおぜいの人たちが寺をたずねてきては、普賢菩薩(ふげんぼさつ)さまをおがんでかえるのでした。
 和尚さんはいつもうれしそうに、お寺まいりの人たちに、
「わしは何十年もながいあいだ、ただの一日も、お経をかかしたことがござりませぬ。それできっと、このようなありがたい仏さまが、おがめるようになったのでござりましょう」
と、話しをするのでした。
 ある日のこと。
 ひとりの猟師(りょうし)が、この山寺へやってきました。
 和尚さんは、猟師に、
「あんたは、まい日、生きものを殺してばかりおられるが。これからは心を入れかえて、仏につかえてはどうじゃな。ありがたい普賢菩薩(ふげんぼさつ)さまのおすがたをおがんで、今夜はゆっくりここにおとまりなされ」
「へえ、よろこんでとめていただきましょう」
 猟師は今夜もあらわれるという、ふしぎな仏さまをひとめでもおがんでおこうと考えて、おすがたのあらわれるのをまつことにしました。
 さて、真夜中(まよなか)になると和尚さんは、
「もうそろそろ、おでましになりますから、どうぞ、こちらへ」
と、猟師を本堂へあんないしました。
 本堂のとびらをあけると、和尚さんは入り口のしきいのところに両手をついて頭をさげました。
 おともの小僧さんも、頭をさげます。
 三人はながいあいだ、普賢菩薩(ふげんぼさつ)のおでましをまちました。
 すると、ポツンと一つ、白い光が東の空にあらわれたのです。
 そしてその光はこちらへくるにつれて、だんだん大きくなり、寺のまわりの山やまを明るくてらしだしました。
 光はやがて、雪のような白いゾウになると、背中に普賢菩薩(ふげんぼさつ)さまをのせて、しずかに寺の前にたちました。
 仏さまのおからだからは、まぶしいほどの後光(ごこう→神さまや聖人などの背後に、円形または輪状・放射状に見える光線)がさしています。
 和尚さんと小僧さんは、頭をさげたまま、
「なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」
と、いっしんにお経をとなえはじめました。
 ところが、猟師はふたりのうしろに立って弓に矢をつがえると、菩薩(ぼさつ)さまをにらみつけています。
 そして、菩薩(ぼさつ)さまめがけて矢を放ちました。
 ビューン!
 矢は菩薩(ぼさつ)さまの胸の中心に、ふかくつきささりました。
 ゴロゴロゴロー!
 突然、雷がはげしく鳴りひびいて、寺は大ゆれにゆれました。
 白いゾウのすがたも、菩薩さまのすがたも消えて、あとはただ、ヒューヒューと、やみの中を吹きまくる風の音ばかりです。
 和尚さんは猟師を見ると、かみつくようにわめきました。
「なっ、なんと! なんということを、しでかしたのじゃ!」
 すると猟師は、おだやかにこういいました。
「和尚さま。どうか気をおしずめなされて、わしのもうすことをお聞きくだされ。あの菩薩(ぼさつ)さまからは、けもののにおいがしました。ほかの人は気づかなくとも、わしの鼻はごまかされません。あのにおいはタヌキです。それも人の肉を食らう、年老いた古ダヌキにまちがいありません。お怒りはわかりますが、どうか夜のあけるまで、おまちください」
 そして朝になりました。
 猟師と坊さんは、白いゾウが立っていたところへいって、辺りをしらべてみました。
 すると、そこには血のあとと、数本のけものの毛がのこっていました。
 二人が血のあとをたどって、ひと山こえていくと、ほら穴の前に猟師の矢に心臓をいぬかれた、大ダヌキが死んでいたのです。
 そのまわりには、この大ダヌキが食べちらかした人間の骨がたくさんころがっていました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日記の日
きょうの誕生花 → しもつけ
きょうの誕生日 → 1944年 椎名誠(小説家)


きょうの日本昔話 → 山寺の菩薩
きょうの世界昔話 → イリーサのおまんじゅう
きょうの日本民話 → 宝のどんぶり
きょうのイソップ童話 → カとウシ
きょうの江戸小話 → 商売なかま

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月13日の日本の昔話 どろぼうたいじのへ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月13日の日本の昔話

どろぼうたいじのへ

どろぼうたいじのへ

 むかしむかし、あるところに、なまけものの男がいました。
 はたらきにでても、ながくはつとまりません。
 たちまち、家にかえされてしまうので、びんぼうしきっていました。
 男はそこで、村のちんじゅさまにおまいりして、
「どこかに、よいはたらき口がみつかりますように」
と、おねがいしました。
 すると、ちんじゅの神さまは、めったにおがんでくれるものがないものですから、よろこんで、
「よろしい。おまえのたのみをききとどけて、めずらしい『へ』をさずけよう」
と、おごそかにいいました。
「へっ?」
 男はガッカリです。
 へなどもらったところで、なんのやくにもたちません。
「こら、もっとよろこばんか。へといっても、ただのへではないぞ。このへは、プウーとかスウーとか、そんなケチななりかたはせん。ダリャ! ダリャッ!(だれだ、だれだ)と、でっかい音がする。これで、おまえにはきっと、よいはたらき口がみつかるはずじゃ」
 ちんじゅの神さまのこえは、それっきり、きこえなくなってしまいました。
「ああ、せっかくおがんだのに、へしかさずけてもらえんとは」
 男がはたらき口をさがしにいくと、まもなく、やとってくれるところがみつかりました。
 ところが、男がときどき、
「ダリャ、ダリャッ!」
と、音のでっかいへをするものだから、
「うるさくてこまる」
「なんと、ひとさわがせなへをこくやつだ」
 たちまちきらわれて、ひまをだされてしまいました。
「これでは、はなしがちがうわい。せっかく、よいはたらき口が見つかったのに、おいだされていくところもない」
 男が村はずれで、とほうにくれていると、男のうわさをきいた長者(ちょうじゃ→詳細)のつかいがきて、
「長者さまのおやしきで、はたらかねえか」
と、いってくれました。
「それはありがたい。ねがってもないはなしだ」
 男はこうして、長者のやしきではたらくことになりました。
 男のしごとは、やしきにあるくらのものを、どろぼうにとられないように、みはりばんをすることです。
「これなら、おらにもつとまりそうだ」
 男はまいばん、やしきのくらに入って、みはることにしました。
 けれども、いくばんたっても、どろぼうがあらわれないものだから、あるばん、男はすっかりゆだんして、くらのなかでグッスリとねむってしまいました。
 そこに、どろぼうがしのびこんできました。
「しめしめ、だれもおらんぞ」
 どろぼうがあんしんして、めぼしい品物を、ふろしきにつつみはじめると、
「ダリャ、ダリャッ!」
 いきなり、大きなこえがしました。
 どろぼうは、それがまさか、へだとは思いません。
「しまった!」
 てっきり見つかったと思って、あわてて、にげだそうとしました。
 けれど、だれもかけつけてくるようすがありません。
 気をとりなおして見回すと、男が一人、だらしなくねむっています。
「なんだ。こいつのへの音か。おどかしやがって」
 どろぼうはおこって、男のしりに、落ちていたたるのせんをつめました。
「これでよし」
と、きもちをおちつけて、しごとにかかりました。
 そしていよいよ、ぬすんだものをかつぎだそうとしたときです。
 男のしりにつめてあったたるのせんが、スポーンとぬけたから、たまりません。
 たまっていたへが、
「ダリャ、ダリャッ、ダリャーッ!」
 やしきじゅうに、ひびきわたりました。
 それをききつけたやしきのものが、すぐさまかけつけたので、どろぼうは、あっさりつかまってしまいました。
「でかした、でかしたぞ。おまえのみごとなはたらきで、どろぼうたいじができた。しかも、いままでぬすまれた物も取り返すことができた」
 男は長者から、たくさんのほうびをもらったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → FMの日
きょうの誕生花 → ツンベルギア
きょうの誕生日 → 1960年 山田邦子(タレント)


きょうの日本昔話 → どろぼうたいじのへ
きょうの世界昔話 → ズルタンじいさん
きょうの日本民話 → 宝箱をとりもりどしたネコ
きょうのイソップ童話 → 闘犬とふつうのイヌ
きょうの江戸小話 → ごんすけのおつかい

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月12日の日本の昔話 ふたりになった孫

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月12日の日本の昔話

ふたりになった孫

ふたりになった孫

 むかしむかし、ある村に、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
 おじいさんとおばあさんには、かわいい孫がいます。
 ところが家が貧乏なので、孫を二里(八キロメートル)ほどはなれた、漁師の網元(あみもと→多くの漁師をやとっている、漁師の親方)の家へ奉公(ほうこう→住み込みで働くこと)にだすことになりました。
 ところがこまったことに、奉公にいったその晩から、孫はかえってきて、
「じいさま、おばあさん、おら、網元の家じゃあ、骨がおれてどうにもなんねえ。おら、あそこへ奉公するのはいやだ」
 おじいさんもおばあさんも、すっかりこまってしまって、
「これ。そんたら、ただこねるもんでねえ」
「なんとかしんぼうして、おめえも一人まえになってくれんと、わしらも、もう年よりじゃで、これからよう食べていけんのじゃ」
 そういうて、せんべいを食べさせたり、おみやげ持たせたりして、やっとかえしたのですが、あくる日の晩になると、またもどってきました。
 こうして孫は、まい晩まい晩かえってきては、おいしいものを食べ、おみやげを持ってかえっていったのです。
 ある日のこと。
 孫が休みをもらったといって、めずらしく昼間にかえってきました。
 そこで、おばあさんは孫に注意をしました。
「なあ、おまえ。そんなに家にかえってばかりしては、ようないぞ。網元さまにも、よくは思われん。だから、おまえももうちっと、しんぼうせにゃいかんぞ」
 すると孫は、みょうな顔をして、
「じいさま、ばあさま。おら、網元さんに奉公して、きょうはじめて家にかえってきただよ。なんで、そんなこという?」
「なにをいうてるだ。おまえは、まい晩のように、かえってきたでねえか」
「そうだ。そんで、ごちそうたらふく食べて、みやげもんまで持ってかえったでねえか」
 おじいさんとおばあさんの言葉に、孫はおどろいていいました。
「いんや、いんや、おら、かえってくるのは、きょうがはじめてだ」
「???」
 はて、おかしなことがあるもんだと、おじいさんもおばあさんも首をかしげます。
 やがて夜になると、戸をたたく音がしました。
 おじいさんが戸口におりてゆくと、
「おら、いまかえったぞ」
 いつもの孫の声がします。
 おじいさんは、ビックリして、
「はてさて、これはきみょうなことになったわい。おらの孫は、昼間からここにきているというのに」
 おくを見ると、たしかに孫は、おばあさんと話をしています。
「こりゃ、どうすべえ。孫がふたりになったぞ。どっちがほんとうの孫じゃろか?」
 おじいさんは考えました。
(そういえば、孫が昼間かえってきたのは、これがはじめてじゃと言った。すると、まいばんきた孫はニセ孫かな。ことによると、ばんにくる孫は、ばけものかもしれんぞ)
 そう思い、そばにあった天びん棒(てんびんぼう→両端に荷物を引っかけて使う、荷物もちの棒)をもって、用心しながら戸をあけました。
 すると、外の孫はビックリして、
「じいさま、じいさま。おらは、おまえの孫だぞ。そないなもの持って、どうするんじゃい」
 そこでおじいさんは、
「わしの孫は昼間きて、それ、そのおくでばあさまと話をしとるわい!」
と、どなると、いままで孫のすがたしていたものが、クルリととんぼがえりをして、一匹のタヌキになりました。
 そして、
「じいさまや。かんにん、かんにん」
と、手をあわせておがむのです。
 まあ、そのようすのいじらしいこと。
 おじいさんは、すっかりタヌキの孫もかわいくなって、
「よしよし。おまえもせっかくきたんじゃから、あがっていけ。ごちそうもあるで、ドッサリと食べていけや」
 そういうと、タヌキはまた、クルリととんぼがえりをして、孫のすがたになりました。
 そして、おばあさんとおじいさんと、ほんとうの孫とタヌキの孫と、みんなで晩のごちそうをなかよく食べたのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 恋人の日
きょうの誕生花 → ユッカ
きょうの誕生日 → 1978年 釈由美子(タレント)

きょうの新作昔話 → アルキメデス 宇宙にある砂粒の数
きょうの日本昔話 → ふたりになった孫
きょうの世界昔話 → アトリの鐘
きょうの日本民話 → 立山の浦島物語
きょうのイソップ童話 → イヌとウサギ
きょうの江戸小話 → どろぼうのおてほん

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月11日の日本の昔話 黒雲

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月11日の日本の昔話

黒雲

黒雲

 むかしむかし、一そうの船が、荒波(あらなみ)のなかを走っていました。
 ながい航海(こうかい)もおえて、まもなく港につくというころ、晴れわたっていた空のゆくてに、ポツンと一つ、点のような黒雲があらわれました。
 雲は陸地のほうから、しだいしだいに、こっちへやってきます。
 船に近づくにつれて、黒雲は、だんだん大きくふくれあがってきました。
 そして、船のま上まできたときには、日の光はまったくさえぎられ、あたりは不気味(ぶきみ)な暗さにつつまれました。
 とつぜん、
「あーれー」
と、いう、女のひめい。
「はて、この船には、女はのっておらんが」
「してみると、あの声は雲の中からか?」
 船の人たちは、ふしぎなできごとにおどろいて、甲板(かんぱん)に集まりました。
 そして、ひとみをこらして、頭上にうずまく気味のわるい黒雲を見つめます。
 黒雲はグルグルとうずまいて、なにか、あやしい目のようなものが、雲の中でうごきまわっています。
 やがて、黒雲は船をおしつぶすようにひくくおりてきました。
と、そのとき。
「うわーっ」
 船のりたちは、思わずさけびました。
 とぐろをまく黒雲の中から、人間の足がたれさがってきたのです。
「うぬっ!」
 気丈(きじょう→少々のことでは、あわてない事)な船のかしらは、いきなりその足にとびついて、ひきずりおろしました。
 見ると、それは老婆の死体でした。
「たいへんなものが、ふってきたわい」
「死人じゃ。水葬(すいそう→水中にしがいを投じてほおむること)にしてやろうかい」
 大さわぎをして、ふと気がつくと、いつのまにやら黒雲は消えうせ、まるで何事もなかったかのように、青空がひろがっています。
と、風にのって、陸地の方から人びとのざわめきが流れてきました。
 見ると、浜辺におおぜいの人が集まっています。
(どうやら、浜の人たちのあのさわぎと、この老婆の死体とは関係がありそうだ)
 船がしらは、さっそく小船をおろすと、浜の方へようすを見せにやりました。
 しばらくすると、ひとりの男をのせてもどってきました。
 男は、老婆の死体をみると、
「おはずかしいことでございますが、これは、わたくしの母でございます」
 そういって、はらはらとなみだをこぼしました。
「お聞きくださいまし。母は金貸しをいたしておりました。はじめのうちは近所の方に、ほんの小銭を用立てるていどでございましたが、だんだんよくがでてまいりまして、このごろでは、ただ金だけに目がくれ、人さまからは鬼ババとまでいわれるありさま。きょうも金のかたじゃと、年瑞(としは→ねんれいがひくい事を意味する言葉)もいかぬ娘をつれだして、人かいにわたそうとしたのでございます。ところが、とつぜん黒雲がおりてきて、あっというまに母ひとりさらわれて。・・・これも、悪業(あくぎょう→わるいおこない)のむくいなのでございましょうか」
 話しおわると、男は泣き泣き、老婆の死体を引き取っていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 雨漏り点検の日
きょうの誕生花 → べにばな(すえつむはな)
きょうの誕生日 → 1965年 沢口靖子(俳優)


きょうの日本昔話 → 黒雲
きょうの世界昔話 → ガリバーのぼうけん
きょうの日本民話 → 旅のどろぼう
きょうのイソップ童話 → ウシとガマ
きょうの江戸小話 → かまどろぼう

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月10日の日本の昔話 テングの隠れみの

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月10日の日本の昔話

テングの隠れみの

テングの隠れみの

♪ 朗読再生

 むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 小さい頃から頭が良くて、ずいぶんととんちがきくのですが、大が付くほどの酒好きです。
 何しろ彦一の夢は、毎日たらふく酒を飲むことです。
「酒が飲みてえな。何か、うまい知恵はないだろうか?」
 考えているうちに、ふと、それをかぶると姿が消えるという、テングの隠れみのの事を思い出しました。
 テングは村はずれの丘に、ときどきやってくるといいます。
「よし、テングの隠れみのを手に入れて、酒をたらふく飲んでやろう」
 彦一はさっそく、ごはんを炊くときに使う、火吹き竹(ひふきだけ)を持って丘に来ました。
「やあ、こいつはええながめだ。大阪や京都が、手に取るように見える。見えるぞ」
 そう言いながら、火吹き竹を望遠鏡(ぼうえんきょう)のようにのぞいていると、松の木のそばから声がしました。
「彦一、彦一。のぞいているのは、かまどの下の火を吹きおこす、ただの火吹き竹じゃろうが」
 声はしますが、目には見えません。
 テングが近くにいるのです。
「いいや、これは火吹き竹に似た、干里鏡(せんりきょう)じゃ。遠くの物が近くに見える宝じゃ。・・・おお、京の都の美しい姫がやってきなさったぞ。牛に引かせた車に乗っておるわ」
「京の都の姫だと? 彦一、ちょっとで良いから、わしにものぞかせてくれんか?」
 テングは、彦一のそばにきたようすです。
「だめだめ。この千里鏡は、家の宝物。持って逃げられては大変じゃ」
 そのとたん、目の前に大きなテングが姿を現しました。
「大丈夫、逃げたりはせん。だけど、そんなに心配なら、そのあいだ、わしの隠れみのをあずけておこう」
「うーん、それじゃ、ちょっとだけだぞ」
 彦一はすばやく隠れみのを身につけると、さっと姿を消しました。
 テングは火吹き竹を目にあててみましたが、中はまっ暗で何もうつりません。
「彦一め、だましたな!」
と、気がついたときには、彦一の姿は影も形もありませんでした。
 隠れみのに身を包んだ彦一は、さっそく居酒屋(いざかや→お酒を出す料理屋)にやってくると、お客の横に腰をかけて、徳利(とっくり→お酒の入れ物)のままグビグビとお酒を飲み始めました。
 それを見たお客は、ビックリして目を白黒させます。
「とっ、徳利が、ひとりでに浮き上がったぞ!」
 さて、たらふく飲んだ彦一は、ふらつく足で家に帰りました。
「うぃー。これは、便利な物を手に入れたわ。・・・ひっく」
 隠れみのさえあれば、いつでも、どこでも、好きな酒を飲む事ができます。
 次の朝。
 今日も、ただ酒を飲みに行こうと飛び起きた彦一は、大事にしまいこんだ隠れみのが、どこにもない事に気がつきました。
「おーい、おっかあ。つづら(→衣服を入れるカゴ)の中にしまいこんだ、みのを知らんか?」
「ああ、あの汚いみのなら、かまどで燃やしたよ」
「な、なんだと!」
 のぞきこんでみると、みのはすっかり燃えつきています。
「あーぁ、なんて事だ。毎日、酒が飲めると思ったのに・・・」
 彦一はぶつくさいいながら、灰をかき集めてみると、灰のついた手の指が見えなくなりました。
「ははーん。どうやら隠れみのの効き目は、灰になってもあるらしい」
 体にぬってみると、灰をぬったところが透明になります。
「よし、これで大丈夫だ。さっそく酒を飲みに行こう」
 町へ出かけた彦一は、さっそく、お客のそばにすわると、徳利の酒を横取りしました。
 それを見たお客は、
「わっ!」
と、悲鳴をあげました。
「み、みっ、見ろ。めっ、目玉が、わしの酒を飲んでいる!」
 隠れみのの灰を全身にぬったつもりでしたが、目玉にだけはぬっていなかったのです。
「化け物め、これをくらえ!」
 お客は、そばにあった水を彦一にかけました。
 バシャン!
 すると、どうでしょう。
 体にぬった灰がみるみる落ちて、裸の彦一が姿を現したのです。
「あっ! てめえは、彦一だな! こいつめ、ぶんなぐってやる!」
「わっ、悪かった、許してくれー!」
 彦一はそういって、素っ裸のまま逃げ帰ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 路面電車の日
きょうの誕生花 → アカンサス(はあざみ)
きょうの誕生日 → 1977年 松たか子(俳優)

きょうの新作昔話 → 忠犬ハチ公
きょうの日本昔話 → テングの隠れみの
きょうの世界昔話 → ヘビの魔法
きょうの日本民話 → おじいさんとカニ
きょうのイソップ童話 → ワシのまねをしたカラス
きょうの江戸小話 → るすばんめがね

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月9日の日本の昔話 雄ジカの目

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月9日の日本の昔話

雄ジカの目

雄ジカの目

 むかしむかし、ある山里に、ひとりの侍が、母親と召使いの三人で、わびしくくらしていました。
 その侍は、えらく狩りずきで、まい日のように弓矢をもっては、山にでかけていきます。
 そして、鳥やウサギやイノシシなどをしとめると、とくいげにかえってきては、母に見せるのでした。
 母親は、狩りばかりしているむすこのことをあんじていいました。
「おまえはすこし、生きものを殺しすぎではないか。母は、このごろなにやら、生きものがあわれでならんのじゃ」
 しかし、侍は母親のことばなどには、耳をかそうとしません。
 親がいえばいうほどうるさがって、いっそう、山へでかけることがおおくなったのでした。
 いまでは、母親もむすこをいさめる気力もなくなり、病の床につくようになってしまいました。
 むすこが、いつも家をあけているので、母の世話は、召使いの娘がしています。
 母がねているへやには、古い床の間があって、そこには代々つたわってきた、かけ軸が一本かかっています。
 これは、都にいたご先祖さまが、たいそうえらい方からいただいたものだそうで、雄(おす)ジカが一頭、力つよい筆で、みごとにかかれていました。
 こっちをジッと見つめる、そのシカの目は、やさしさといっしょに、あやしく光っていて、まるで生きたシカの目のようでした。
 貧乏で、多くのものは売ってしまいましたが、母はこの雄ジカのかけ軸だけは、むすこがなんといおうと、けっして手ばなそうとはしなかったのです。
 ある日のこと、むすこはいつものように、山へでかけていきました。
 ところがその日は、山じゅうかけめぐっても、なに一つとれません。
 むすこは、あせりはじめました。
 だが、あせればあせるほど、えものはとれません。
 もう、日はくれかかって、あたりの山やまは、暗くなりはじめます。
 するとそのとき、遠くのほうで、なにやらキラキラ光るものが見えました。
「はて、なんだろう。こんな山おくに。・・・もしかしたら、妖怪のたぐいかもしれんぞ!」
 むすこは、矢を弓につがえ、光りものをジーッとねらうと、
 ビューン!
「よし、しとめた! たしかに手ごたえはあった。さていったい、なにものを射とめたのだろう」
 たしかめたいと思いましたが、もう、あたりはまっ暗です。
「しかたない。あすにしよう」
と、山をおりてきました。
 侍が家につくと、いきなり召使いの娘が走りよってきて。
「母上が、母上がお苦しみです。はやくおへやへ」
「えっ」
 侍が、いそいでへやのほうへゆくと、ただならぬうめき声がきこえます。
「母上! 母上! お気をたしかに」
 サッと、ふすまを開けてへやに入ると、そこには母のすがたはなく、ただ、ねまきだけがぬぎすててあります。
「? ・・・はっ、これは!」
 ふと、床の間に目をうつしたとたん、侍はブルブルと、身ぶるいしました。
 そこにかけてあった軸の雄ジカの目に、じぶんの射た矢が、つきささっているのです。
 そして、その美しい目から、まっ赤な血がふきこぼれているではありませんか。
「母上! 母上! だれかおらぬか。これ、だれか!」
 家の中をむちゅうでさがしまわりましたが、母親のすがたも、また、さぎほどまでいた召使いの娘のすがたも、見つけることはできませんでした。
 侍はただひとり、やぶれはてた家の中に、魂がぬけたように、立ちつくすばかりでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ネッシーの日
きょうの誕生花 → きょうがのこ(しもつけそう)
きょうの誕生日 → 1934年 ドナルドダック (漫画キャラ)


きょうの日本昔話 → 雄ジカの目
きょうの世界昔話 → 黒ウシの助け
きょうの日本民話 → 殿さまはもの知らず
きょうのイソップ童話 → 2匹のコガネ厶シ
きょうの江戸小話 → ダイコンが白いわけ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月8日の日本の昔話 みそさざいは鳥の大将

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月8日の日本の昔話

みそさざいは鳥の大将

みそさざいは鳥の大将

 むかしむかし、まんまる山という山の中で、鳥たちが集まって、にぎやかに大えんかいしていました。
 そこで、烏たちはこんな話をしています。
「のう、みんな。鳥たちのなかで、いったいだれが大将かのう?」
「鳥の大将か? そりゃあやっぱり、タカさまでねえか」
「うん、タカさまが、いちばん強い」
「空を飛べばいちばんはやいし、ねらったえものはぜったいのがさない」
「そうだ、鳥の大将はタカさまだ」
 みんながうなずきあっていると、鳥のなかでいちばん小さなみそさざい(→スズメ目ミソサザイ科の鳥で、翼長は約5センチ)が、酒によったいきおいで、ついこんなことをいってしまったのです。
「鳥の大将はタカだって? とんでもない。大将はこのおれさまだい! タカが強いだって? からだがでっけえだけで、頭はカラッポさ」
 ほかの鳥たちのおどろいたのなんの。
「これこれ、そんなしつれいなことをいってはいかん」
「だってほんとうだもの。どうじゃ、タカ。おらとおめえとどっちがつええか勝負してみるか?」
 はじめは相手にしなかったタカも、みそさざいがあんまりしつこいので、だまっていられなくなりました。
「みそさざいよ、そこまでいうのなら、ひとつためしてみよう。勝負は山のイノシシ(→詳細)をやっつけることだ。イノシシをやっつけてこそ、鳥の大将といえる」
「いいとも、やってやろうじゃないか」
 ほかの鳥たちは、あきれていいました。
「タカさまも、みそさざいさんも、そんなばかなこと、おやめなさいよ」
 するとみそさざいは、
「おめえ、おらが負けると思って、やめろなんていうのか? おらあ、タカなんかに負けねえぞ!」
「よし! きまった。あした、三角山のてっぺんに、おてんとさまがのぼったらはじめることにしよう」
 さて、朝になって目がさめると、みそさざいは青くなりました。
「どうしよう。酒によったいきおいとはいえ、とんでもないことを言ってしまった」
 なんとかあやまろうと、タカのところへいったのですが、
「おや、みそさざい。早いじゃないか。さあ、きのうのやくそくを守ってもらおうか。ほれ、ちょうどイノシシがやってきた。おまえからいけ!」
 もう、あとにはひけません。
 みそさざいは死んだ気になって、イノシシめがけてとびかかりました。
 でも、イノシシはビクともしません。
 ぎゃくに、イノシシがみそさざいにとびかかってきたのです。
 みそさざいは逃げましたが、おいついてきたイノシシの鼻の穴の中にスッポリ。
 さあ、おどろいたのはイノシシです。
「く、苦しい~っ!」
 イノシシは、あちらこちら走りまわり、とうとう木にぶつかって、
 ドシーン!
 目をまわしてしまいました。
 タカやほかの鳥たちが、みそさざいのようすを見にいくと、なんということでしょう。
 みそさざいが、のびたイノシシを前に、とくいそうにむねをはっているのです。
「どうです! さあ、こんどはタカさんのばんですよ」
「ようし、おまえがイノシシ一頭なら、おれは二頭やっつけてやる」
 タカはヒラリとまいあがると、二頭のイノシシにむかっていきました。
「鳥の大将は、このおれさまだ!」
 タカは、ならんで走る二頭のイノシシにまたがり、二頭を連れ去ろうとしました。
 そのとたん、二頭のイノシシが左右に分かれたからたいへんです。
 タカは、まっぷたつにひきさかれてしまいました。
 鳥たちはあっけにとられ、それからわっとかんせいをあげました。
「みそさざいの勝ちだ!」
「鳥の大将は、みそさざいだ!」
 それからです。
 烏のなかでいちばん小さなみそさざいが、鳥の大将といわれるようになったのは。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バイキングの日
きょうの誕生花 → でいこ(アメリカでいこ)
きょうの誕生日 → 1955年 金子修介(映画監督)

きょうの新作昔話 → アルキメデス 金の冠の重さ
きょうの日本昔話 → みそさざいは鳥の大将
きょうの世界昔話 → お見あい
きょうの日本民話 → ツバメを愛した娘
きょうのイソップ童話 → アリに刺された男とヘルメス
きょうの江戸小話 → いうにいわれず

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月7日の日本の昔話夕やけナスビ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月7日の日本の昔話

夕やけナスビ

夕やけナスビ

 むかしむかし、ふかいふかい山の中に、鬼山村(おにやまむら)という村がありました。
 この村の人たちは、人とつきあうのをひどくきらって、村から外へでることがありません。
 ところが、村はひどい山の中にあるので、生活にひつような塩がないので、それで塩を買うときだけは、いくら人ぎらいのこの村の人たちも、しかたなく浜野村(はまのむら)まで、塩を買いにいくのでした。
 けれど、自分のすがたを見られるのがいやで、買いものをすませると、まるで消えるように、さっさとかえってしまうのです。
 それで、よその村の人は、ほとんど鬼山村の人のすがたを見たことがなかったのです。
 さて、ある日のこと。
 浜野村の男が、鬼山村の人をからかってやろうと、よせばいいのに、ひとりで村をたずねていきました。
 ところが、村の中には人影どころか、ネコの子一ぴき見えません。
 これでは話にならないので、だれでもいいから、外によびだしてやろうと、男は大声でさけびました。
「おらの畑のナスビは、すごくでっかくて、たくさんあるんだぞ」
 それでも、だれも外へはでてきません。
 こんどは、まえよりもっと、大きな声でさけびました。
「おーい! おまえんとこの塩をちっとくれたら、おれのひろいひろい畑のでっかいナスビを、みんなみんなくれてやるぞう!」
と、でまかせをいったのです。
 それでも、家からは誰もでてきません。
「ちえっ。ばかなやつらだ」
 ぶつぶついいながら、自分の村のほうへかえってきました。
 すると、どうでしょう。
 たくさんのナスビが、夕やけの空をうずめるようにして、自分の頭の上を、とんでいくではありませんか。
 浜野村から鬼山村へと、金銀の玉のようにキラキラ光りながら、とんでいくのです。
「もしかして!」
 あわてて男が自分の畑にきてみると、なんと、ナスビは一つのこらずなくなって、ただ一面のぼうず畑になっていたのです。
 男がガッカリして家にかえってみると、家の門の前に、塩が一つまみ、チョコンとおいてあったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 母親大会記念日
きょうの誕生花 → くちなし
きょうの誕生日 → 1949年 岸部四郎(俳優)


きょうの日本昔話 → 夕やけナスビ
きょうの世界昔話 → ローザとジバル
きょうの日本民話 → サルの一文銭
きょうのイソップ童話 → カとライオン
きょうの江戸小話 → ひとりかご

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月6日の日本の昔話 百目のアズキとぎ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月6日の日本の昔話

百目のアズキとぎ

百目(→詳細)のアズキとぎ

 むかしむかし、たびの男が、ひとりでさみしい山みちをあるいていました。
「ああ、日はくれるし、はらはへるし、こころぼそいことになってしまった」
 男がトボトボと歩いていくと、どこからともなく、
 ショキショキ、ショキショキ
と、アズキをとぐような音がしました。
「やれやれ、このあたりに家があるらしい。うちのひとがアズキをといでいるんだろう。いって、とめてもらおう」
 男が音のするほうへいくと、どうしたことか、音がピタリとやんでしまいました。
 あたりは草はらで、家などみあたりません。
 よくみると、足もとにアズキのつぶがちらばっているだけでした。
 男がちらばったアズキつぶをながめていると、そのひとつぶがピョンとうごいて、ピョンピョンピョンとにげだしました。
「まてまて、どこへいくんだ」
 男がおいかけていくと、アズキつぶが、おはかのところでみえなくなってしまいました。
「こりゃあ、いやなところに、きてしまったわい」
 男はあわてて、おはかをはなれました。
 すると、さっきのアズキつぶが、うしろからおいかけてきます。
 ところが、男がふりかえると、アズキつぶはピョンときえるのです。
 男はうすきみわるくなって、かけだしました。
 しばらくいくと、だれもすんでいない一けんのあばらや(→あれはてた家)がありました。
「これはありがたい」
 男があばらやに入って、ホッとしていると、
 ショキショキ、ショキショキ
 また、アズキをとぐような音がきこえてきました。
「おっかねえ、おっかねえ。あれは、アズキとぎのばけものかもしれん」
 男はふとんをあたまからかぶって、ねることにしました。
 ところが、アズキとぎの音は、ますますせまってきて、
「おーい、あけろ! ドンドンドン!」
 戸をたたくではありませんか。
 男がしかたなく戸をあけると、赤らがおの大きなばけものがたっていました。
 その顔には、なんと、目が百もついています。
 男が「ぎゃっー!」と、さけんで、にげだそうとすると、アズキとぎのばけものが、ながいうでをのばして、男をつかみあげました。
 つぎの朝、あばらやにはアズキがちらばっていただけで、男はかげもかたちもなくなっていました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → かえるの日
きょうの誕生花 → あやめ
きょうの誕生日 → 1946年 中尾ミエ(歌手)


きょうの日本昔話 → 百目のアズキとぎ
きょうの世界昔話 → エンドウ豆の上のお姫さま
きょうの日本民話 → 安珍清姫
きょうのイソップ童話 → イノシシとキツネ
きょうの江戸小話 → ますおとし

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月5日の日本の昔話 きっちょむの天のぼり

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月5日の日本の昔話

きっちょむの天のぼり

きっちょむの天のぼり

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 あるとき、きっちょむさんは村にきみょうな立て札を立てました。
《明日の正午、畑にて、きっちょむが天昇りをいたします》
 さあ、村中は大さわぎです。
 一体何が始まるのかと、その話でもちきりでした。
 そして、いよいよ次の日。
 きっちょむさんの畑に、村中の人が集まってきました。
と、そこヘやって来たきっちょむさん。
「みなさん、わたしもいよいよ今日、天に昇ることになりました。つきましてはお願いがござります。天へは、このはしごを伝わってのぼりますので、誰か下でおさえていて下さい。それから、わたしも最後はにぎやかにいきたいので、他の方々は下で踊(おど)りながら、『天のぼりは危ないぞ』と、言って下さい。それではみなさま、どうかおたっしゃで」
 こうしてきっちょむさんは、少しずつはしごをのぼっていきました。
 下では村の人が、天を見あげながら、
「天のぼりはあぶないぞ、天のぼりはあぶないぞ」
と、言いながら、そこら中を踊りまわります。
 きっちょむさんは、はしごのてっぺんから下の様子を見ていましたが、やがてどうしたわけか、スルスルと下りてきて、みんなに向かってこう言いました。
「せっかく決心してのぼりましたが、こうみんなに『あぶない、あぶない』と言われると、やっぱりおそろしゅうなりました。そんなに危ないなら、今回はやめにします」
「はあ? ・・・・・・」
 それを聞いた村の人は、しばらくあっけにとられていましたが、急にバカバカしくなって、ブツブツ言いながら家に帰っていきました。
 あとにひとり残ったきっちょむさんは、しめしめとばかり、十分にならされた畑をながめて、
「よし、これで今年は、畑をたがやさなくてもいいな」
と、ニッコリ笑いました。
 村の人たちに踊りをおどらせて、自分の畑をたがやしたのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 熱気球記念日
きょうの誕生花 → ほたるぶくろ
きょうの誕生日 → 1949年 ガッツ石松(タレント)

きょうの新作昔話 → 弘法の衣(弘法大師)
きょうの日本昔話 → きっちょむの天のぼり
きょうの世界昔話 → 力持ちのノミ
きょうの日本民話 → イノシシのようなネコ
きょうのイソップ童話 → キツネとブドウのふさ
きょうの江戸小話 → 角兵衛獅子の太鼓(かくべえじしのたいこ)

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月4日の日本の昔話 たのまれたてがみ

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月4日の日本の昔話

たのまれたてがみ

たのまれたてがみ

 むかしむかし、ある男が、大きな沼(ぬま)のそばをとおると、沼のなかからきれいなむすめがでてきて、
「ちょっと、おねがいがあるのですが」
と、男をよびとめました。
「このさきのほうに、もうひとつ沼がありますから、そこへいって、タンタンと手をうつと、わかものがでてきます。そのわかものに、このてがみをわたしてください」
「ああ、いいとも」
 男はこころよくひきうけて、もうひとつの沼のほうへあるいていくと、とちゅうに茶店がありました。
 男は茶店の主人と、むかしからの顔なじみです。
「のどかわいたから、お茶を一ぱいくれ」
 男が茶店にこしをおろすと、
「これから、どこさいくつもりだね」
と、主人がききました。
 そこで、男がわけをはなすと、主人はくびをひねりました。
「沼のむすめに、てがみをたのまれただって。へんなことがあるものだ。ちょっとみせろや」
 男があずかったてがみをひろげると、そこにはなんと、
《この男は、うまそうなむらさきいろのしりをしている。とって、くうべし》
と、おそろしいことが、かかれていました。
「おそろしいことだ。しらずにてがみをとどけたら、くわれるところだったぞ。・・・うん。まてよ。・・・よし、わしに、いいかんがえがある」
 茶店の主人は、ふでをとると、
《この男には世話になった。小判をとらせてやるべし》
と、てがみをかきかえて、男にもたせました。
 男がとなりの沼へいって、タンタンと手をたたくと、むすめがいったとおり、沼のなかからわかものがでてきました。
 わかものは、てがみをうけとると、
「そうか、わかった。少し待っていろ」
 沼にもぐると、手にふくろを持ってあらわれ、
「これを、もってゆけ」
 そのふくろを差しだしました。
 中を開けてみると、小判がたくさん入っています。
 男はそれを茶店の主人とわけあい、ふたりはお金持ちになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 虫の日
きょうの誕生花 → うつぎ
きょうの誕生日 → 1974年 和泉元弥(狂言師)


きょうの日本昔話 → たのまれたてがみ
きょうの世界昔話 → 王子と指輪
きょうの日本民話 → ヒヒ
きょうのイソップ童話 → ハチとシャコとお百姓
きょうの江戸小話 → 日本一の親孝行

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月3日の日本の昔話 ばけもの寺のしゃみせん

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月3日の日本の昔話

ばけもの寺のしゃみせん

ばけもの寺のしゃみせん

 むかしむかし、あるところに、だれもすんでいないオンボロ寺がありました。
 その寺は、おそろしいばけもの寺だといううわさです。
 とまったらさいご、だれひとり、ぶじにかえってきません。
 あるとき、気のつよい男が、
「アッハハハハ。ばけものぐらい、おれがたいじしてみせるわ」
と、ばけもの寺へとまりにいきました。
 男はもってきたさけをのみながら、ばけものがあらわれるのを、いまかいまかとまっていました。
 するとてんじょうから、スルスルスルッと、なにかがさがってきました。
 みると、しゃみせん(→詳細)の弦楽器で、胴体部に、ネコやイヌの皮を張るのが特徴)です。
「なんだ、しゃみせんではないか。どれ、ひまつぶしにひいてみるか」
 男がしゃみせんに手をのばすと、
 ペタリ。
 手がくっついて、はなれません。
「ややっ、これはいかん」
 男はしゃみせんを、足でけとばそうとしました。
 すると、足もペタリ。
 くっついてしまい、どうしてもはなれません。
「こりゃあ、どうしたことだ。なんとかせねば!」
 男があせってもがくと、かみの毛も顔も、しゃみせんにくっついて、どうにもなりません。
「わあーっ、助けてくれー!」
 男が泣きさけぶと、しゃみせんは男をくっつけたまま、こんどは、スルスルスルッと、てんじょうにあがっていきます。
 そしてとうとう、てんじょううらにひそんでいたばけものに、たべられてしまいました。
 さて、やがてこの村に、たびのお坊さんがとおりかかって、ばけもの寺のことを耳にしました。
「ばけものですか。では、わたしがとまってみましょう」
 お坊さんがいうと、
「とんでもねえ」
「ばけものに、くわれてしまうだよ」
 村の人たちがとめました。
「いや、しんぱいはいりません。あしたの朝、ようすをみにきてください」
 お坊さんが、ばけもの寺にとまると、てんじょうからスルスルスルッと、しゃみせんがさがってきました。
 でも、お坊さんは手をだしません。
「てんじょうに、なにかいるようだ。・・・そこだな!」
 お坊さんは、もっていたつえを、てんじょうになげつけました。
 ギャーッ!
 てんじょうで、ものすごいこえがしましたが、そのまましずかになりました。
 朝になり、かけつけてきた村の人と、てんじょううらをのぞくと、たくさんの人の骨といっしょに、人よりも大きなクモが死んでいたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 測量の日
きょうの誕生花 → すいかずら
きょうの誕生日 → 1965年 唐沢寿明(俳優)

きょうの新作昔話 → アルキメデス 一人で船を動かす
きょうの日本昔話 → ばけもの寺のしゃみせん
きょうの世界昔話 → ワラと炭とマメ
きょうの日本民話 → びんぼうになりたいお金持ち
きょうのイソップ童話 → 小ガラスと大カラス②
きょうの江戸小話 → あんまの腹いせ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月2日の日本の昔話 一人になった鬼の親分

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月2日の日本の昔話

一人になった鬼の親分

一人になった鬼の親分

 むかしむかし、鬼神山(おにがみやま)という山に二匹の鬼の親分が住んでいて、それぞれに大勢(おおぜい)の子分(こぶん)をひきつれていました。
 親分どうしの仲がよく、これまでけんかをしたことがありません。
 ところがある日のこと、二匹の親分がいっしょに酒を飲んでいるとき、かたほうの親分が、
「おまえの子分たちより、わしの子分のほうがずっと元気がええ」
と、いいました。
「なにをいうか。そりゃこっちのいうことじゃ。わしんとこの子分たちのほうが、ずっと元気がええわ」
 もう一人の鬼の親分が、いい返しました。
「なんだと!」
「なんだとは、なんだ!」
 酒のいきおいも手伝って、二匹の鬼の親分が、同時に立ちあがりました。
 でも、よく考えてみたら、鬼どうしがけんかをしてよろこぶのは人間だけです。
 おたがいに仲よくしてきたからこそ、この山に人間を近づけることがなかったのです。
 そこで、かたほうの鬼の親分がいいました。
「けんかをすれば、どっちかが負けて殺されることになる。そんなことをするのはそんじゃ。けんかでなくて、なんぞ、力くらべをするものはないかの」
「なるほど、おまえさんのいうとおりかもしれん。そんなら、あのけわしい谷の上に、石の橋をかけるというのはどうじゃ」
「それはおもしろい。よし、日がくれたら仕事を始め、朝になるまでの間に石の橋をかけ、どっちの橋がよくできているか、わしとおまえで見てまわろう」
「わかった。もし、わしのほうが負けたら、おまえの弟分(おとうとぶん)になるとしよう。その反対に、わしのほうが勝ったら、おまえが弟分になる」
 二匹の鬼の親分は、さっそく子分たちのところへ行って、このことを話しました。
 さて、日がくれると同時に、どっちの鬼どもも、岩をけずったり、かついだりして、石の橋をつくりはじめました。
「しっかりとがんばれ。さもないとおまえたちは、あっちの親分の家来にされてしまうぞ」
 二匹の鬼の親分は、必死(ひっし)で子分たちを追いたてます。
 静かだった鬼神山は、まるで戦(いくさ)のような大さわぎです。
 ところが、かたほうの橋はどんどんできあがっていくのに、もういっぽうはなかなか仕事がはかどりません。
 やがて、東の空が白くなるころ、谷の上にひとつのみごとな橋ができあがりました。
 あとひとつの橋は、まだ半分というところです。
 橋を完成できなかったほうの、鬼の親分がいいました。
「どうやら、わしらの負けのようだ。しかたがない。今日からおまえが親分で、わしはおまえの弟分になろう」
 それからというもの、鬼神山の鬼の親分は一人になり、その下に大勢の子分をしたがえるようになったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 横浜港・長崎港開港記念日
きょうの誕生花 → ささゆり
きょうの誕生日 → 1949年 鷲尾真知子(声優)


きょうの日本昔話 → 一人になった鬼の親分
きょうの世界昔話 → ギアッコ少年とマメ
きょうの日本民話 → テングに手を貸した和尚
きょうのイソップ童話 → 小ガラスと大ガラス①
きょうの江戸小話 → あみがさのわすれもの

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

6月1日の日本の昔話 金太郎

福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 6月の日本昔話

6月1日の日本の昔話

金太郎

金太郎
金太郎のぬりえ

 むかしむかし、あしがら山の山奥に、金太郎という名前の男の子がいました。
 金太郎の友だちは、山の動物たちです。
 金太郎は毎日毎日、動物たちとすもうをして遊んでいました。
「はっけよい、のこった、のこった」
「金太郎、がんばれ、クマさんも負けるな」
 だけど、勝つのはいつも金太郎で、大きな体のクマでも、金太郎にはかないません。
「こうさん、こうさん、金太郎は強いなあ。でも、次は負けないぞ」
 今度は、つな引きです。
 金太郎一人と、山中の動物たちの勝負です。
 動物たちの中には、体の大きなクマやウシやウマやシカもいましたが、金太郎にかないません。
「つな引きも、金太郎の勝ち!」
 なんとも、大変力持ちの金太郎ですが、強いだけでなく、とてもやさしい男の子です。
 ある日、クマの背中に乗って山道を行くと、谷のところで動物たちが困っていました。
「どうしよう? 橋がないから、向こうへわたれないよ」
「よし、ぼくにまかせておけ」
 金太郎は近くに生えている大きな木を見つけると、
「よし、ちょうどいい大きさだ」
と、いって、その大きな木に体当たりをしました。
ドーン!
 すると大きな木は簡単に折れてしまい、金太郎がそれを持ち上げて谷にかけると、あっという間に一本橋のできあがりです。
「わーい。どうも、ありがとう」
 動物たちは大喜びで、金太郎のつくってくれた橋を渡りました。

きんたろう

 その後、強い力とやさしい心を持った金太郎は、立派な若者になり、都のえらいお侍さんの家来(けらい)になって、悪い者を次々とやっつけたということです。

おしまい

※ 金太郎は、坂田金時と言う名で源頼光(みなもとのらいこう)に仕え、酒呑童子とよばれる鬼を退治したとされています。

 大きくなった金太郎が登場するお話し。
→ 羅生門の鬼
→ 渡辺綱(わたなべのつな)と酒呑童子(しゅてんどうじ)

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スーパーマンの日
きょうの誕生花 → てんなんしょう
きょうの誕生日 → 1955年 千代の富士貢(相撲)

きょうの新作昔話 → 二宮金次郎(尊徳)
きょうの日本昔話 → 金太郎
きょうの世界昔話 → コルニーユじいさんの秘密
きょうの日本民話 → なわ
きょうのイソップ童話 → やぶ医者
きょうの江戸小話 → お祭りが、うんこ

hukumusume.com サイト一覧

| | コメント (0)

« 2009年5月 | トップページ